http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/593.html
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今回発明した光量子コンピュータ方式。一列に連なった多数の光パルスが1ブロックの量子テレポーテーション回路を何度もループする構造となっている。ループ内で光パルスを周回させておき、1個の量子テレポーテーション回路の機能を切り替えながら繰り返し用いることで計算が実行できる 出典:東京大学
■1つの量子テレポーテション回路を繰り返し利用
東京大学工学系研究科教授の古澤明氏と同助教の武田俊太郎氏は2017年9月22日、大規模な汎用量子コンピュータを実現する方法として、1つの量子テレポーテーション回路を無制限に繰り返し利用するループ構造の光回路を用いる方式を発明したと発表した。これまで量子コンピュータの大規模化には多くの技術課題があったが、発明した方式は、量子計算の基本単位である量子テレポーテーション回路を1つしか使用しない最小規模の回路構成であり、「究極の大規模量子コンピュータ実現法」(古澤氏)とする。
【「実際の量子テレポーテーション装置」などその他の画像はこちらから】
現在のコンピュータは「0か、1か」で表されるビットという情報単位を用いるが、量子コンピュータは「0と1の重ね合わせ」で表される量子ビットという情報単位を用いる。0と1が同時並行で存在するような一種の中間状態である量子力学特有の「重ね合わせ」をうまく利用することで高い処理性能を実現できる。
なお、古澤氏らは、量子ビットを用いた量子コンピュータと呼ばれるものには2種類あるとする。1つは、量子アニーリングと呼ばれる組み合わせ最適化問題を解くもので、多数の量子ビットを集合体として制御するもの。量子アニーリング装置としては、カナダのD-Wave Systemsが2000量子ビットを扱う装置を開発、実用化している。もう1つの量子コンピュータは、1つ1つの量子ビットを個別に制御し、あらゆる計算を実行できる汎用の量子コンピュータとし、古澤氏らは、この汎用量子コンピュータの実現に向けて研究開発を進めている。
■大規模化が困難だった汎用量子コンピュータ
そうした中で古澤氏らは、量子テレポーテーションを用いた汎用量子コンピュータの実現を目指す。量子テレポーテーションとは、量子ビットの情報をそっくりそのまま別の場所に移動する通信手法で、この手法を少し改良することにより量子ビットに何らかの計算処理を施した上で、別の場所に移動できる。加減乗除のような基本的な計算の1ステップを行う量子テレポーテーション回路を1ブロックとして連ねれば、量子ビットにさまざまな計算処理を実行できるようになり、汎用量子コンピュータが実現できる。
汎用量子コンピュータの基本計算回路となる量子テレポーテーション回路については、2013年8月に古澤氏らが、光パルスで光量子ビットを転送する完全な量子テレポーテーションを行うことに成功している。また、古澤氏らは、量子テレポーテーションに不可欠な量子もつれ状態にある多数の光パルスを発生させることにも成功しており、2013年に1万6000個以上の光パルス、2016年には100万個の光パルスでの量子もつれ状態を観測している。
これまでの研究で、汎用量子コンピュータの実現に着実に近づいてきたが、現状、4.2×1.5mサイズに及ぶ1ブロック分の量子テレポーテーション回路を何ブロックも連ねて大規模化することは現実的ではなく、大規模化が困難という課題が存在した。古澤氏によると「数十量子ビットの計算が限界だった」とする。
■1つの量子テレポーテーション回路を繰り返し利用
今回、古澤氏と武田氏が発明したのは、従来のように量子テレポーテーション回路を空間的に並べるのではなく、時間的に一列に並べた光パルスを1ブロックの量子テレポーテーション回路で処理するもの。光ファイバーなどで光パルスを周回させるループを構成し、1つの量子テレポーテーション回路の機能を「ある時は乗算、ある時は除算」というように都度切り替えて、所望の処理を行うという方式である。
古澤氏は「アナログコンピュータに例えれば、量子テレポーテーション回路がオペアンプに相当する。アナログコンピュータはオペアンプの周辺回路を変えてさまざまな演算を行ったように、量子テレポーテーション回路の周辺をアドフォックに切り替えて処理を行うもの」と説明する。
この方式であれば、1個の量子テレポーテーション回路とループ構造だけで構成でき、最小限の光学部品だけで済む上、光パルスをループで周回させ続ければ、回数無制限で使用でき、どれほど大規模な計算でも実行できることになる。古澤氏は「100万個以上の量子ビットを何ステップも処理するような大規模な量子計算が実行できる」とする。
■汎用量子コンピュータ実現へ、課題は誤り訂正のみに
古澤氏は「今回の発明によって、量子コンピュータ実現の課題は、誤り訂正をどのように実現するかに絞られ、われわれは誤り訂正の問題に集中できるようになった」とする。汎用の光量子コンピュータの実現時期については「トランジスタ発明前に、コンピュータはいつ実現できるのかを問われているようなものであり、全く分からない」とした上で、「量子コンピュータ実現まであと20年ほどとすれば、今回の発明で5年ほど縮んで15年になったのではと思う」と今回の成果を評価した。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170922-00000050-it_eetimes-sci
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