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2015/01/21 2人の邦人の命を救うため、イスラム国を挑発した張本人、安倍首相が「辞任」することを提案〜岩上安身による元内閣官房副長官補・柳澤協二氏緊急インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/226466
1/21 20:10 IWJ Independent Web Journal
72時間の猶予が、刻一刻と迫る。
イスラム組織「イスラム国」が1月20日、72時間以内に日本政府が2億ドルを支払わなければ、人質の邦人2人を殺害すると予告した動画を公開したのを受け、岩上安身は1月21日(水)、元内閣官房副長官補・柳澤協二氏に緊急インタビューした。
安倍首相がイスラム国と対峙する周辺国に約束した2億ドルの中東支援を今更キャンセルすることはできず、かと言ってイスラム国との交渉のパイプもない。
進むことも退くこともできない状況下で、唯一、人質の命を救う手段があるとしたら、イスラム国に対する対決姿勢を表明した安倍首相自身が辞任することで、人質の命と引き換えにすることだと柳澤氏は提案した。
以下、インタビューの模様を掲載する。
記事目次
・「裏でネゴができるのであれば、日本政府はとっくにやっている…」
・六芒星と日章旗が立ち並ぶ部屋で会見した安倍首相――「日本政府のやり方がまずかった」
・人道支援でありながら、わざわざ「テロとの闘い」という言葉を使う日本政府
・アメリカ以外の他の国にどう伝わるかを考えていない日本の政治家
・「外征が可能な軍事国家になろうとしていることの現れ」
・集団的自衛権でイスラム国と戦う日が来るのか否か――岐路に立つ日本
・メッセージを出した張本人、安倍首相の辞任というシナリオ
日時 2015年1月21日(水) 12:00〜
■「裏でネゴができるのであれば、日本政府はとっくにやっている…」
岩上安身(以下、岩上)「これまで、『人質を処刑する』といえば必ず断行してきたイスラム国ですが、今回は、各国の人質にしてきたのと同じ作法と言えます。イスラム世界は親日的だから、欧米に対する対応とは違い、“なあなあで”済ませられるのではという思惑もあったのですが」
柳澤協二氏(以下、柳澤・敬称略)「“なあなあ”では済まないと思いますね。(海外の人質には)釈放された人もいますが、お金でネゴ(交渉)をして、ということがあります。2004年、高遠菜穂子氏がファルージャで拘束されていましたが、それはまだ、ネゴができる相手でした。
イスラム国というのは、映像を発信し、『イスラム国に敵対すればこうなる』というメッセージ戦をやっています。裏でネゴができるのであれば、日本政府はとっくにやっているのでしょう。金額だってそこそこで折り合いをつけて、という可能性もあったはずです」
岩上「ネゴはできなかったのでしょうか」
柳澤「ルートをもっていないのでしょうね。アフガニスタンのタリバンに頼むというルートくらいしかないのでしょうけれど」
岩上「イスラム国と連絡をとれる唯一の日本人、イスラム法学者・中田考氏が危険人物扱いされており、中田氏をパイプ役として使おうか、という考えさえなかったようですね。ちょっと惜しくはないでしょうか」
柳澤「フランスなど、国内にイスラム教徒がいる国では、いくらでもルートはあるのですが、日本はいかにもナイーブです。逆に関わりがないということが日本の利点だったはず。かたや『シリア空爆を支援する』という表明をし、逆向きのメッセージを出しています」
■六芒星と日章旗が立ち並ぶ部屋で会見した安倍首相――「日本政府のやり方がまずかった」
岩上「すべて去年(2014年)からの持ち越し。日本の特定秘密保護法施行、集団的自衛権の行使容認、武器輸出を活発に行うということが、各国に知れ渡っています。他方、イスラム国に『テロは許されない』と言い、イスラム国を怒らせるかたちで、『テロとの闘い』を公言しました」
柳澤「悪いのは連中に決まっていますが、後藤さんが拘束されて2ヶ月近い時間があったのに、日本は何も手を打っていませんでした。現地の実情を取材しているジャーナリストは政府としても尊重すべきで、言論の自由を認めるべきです。かたや自己責任論が出ています。
総理が中東で元気のいいことを言ったのは、この2人のことが頭にはなかったのでしょうね」
岩上「エジプト、ヨルダンなどを安倍首相は歴訪して、『テロとの闘いに賛同する』などと、イスラム国への戦いを支持すると明言しています。
六芒星と日章旗が立ち並ぶ部屋で会見した安倍首相に、その場でテロの報道が伝えられるという、劇場的な事態です」
柳澤「まさにメッセージ戦。イスラム国側は、この2人の日本人をどう使おうかと考えていたのでしょう。
こういうことがなければ、もっと常識的な金額で、どこかで話がついていたでしょう。『テロとの闘い』を標榜する安倍首相のメッセージに対応して、彼らの2億ドルという金額、メッセージが戦術として出てきたのではないでしょうか。
安倍首相の会見という『絵』に対して、人質を使った脅迫という『絵』を打ち出してきました。同じ絵柄であり、そういうことを意識したのでしょうね。悪いのはイスラム国であることは間違いないが、今回は日本政府のやり方がまずかったのでしょう」
