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安倍晋三がもたらす日本の危機
http://hunter-investigate.jp/news/2015/01/post-632.html
2015年1月27日 09:00 HUNTER
「イスラム国」を称するイスラム教スンニ派の狂信集団が、邦人2人を拘束し、身代金を要求した末に1名を殺害するという蛮行に及んだ。イスラム教を掲げてはいるが、一般的な宗教観とは無縁。「話せばわかる」という人の道は通用しそうもない。
対応が後手に回るばかりの日本政府だが、こうなるきっかけを作ったのは他ならぬ安倍首相。中東諸国への2億ドル供与を表明した際の不用意な発言が、過激派の思う壺となり、邦人の命を危険に晒すことにつながっている。
国家・国民に危機をもたらす安倍氏の発言はこれだけに止まらない。イスラム国対応で国際社会を味方に付けなければならないこの時期に、日本の戦争責任を否定する姿勢を示し、各国に不信を抱かせている。
■発端は首相の2億ドル発言
イスラム国に関する問題の発言は、今月17日、エジプトで開かれた「日エジプト経済合同委員会」における安倍首相のスピーチでの次のくだり。中東支援策を列挙したあと、こう述べている。
イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。
そして20日、YouTube(ユーチューブ)に、イスラム国発信とみられる動画が投稿され、72時間以内に身代金2億ドル(約240億円)を払わなければ拘束している邦人2名を殺害すると予告してきた。
時系列的には、昨年の邦人2人拘束⇒安倍首相の2億ドル供与発言⇒殺害予告となる。『ISILと戦う周辺各国に2億ドル』――そう言った時点で、過激派にとっては宣戦布告も同様。イスラム国側は、人質を盾に日本を舞台に引っ張り出すタイミングをはかっていたと見られ、首相の不用意な発言が「発端」となったのは明らかだ。
「国」を名乗ってはいるが、イスラム国とは過激派の一集団。国際法も常識も通用しない相手だ。後付けの形で「人道支援」を主張しても、彼らは一顧だにしない。そんなことは、とうにわかっていたはずだ。
日本政府は、邦人2人が拘束されていることを知っていたとされ、だとすれば慎重な物言いが求められていたはず。ケンカを売った形の安倍首相が、現在の事態を予見できなかったとしたら、危機管理能力の欠如。最大の問題は、首相の発言が、拘束された2人の邦人だけでなく、日本全体に危機をもたらしたというところにある。
■今度は国際社会に間違ったメッセージ
そうしたなか、25日のNHKの「日曜討論」に出演した首相が、国際社会全体から姿勢を疑われるような発言を行い、物議を醸す結果となっている。
番組のなかで首相は、戦後70年にあたって発表する予定の総理大臣談話について、「歴代政権の談話を全体として引き継ぐ」としながら「今まで重ねてきた文言を使うかどうかではなく、『今まで使ったことばを使わなかった』、あるいは『新しいことばが入った』というこまごまとした議論にならないよう、70年の談話は70年の談話として新たに出したい」と明言した。ここで言うこれまで使った言葉とは、「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのお詫び」といった過去の談話のキーワードを指している。
平成7年8月15日に当時の村山富一首相によって出された村山談話(「戦後50周年の終戦記念日にあたって」)は、こう述べている。
先の大戦が終わりを告げてから、50年の歳月が流れました。今、あらためて、あの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せるとき、万感胸に迫るものがあります。
敗戦後、日本は、あの焼け野原から、幾多の困難を乗りこえて、今日の平和と繁栄を築いてまいりました。このことは私たちの誇りであり、そのために注がれた国民の皆様1人1人の英知とたゆみない努力に、私は心から敬意の念を表わすものであります。ここに至るまで、米国をはじめ、世界の国々から寄せられた支援と協力に対し、あらためて深甚な謝意を表明いたします。また、アジア太平洋近隣諸国、米国、さらには欧州諸国との間に今日のような友好関係を築き上げるに至ったことを、心から喜びたいと思います。
平和で豊かな日本となった今日、私たちはややもすればこの平和の尊さ、有難さを忘れがちになります。私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。
いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。
わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。
敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。
「杖るは信に如くは莫し(よるはしんにくしはなし)」と申します。この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。
