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米共和党ネバダ州党員集会の開催中、ラスベガスの「トランプ・インターナショナル・ホテル」で撮影されたドナルド・トランプ氏(2016年2月23日撮影)。(c)AFP/JOSH EDELSON〔AFPBB News〕
米メディアが本気で危惧し始めたトランプ氏の躍進 日本の政党が米大統領選から学ぶべきこと
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46210
2016.3.1 筆坂 秀世 JBpress
これまでアメリカの大統領選挙にさほど関心を持ったことはない。論じるほどにアメリカのことを知らない。それでも今度の大統領選挙は、いままでになく面白い。アメリカの人々の気分、感情が見事に反映しているかのように思えるからだ。
■“専門家”はトランプは失速すると言っていたが
私の今年の仕事始めは、正月早々のテレビでの討論会だった。慰安婦問題での日韓合意などが議論になったのだが、米大統領選挙も取り上げられた。その時点で私が知っていた大統領候補は民主党のヒラリー・クリントン氏と共和党のドナルド・トランプ氏ぐらいであり、議論に参加するほどの知識もなかったので、ただ黙って他の人たちの話を聞いていた。元外交官など専門家と言える人たちの話を聞いていると、トランプ氏は予備選挙が始まると失速していくということだった。むしろ台頭してくるのは、マルコ・ルビオ上院議員であろうという見方もなされていた。
民主党については、クリントン氏が圧倒的に強く、論戦力ももっともすぐれているということであった。バーニー・サンダース上院議員の名前などまったく出なかったと記憶している。
だがトランプの勢いは止まらない。クリントンも苦戦している。専門家たちの予測は、見事に外れた。別にこんな予測が外れたとしてもどうということはない。予測など、外れる場合の方が多い。問題は、なぜ外れたかということだ。
■ミレニアル世代の動きが分からなかった専門家
民主党でクリントン氏が苦戦し、サンダース氏が大健闘している最大の理由は、ミレニアル(2000年代に成人になる世代)と呼ばれる米国の若者たちが、サンダース氏を支持しているからだと言われている。
サンダース氏は、自分は民主社会主義者だと名乗っているらしい。私はテレビで最初に見た時、「民主社会主義」という字幕が出たので、「そんなものないよ。社会民主主義の間違いだろう。日本のテレビ局も駄目だなあ」と罵っていた。ところが私の方が大間違いだった。中身はともあれ、アメリカで社会主義者を名乗るのだから、相当な強者だ。
サンダースはどんな公約を掲げているのか。富裕層への増税、大企業の租税回避地(タックスヘイブン)を経由する課税逃れへの取締り強化、国民皆保険制度、公立大学の授業料無償化など、社会の公平性を重視した施策が中心になっている。
アメリカも日本同様、若者の就職難が続いている。そのうえ多くの大学生が高額の学費ローンを抱えている。朝日新聞(2月26日付)によれば、「米連邦準備制度理事会(FRB)によると残高は10年で約3倍に増え、約1.3兆ドル(約146兆円)を超えた。昨年は7割が大卒時にローンを抱え、平均残高は約3万5000ドル(約392万円)と過去最高に上った」ということである。また「ニューヨーク連銀の昨年の調査では22〜27歳の大卒者のうち44%が、大学の学位が不要の仕事に就いている」というのである。
この若者世代がサンダースを押し上げたのだが、日本の外交専門家はこうした動きはまったくつかんでいなかったのだろう。
■トランプ支持者はどんな人たちか
トランプ発言は、確かにとんでもない発言が多いが、それだけではない。
例えばメキシコの国境に万里の長城のような壁を作ると言う。「この費用は!」とトランプ氏が叫ぶと支持者が「メキシコ、メキシコ!」と叫ぶという具合だ。こんなもの誰も本気で実現すると思ってないはずだ。ジョークのようなものだ。イスラム教徒を入国させないというのもそうだ。本当に可能だと思っているわけではなかろう。
