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2014年4月9日、会見を行う小保方晴子氏(撮影=吉田尚弘)
【STAP論文】若山教授、共同執筆者に無断で撤回が発覚…小保方氏捏造説へ誘導
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14602.html
2016.04.08 文=大宅健一郎/ジャーナリスト Business Journal
一連のSTAP細胞論文問題をめぐり2014年12月に理化学研究所を退職した小保方晴子氏が3月31日、自身の公式サイトとなる『STAP HOPE PAGE』を開設した。STAP細胞の詳細なプロトコル(作成手順)や、1月に出版された小保方氏の手記『あの日』(講談社)にも書かれている検証実験の結果が英文で記載されている。
特に検証実験に該当するページ(「Protocol for STAP cells」)の最後にあるTypical Resultでは、STAP細胞の存在証明となる「緑色に光る細胞(Oct4-GFP)」の写真が掲載されている。この写真は、小保方氏が理化学研究所の検証実験中に写真に収めたもので、死細胞による自家蛍光とは明らかに異なるものだ。これまで理研の検証実験ではSTAP現象の証拠が得られなかったとされていたが、それを覆す決定的な証拠が初めて明るみになったことになる。
小保方氏は、STAPサイト開設の目的を「将来、STAP現象に興味を持った科学者が研究に取り組めるように可能性を残すことにあり、未来の科学者がSTAP現象の研究を始める手助けにしたい」としている。
しかし、STAPサイトが公開されてわずか数時間で、サイトの閲覧ができない事象が起き、その原因が「サイバー攻撃」であったことが小保方氏の代理人・三木秀夫弁護士への取材でわかった。三木弁護士によると、これはDDoS攻撃(複数のネットワークに分散する大量のコンピュータが一斉に攻撃すること)によるものと推定され、まだ犯人は特定できていないが、特定後も攻撃が続くようなら刑事告訴を検討するという。
■ミスリード
このサイバー攻撃に限らず、一連のSTAP細胞問題に関しては不可解な点が多すぎる。特にマスコミの報道姿勢がその最たるものだ。
今年3月28日、兵庫県警は神戸の理研の研究室からES細胞が盗まれたとする窃盗容疑に関して、容疑者不詳のまま捜査書類を神戸地検に送付して捜査を終了した。これは、小保方氏のES細胞窃盗容疑はなくなったことを意味する。同じ容疑での告発はできないため、小保方氏が同じ容疑をかけられることは完全になくなったが、これを報道したマスコミはほとんどなかった。
今年2月18日に兵庫県警がES細胞窃盗容疑の告発を受けて小保方氏を参考人として聴取した際には、ほぼすべてのマスコミが「ES細胞窃盗容疑で、小保方氏参考人聴取」と報道していた。まるで容疑者のような扱いだったが、容疑が完全に晴れた今、なぜかそれを報道しようとしない。結果、いまだに小保方氏をES細胞窃盗犯として疑う人々が少なくないのだ。
そもそもこの刑事告発は、当初から論理破綻していた。告発では、小保方氏が理研時代に所属していた若山照彦・現山梨大学教授の研究室(以下、若山研)が2013年に理研から山梨大へ引っ越す際に、小保方氏がES細胞を盗んだとしていた。
しかし、13年の時点ではSTAP細胞の主要な実験が終わっており、英科学誌「ネイチャー」向けの論文作成が佳境に入っている時期だった。小保方氏は実験後にES細胞を盗み、過去に戻って若山氏に渡したSTAP細胞にES細胞を混入させることなど不可能である。
マスコミは結果的に冤罪とわかった小保方氏に対する謝罪はおろか、捜査終了の報道すらしない。この異常な状況を異常と思わないほど、STAP騒動をめぐっては多くの人の思考がミスリードされたままとなっている。その謎を解かない限り、この騒動の真相は見えてこない。
■リンチピン分析
CIAで情報分析を担当していた元情報本部長のダグラス・マキーチン氏は、情報分析を間違わない方法として「リンチピン分析」を提唱した。
リンチピンとは、荷車の車輪が外れないように車軸の両端に打ち込む楔(くさび)のことである。マキーチン氏は、情報分析をする際に、そもそもその前提となる仮説が正しいかどうかを検討しないと、正しい結論は絶対に得られないと主張した。仮説を間違えれば、結論は自ずと間違うからだ。マキーチン氏は、前提となる仮説をリンチピンになぞらえた。真実を見つけるための情報分析にはリンチピン分析が欠かせない。誰もが事実だとして疑わない常識こそ、気をつけなくてはならないとマキーチン氏は言う。
では、STAP騒動のリンチピンはなんなのだろうか。
それは、「小保方氏が意図的に論文を捏造した」「小保方氏が意図的にES細胞を混入させた」である。この2つのリンチピンからは、「STAP細胞はない。騒動の責任はすべて小保方氏にある」という結論しか出てこない。
だが、この2つのリンチピンはどちらも間違っている。「小保方氏が意図的に論文を捏造した」というリンチピンはさらに拡大解釈され、「STAP論文はほかの論文からのパクリだ」という説まで現れている。正しい事実を知らず、伝言ゲームで広がった情報をリンチピンにすれば、確実に間違った結論へと導かれる。