*太字と( )の内よみがなはHUNTER編集部
次いで平成17年8月15日の小泉純一郎首相(当時)による総理大臣談話。
私は、終戦60年を迎えるに当たり、改めて今私たちが享受している平和と繁栄は、戦争によって心ならずも命を落とされた多くの方々の尊い犠牲の上にあることに思いを致し、二度と我が国が戦争への道を歩んではならないとの決意を新たにするものであります。
先の大戦では、三百万余の同胞が、祖国を思い、家族を案じつつ戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは、戦後遠い異郷の地に亡くなられています。
また、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。
戦後我が国は、国民の不断の努力と多くの国々の支援により廃墟から立ち上がり、サンフランシスコ平和条約を受け入れて国際社会への復帰の第一歩を踏み出しました。いかなる問題も武力によらず平和的に解決するとの立場を貫き、ODAや国連平和維持活動などを通じて世界の平和と繁栄のため物的・人的両面から積極的に貢献してまいりました。
我が国の戦後の歴史は、まさに戦争への反省を行動で示した平和の60年であります。
我が国にあっては、戦後生まれの世代が人口の七割を超えています。日本国民はひとしく、自らの体験や平和を志向する教育を通じて、国際平和を心から希求しています。今世界各地で青年海外協力隊などの多くの日本人が平和と人道支援のために活躍し、現地の人々から信頼と高い評価を受けています。また、アジア諸国との間でもかつてないほど経済、文化等幅広い分野での交流が深まっています。とりわけ一衣帯水の間にある中国や韓国をはじめとするアジア諸国とは、ともに手を携えてこの地域の平和を維持し、発展を目指すことが必要だと考えます。過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼に基づいた未来志向の協力関係を構築していきたいと考えています。
国際社会は今、途上国の開発や貧困の克服、地球環境の保全、大量破壊兵器不拡散、テロの防止・根絶などかつては想像もできなかったような複雑かつ困難な課題に直面しています。我が国は、世界平和に貢献するために、不戦の誓いを堅持し、唯一の被爆国としての体験や戦後60年の歩みを踏まえ、国際社会の責任ある一員としての役割を積極的に果たしていく考えです。
戦後60年という節目のこの年に、平和を愛する我が国は、志を同じくするすべての国々とともに人類全体の平和と繁栄を実現するため全力を尽くすことを改めて表明いたします。
*太字はHUNTER編集部
いずれの談話にも「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのお詫び」は共通。歴代政権が真摯に歴史と向き合ってきたことの証しであり、国際社会からも一定の評価を得てきた言葉である。だが、安倍首相は、これらの重要なキーワードを入れるか入れないかの話を『こまごまとした議論』と切って捨てたのである。中・韓はもとより、欧米諸国からも懸念の声があがりそうな無責任かつ傲慢な主張だ。
■積極的平和主義、集団的自衛権の危うさ露呈
昨年、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍氏は、会見で集団的自衛権の行使容認によって日本国民の生命・財産が今以上に守られると力説した。そう言った首相が、自ら世界中に火種をまき散らしているのが現状だ。その折の会見で、首相はこうも言っている。
内閣総理大臣である私は、いかなる事態にあっても国民の命を守る責任があります。想定外は許されないわけであります。国民の命と暮らしを守るため、現実に起こり得るあらゆる事態に対して切れ目ない対応を可能とするため、万全の備えをなしていくことが大切だろうと思います。
この発言が空虚なものであることを、今回の人質事件をめぐる政府の対応が如実に示している。イスラム国による蛮行に対する政府のあわてぶりを見る限り、一連の動きが首相の≪想定外≫だったことは疑う余地がない。邦人2人が拉致されている以上≪現実に起こり得るあらゆる事態≫を予見することは可能だったはず。しかし首相は、≪万全の備え≫はないまま、過激派に付け入るすきを与える『ISILと戦う周辺各国に2億ドル』という勇ましい発言を行ったのである。安倍の言う「積極的平和主義」や集団的自衛権が、いかに危険なものか、国民に知らせる機会にはなったが……。
少しは謙虚な姿勢を見せてもいいはずだが、首相に反省はない。人質救出の目途もたたぬ中、国営放送で戦争責任を否定するがごとき発言を行い、国際社会から猜疑の目で見られるような姿勢を露わにしたのである。日本に危機をもたらしているのは、まぎれもなく安倍晋三という国家主義者。集団的自衛権の行使を容認しようが憲法を変えようが、争いを招きよせていれば何の意味もあるまい。
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