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フォウドウコの死体をのぞき込む雄のチンパンジー、マイク(左)とLX(右)。(PHOTOGRAPH COURTESY JILL PRUETZ)
<目撃>チンパンジーが元ボスを殺して共食い、研究者が報告
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170201-00010002-nknatiogeo-sctch
ナショナル ジオグラフィック日本版 2/1(水) 16:32配信
■地位を追われたボスは、なぜ群れに戻ったのか
それはあまりに凄惨な光景だった。ボスとして群れを率いていたチンパンジーが、かつての仲間たちに襲われて、体の一部を食いちぎられ、殺されたのだ。
【閲覧注意】元ボスのチンパンジーが殺された直後の様子をとらえた、貴重な映像
チンパンジーの争いが時に殺し合いに発展することは、研究者の間では認識されていた。10年以上調査されているチンパンジーの生息地ではすべて、死に至る争いが報告されている。しかし、同じ群れの中での殺し合いは極めて珍しい。
この事件は、1月27日付の霊長類学専門誌『International Journal of Primatology』で発表された。元ボスが殺された後の現場の様子を撮影した動画もある。チンパンジーが同じ群れの仲間を殺したという記録は、これを含めてわずか9例しかない。
「とても見ていられませんでした」と、報告書を共同執筆した米アイオワ州立大学の人類学者ジル・プルエッツ氏は語る。「その後3日間は事件のことが頭から離れませんでした。友人と喧嘩別れをしたような、いやな気分でした」
殺されたのは「フォウドウコ」と呼ばれる、ニシチンパンジー(Pan troglodytes verus)の雄だ。セネガル南東部のサバンナに位置する25平方キロほどのフォンゴリという地域で、2007年には30頭以上のの群れを率いていた。
しかし、群れの中で反乱が起こり、フォウドウコはフォンゴリの外れに追いやられてしまった。そして、それから5年の後、かつての子分たちの手によって殺されてしまうのだ。原因は、交尾相手をめぐる争いと考えられている。
「敵を殺すのは簡単に説明がつきますが、自分の仲間を殺すというのは理解に苦しみます。協調と対立との間には極めて微妙なバランスがあるのでしょう」と、チンパンジーの抗争について研究している米ミネソタ大学の人類学者マイケル・ウィルソン氏はいう。
■群れのなかでの駆け引き
プルエッツ氏の研究チームは、2005年からフォンゴリのチンパンジーたちを観察している。ここのチンパンジーたちは人間に完全に慣れてしまっているが、このような場所は西アフリカでも珍しい。
プルエッツ氏の観察記録から、チンパンジー社会で毎日のように繰り広げられている駆け引きの様子がうかがえる。群れにはアルファ雄と呼ばれるボスが君臨し、そのボスとほかの雄たちが同盟を組んで群れを統率。そして彼らを、雌と子どもたちが取り囲む。雌は、成熟すると新たな群れを求めて独立するが、雄は自分の生まれた群れにとどまり、自分の力を誇示したり同盟を乗り変えたりして、社会的に優位に立とうと争うのだ。
2005年初め、プルエッツ氏の研究チームは、調査対象としていたチンパンジーの群れの雄たちが、そろって服従を示す雄たけびを上げていたことから、フォウドウコがボスの座に就いたと考えた。
ところが2007年9月、フォウドウコの権力が揺るがされる出来事が起こった。群れのナンバー2であったママドウという雄のチンパンジーが、足に深い傷を負ってしまったのだ。ママドウが影響力を失ったことでフォウドウコの立場も危うくなり、ついに2008年3月、若い雄のグループによってフォンゴリから追放されてしまう。姿を消したフォウドウコは、どこかで死んでしまったのだろうと、プルエッツ氏らは考えていた。
ところが驚いたことに、フォウドウコは9カ月後に再び群れへ戻ってきた。しかし、かつての面影はなく、人間の姿におびえ、フォンゴリの外れで木や茂みの後ろに隠れるようにうろついているだけだった。それから5年にわたって、流れ者のような生活を送っていたフォウドウコは、時折ママドウの兄弟で新たにボスの座に就いたデビッドのご機嫌取りをするなどしていた。
