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このほど出版された「朝日新聞 日本型組織の崩壊」(文春新書)。著者は「朝日新聞記者有志」だとされている
2015/1/19 19:50
http://www.j-cast.com/2015/01/19225608.html
いわゆる従軍慰安婦に関連する「吉田証言」や、東京電力福島第1原発をめぐる「吉田調書」の誤報で、朝日新聞を批判していた週刊誌の有力な「ネタ元」が朝日新聞社内からの情報提供だ。過去にも朝日新聞ではトラブルが起きると内情が外部に漏れるという事態を繰り返してきたが、今回の事件では「記者有志」が内情を書籍にまとめて出版するに至った。版元は、朝日新聞批判の急先鋒、週刊文春を発行している文芸春秋だ。
著書では皮肉にも「情報漏洩は、通常、崩壊しつつある組織で起こる」と指摘しており、朝日新聞が「崩壊しつつある組織」だということをここでも裏付けている。
朝日の病巣は「イデオロギーではなく、官僚的な企業構造にこそ隠されている」
書籍のタイトルは、「朝日新聞 日本型組織の崩壊」(文春新書)。2015年1月中旬に発売され、著者は「朝日新聞記者有志」だとされている。現役の朝日新聞社員複数名を中心に構成されているといい、著者プロフィールの欄には、
「社内での経歴、所属部署、『カースト』、政治的スタンスなどのバックグラウンドは全く異なるが、『朝日新聞社の病巣はイデオロギーではなく、官僚的な企業構造にこそ隠されている』という点では一致した意見をもつ」
とある。
書籍では、朝日新聞の官僚的体質や権力闘争の解説に加え、吉田調書や吉田証言の誤報が生まれた経緯にも焦点を当てている。その内容は、大筋では14年11月に報道と人権委員会(PRC)が出した見解や14年12月に第三者委員会がまとめた報告とほぼ同じだが、書籍に盛り込まれた現場の声が生々しい。
一連の問題では、14年5月20日に「吉田調書」の初報が掲載され、直後に批判が噴出。
この問題が片付かないままに8月上旬に「吉田証言」が「虚偽」だったとする検証記事が掲載されたが、謝罪がなかったことで「火に油」となった。この検証記事は、「吉田調書」のチームにも相当な衝撃を与えたようだ。
「この記事が出ることは、社員のほとんどは事前に知らされておらず、驚愕した。吉田調書記事の取材班は、もっと驚いた。彼らの同僚によると、『なんでこんなタイミングでやるんだ!』と憤慨していたという」
特報部部長「おわび」方針にデスクと担当記者猛反発
9月初旬には、検証記事に謝罪がなかったことを批判した池上彰氏のコラムの掲載を見合わせていたことが発覚。状況は厳しさを増した。「吉田調書」原稿を出稿した特別報道部(特報部)は続報で反論を試みたが、追加取材しても「命令違反」を裏付ける現場の声を盛り込むことができなかったことが響き、9月2日に行われた筆頭デスクの会議でも掲載は認められなかった。
この「現場の声」抜きに記事が書かれたことについては、書籍でも「新聞記者がもっともやってはならないことだった」と厳しく批判している。
これを受け、特報部の市川誠一部長(当時)は担当デスクと担当記者2人を呼び、「『吉田調書記事の誤報を認めておわびする』と伝えた」という。この判断は、3人にとっては到底受け入れられないものだった。PRCは3人にも聞き取りをしているが、「見解」にはこの言い分は反映されていなかった。
「だが3人は猛反発した、3人にとって担当の部長が自ら白旗をあげるのは『裏切り』以外の何ものでもなかった。3人は『誤報など認める必要はない』と繰り返し訴えた」
9月に入ると社内のさまざまな部から人を集めた「検証班」が結成され、記事の内容を改めて点検したところ、「まるで足元の床が抜けるような事実」も明らかになった。9月11日に記者会見して取り消すことになった5月20日の第1報のほかに「特ダネ」として出稿した吉田調書関連の2本の記事は、すでに他紙が報じていたというのだ。
この本の通りなら、吉田調書報道は「誤報」と「既報」の組み合わせだったことになり、その価値に改めて疑問符が付くことになりそうだ。
「20、30の会議の中身が全部漏れている。相当な屈辱感」
著書では、社内の情報が他社に漏れることについてもかなりのスペースを割いて論じている。例えばこんな具合だ。
「市川速水GMは14年10月、大阪本社で行われた『社員集会』で、集まった社員たちを前にして、こんな衝撃的な事実を吐露した。
『今回は私の身の回りでも、20、30の会議の中身が全部漏れている。相当な屈辱感を感じている』
なぜこのような情報漏洩が絶えないのか?それは敵対的なメディアを使ってでも社内のライバルを叩き、自分の立場を有利にしたい幹部がいつも現れるからである」
一連の事件で特に問題視されているのが、池上コラム問題が朝日新聞側から週刊誌にリークされたことだ。
作家の佐藤優氏は14年9月16日に産経新聞のウェブサイトで、01年に一部の外務官僚が田中真紀子外相(当時)攻撃のために秘密情報をリークしたことを引き合いに、
「秘密を守ることができない組織に、リスクを冒して機微に触れる情報を伝える人はいない」
「池上事件で露呈したように編集サイドから、書き手との間で信頼関係に基づいて秘密裏に打ち合わせている事柄が外部に流出する状態では、朝日新聞と本気で仕事をする書き手がいなくなる」
と指摘している。
書籍ではこれを受ける形で、朝日新聞についても「組織としてもはや崩壊していると認めざるを得ない」と結論付けた。
「こうした形の情報漏洩は、通常、崩壊しつつある組織で起こる。組織内の秩序と統治が失われ、モラルハザードが蔓延しているからだ。それはわれわれ朝日新聞記者たちが、スキャンダルに揺れる政党や企業などを取材する現場で嫌というほど見てきた真実だ。佐藤氏が指摘する01年頃の外務省も、いわゆる田中真紀子問題と機密費問題で崩壊しつつあった。ということは、朝日新聞も組織としてもはや崩壊していると認めざるを得ない」
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