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テロとの戦いと集団的自衛権の行使容認との関係について、はっきりしない安倍政権 photo Getty Images
イスラム国ほかテロとの戦いと、集団的自衛権の行使容認との関係を、安倍政権はなぜ曖昧にするのか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41978
2015年02月06日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
テロとの戦いは集団的自衛権の行使容認と関係があるのかないのか。この問題について安倍晋三政権の姿勢がいまひとつ、はっきりしない。
■ 国際的連携の強化でしか日本は立ち向かえない
「事件を利用して集団的自衛権の必要性を強調したくない」という政治判断もあるかもしれない。あえて言おう。テロにも外国からの脅威に対しても、日本は国際的連携を強化する中でしか立ち向かえないのだ。
まず、安倍政権が昨年7月に決めた閣議決定(http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf)の文言を確認したい。そこには「国際的な平和協力活動に伴う武器使用」という項目の中で、邦人救出問題について次のように書かれている。
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いわゆる「駆け付け警護」に伴う武器使用や「任務遂行のための武器使用」については、こ れを「国家又は国家に準ずる組織」に対して行った場合には、憲法第9条が禁ずる「武力の行使」に該当するおそれがあることから、国際的な平和協力活動に従事する自衛官の武器使用権限はいわゆる自己保存型と武器等防護に限定してきた。
(中略)自国領域内に所在する外国人の保護は、国際法上、当該領域国の義務であるが、多くの日本人が海外で活躍し、テロなどの緊急事態に巻き込まれる可能性がある中で、当該領域国の受入れ同意がある場合には、武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応できるようにする必要がある。
以上を踏まえ、我が国として、「国家又は国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場しないことを確保した上で、国際連合平和維持活動などの「武力の行使」を伴わない国際的な平和協力活動におけるいわゆる「駆け付け警護」に伴う武器使用及び「任務遂行のための武器使用」のほか、領域国の同意に基づく邦人救出などの「武力の行使」を伴わない警察的な活動ができるよう、以下の考え方を基本として、法整備を進めることとする。
(中略)自衛隊の部隊が、領域国政府の同意に基づき、当該領域国における邦人救出などの「武力の行使」を伴わない警察的な活動を行う場合には、領域国政府の同意が及ぶ範囲、すなわち、その領域において権力が維持されている範囲で活動することは当然であり、これは、その範囲においては「国家に準ずる組織」は存在していないということを意味する。
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この文書は集団的自衛権の行使を容認するための閣議決定なので、邦人救出問題も集団的自衛権にかかわる文脈で議論されてきたのはたしかである。だから、頭から両者が無関係とはいえない。
■自衛隊が救出作戦をやろうとしても実際には極めて難しい
ややこしいのは一番最後に出てくるように、自衛隊が出て行く場合でも、国の自衛ではなく「警察的な活動」として認識している点だ。加えて「領域国政府の同意が及ぶ範囲」と「国家に準ずる組織が存在していないこと」が自衛隊が活動する前提条件になっている。
今回のテロ事件に照らしてみると、たとえシリア政府が同意したとしても、イスラム国(ISIL)が活動している地域がシリア政府の「権力が維持されている範囲」と言えるかどうか。次に、ISILは「国家に準ずる組織ではないのかどうか」という問題がある。
もしもISILの勢力範囲に政府の権力が及んでいず、かつISILが国家に準ずる組織だと考えれば、前提条件を2つとも満たさない。したがって、たとえ法整備が整って、仮に救出作戦を実行する自衛隊の特殊部隊が創設されたとしても、救出活動はできない話になる。
安倍政権は政府の権力が及んでいるかどうか、ISILが国家に準ずる組織かどうかについて、判断を示していない。「ISIL支配地域には国家権力が及ばず、ISILは国家に準ずる組織だ」と認めてしまえば、それ自体が大問題になる。まるでISILの勢いを日本政府が公認したような話になってしまうからだ。
逆に国家権力が及んでいる地域だとか、国家に準じる組織ではないと言っても、現実に照らしてみれば、必ずしもそうと言い切れない悩ましさがある。現実にシリア政府は警察権の行使どころか、ほとんど何も事件に関われなかった。
米国でさえ救出作戦に失敗したくらいである。すべての条件が満たされて自衛隊が救出作戦をやろうとしても、実際には極めて難しい。できない話をあれこれ整理しても仕方がないから結局、安倍政権としては「今回の事件を閣議決定と切り離して扱ったほうがいい」という判断に至ったのではないか。
■単に身勝手で卑怯な国になるだけ
ただ、それでも私はテロ対策と集団的自衛権問題は本質的につながっていると思う。いずれも日本が単独で立ち向かえる課題ではないからだ。テロリストたちと日本は単独で戦えるか。戦えない。情報収集ひとつとっても、米国や欧州、中東諸国との連携は不可欠である。
まして邦人が人質にとられて救出作戦を考えるとなったら、ますます連携が重要になる。テロリストの側も日本だけを標的にするとは限らない。まさに今回はヨルダンを巻き込んだ。だから、日本はヨルダン政府と連携する以外に対応しようがなかった。
集団的自衛権問題の本質も「日本が単独で外からの脅威に立ち向かえない」という点にある。ずばり言えば、日本は尖閣諸島をめぐって中国海軍と戦って追い散らせるか。私は信頼する防衛相経験者にこう尋ねたことがある。答えは「10年は大丈夫だが、その先は分からない」とのことだった。
中国は名目の国内総生産8兆ドルのうち、軍事予算に2%使っている。日本はといえば、同じく6兆ドルのうち防衛費は1%だ(ともに2012年、http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDPD&c1=CN&c2=JP)。つまり、日本が単独で中国に対抗しようと思ったら、防衛費を3倍に増やさなくてはならない。
実際には、中国の軍事予算はその倍あると言われているし、中国の経済成長はその後もめざましいので、日本の防衛費はもっと必要だろう。となると、単独で対抗するには社会保障費を大幅に削るか、赤字国債を大量発行するか、大増税せざるをえなくなる。そんな政権は国民が許さないから結局、中国には単独で軍事的に対抗できない。
やはり、米国と連携を強めて中国に対抗するのがもっとも安上がりで、しかも現実的なのだ。集団的自衛権の行使を容認して、米国をつなぎとめる戦略である。テロにも中国の脅威にも、日本の平和と安全を確保するには「日本は単独で対抗できない」という現状認識から出発しなければならない。
日本は世界の中でそれなりの大国になった。だからこそ、テロリストから狙われる立場にもなった。経済活動はグローバル化したが、テロや外国からの脅威には「巻き込まれたくない」からローカル国としてふるまう。国際秩序を維持する責任からも身を潜めて逃避する。それでは、単に身勝手で卑怯な国になるだけだ。
ここは日本の国際的な立ち居振る舞いが問われる局面である。
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