http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/796.html
Tweet |
宇宙は事実上、エントロピーの一定の状態で進化する/ユベール・リーヴズ
第二部 生の欲動
第五章 宇宙のエントロピー
≪宇宙のエントロピーを増大させる≫
熱的嗜(し)眠状態は、未来にではなく遠い過去に位置する。それが宇宙背景放射」によって伝えられた世界のイメージである。しかも宇宙の歴史は、強力に組織化された原初の秩序が変質してゆく歴史ではない。それどころか、天文学、物理学、化学、生物学が私たちに誇示するのは、時間の経過にともなった複雑性のピラミッドの構築なのである。
このような物質の組織化の増大と、熱力学の主張とは、どのように折り合いがつけられるのだろうか。かたや、予期される無秩序への自発的な傾向と、かたや、より複雑な階梯への緩やかな上昇との間には、際立ったコントラストが存在している。
そのコントラストに、神の摂理の介入の証拠を、すなわち他処から到来する「最後の一押し」を見ようとする者たちもいる。だが今日では、そのような「奇跡」は余分なものと思われる。私は以下の頁で、物質がすでに宇宙の最初期から、複雑さへの上昇を開始し継続するのに必要なすべての情報を持っていたことを示そうと思う。
だが、「なぜ物質はそうした情報を含んでいたのか」と問われれば、科学は(いまだ)その答えを与えてはくれないのである。
≪宇宙のエントロピー≫
宇宙のエントロピーという表現に意味を与えることはできるのか。
私たち宇宙が無限の広がりを持っているとしても(事実そう思われるのだが)、もし事を正確に運ぶなら、宇宙のエントロピーという表現にも厳密で利用可能な意味を与えることが可能でるし、それについて二つの異なった解釈を提示することさえ可能である。
―第一の解釈
第一の定義は、極限の体積という観念を導入して、宇宙膨張の事実を重視する考え方である。…
体積はすさまじく増えてゆく。宇宙背景放射は弱まりながら冷えてゆく。これら二つの効果を足し合わせた明白な結果として、極限的な体積における宇宙背景放射の光子の数は一定である。言い換えれば、極限的な体積当たりの宇宙のエントロピー(大部分は宇宙背景放射の光子によって担われるは、(事実上)時間とともに変化しない。宇宙の膨張はエントロピーの一定の現象であって、エントロピーを生み出すことはないのである。
だから先にこう言っておいたのだ。宇宙は事実上、エントロピーの一定の状態で進化すると。
―第二の解釈
自然界の他の粒子(陽子、電子など)に比べて、光の光子はかなり特別な振舞いと、独特の存在様式を持っている。電気を点けると、それまでには存在しなかった光子を生み出している。それは壁に当たると吸収され消滅し、もはや存在しない。
逆に陽子や電子は、例外的な状況を除いては永遠に自己同一性を保ち続ける。原子や分子に結合され、また分離しても、それらの数は一定のままである。
自然が宇宙のエントロピーを増大させ、それと並行して複雑性のピラミッドの階梯をよじ登ってゆくのは、(ほとんどどつねに)光子産出おいう現象によっている。
今度は、光子のはかなさに対する核子(陽子、中性子)の永続性を用いて、宇宙のエントロピーの別の定義を示すことにしよう。
宇宙には、陽子、中性子各一に対しで約10憶の光子があると算定されている。…そしてこの数が、宇宙のエントロピーを算出する別の方法として、核子ごとの宇宙のエントロピーを測る尺度となる。
宇宙背放射放出以来、この数は核子一個につき、およそ光子百万個の割合で増えてきた。ふたたび千分の一である。…このあらたな計算によって得られる結論は先のものに等しい。
つまり宇宙のエントロピーは、私たちに察知可能な最も遠い過去以来、事実上変化していないのである。
≪エントロピーと重力≫
星はスープと違って逆の行動を取る。星は、熱を失って熱くなり、熱を獲得して冷たくなるのである。
星が宇宙空間で惜しみなく消費する熱エネルギーのために、星の内部温度はその一生のあいだ、段階を追うごとに上昇してゆく。ガス星雲という形で誕生したときには冷たかった星が、しだいに熱くなり、死の直前には数百万度から数十億度に達するのである。
こうした特別な熱的振る舞いのために、星は宇宙における温度差出現の大きな担い手となっている。ストーブと太陽おでは、なぜこうした熱に対する反応が異なるのだろうか。その責任は重力にある。
ストーブも星も、宇宙のエントロピーを増大させるように振る舞う。しかしストーブは冷えることでエントロピーを増やし、星は熱くなることでエントロピーを増やす。星が輝くということは、エントロピーを持った光子を生み出し、それを宇宙空間に放出することを意味するのである。
第四部 希望のノート
第十二章 宇宙に対する人間の視点
組織は「熱的死」によって、すなわち平衡状態の出現によってたえず脅かされている。だが実に幸運なことに、私たちの宇宙が特異な仕方で膨張を続けているおかげで、物質は「熱的死」という致命的な状態からますます遠ざかりつつある。私たちは猶予状態に置かれてはいるが、これはたえず延長されてゆく猶予状態なのであり、革新や創造にますます重要な役割りを与えるような猶予
状態なのである。
【出展】
ユベール・リーヴズ著『宇宙・エネルギー・組織―宇宙に意味はあるか』国文社‘92年
▲上へ ★阿修羅♪ > 環境・自然・天文板6掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 環境・自然・天文板6掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。