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大野元裕議員はシリアやヨルダンの日本大使館で勤務経験を持つ/(C)日刊ゲンダイ
注目の人 直撃インタビュー 大野元裕氏が深刻懸念 「日本人も日本企業もテロの標的に」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156460
2015年1月16日 日刊ゲンダイ
■経済が悪化するとナショナリズムが台頭する
世界中を震撼させた仏週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件。犠牲者は17人に及び、欧州で反イスラムデモが拡大するなど、事態は「憎悪の連鎖」という最悪の展開になりつつある。イラクやシリア、ヨルダンの日本大使館に勤務経験がある中東問題の専門家・大野元裕参院議員は事態をどう見ているのか。
――事件の第一報に接したとき、瞬間的にどう思われましたか?
ついに来たか、と思いました。というのも、イスラム国の問題やシリアの内戦状況、いまや、シリアは人口の半分以上が難民で、ヨーロッパにも流れているんですが、そうした中東の不安定がヨーロッパの安定も脅かしているわけです。事件が起こる懸念はありましたからね。
――今度の事件のきっかけはフランスのイスラム国への空爆や、週刊紙の表紙になった風刺絵なのでしょうが、結局、米国が起こした戦争が文明の衝突を招き、事態は収拾がつかなくなっている。テロのターゲットは拡大する一方だし、今度の事件はテロリストの重装備にも驚かされました。世界はとんでもない事態に突入しているんじゃないですか?
昨年末、ワシントン・ポスト紙が「米国は敵対した過激派勢力をただひとつも壊滅させたことがない」と書いていましたが、その通りだと思います。テロ組織を壊滅させるには社会から解決しなければいけないのに、力で抑え込もうとするだけでは、逆恨みの連鎖を生むだけです。今後は物理的なテロだけでなく、イスラム国によるサイバー攻撃など、手法は多様化していくと思います。それに対して、ヨーロッパでは反イスラムデモが拡大するなど、排斥運動が起こっている。多様性を認めない未成熟な社会の中、どこの国も経済が悪化している。経済が悪化すると、政治家たちはナショナリズムをあおっていく。
――ますます世界はカオス化していく?
そうです。親の世代からヨーロッパに来ている人は、宗教や肌の色で差別されてきた。そういう人々がモスクやコミュニティーの中で、悪い意味でつながり合うことがある。そんな中、アラブの春以降、トルコ経由などで逃げてきた難民が急増し、もともといる人々を頼り、最下層に入ってきた。経済がいいときは労働力になるが、悪くなると彼らがフランス人の雇用を脅かすので、ますます対立を生むのです。そこにイスラム国やアルカイダがさまざまなルートを使って、入り込んできている。事件は単なる言論テロではなくて、その裏には複数の背景があることを読み間違えてはいけません。
――具体的には、どうやってアルカイダらは入り込んでくるんですか?
モスクとかコミュニティーの中で、自然に問題意識に目覚め、自発的にアルカイダと接触を持つ人もいる。彼らはアルカイダから指示があるまで、勢力拡大に努める。もうひとつ、アルカイダのメンバーが意図的にヨーロッパに入り込んで、洗脳するケースもあります。
■米国と集団的自衛権を行使する危うさ
大野議員は「日本ならではのやり方で中東と向かい合うべき」と説く/(C)日刊ゲンダイ
――今度の事件で新聞社を襲撃した兄弟の弟、シェリフ・クアシ容疑者はイエメンのアルカイダから送り込まれたという報道がありました。
米国の情報を見ていると、兄のサイド・クアシ容疑者がイエメンでアンワル・アウラキと会ったというのがありましたね。アウラキはアルカイダの幹部で、米国がイエメンで月に何十回も行っている無人機による空爆のターゲットです。普通は地下に潜っていて、表に出ない。アウラキがわざわざ出てきて会ったとなると、かなり組織的な背景を感じます。(編集部注・アラビア半島のアルカイダ=AQAPが14日、犯行声明)
――そうなると、今後も大規模なテロが続出しますか?
そう思いますが、規模と手法は違うと思います。容疑者が立てこもった工場には弾倉したロケットランチャーが残されていましたが、同じことがロンドンでできるかというと、想像しにくい。
――フランスは緩いんですか?
フランスやスペインは緩いとされていますね。武器の供給ルートの解明はこれからでしょうが、中東から流れたのではなく、リビアの内戦や既存のマフィアから調達した可能性もあると思います。
――日本はどうなんでしょうか。集団的自衛権を行使し、米国と一緒に戦争ができる国になれば当然、テロのターゲットになるんじゃないか。あるいは中東との戦争に巻き込まれていくのではないか。多くの国民が懸念していると思います。
日本国内でイスラム過激派がテロを起こす可能性は、ヨーロッパと比べると相対的に低いのは間違いありません。武器の入手が困難だし、協力者の洗脳も難しいからですが、国外で日本企業、あるいは個人がターゲットになる可能性は当然、あろうかと思います。だからこそ、絶対に国会でやらなければいけないのが、日本は一体どこまでやるのかという、集団的自衛権行使の歯止めの問題なんです。国会答弁を聞いていても、安倍政権は明確に答えていない。これでは歯止めがなくなってしまう。戦後、集団的自衛権をもっとも多く行使してきたのは米国ですが、集団的自衛権以上に攻撃的であったことが多かった。日本がそれを中東でやったら、平和主義を貫き、血を流してこなかった日本の“神話”が崩れていくことになります。
――安倍首相は16日からエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪問します。各首脳らと会談して、「イスラム国」への対応で連携すると言っていますが、相手にされますかね?
経済的な上澄みをすくう外交に見えますね。日本は中東問題全体を解決する力はないのですから、多少のお金をバラまくよりも選択と集中を考えるべきです。どこの国、地域を大切にするのか、戦略的に明確にすべきです。また、シリアの人口の半分以上が難民なのですから、もう人道支援をしようにもできないレベルなんですよ。社会に手を突っ込んで、腰を据えて、長いスパンで考えなければいけない時期に来ていると思います。日本人は相対的にイスラムの人種や宗教に対する差別は低いわけですから、日本ならではのやり方があるはずです。
――世界的にナショナリズムが台頭し、きな臭さが充満する中、日本が安倍首相であるというのも、非常に危うさを感じますね。
経済が落ちてくる国ほどナショナリズムが台頭する。日本も同じですね。中東側から見ると、かつてイランのホメイニ師が、「悪魔の詩」を書いたイギリスの作家、サルマン・ラシュディを殺害してもいいと発言した際、ものすごい批判が沸き起こった。ほとんどの法学者が暗殺はリンチである、と否定したのにいま再び、その言い分が感情的に正当化されようとしていて、テロリストを勢いづかせているようなところがある。双方が先鋭化してしまう恐れがあり、出口が見えなくなっています。
▽おおの・もとひろ 1963年生まれ。慶大法卒。在ヨルダン日本大使館書記官、在シリア日本大使館書記官などを経て中東調査会上席研究員。テレビなどで大活躍する。2010年、民主党から参院選に立候補(埼玉選挙区)し、当選。元防衛政務官。次の内閣防衛相。
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