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STAP現象、理研で再現されていたことが発覚…若山教授、不当に実験成果物を大量持ち出し
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14498.html
2016.04.01 文=上田眞実/ジャーナリスト Business Journal
理研の情報公開制度を利用して取得した、若山博士が作成したSTAP細胞実験用のMTA
1月に発売された小保方晴子氏(32)の告白本『あの日』(講談社)は、3月に入ってすぐ5刷りされ、販売26万部を超えるベストセラーとなっている。講談社担当者は「読者からは多数の共感と応援を頂いております」といい、これからも売れ行きは伸びるもよう。
本書をめぐっては賛否両論が渦巻いているが、重要な点は本書の内容が本当なのかどうかという点であろう。そこで本稿では、小保方氏が所属していた理化学研究所が開示した書類等を参照しながら、時系列で検証してみたい。
2014年3月10日、小保方氏の共同研究者であった若山照彦博士(山梨大学教授)が論文を撤回し、STAP細胞問題が表面化した。同年12月25日に公表された「研究論文に関する不正調査委員会」(委員長・桂勳氏)の「研究論文に関する調査報告」(http://www3.riken.jp/stap/j/c13document5.pdf)(P.13)では、STAP細胞の研究成果は「ES細胞の混入である可能性が高い」とされている。
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また、理研は15年3月20日に「運営・改革モニタリング委員会による評価について」(http://www3.riken.jp/stap/j/s9document30.pdf)のP.85で、STAP細胞論文は「ほぼ事実ではなかった」と宣言しており、STAP細胞はその存在を完全に否定されたかに見える。
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しかし、STAP細胞が発表された直後、若山氏は14年4月17日付「日経Bizアカデミー」記事『「その時マウスは緑色に光った!」若山教授が語った幻のSTAP細胞誕生秘話』内で、STAP細胞実験の成功秘話を克明に語っているのだ。これには多くの疑問の声が上がっている。さらに、アメリカの研究者グループがSTAP現象と同じ実験結果から多能性細胞をつくることに成功している。
実はSTAP細胞論文への疑惑が取り沙汰された後に理研が行った再現実験で、STAP現象は確認されており、それは『あの日』(P.220)にも書かれている。
■契約がないまま成果物を持ち出し
小保方氏は『あの日』(P.155)で若山氏がMTA(研究成果有体物移転契約書)を交わすことなく実験成果物を理研から山梨大学若山研究室に引っ越す時に持ち出し、窃盗で訴えると理研が訴えたところ、「慌てて書類を出してきた」と告発している。筆者もこの件について、昨年5月頃から複数の関係者、担当記者から聞いていた。ちなみにMTAとは、研究者が研究所を引っ越す時に研究成果物を持ち出す許可を交わす契約書で、研究成果物の引越リストのようなものだ。
独立行政法人には活動を国民に説明する責務があるとした「情報公開法」がある。そこで筆者は理研の情報公開制度を利用して、若山博士が作成したSTAP細胞実験用のMTAを取得した。
それによると、若山氏が理研と引越先の山梨大と交わした最初の契約書の日付は14年の4月1日になっていた。若山研究室が理研から山梨大学に引っ越したのは13年3月だから、引越から約1年ずれた日付になっていた。しかも若山氏が英ネイチャー誌に投稿したSTAP細胞論文撤回を共著者らに呼びかけたのは14年3月10日だ。STAP論文に画像の不正引用が発覚し「STAP細胞の存在が信じられなくなった」と呼びかけた後に、大量のSTAP幹細胞と対照実験に使ったES細胞、TS細胞の移転契約書に捺印しているのだから驚きだ。
なぜ、MTAの日付が引越時期よりも1年もずれた論文撤回後の契約だったのか。それは、若山氏が契約を結ばずに勝手に持ち出していたからだということが「あの日」の告発で解った。
