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「クソコラグランプリ」の衝撃
湯浅 誠 · 2015.01.27
私はふだんほとんどネットメディアをチェックしていない。
特に、匿名性に拠って放言しているものは見ない。
「こんなの話題になってる」と言われても「知らなかった」と反応することが少なくない。
ただ今回の日本人人質事件で、ネット上でどれくらい自己責任論が出ているかは気になっていた。政府関係者、国会周辺からの声を聞くかぎりでは、2004年のときとは違って自己責任を問う声はほぼ出ていないと感じていたが、「本丸」のネット上ではどうか。
そう思って、ちょっとチェックしてみた。
そしたらネット上には、別の言葉が散らばっていた。「クソコラグランプリで炎上」といった言葉。何のことだかさっぱりわからない。たどってみた。
びっくりした。
……なんというか、久しぶりに「本当に理解できない」と途方に暮れる感覚を味わった。「ついていけない」と突き放される感じ。非難とか憤慨とかではなく、呆然と立ちつくしてしまう感じ。衝撃だった。
テロに対しては非難も憤慨もするが、彼らの動機やテロに至った道筋は、否定・批判するにしても、たどることができる。クソコラは、それをやった人たちの精神構造がまったく理解できない。いったい何のために、何を言いたくて、こんなことをするのか…。
遠すぎる。
命の軽視?愚弄?挑発?平和ボケ?想像力の欠如?不謹慎?…どれも追いつかない気がする。
さらに見てみると、「クソコラ」は今に始まった話ではないらしい。しばらく前からさまざまなニュース素材を元に、ネット上では荒唐無稽さを競うようなコラージュが氾濫していた。
私のようなネット素人が知らなかっただけで、その世界では「常識」「今更」という感じなのだろう。いわゆる「ネタ消費」、どんな話題もネタとして消費していくということのようだ。今回の件も「単にその延長」ということなのだろう。
何のためにとか、何を言いたくてとか、そんな意味を問うこと自体を無効化するのが「ネタ消費」なのであって…といった解説は読んだことがあるし、ポストモダンとはそういう時代だといった解説も知らないわけではない。
しかし、それにしても…という感じがする。脱力感。
この脱力感から解放されるためには、もう少し理解できるようになる必要があるんだろう。そう考えてなんとか気持ちを立て直そうとしている。
湯浅誠
1969年東京都生まれ。東京大学法学部卒。2008年末の年越し派遣村村長を経て、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。内閣官房社会的包摂推進室長、震災ボランティア連携室長など。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。
現在、NHK「ハートネットTV」レギュラーコメンテーター、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」レギュラーコメンテーター、朝日新聞紙面審議委員、日本弁護士連合会市民会議委員。法政大学教授。
※参考画像
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