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1月31日(土) 安倍首相による「ショック・ドクトリン」(惨事便乗型政策転換)を許してはならない
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31
2015-01-31 06:22 五十嵐仁の転成仁語
落ち着かない、憂鬱な日々が続いています。毎日、「後藤さんはどうなったのだろう」と心配しているからです。
日本中の皆さんが同じような心境なのではないでしょうか。雪国の冬空のような、どんよりとした暗い日々が続いています。
安倍首相は29日の衆院予算委員会で、自衛隊による在外の邦人救出について、「領域国の受け入れ同意があれば、自衛隊の持てる能力を生かし、救出に対して対応できるようにすることは国の責任だ」と述べ、今国会に提出予定の安全保障関連法案の成立に意欲を示しました。湯川さんの殺害、後藤さんの人質交換要求という惨事に便乗しての政策転換の表明です。
ナオミ・クラインが言うところの「ショック・ドクトリン」の発動ということでしょうか。危機状況を生み出すことで大きな変革を起こそうとする極めて危険な思想に、安倍首相も取りつかれてしまったようです。
初めから今回のような事態を意識的に引き起こし、それを利用して自己の「積極的平和主義」の具体化を図ろうとしていたのでしょうか。そうでなくても、このような不幸に便乗して安保法制の整備を進めようとするようなことは断じて許されません。
そもそも、昨年7月の閣議決定では、邦人救出の際の自衛隊の活動範囲は「その領域において権力が維持されている範囲」と限定しています。日本人人質事件が起きた「イスラム国」はそのような「範囲」ではありませんから、対象外になるとみられています。
また、「自衛隊の持てる能力」が生かされるとしても、今回のような事態に対して何ができるというのでしょうか。自衛隊による救出作戦によって事態が打開できるとでも言うのでしょうか。
このような武力対応に向けての意欲や構想を表明することが、日本に対する誤解をさらに強め、敵意を高めることになるということが分からないのでしょうか。そのことによって後藤さんがさらなる危険にさらされることにならないか、大いに心配しています。
そもそも、今回のような事態は安倍首相の不用意な中東歴訪がなければ、引き起こされなかったのではないでしょうか。今となっては手遅れかもしれませんが、「もしかして」と思うことは沢山あります。
もし、日本政府が湯川さんと後藤さんの拘束が分かった時点で、もっと早くからきちんと対応していれば、事態は変わっていたかもしれません。
もし、安倍首相が外務省の静止を振りきって中東4カ国の歴訪などに出かけなければ、今回のような形での脅迫は起きなかったかもしれません。
もし、エジプトでの演説で2億ドルの拠出を表明して「イスラム国対策である」などといわなければ、当初の2億ドル要求はなかったかもしれません。
もし、この2億ドルの拠出が各国政府に対するものではなく、赤新月社などの国際機関に出されるものであったなら、人道支援であることははっきりしていたかもしれません。
もし、そのような形で2億ドルが非軍事的な人道支援であることをもっとはっきりと示していれば、「日本は敵だ」と思われなかったかもしれません。
要するに、日本の首相が安倍さんではなく、この時期にイスラエルなどに行くと言いださなければ、今回の事件はなかったかもしれません。日本人の人質が2人捕まっていることを知りながら、のこのこと中東にまで出かけていき、事件のきっかけを作った安倍首相の責任はこの上なく大きいと言わなければなりません。
このことは、湯川さんについて特に当てはまるように思われます。湯川さんはネットを通じて田母神さんや菅官房長官と「お友達」であったとみられたのではないでしょうか。
日本政府の関係者との間柄を疑われ、スパイという嫌疑で命を奪われてしまった可能性があります。この点では、安倍首相だけでなく、その取り巻きの人々の責任も大きいと言うべきでしょう。
「積極的平和主義」に前のめりとなって今回の事件の引き金を引いたのは安倍首相です。そのことによって、「地獄の釜」の蓋を開いてしまったのではないでしょうか。
「日本人記者を誘拐し別の捕虜交換に利用しろ」という書き込みが、「イスラム国」の支持者らによってツイッター上で行われているそうです。過激派支配地域では、人質を売買する誘拐ビジネスが横行し、記者活動は厳しい状況に置かれ、記者は危険にさらされることになりました。
欧米メディアの記者たちによれば、シリア北部では昨年以降、通訳やガイドを装って外国人に近づき、数万ドル(数百万円)でイスラム国に売り渡す誘拐ビジネスが横行しているそうです。今回人質となった後藤さんも、仲介していた同行ガイドに裏切られて人質取引の材料となった可能性があると言われています。
「国境なき記者団」は先月、昨年1年間でイスラム国の支配地域があるシリアとイラクで計47人のジャーナリストが誘拐されたことを明らかにしました。日本人記者の中から、第二、第三の後藤さんが出てこないことを祈るばかりです。
後藤さんの一日も早い無条件での解放を強く要求します。同時に、この事件を利用した安倍首相による「ショック・ドクトリン」の発動を封じ、集団的自衛権の行使容認の法制化を阻止することが急務となっています。
憲法9条を守り、平和国家としての日本を世界中にアピールすることこそ、最大の安全保障なのですから……。
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