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屈しない人
[古森義久]【日本外交がテロの原因と断じる愚】〜テロに屈すればテロは広がる〜
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150125-00010002-jindepth-int
Japan In-depth 1月25日(日)19時0分配信 古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
イスラム過激派の国際テロ組織「イスラム国」が日本人2人を人質に取り、殺害すると脅迫したうえで1人を殺したとされる事件が日本を揺さぶっている。
だが日本国内の反応をみると、一部にはこの事件の残虐な犯罪性を直視せずに、逆に結果としてテロ組織の要求に沿うことを求める声が出てきた。この思考こそまさにテロリスト側の目指す目的であり、さらなるテロを助長することを銘記すべきだろう。
イスラム国が日本人の湯川遥菜、後藤健二両氏を人質とし、日本政府に2億ドルの身代金を要求した事件では、もちろん人命への配慮が重視されるべきである。まして湯川氏が殺害されたとすれば、同情のきわみであると同時に、イスラム国の卑劣な残虐性への怒りを改めて感じさせられる。
しかしながら、このテロ組織の残忍で冷酷な犯罪行為への糾弾は日本国内ではそれほどは目立たない。湯川、後藤両氏の自己責任を追及する声も大手メディアではほとんど表明されない。危険とわかっている地域に日本政府の警告を無視する形で勝手に入った個人のために、なぜ日本の国民や国家の全体が犠牲を払わされるのか、という問いがないのだ。
その一方、日本政府に身代金を払えという声も日本国内ではまず聞かれない。このへんは国民の多数がテロには屈するべきではない、という基本を受け入れているのだろう。
しかし気になるのは、今回のテロが起きたこと自体に日本側の非があるとするような主張である。たとえば維新の党の江田憲司代表は「野放図に自衛隊を出して米軍や他国軍と協力すると、日本人も日常的にテロに直面することになる」と述べた。日本の外交や安保の政策がテロを招いたとする示唆である。
他にも中東歴訪中の安倍晋三首相が「テロと戦う中東諸国での難民救済などのために2億ドルを供与する」と言明したことがイスラム国を刺激して、今回のテロ事件を起こしたのだとして安倍首相を批判する向きもある。テロ組織のテロ行為よりも日本側の政策に悪い原因があるとする断定である。
しかしこの種の日本側に非を帰する自虐的な思考はテロの本質を理解せず、テロをかえって助長する主張だといえる。国際テロとは「特定国家の政策を無法な暴力行為による威嚇や脅迫により不当に変えようとする行動で、民間人一般への殺害や破壊で恐怖を与え、政府を動かそうとする活動」である。
そもそも現代の法治国家群にとっては許し難い犯罪行為なのだ。その犯罪行為の目的をこちらから進んで満たし、テロ組織の主張に服従することは、こちら側の法治の枠組みを犯すこととなる。テロの効用を認めることにも通じる。
「テロ組織とはとにかく戦わない」「テロ組織の主張に従う」「テロ組織が反対することはしない」――もしこうなれば、もうテロ組織への屈服である。江田氏の言明などはテロ組織のいやがることは一切せず、テロ組織と戦う側にもつくな、というのだから、テロへ組織への同調、あるいは服従となってしまう。
江田氏のような姿勢はテロ組織の命令に従えば、テロがなくなる、とも総括しているようだ。だがテロ組織はテロによる自分たちの目的が一部でも達成されたとなると、まずまずその活動を高め、ますますその目的達成に力を入れることになる。テロの効用を発揮したことになるからだ。テロとは一切、戦わないと言明する現在の日本国も実はテロリスト側からみてのテロの効用を証明し、助長していることになってしまうのだ。
テロ組織はテロには屈しないことが確実な相手は決して標的にはしない、という基本の現実を再度、認識しておこう。
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