日本との関係で言えば、日米安保条約によってアメリカは日本を守るのに、日本にはアメリカを守る義務はない、とその片務性を非難している。では、アメリカ全土に日本の自衛隊基地を設置し「思いやり予算」でもぶんどるか、とでも言いたくなる。やめたければどうぞ、という日本人も少なくなかろう。実に単純な議論でいちいち批判する必要もないようなものばかりなのだ。
ただこれらの発言は、閉塞状態に置かれているアメリカの人々にとって、実に分かりやすいということなのだろう。それだけではなく、エスタブリッシュメント(支配階級)と既存の政治に対する嫌悪感の表れと見るべきだろう。確かにトランプ氏のような発言は、既存の政治家にはできない。
25日付「ワシントンポスト」紙は社説でトランプ氏が「指名候補になりそうだ」と指摘し、「想像もできないことが不可避になりつつある」と強い危機感を示すと同時に、「今こそ、良心ある共和党指導者がトランプ氏を支援できないと表明し、(指名)阻止のためにできることをする時だ」と訴えた。
だがトランプ支持者から見れば「ワシントン・ポスト」紙もエスタブリッシュメント(支配階級)なのだろう。この呼びかけが吉と出るか、凶と出るかは分からない。決めるのは、アメリカの人たちだ。いずれにしても、これが良くも悪くもアメリカの現状ということだろう。
■クリントンはキャリアや態度が裏目に?
共和党では、ジェフ・ブッシュ元フロリダ州知事が当初は本命視されていたが、早々と脱落した。父ブッシュ、兄ブッシュ、今度は弟ということにはならなかった。既存政治家の最たるものと見なされたからであろう。
この点ではクリントン氏も同様だ。夫が2期にわたって大統領を務め、自らも上院議員や国務長官として、常に政治の中枢に居続けてきた。そして堂々としており、論戦にも強い。だがこのキャリアや態度がほとんど裏目に出ているのかもしれない。
アメリカでもそろそろ女性大統領が誕生しても良いのでは、と個人的には思うがどうなることやら。
いよいよ3月1日のスーパーチューズデーである。クリントン氏がこれを乗り切れば、民主党はほぼ決まりだろう。共和党は、ルビオ氏の地元フロリダ州でも予備選が行われる。ここでルビオ氏が負けるようなことがあれば、勝利の目は完全に遠のく。いよいよ正念場になってきた。
■民主・維新が米大統領予備選から学ぶこと
ここまでアメリカ大統領選の予備選挙を見てきて、日本の政党も大いに参考にすべきことがあるように思えてきた。
すったもんだの挙句、民主党と維新の党の合流が決まった。岡田代表は、自民党からの野合批判に対して、「野合がなぜ悪い、という覚悟でやっている」という趣旨のことを語っていた。その通りである。ここまで追い詰められた民主党にとって、なりふり構っている場合ではない。維新の党の松の代表などは、もともと民主党から出ていって、今度はおおさか維新の会から放り出されたような存在だ。この二党が合流しても魅力に欠けることは否めない。
これから綱領や政策がまとめ上げられていくことになる。これから一番揉めそうなのが新しい党名である。民主党の支持組織である連合などは、「民主」という名前を残すよう求めているようだ。
名前というのは、なかなか難しい。共産党でも、支持者の中から「共産党という党名を変えてほしい」という声はずっとある。私なども衆議院の候補者として選挙区を歩いていた時、長年の支持者から、「筆さん、党名変えなよ。共産党は『国民が主人公』と言ってるんだから、我々の意見を聞きなよ」などとよく言われたものである。
どんな名前になるかまだ誰も分からないが、大事なことは名前と行動が一致していることだ。新党名を決めたところで、それでただちに支持が急増するとは思えない。
ただ自民党にもつけ込む隙はある。サンダースがなぜ若者に受けたのか、これは大いに研究し、参考にすべきことである。
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