02. 2015年2月02日 15:30:05
: gQM1IzbABk
「償わせる」自ら加えた首相 政府、苦悶の13日間 見えぬ敵「イスラム国」に働きかけ実らず 2015/2/2 0:11日本経済新聞 電子版 中東の過激派「イスラム国」を名乗る組織による日本人人質事件は、日本が2人の殺害を突きつけられる最悪の結末を迎えた。最初の殺害予告から13日間、犯行組織は映像や画像による脅迫を繰り返した。直接交渉ルートをもたず「見えない敵」を相手に苦悶(くもん)した日本政府。ヨルダンなど各国との連携を軸とする働きかけは実らなかった。 1日、早朝の静寂が破られた。午前5時10分、東京・赤坂の議員宿舎にいた菅義偉官房長官は秘書官を通じて、後藤健二さんが殺害されたとみられる映像の配信を聞いた。20分後に首相官邸に入り、全力疾走で随行の秘書官より早くエレベーターに乗りこんだ。 6時10分過ぎ、隣接する首相公邸から官邸に移った安倍晋三首相は、事務方が用意していた「首相声明」に自ら手を入れた。「テロリストたちを決して許さない」に続けて「その罪を償わせる」と書き加えた。記者団の前で、首相は怒りをこらえるようにテロリストへの非難を口にした。「日本がテロに屈することは決してない。人道支援をさらに拡充していく」。 5回に及んだ犯行組織の声明。最初に映像が公開されたのは1月20日だが、政府は昨年から日本人2人の拘束情報をそれぞれつかみ、事実確認に走るなど極秘裏に動いていた。湯川遥菜さんが昨年8月にシリア北部で拘束されるとヨルダンに現地対策本部を設置。11月には、同じくシリアで消息を絶った後藤さんの事案を対策本部に加えた。 「イスラム国」の声明は5回の及んだ(すべて日本時間) http://img.asyura2.com/us/bigdata/up1/source/38575.jpg ヨルダンやトルコなど周辺国だけでなく、「宗教指導者、部族長らを含めてありとあらゆるところに協力を要請してきた」と外務省幹部は語る。イスラム国とは直接交渉しなかった。事態打開へ「なかなかうまくいかない」(政府関係者)まま年が明け、首相は1月16日に中東4カ国・地域歴訪に旅立つ。状況が急展開し始めたのはちょうどそのタイミングだった。 「72時間以内に2億ドルを払わないと2人を殺害する」。首相がイスラエルに滞在していた1月20日、昨年来の拘束をイスラム国が突然公表した。首相の顔色が変わる。同行していた中山泰秀外務副大臣をヨルダンに送りこんだ。自ら電話をとり、イスラム国と戦うヨルダンのアブドラ国王をはじめトルコ、エジプト首脳らに協力を求めた。 27日、首相は衆院代表質問への答弁でも身代金要求には応じず、テロ組織と戦う姿勢を訴えた。その日の夜、犯行組織は、後藤さんとみられる男性の画像と音声をインターネット上に公開。ヨルダンに収監中の女性死刑囚を24時間以内に釈放しなければ後藤さんを殺害すると警告した。 3回目の声明を受け、政府はイスラム国に拘束されたヨルダン軍パイロット・後藤さんと死刑囚の「2対1」の交換に望みをつないだ。ヨルダン政府高官が後藤さんについても解放を働きかけていると明らかにし、現地からの「人質交換案で合意の見通し」との報道も期待に拍車をかけた。 ただ、死刑囚釈放の是非はあくまでヨルダン政府の判断だ。4回目の声明が流れた29日朝から2日が経過した31日、イスラム国やヨルダン側に動きがみられなくなると、首相はいらだちを募らせた。「何が一体どうなっているのか、一度整理してくれ」と周辺に指示を飛ばした。 ヨルダン軍パイロットの安否はどうなっているのか、ヨルダン政府はどのような見通しをつけているのか――。指示を受けて菅長官らは政府内で先行きについて議論したが、「結局、何も進んでいないということを確認するだけに終わった」(政府関係者)。外務省幹部は「ヨルダンとイスラム国の交渉状況は日本には分からない。ヨルダン側はどのようなパイプで交渉しているかは教えてくれない」と漏らした。 最後の声明も日本側は映像を通じて知ることになった。首相は「誠に無念で痛恨の極みだ」と悔しさをあらわにした。 1日午後5時すぎ、外務省の大臣室。岸田文雄外相は15カ国・地域のアラブ諸国の大使らと向き合い、「日本に連帯の意思を表明してくれたことに感謝申し上げる」と語りかけた。そのなかにはヨルダンのハダッド大使の姿もあった。 強大なイスラム過激派組織に翻弄された13日間。「我々の手の届かないところで全てが進んでいた」「オレンジ色の服を着せられた最初の時点から厳しい結果が予測されていた」。1日の政府内には無力感が広がった。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE01H06_R00C15A2EA2000/ |