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海の生態系脅かす微粒子
有害物質吸着、代替開発急ぐ
洗顔料や歯磨き粉などに含まれる「マイクロビーズ」と呼ぶ微粒子による海の汚染が懸念されている。こうした微粒子は有害物質を吸着しやすく、魚や鳥などがのみ込んで、海の生態系に影響を及ぼすおそれがあるからだ。欧米では、国や州政府が法律で使用を禁止する動きが出ており、日本でも業界団体が自主規制を呼びかけている。
「すぐに手を打たないと、海の中のマイクロビーズは増え続けてしまう」。東京農工大学の高田秀重教授は環境への影響をこう懸念する。高田教授らは2015年夏に東京湾で捕ったカタクチイワシ64匹の体内を調べたところ、8匹の内臓からマイクロビーズが出てきた。「私たちの予想よりも多かった」と驚く。
九州大学の磯辺篤彦教授らは東京湾や伊勢湾、瀬戸内海など25地点で目の細かい網を入れ、船で引いて海水を調べた。9地点でマイクロビーズが見つかった。磯辺教授は「実態はよくわからないが、マイクロビーズは各地で拡散しているようだ」と話す。
マイクロビーズは微細な球状の粒子で、レジ袋などに使うポリエチレンといった合成樹脂でできている。洗顔料や歯磨き粉では、汚れや古い角質などを取り除く目的で添加されており、直径は1ミリメートルに満たないものが多い。1本の洗顔料には数万個のマイクロビーズが入っているという。
マイクロビーズは洗顔や入浴などによって、生活排水と一緒に下水道に流れる。下水処理場でほとんどは回収されるが、大雨などで下水管があふれると川や海に流れ出てしまう。いったん海に出てしまうと、回収するのはほぼ不可能だ。細菌や紫外線に分解されるのに時間がかかるため、海中や海底に残り続ける。
マイクロビーズは植物プランクトンとほぼ同じ大きさで、多くの生き物がのみ込む。動物プランクトンや魚、エビ、貝、クジラ、海鳥などで見つかっている。スウェーデンのウプサラ大学の研究によると、マイクロビーズをエサと間違えて食べた稚魚は栄養不足で成長が遅く、動きが鈍くなり、外敵に食べられてしまいやすいという。
ポリエチレンそのものの毒性は高くないが、微粒子の表面は化学物質がなじみやすい。ポリ塩化ビフェニール(PCB)や古い農薬などの有害化学物質を吸着する。PCBを吸着したマイクロビーズを3カ月間メダカに食べさせたところ、肝機能が低下したという報告がある。食物連鎖で有害物質が濃縮されるおそれも指摘されている。
マイクロビーズを体内に蓄積した魚を人や鳥が食べても、ビーズそのものは体外に排せつされる。マイクロビーズを通じて魚が取り込んだ有害化学物質が健康に及ぼす影響について、東京農工大の高田教授は「よくわかっていない」と話す。
北極や南極でも見つかるなど、マイクロビーズはほぼ世界中の海に拡散している。今後も流出が増え続ければ、魚の体内に蓄積される有害化学物質の濃度が高まり、人体や野生動物への影響が無視できなくなる可能性がある。
海外では、洗顔料や洗浄料などに含まれるマイクロビーズの使用を規制する動きが出ている。因果関係ははっきりしないが、予防的に対応しようという考え方だ。
米国では、洗顔料などへの添加を段階的に禁止する法律が成立した。ニューヨーク州やカリフォルニア州などが独自に規制を導入している。欧州連合(EU)では、化粧品の業界団体が自主的な使用中止に動き出した。世界の動きを受け、日本化粧品工業連合会が昨年3月、約1100社の会員企業に対して、速やかに対応するよう呼びかけた。
日本の大手化粧品・日用品メーカーは洗顔料や洗浄料、歯磨き粉などについて、代替材料の開発を急いでいる。資生堂はセルロースなど天然成分でできた微粒子を採用し、18年度末までに全製品で切り替える方針だ。花王も16年末までに全製品で、代替材料に置き換えた。天然成分の微粒子は合成樹脂などでできたマイクロビーズに比べて、汚染物質を吸着しにくいとされる。
ただ、洗顔料などに使われているものに比べて、化粧品に含まれるマイクロビーズは0.001〜0.05ミリメートルと小さい。発色や感触をよくする目的などで使われており、植物を原料に作るバイオプラスチックや天然物で置き換えるのは難しいという。
化粧品に含まれる細かなマイクロビーズの人体や生態系への影響はさらにわかっていない。規制が必要かどうかも今のところ不明だ。
(藤井寛子)
[日経新聞2月5日朝刊P.23]
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