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首相のうっかり発言が致命傷に 安倍外交慢心と誤算〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150128-00000006-sasahi-pol
週刊朝日 2015年2月6日号より抜粋
1月20日午後2時50分――。衝撃的な動画がインターネットを通じ、全世界にばらまかれ、蜂の巣をつついたような騒ぎになったが、NSC(国家安全保障会議)の主要メンバーである安倍晋三首相は中東歴訪中、岸田文雄外相、中谷元防衛相も外遊中で不在。
イスラエル・エルサレムを訪問中だった安倍首相は慌てて会見を開き、人質の釈放を求めたが、このパフォーマンスは「外務省の大失態」とされている。日本女子大の臼杵陽教授(中東現代史)がこう指摘する。
「安倍さんが一番まずかったのは、イスラエルで会見をやったこと。安倍さんの会見はユーチューブにアップされ、全世界にばらまかれたわけですが、日本の旗とイスラエルの旗(ユダヤ民族の象徴のダビデの星)がバックだった。『人道的な支援で軍事的に加担しているわけではない』と釈明しましたが、アラブ人が見れば、『何だ、イスラエルと日本は同盟を組んだのか』と誤解をされる。政治的に最悪でした」
イスラム国が身代金を「2億ドル」と吹っかけてきた要因とされているのが、安倍首相が同17日、エジプトのカイロで行った演説だ。イスラム国との“戦争”が原因でイラクやシリアなどで難民・避難民が大量に発生していることを憂慮し、その支援のため2億ドルの無償資金協力を発表した。
だが、三谷英弘前衆院議員は、首相の演説の英訳版に「違和感を覚えました」と首を傾げた。
日本語では「地道な人材開発、インフラ整備」が支援に含まれるとした演説部分だ。
「英語では『地道な』という大事な言葉は省かれ、インフラも直訳。英語のインフラには『軍事施設』の意味もあります。日本語では感じられる人道的援助というニュアンスが切り落とされているため、兵士教育と基地建設のため資金を援助します、とイスラム国側に誤解された可能性がある」(三谷氏)
内閣官房副長官補として安全保障を担当した柳澤協二氏は「日本語でも演説は強すぎます」と言う。
「どこか『闘い』のニュアンスがある。演説には『ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるため』や『ISILと闘う周辺各国に』支援を約束する、などの文言がありました」
脅迫された後に「人道的な支援」と強調するのであれば、削ってもよかったのではないか、というのだ。
元外交官で外交評論家の小池政行氏も「首相には油断があったのではないでしょうか」と指摘する。
元在シリア特命全権大使で『イスラム国の正体』(朝日新書)の著作がある国枝昌樹氏がこう話す。
「湯川さんは昨年7月、後藤さんは10月下旬から行方がわからなくなっています。イスラム国は2人を安易に処刑せず、彼らにとって最も効果的な“脅迫カード”となるタイミングを待っていたわけです」
後藤さんの妻あてにイスラム国から最初の脅迫メールが届いたのは、昨年11月。
「メールのやり取りは首相の中東歴訪前まで断続的に続き、イスラム国は約20億円の身代金を要求していた。外務省も内容を把握し、官邸に逐一、報告していたが、ズルズルと判断を引き延ばしたまま、首相が企業を引き連れ、中東に出かけ、“飛んで火にいる夏の虫”となり、身代金も10倍以上も吹っかけられてしまった」(外務省関係者)
(本誌取材班=古田真梨子、原山擁平、福田雄一、横山 健、小倉宏弥)
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