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(回答先: 大隅良典氏にノーベル医学・生理学賞 「オートファジー」の仕組みを解明 投稿者 軽毛 日時 2016 年 10 月 03 日 21:06:05)
オートファジーって何? 疾患とのかかわりは?
医論・異論 from 日経メディカル
【受賞会見での質疑応答】ノーベル生理学・医学賞受賞の大隅良典氏
2016年10月5日(水)
久保田 文=日経バイオテク
ノーベル生理学・医学賞の受賞を受け、10月3日の夜、記者会見に応じた東京工業大学大隅良典栄誉教授は、「役に立つかどうかという観点でばかり科学を捉えると、社会をダメにすると思う」と話し、基礎研究の重要性などを強調した。会見の途中、大隅栄誉教授は安倍晋三首相、松野博一文部科学大臣からのお祝いの電話にも応じた。主な質疑応答の内容は以下の通り。
会見で記者の質問に答える東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏。
受賞の一報は。家族へ伝えたのか。
研究室で電話を受けた。妻に伝えたところ、第一声は『えっ…』という感じだった。最近、ノーベル賞の発表時は、毎年母校の高校に同窓生が二十人、三十人集まっていると聞き、毎年申し訳ないと思っていた。ある意味で肩の荷が下りた。
家族への感謝の言葉は。
妻は一時期は研究を共にしていた研究仲間。それだけに、そこに甘えてきたという風にも思う。そういう意味では、いい家庭人ではなかったかもしれない。
研究者として「人がやらないことをやる」という姿勢を貫いてきた。そのきかっけは。
実はあまり競争が好きではない。大勢で寄ってたかってすごいことができるのも1つの科学の在り方だが、一番乗りを競うよりは、誰もやってないことを見つける喜びこそが研究者を支えるのではと常々思っている。だからこそ、従来、ゴミだめだと思われていた液胞に注目し、誰も蛋白質分解に興味のないときにオートファジーの研究を始められた。
政府の研究費は近年、出口志向を強めている印象だ。
大変憂いている。やはりサイエンスは、どこに向かっているか分からないからこそ楽しい。そういうことが許される社会的な余裕が欲しい。分からないことにチャレンジするのが科学的な精神だろうと思っているので、少しでも社会がゆとりを持って基礎科学を見守る社会になってほしいと常々思っている。今後は、そのためにも努力していきたい。
ノーベル生理学・医学賞の日本人の単独受賞は利根川氏以来だ。
最近は、2人、3人での受賞がしばらく続いていたので、単独受賞と知らされて実は驚いた。昨日の夜中、もし自分が受賞するならだれと共同受賞かと考えていたのだが、オートファジー研究は日本が大きく世界をリードしてきた分野であり、海外でこの人という研究者が思い当らなかった。共同受賞があったらいいなと思ったが、日本人3人という組み合わせはないなとも思っていた。蓋を開けてみて、だから単独受賞になったのかなあ、と思った次第だ。驚きも含めて感慨深い。
岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所時代に水島昇氏(東京大学大学院医学系研究科教授)、吉森保氏(大阪大学大学院生命機能研究科教授)とオートファジーの研究をした。当時の研究が受賞に果たした影響は。
私は40年間、酵母の研究をつづけ、27年間、オートファジーを研究してきた。オートファジーは動物細胞で初めに見つかったので、高等生物のオートファジーを研究したいと思って吉森氏を助教授に迎えた。その点では基礎生物学研究所はとってもありがたいところだ。酵母を中心として、動物も植物もやるという世界に類のない研究室を数年間運営できたというのはオートファジーの世界を広げる意味で意義のあるものだったと思う。
子どものころノーベル賞にあこがれていたと発言されていた。
そんなに大きな意味はなく、子供が研究者になりたいと思った時にあこがれとしてあったということ。小学校の卒業時、友人と交わしたメモに、友人がそういうことを書いてくれていた。小さなときから研究者にあこがれをもっていたのだと思う。ただ、実際に研究をスタートしてから賞につながると思ったことはない。そういうことが励みになったこともなかったように思う。
研究への姿勢を聞きたい。
科学にはゴールがない。何かが分かっても、新しい疑問が湧いてくる。酵母で全部解けたと思ったことは一度もないし、未だに酵母にたくさんのことを問いかけてみて、動物細胞の理解につながればいいなと思っている。
