http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/149.html
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「小保方氏の実験ノートの無断公開と、著作権法41条の権利制限との関係(「時事の事件の報道のための利用」)2015/8/25」(理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問)
http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/16754801.html
NHKによる実験ノートの無断公開に関して、その著作権との関係で、NHKが主張する権利制限条項の「時事の事件の報道のための利用」(第41条)の適用の可否について、念のため書いておきたいと思います。
著作権法第41条には、次のように規定されています。
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「写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。」
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ここでいう、「報道の目的上正当な範囲内において」の意味合いは、実際の適用事例をみると、二種類あるかと思います。
@実質的に著作権者の利益を犯さないようなフェアユース的使い方の場合
A報道内容の公益性が高いため、著作権侵害をオーバーライドする場合
●ほとんどのケースは、@のフェアユース的使い方です。例えば、検索すると、次のようなサイトに事例が紹介されています。
http://www.kls-law.org/cce.080.html
http://park2.wakwak.com/~willway-legal/kls-c.act.041.html
http://www.ktv.jp/ktv/guideline/05_01.html
文化庁のサイトでは、
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「著作物に関する時事の事件を報道するために,その著作物を利用する場合,又は事件の過程において著作物が見られ,若しくは聞かれる場合にはその著作物を利用できる。同様の目的であれば,翻訳もできる。」
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次のサイトでの解説では、
http://www.lawfirm.gr.jp/chosakukon.html
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「ある名画が破格な価格で落札されたと報道する際、その名画が写るのことはやむをえないといえます。また、スポーツ・祭り行事の報道をする際、行進曲やお囃子が流れるのは自然なことといえます。そこで本条は、このような時事の事件の報道のために著作物が露見してしまうことも、報道の目的上正当な範囲においては認められるとしました。」
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となっており、フェアユース的使い方を念頭においています。インターネットの検索で、検索サーバーに一時的にキャッシュの形で、形式上は複製されてしまいますが、著作権者の利益を損なうわけではありませんので、権利制限として規定されているのと同じような位置づけです。誰も、著作権侵害だとは思わないけれども、形式上該当してしまうという場合が一般的な想定ケースなわけです。
週刊誌などが、報道に伴う利用と称して、裸体写真を必要以上に掲載する等は、その限度を超えていて不可というわけです。
●それでは、Aのような、著作権侵害が主張されている中で、それが公益性の観点から免責されるような適用事例はあるのでしょうか?
と思って、判例をぱらぱら調べてみたら、暴力団の山口組組長の継承式を録画したビデオを4分間にわたってテレビで放映したことに関して、「一部を放送することが、より直截で効果的な方法である」として、この権利制限の適用を認める地裁判決がありました。
この辺の判断は、以前の記事で書いたように、公務員の守秘義務違反と公益性との比較衡量で、その免責の可否が決せられるということと同じです。
西山事件のときも、外交機密電報は、外務省に著作権があり、その電報自体が最高レベルの機密度の内容だったわけですが、政府側の説明とは異なり、沖縄密約の存在を示す直接的証拠となるものであり、不当な取材方法でなければ、取材・報道の自由として認められることになったと思われます。
ですから、本件の小保方氏の実験ノートの複製や放送(公衆送信)も、そういう正当化できる然るべき理由があるのであれば、著作権侵害も免責されるのでしょうが、既に守秘義務違反に関して述べたように、公益通報的正当化をする余地はないと考えています。
●私も含めて、少し議論が錯綜しているかもしれませんが、今回の実験ノートの公開に関して、著作権上の問題となるのは、2つの局面があります。
第一は、リークした理研職員によるコピーを入手したNHKが、分子生物学会の数名の学者に更にコピーして手交した行為。
この局面では、理研職員が目的外でコピーして外部に渡したことで、まず複製権の侵害があり、その後、NHKが学者たちにコピーし頒布したことで、さらに別途の複製権の侵害があるという構成かと思います。この局面は、BPOで紹介されている申立て概要には必ずしも直接は書かれていないかもしれませんが、第二の局面である放送に至るまでの取材方法の不当性を主張する材料になるのではないかと思います。
営業秘密を侵し、特許化できなくなる公知化に該当するおそれのある行為ですから、二重の意味で知的財産を侵害するという深刻な意味合いを持つ著作権侵害行為に当たると考えられます。成功した実験データだけでなく、失敗した実験データもまた立派な営業秘密に当たることは定着している解釈です。
第二が、その放送の局面です。これは公衆送信権の侵害が問題となります。放送した実験ノートの中身としては、三木弁護士が以前公表した抜粋部分の原本部分を放映したかと思います。放送録画が手元にないので確認できませんが、三木弁護士が公表したのは、原本のコピーそのものではなく、たしか一部を写して活字にしたものと、マウスのスケッチではなかったでしょうか? 三木弁護士が、知財との関係で、慎重に抜粋して公表したものを、その意に反して、公表した部分以外の部分も含む原本そのもののページを放送するのは、「引用」等で免責することはできないでしょう。
それから、確か実験で酸の度合いを変えながら実験したということで、pHの数字がいくつか書かれたページが放送されていなかったでしょうか?(私の記憶違いでしょうか・・・)
あと、桂調査委員会で不正認定されたグラフの辺りでしょうか。
グラフのところは、論文に書かれているものなので、そのグラフだけを取り出して、その適否を論じるのは構わないのかもしれませんが、あえて慎重に伏せた部分の公開、放映は、営業秘密、知的財産の侵害につながる行為であり、公益通報的意味づけができない以上、免責はできないと思います。
この実験ノートの放映の場面は、「何も作成方法が書いていなかった」「論文画像の7割が疑義あり」といった不正の強い印象づけの中で使われていますから、なお不当性は大きいと思われます。
この辺のことは、また改めて整理して書こうと思います。
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