さらに、このMTAは細胞の樹立日(作成日)に記載ミスがあり、再契約が交わされているので、正式にSTAP細胞実験の成果物の移転届けが終了したのは15年9月30日。本来ならば研究室の引越と同時にMTA契約を締結しなくてはならない。情報開示により、若山研の杜撰な研究成果物の管理実態が露呈した。
そうであるならば、若山氏が山梨大へ移転させたSTAP細胞実験成果物とされる保管物が、理研から移動されたものと同一かどうか判定できない。なぜなら、つくった本人が持ち出し、理研に「これとこれを持って行きました」と事後契約していたからだ。理研の研究室で若山氏が作成したSTAP幹細胞と、山梨大へ移転させ第三者機関へ解析に出したSTAP幹細胞が同じものかどうかも、検証することはできない。
小保方氏は再現実験でSTAPを再現できないので、小保方氏が「STAP細胞作成を200回成功した」と言ったのは嘘だったのではないか、との疑惑が広まった。しかし、『あの日』(P.218)で小保方氏は実にひどい環境下で実験させられていたことを告白している。まるで鉛の防衣のような重たいエプロンを着けさせられ、身動きができず実験するのに不自由したとある。さらに実験中には立会人が置かれ、監視カメラ3台も設置、釘穴までセメントで塞がれたという。
理研がこうした対応をとった理由について14年7月2日、再現実験の統括責任者である相沢慎一理研特別顧問は「世の中には彼女が魔術を使って不正を持ち込むのではないかという危惧があるため」だと記者会見で語っている。
■一部、成功していた理研の再現実験
小保方氏の再現実験では、STAP現象は確認された。それは14年12月19日に理研が発表した「STAP現象の検証結果」(http://www3.riken.jp/stap/j/r2document1.pdf)(P.2)の以下記述で確認できる。
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「弱塩酸処理を行った場合では、その多くに STAP様細胞塊が形成されることが確認された」
しかし、その出現数はごくわずかだと検証結果を報告している。わずかでも、確かに「STAP様細胞塊が形成」とある。STAP現象は確認されていたのだ。さらに連携して行われた丹羽仁史博士(熊本大学教授)の再現実験では、マウスの肝臓細胞の実験でATP浴という方法で刺激を与える実験をしており、これも多能性を持ったことを示す多能性遺伝子の発現が確認され、検証結果では49回のうち37回もSTAP様細胞塊の出現が確認されたとある。かなり高い確率だ(「同」<P.4>より)
小保方氏は『あの日』(P.220)のなかで、再現実験によって「酸処理した細胞に未分化状態を示す多能性遺伝子の確認があった」と記しているが、丹羽氏が作成した「肝細胞由来のSTAP現象が確認された」という事実は、理研も検証結果で公表している。同報告書では「STAP現象」をこう定義している。
「マウスの新生児の各組織の細胞(分化細胞)を一定の条件でストレス処理すると、多能性を持つ未分化細胞にリプログラミング(初期化)されるという上記研究論文(STAP細胞論文)に記載された現象である」(P.1)
つまり、STAP現象は再現実験で確認されていたのだ。
しかし、理研の検証報告書では「自家蛍光と区別がつかない」など、上記の実験結果を否定する矛盾した言葉で締められている。「STAP様細胞塊」が出現し、自家蛍光とは違う遺伝子タンパクの発現が確認されたのであれば、「わずかでも成功、STAP細胞塊の出現を複数確認」と発表されてもいいはずだ。検証実験の主旨と小保方氏の実験環境を思えば、頻度よりもSTAP現象が確認できたことを重視するべきではないか。
検証報告では、STAP様細胞塊でSTAP幹細胞、FI幹細胞をつくろうと試みたが失敗したとされている。また、STAP様細胞塊からはキメラマウスをつくる事はできなかった。つまり、『あの日』でも書かれているとおり、若山氏が行っていた実験パートは実態の影さえ見えない。
『あの日』に書かれている内容と理研の公式発表「STAP現象の検証結果」には齟齬がないし、筆者の取材結果とも合致する。STAP細胞問題は、早急に第三者機関による再調査が必要なのではないか。
(文=上田眞実/ジャーナリスト)
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