■人道支援でありながら、わざわざ「テロとの闘い」という言葉を使う日本政府
岩上「18日、ヨルダンでのスピーチでは、冒頭から『今世界で起きている過激主義を止めなければならない』と述べ、『ISILとの闘いにおいて最前線に立ち続けているヨルダンの取り組みに敬意を表する』などと語りました。
一方でヨルダンのアブドッラー2世国王は、『日本によるイラク、シリア及び周辺国に対する人道支援を含むテロとの闘いを高く評価する』と語り、人道支援でありながら、日本はテロと闘っているという認識を持っていることが分かります」
柳澤「日本がやろうとしていることは人道支援なのだから、そういうふうに言えばいいのに、わざわざ『テロとの闘い』という言葉を使っています。小泉首相も『テロとの闘い』という言葉を使ったが、最初から人道後方支援と言い続けていました」
なぜ、安倍首相はタカ派的姿勢を見せるのでしょうか。中身と違うことをタカ派的に表現するというのは馬鹿げていると思います。相手の出方を読みながらやらなければならないのに」
岩上「ISILとの戦い、と言ってしまえば、テロ行為との戦いではなく、殲滅を目指した、宣戦布告ですね」
柳澤「イスラム国はそう思っているのでしょう。宣戦布告。彼ら自身、『安倍首相が俺たちに何の恨みがあるんだ』と考えているでしょう。
人道的な危機に真摯に対応し、困っている人を助けますと言えば、イスラム過激派との接点も出てくるのでしょう。逆のことを目指している。なぜ、わざわざ国会が始まるこの時期に、中東に外遊するのでしょう。やはりイスラム国のことがあってのこと」
■アメリカ以外の他の国にどう伝わるかを考えていない日本の政治家
岩上「板垣雄三・東京大学名誉教授は、私の電話取材に対して、開口一番『はめられたね』と言いました。『政治的ミス』だね、とも。イスラエルにとって、まんまとパートナーに引きずり込むことができました。日本はイスラムとイスラエルとの対立の構図に巻き込まれたのでしょう」
柳澤「イスラエルは、したたかな国です。とは言え、乗せられた奴が悪い、馬鹿なんです。日本の外交は『アメリカの目で世界を見る』ということ。独自の目で中東を見るということができていれば、もっと慎重に対応できていたのではないでしょうか」
岩上「一つ目の疑問は、パリ銃撃事件以来、イスラムフォビアが湧き上がる一方、それに対するデモや暴動がイスラム世界で起こっています。まるで文明の衝突のような空気が醸造されています。各国首脳が集まったパリでのデモの時、安倍首相はゴルフしていました」
柳澤「まずかったな、と安倍首相も思っているのかもしれません。または、オバマも行かないんだったら(自分も行かない)、と思ったのかもしれません。安倍首相の、テロとの、中東との距離感とはそんなものなのでしょう。
後に、言論機関に対するテロを許さないと言ったとはいえ、自分が(パリに)行って、世界と一緒に戦うという思いが必ずしもあったわけではないのでしょう。日本の政治家は国内にどう伝わるかを考え、アメリカ以外の他の国にどう伝わるかを考えていない。
防衛大臣も外務大臣も日本にいない。誰か真っ先に帰ってこいよ、誰か現地に貼り付けよ、と思います。まともな、充分な情報がない、そんな中、72時間でなにができるのか、考えなければならない。安倍首相の三人のタカ派的閣僚がいない。
■「外征が可能な軍事国家になろうとしていることの現れ」
柳澤「シリアの人道的難民支援、フィリピンの災害支援をして『これが積極的平和主義です』と去年(2014年)、安倍首相は言っています。今の安倍首相は、まさに『テロとの闘い』を積極的平和主義と言っている。一年前の積極的平和主義とは内容が違ってきています。
外征が可能な軍事国家になろうとしているということの現れではないのでしょうか」
岩上「もう一つの疑問は、演説のなかでイスラム国を名指ししていながら、人道支援をする、と言っていることです。
(これまでの人道支援と)中身は同じなのに、『イスラム国との闘い』と言う。でも、問題が起きたら『人道支援です』と言う。これはリーダーの言葉として良くない。『テロに屈します』とも、『お金を払う』とも言えない。
そして、『(人道支援の)2億ドルをキャンセルする』とも言えない。『テロに屈しない』と言うのはいいが、殺される人にとってはどうなのでしょう。また、相手のイスラム国にとっては、どういうメッセージに聞こえるのでしょうか。
これからも引き続き、日本はイスラム国にとって、敵対国家として、誘拐、テロ行為の標的になるわけですね。これまで、在外邦人が海外にたくさんいるなか、ジャーナリストも含め、日本人は標的にしないということがあったのに」
柳澤「私が恐れていたのはそこです。日本が軍事的プレゼンスを示せば、そういうことが起こると懸念していました。海外でビジネス、勉強、ボランティアをしている人たちは、日本のソフトパワーにとって貴重な人たちなのに。その人たちを、少なくとも政府が危険にさらすことをしてはならないということです」
(IWJ・原佑介)
■集団的自衛権でイスラム国と戦う日が来るのか否か――岐路に立つ日本
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