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人質となった後藤健二さん。昨年の10月24日にシリアのアレッポで撮影された写真 Photo by Ahmed Muhammed Ali/Anadolu Agency/Getty Images)
イスラム国の邦人拘束・殺害事件をPRしないために、国会やメディアはどうふるまえばよいか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41871
2015年01月26日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■政府は事件に関する余計な国会答弁は不要
今回のように当事者と国民がインターネットで情報をやり取りすると、間に立つメディアの役割が問われる。
今週は国会がはじまる。会期は6月24日までの150日間だ。
イスラム国による邦人拘束・殺害事件が議論されるだろう。当初、身代金目的とも思われたが、湯川さんが殺害され、身代金ではなく、ヨルダンに拘束されている死刑囚との人質交換と急転回してきた。
24日の真夜中、ネット上で、後藤健二さんと見られる動画がアップされた(その動画はいろいろなサイトで掲載、削除されているが、例えば、https://www.youtube.com/watch?v=CfTLJ9sw0hE)。
日本のニュースサイトでは、御法度である死体とおぼしき写真(湯川さんとみられる斬首されたもの。ただしぼかし・黒塗り)を、後藤健二さんが手にしている。よく25日のテレビ各局は、そうしたネット上の動画をもとにしたニュースばかりであふれていた。
こうした国民の関心事は国会でも議論になるだろう。ただし、国会でいくら議論しても、解決にはまったく役立たないのは明らかだ。事件は日本の国会ではなく、中東でおきている。下手をすると、イスラム国によるテロのPRになりかねない。
まず、この事件への対応があるため、予算委員会などで閣僚の拘束はできるだけやめたほうがいい。そもそも、先進国の国会で関係のない閣僚までも会議出席を強いる国はまずない。関係者だけでしっかり議論すればいいのだ。
また、国会で質問を行うにあたっては、政府の水面下の交渉も含めて予断を許さない状況であるので、人質の安否についてのリスクも十分考慮して、質問すべきである。
一方、政府も余計な答弁は不用である。これまで、官邸を注として不用意な発言はあまりなかった。安倍首相は「人命第一。テロには屈しない」と繰り返しており、これは正しい。
ただし、21日の高村副総裁が「身代金を払うこともできない」と発言したのは不味い。身代金については言及しないで交渉余地を最大限に広くするというのが、日本政府としては正しいやり方だ。高村副総裁には、官邸から注意があっただろう。
これに関連して、1999年のキルギスで発生した日本人拉致事件について、鈴木宗男氏が300万ドルの身代金支払いを明かしたが、これは外交にあるまじき発言だ。さらに、元外交官も公言しているのは嘆かわしい。過去の話を暴露しても、今の問題には何も解決にならない。何より日本政府の交渉上の立場を弱くすだけだ。
■米軍の空爆を防ぐ目的
今回のイスラム国による邦人拘束・殺害事件では、インターネットをよく見ていれば、メディアの報道はそれ以上の情報がないことがわかる。
おそらく政府にとっても、同様であろう。もちろん、政府には独自の情報チャンネルがあるが、今回のような「国」ではない非合法組織が相手では、独自のチャネルが限られるにちがいない。
なお、本コラムの読者であれば、イスラム「国」というものの、本当の「国」ではないこともご存じだろう。しかも、イスラムと言っても、本来の穏健なイスラム教とは無縁なテロ集団だ。先日、テレビで一緒になったイスラム教徒から聞いたが、イスラム国のおかげでイスラム教がとても迷惑しており、ほとんどのイスラム教徒はイスラム国に反対であるといっていた。
ある政府関係者は、万が一米軍を使ったとしても救出不可能な状況であるとした上で、インターネットから一方的に情報が出され、しかも、インターネット特有な話であるが、ガセ情報も多く、正確な情報を選りすぐるだけでも困難だといっていた。さらに、こうした事態になると、自薦他薦の仲介者を名乗り出る人がたくさん現れるので、その整理すら大仕事であるようだ。
ただし、その人は、フランスでテロ事件があったものの、世界的に見てテロの脅威が増加している状況ではなく、日本にいていたずらに恐怖を煽る必要もないと冷静だった。たしかに、今回の事件は、中東の限られたイスラム国の支配地域(九州と四国を合わせた程度の広さ)の中での出来事であり、その地域では日常茶飯事のことで、その対象になったのが日本人であっただけだ。
しかも、米軍等の空爆によって、イスラム国の支配地域内の石油施設は打撃を受けている。それに最近の石油価格の下落によって、テロ・ビジネスを行うイスラム国の収入源は打撃を受けているのは確かだ。
イスラム国による今回の事件は、テロ・ビジネスを行うイスラム国のPRとみることができる。それはビジネスを行うためであるが、さしあたり、米軍等の空爆を押さえることが目的だろう。
こう考えると、当初身代金目的とされたのも合点がいく。さらに、ヨルダンに拘束されている死刑囚との人質交換と変わったのは納得だ。
つまり、この死刑囚は、ヨルダン空軍のパイロットで空爆にしたが捕虜となったヨルダン兵と人質交換がヨルダン内で話題になっている。後藤さんとの人質交換になれば、当然、捕虜となったヨルダン兵にまで話が及んで、空爆は一時中断する可能性がある。
■イスラム国のインターネット戦略
日本政府にとって、相手は目に見えないで、インターネットから一方的に通告されていたが、ヨルダンの死刑囚との人質交換という話がでて、幾分か視界が開けただろう。もっとも、救出の可能性は依然として低いが、身代金要求よりも、わずかながらマシというレベルであることには変わりない。
ただ、事態がどうなるにしても、ヨルダンとの関係は強化されるはずで、日本政府にとって悪い方向ではない。身代金要求に屈するのではなくヨルダン支援という形で、日本の経済力を生かせる可能性もないわけではない。
イスラム国のPRのもう一つの目的は、イスラム国での兵士の調達だ。そのために、イスラム国は残忍な事件を起こしてPRしている。あのような残虐な映像がPRになるはずないと、普通の人は思うが、ごくまれにその残忍さに興味を持つ者もいる。多くのメディアで事件が多く報じられるほどに、感化される人もでてくる。
メディアの影響は無視できない。インターネットの中で、自ら興味をもって調べるのと違って、メディアから受動的に情報が入ってくるのは、ある意味でおそろしいと思う。特に、被害者の親族を取材するのはどうだろうか。今回の事件に限らず、被害者の親族へ取材はあまりに場違いのことが多い。
今回でも、後藤さんの母親の記者会見には、本人からの申し出だろうが、いろいろな意味で驚いた。息子の拘束とは無関係な原子力の話もあって呆れた人もいたが、息子のことで気が動転して支離滅裂なことをいったのかもしれない。(気になる人は、https://www.youtube.com/watch?v=b2D9VYT8q-A)。ただ、背景はどうあれ、日本政府に邦人保護の義務があるのはいうまでもない。
いずれにしても、今回の事件のように、イスラム国がインターネットを戦略的に使ってくるときには、受け手の政府、メディア、国民は冷静に受け止めなければいけない。
メディアがインターネット以上の情報がなく、単に相手の煽りを増幅しがちなので、国民はインターネットだけを冷静にみているだけがいいのかもしれない。もちろん、インターネットでは多くの情報はガセであることを十分に理解しつつ接する必要があるのはいうまでもない。
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