オートファジーと疾患とのかかわりは。
オートファジーが癌細胞にかかわっているとか、神経変性疾患に関連しているのではといった報告が多いのは事実だ。ただ、オートファジーが原因で発症すると分かっている疾患はほとんどない。細胞はまさしく、合成と分解を平衡させて成り立っている。蛋白質の分解が大事なのは疑いないが、オートファジーが本当にどういう局面で何をしているか解明するのは、これからの課題だ。未病、健康維持も含めて、たくさんの課題が山積している。
今後、どのような研究を行う予定か。
実は、分解により蛋白質などが無くなることを定量的に扱うのは難しく、動物細胞でのオートファジーの定量解析は成功していない。酵母では定量解析ができるので、酵母でまだ先導できることがあるのではと思っている。あと数年、酵母の定量解析で何が壊れてどう代謝に影響するかを集中して解決していきたいと思っている。
研究のモチベーションは何か。
あらゆる研究者に共通するモチベーションというのはないと思う。ただ現在、生命科学は非常に進歩しており、オートファジーの論文は最近では毎年5000本ぐらい発表される。そういう情報の中で、全てを自分で総括するのは到底不可能。なので、若い研究者には何に興味があるのかをよく考えていてほしいと思っている。論文の中の1つの遺伝子に注目するだけでは、大きな問題は解けないと思う。
私が最初に光学顕微鏡で観察した(酵母のオートファジーの)現象は、今でも観察対象であり、そういうスタート地点の現象(疑問)を持っていることが今まで続けられた一つのモチベーションだったのかなぁ、と思っている。
オートファジーについて分かりやすく説明してほしい。
私たちは毎日、蛋白質を70g、80g食べている。ただ、実際は毎日、蛋白質は300gぐらい体内で作られており、その原料となるアミノ酸がどこから来るかというと、体内の蛋白質が分解されてできたアミノ酸が再利用されている。その意味で、オートファジーは、生命を成り立たせる大事な分解機能であり、生命を支えている要素だ。
稀に、海で遭難し、1週間何も食べず水だけで生きていたという人がいる。でも体内では、蛋白質合成はとまっていない。身体は実に巧妙に蛋白質を分解しながら再利用する仕組みを持っている。
髭を伸ばしているがきっかけは。
童顔だったので、海外留学時に若造に見られたくないと思って留学前に髭をはやした。その頃は真っ黒だったがだんだん白くなった。留学中にちっとも面白いことがないので一度髭を剃ったことがある。自分で、『こんな顔していたのか』とびっくりして、次の日からまた伸ばし始めた。もう40年ぐらい無精ひげを伸ばしている。いろいろ楽だ。妻からは、日頃、髭を短くしろとうるさく言われているので、今日はいつもよりちょっとだけ短く切ってきた。
子どもに対して伝えたいことは。
現代は、なかなか自分の興味を伸ばすことが難しい時代になっていると思う。子どもには、『あれっ』と思うことがたくさんあるので、そういう気づきをとっても大事にしてほしいと思う。生命現象には、分かっているような気分になっているけれど、実は分かっていないことがたくさんある。『なんでだろう』という気持ちを大事にする子供が増えてくれたら、日本の将来は安泰だが、今は必ずしもそうなってない。『何とかなるさ』という精神で、いろんなことにチャレンジしてくれる子が増えることを強く望んでいる。それを社会が支えるような環境を作れればと思っている。
受賞の賞金の使い道は。
この歳になって豪邸に住みたいわけでもないし、外車を乗り回したいわけでもない。できるだけ役に立つことができればいい。何に使ったら一番いいか、若い人たちのサポートができるようなシステムができないか、考えている。社会的に、ノーベル賞に意味があるとすれば、そういう仕組み作りが少しでもやりやすくなることではないか。もう少し生きている間、数年間にそういうことの一歩が踏み出せればいいなと思っている。
基礎研究の重要性について。
役に立つかどうかという観点でばかり科学を捉えると、社会をダメにすると思う。科学の世界では、『役に立つ』を、『数年後に実用化できる』と同義語に使うことがあるが、大いに問題だ。その科学が本当に役に立つのは、10年後、20年後かもしれないし、100年後かもしれない。将来を見据え、科学を文化として認めてくれるような社会にならないかと思っている。
この記事は日経メディカルに2016年10月4日に掲載された記事を一部改編して転載したものです。内容は掲載時点での情報です。
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