「ネイチャー」に投稿されたSTAP論文では、小保方氏が自身のパソコンに保存していたテラトーマの写真を間違って掲載してしまい、ゲル写真を見やすいように加工したことで不正認定されてしまう。小保方氏は、このことに関して不注意で未熟だったと幾度も謝罪している。ちなみに、科学論文において図表等の間違いを修正することは、よくあることである。
14年4月25日、STAP論文に疑義がかかった後、理研の野依良治理事長(当時)が理研内部の研究員に対し「論文を自己点検するように」と指示を出した。その後、修正された論文はかなりの数に上ったが、論文が撤回となることもなく、この事実が報道されることもなかった。
さらに、STAP問題に対する調査委員会の委員のほとんどに論文の疑義がかかったが、その委員らはホームページなどで説明を行い修正することで終わっている。当時、小保方氏がホームページなどで情報発信することを禁じられていたことを考えると、非常に不公平な対応である。
また、小保方氏の早稲田大学時代の博士号が剥奪された際にも、早大の内部調査で博士論文89本に不正が見つかり、そのほとんどが修正だけで済み、小保方氏のような博士号剥奪処分はなかった。
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12420.html
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さらに、14年4月、iPS細胞の発見でノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授の論文の画像にも疑義がかかる。山中教授は論文の内容自体は正しいものの、自分以外の共同研究者の実験データが残っていなかったとして「心より反省し、おわび申し上げます」と謝罪して、この件は終了した。これら一連の事実だけでも、小保方氏への不公平な対処が際立つ。
かつて評論家の故・山本七平氏は、日本人は事実ではなくその場の「空気」によって左右され、日本において「空気」はある種の「絶対権威」のような驚くべき力を持っていると喝破した。小保方氏を魔女のごとき存在に思わせる異常な空気が同調圧力となって、マスコミから国民全体まで覆っていた。
では、なぜこの前提が蔓延したのか。それは、ある人物の不規則発言が原因だった。
■突然の「論文撤回」
小保方氏は、STAP論文に関する実験を若山研で行っていた際、ポストドクター(ポスドク)という不安定な身分であり、上司は若山照彦氏(現山梨大学教授)だった。部下である小保方氏に対する責任は当然、上司である若山氏にあった。若山研では若山氏のストーリーに合わせた実験が行われ、ストーリーに合わないデータは採用されないという強引な研究が行われていたことは、前回の記事で指摘したとおりである。
http://biz-journal.jp/2016/02/post_13989.html
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当時、小保方氏は、細胞に刺激を与えて万能性を示す状態となる「STAP現象」を担当しており、これは米ハーバード大学のバカンティ研究所でも成功させていた。小保方氏が記者会見で「200回以上成功した」というのは、このSTAP現象のことを指している。
「STAP細胞」実験の過程
一方、若山氏は小保方氏が作成したSTAP細胞から、ES細胞のように増殖力を持つSTAP幹細胞をつくり、キメラマウスを作成するのが担当だった。
STAP論文における小保方氏の写真の取り違えが判明し、マスコミの加熱する報道が起こり始めると、突如として若山氏は「論文撤回」を主張するようになる。しかも、理研の故・笹井芳樹教授やバカンティ教授など論文執筆者たちの承諾を得ないまま2014年3月10日、NHKの取材に対して勝手に論文撤回発言を行った。論文撤回するかどうかは、共同執筆者全員の賛同を得て初めて成り立つものであり、1人の執筆者が独断で行えるものではない。明らかなルール違反だった。
この無責任な発言によってマスコミの報道が一気に沸騰し、修正で済むはずだったSTAP論文は「捏造」というキーワードと共に悪意ある偏見の目で見られるようになり、「重箱の隅をつつく」指摘が止まらなくなる。そして、STAP細胞そのものがなかったことになっていく。
このNHK報道を契機として、若山氏は一方的に情報をリークできる立場を確保していく。特にNHKと毎日新聞への度重なる意図的なリークによって、自身に有利な世論を形成できる立場を得ていた。論文執筆者たちは、若山氏との話し合いの前に同氏の言い分を報道で知るという異常な事態となる。
この「空気」を追い風に、マスコミを通じて情報発信できる立場を得ていた若山氏は、さらに追い打ちをかけるような情報を発信する。
(文=大宅健一郎/ジャーナリスト)
※後編に続く。
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