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2014年4月9日、会見を行う小保方晴子氏(撮影=吉田尚弘)
小保方本で批判の若山教授、反論できない理由…責任取らず科研費の受領継続、管理能力に問題
http://biz-journal.jp/2016/02/post_13735.html
2016.02.11 文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授 Business Journal
小保方晴子氏が書籍を出した。『あの日』である。出版元の講談社もセールスに懸命だ。同社が出版する「週刊現代」や「フライデー」には関連記事が溢れている。
出版日の前日にいくつかのテレビ局からコメントを求められ、筆者も同書を読んだ。その中身は、かつての上司である若山照彦・山梨大学教授批判で溢れており、あまり読後感がいいものではなかった。筆者を含め多くの専門家は、彼女の主張をそのまま受け取ることはないだろう。
ただ、この本には評価できる点もある。それは、小保方氏が自分の言葉で社会に説明したという点だ。本の内容はともかく、これはなかなかできることではない。
では、今回の出版に対して、関係者はどうすべきだろうか。筆者が注目しているのは、若山教授だ。いまこそ正々堂々と反論すべきだと思う。国民に、自分の言葉で説明しなければならない。
ただ、そうはならないだろう。この原稿を書いている2月8日現在、若山教授は反論していないし、この問題を取材している知人の週刊誌記者は「取材を申し込んだが、受けてもらえなかった」と言う。
筆者は、若山教授には反論できない理由があるのだと思う。それは、彼が今回の問題で、きちんとした責任を取っていないからだ。
確かに2015年3月6日、山梨大は2月10日を起点に3カ月間、センター長としての職務を停止する処分を下した。この処分は、本人の申し出より軽かったようで、その点について山梨大が設置した特別委員会の委員長である新藤久和理事は、「若山教授は余人をもって代えがたい」と説明している。若山教授に研究不正はなく、センター長を辞任するほどの悪質性がないと考えたそうだ。
この話を聞いて、普通の人は納得するだろうか。筆者はおかしいと思う。
今回の事件で若山教授が問われたのは、本人の研究能力や不正への関与ではなく、管理能力だった。小保方氏を採用し、研究を指導した。そして、その不正を見抜けなかった。彼の管理能力に問題があるのは明らかだ。本当にセンター長にふさわしいといえるのだろうか。
■研究者としての矜持
問題はこれだけではない。15年には、「絶滅動物の細胞再生および有用遺伝子回収方法の確立」というテーマで、基盤研究(A)として年間975万円の研究費を受け取っていた。小保方氏の研究不正について、若山教授には監督責任があり、文科省のガイドラインに準じれば、そもそも彼には科研費に応募する資格がない。なぜ、山梨大も文科省も、このことを議論しなかったのだろう。
ちなみに、12年3月末、加藤茂明・東京大学分子細胞生物学研究所教授(当時)は、責任著者として発表した複数の論文のデータの扱いに不適切な処理があったことへの監督責任を取って、東大教授を辞職している。
なぜ、加藤氏と若山教授の扱いが、こんなに違ってしまうのだろう。それは、研究者、とくに管理職としての「矜持」だと思う。加藤氏は、この問題の責任を取った。若山氏には、まったくその気はない。このような背景を考慮すれば、小保方氏が「裏切られた」と感じるのもわかる気がする。
研究者の中では「小保方悪玉論」「若山被害者論」が根強いが、筆者は賛成できない。小保方氏は研究者としての基礎的素養に問題があった。一方、若山氏に問われているのは、その管理能力だ。この点について、若山氏は責任を取る必要があるし、管理職として、社会に説明する必要がある。頬被りを続け、手前味噌なことばかりやっていると、研究者全体が社会の信頼を失う。
(文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授)
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