ママドウとデビッドはフォウドウコの帰還を受け入れたものの、彼の支配下で苛立ちを募らせていた若い雄たちの態度は友好的ではなかった。フォウドウコをしきりに群れから追い払おうとしたり、専門家にも理解できない奇妙な叫び声をあげて襲いかかったりしていた。
■そして事件は起こった
2013年6月15日の夜明け前、プルエッツ氏と助手のミシェル・サディアコー氏は、寝泊まりしていたキャンプ地から1キロと離れていない場所で、騒がしい音がするのを耳にした。チンパンジーたちが何かをわめきながら、南へ向かって走っていく。マラリアにかかって寝込んでいたプルエッツ氏の代わりに、サディアコー氏がチンパンジーの後を追った。
目の前の光景に、サディアコー氏は愕然とした。推定17歳のフォウドウコが、死体となって転がっていたのだ。その手には無数のかみ傷やひっかき傷があった。2頭のチンパンジーがフォウドウコの両手を押さえつけて、ほかのチンパンジーたちがその頭や腹を殴打したのだろう。足にぱっくりと開いた大きな傷口は、おそらく食いちぎられたもので、皮膚の大部分がさけて大量の失血があったことを示している。
日が昇ってプルエッツ氏も現場へ向かうと、チンパンジーたちはよってたかってフォウドウコの体をいじりまわし、喉や性器をかみ切って食べていた。
すべての仲間がここまで悪意をむき出しにしていたわけではない。ママドウはかつての盟友を眠りから覚まそうとしているかのように、体を引きずり回したり、顔のすぐそばで叫んでいた。デビッドは、死体にほとんど触れようとしなかった。しかし、プルエッツ氏にとって意外だったのは、フォウドウコの体を誰よりも夢中で食い荒らしていた雌が、ママドウとデビッドの母親であるファラファだったことだ。「ファラファがフォウドウコをよく思っていなかったことは明らかです。でもこの行動は、どう説明したらいいのかわかりません」
フォウドウコは、交尾相手をめぐる争いの末に殺されたのではないかと研究チームは考えている。フォウドウコが、発情した雌に近づこうとしたのだろうか。フォンゴリの群れは、雄が雌の数を上回っているため、競争が激しいのだ。
2014年に、プルエッツ氏ら30人の霊長類学者が共同で発表した報告書によると、チンパンジーの死闘の多くは、交尾相手や資源をめぐる競争が原因であるという。
「群れの中での殺し合いは、ほとんどが交尾相手をめぐって雄同士が争った結果、起こるものです」と、ウィルソン氏は言う。「このような小競り合いは頻繁に起きていますが、それが行き過ぎると殺しに発展してしまうのです」
■人間と同じ?
チンパンジーの共食いは、1970年代の初め頃から報告されている。なかには、雌が雄の性器部分を全て切り取って食べてしまうなど、さらに衝撃的なケースもある。
こうした殺害において、彼らの近縁である人間と比較するには、まだ議論の余地がある。ウィルソン氏は、チンパンジーと人間との間に明確な線引きをしているが、プルエッツ氏は、「人間はとても複雑ですから、何とも言えません」と言う。むしろ、今回の事件では、チンパンジーと人間の違いを強く感じたという。
チンパンジーたちがフォウドウコの死体を置き去りにするのを待って、プルエッツ氏らはセネガル当局の立ち合いのもと、死体を土に埋めた。
残されたチンパンジーたちは互いを慰め合っているようだったが、同時に何が起こったのかを理解するのに苦しんでいるようにも思われた。墓の方からは、おびえたような鳴き声が夜通し響いてきた。
「彼らは、死体にひどくおびえていました。死という概念に欠け、それがもたらす終わりというものを理解できずにいたのです」と、プルエッツ氏は語る。
この悲惨な出来事を数年かけて分析したプルエッツ氏は、ようやく発表することができて、肩の荷が下りたという。しかし、若い雄のチンパンジーたちの反乱は今なお続いている。これからも、フォウドウコのように追放されたり、犠牲となるチンパンジーが出てくることだろう。
「やはりママドウも追い出されてしまいました。デビッドは今でもボスですが、何度か襲われています。時々ふと、ママドウがまだ群れの外で元気にしているのではないかと思うことがあります。もしそうであれば、彼はフォウドウコよりもずっと利口なのかもしれません」。
文=Michael Greshko/訳=ルーバー荒井ハンナ
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