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フランスの議会は、非常事態発動要件緩和などを盛り込んだ憲法改正案を協議している。しかし、昨年来の非常事態宣言では行き過ぎた対応で、すでに市民数百人の権利が踏みにじられている。深夜の家宅捜査や移動制限などを受けたために、トラウマを抱えたり、周囲からは白い目で見られたりしている。アムネスティ・インターナショナルの調査で明らかになった。
パリでは、昨年11月の襲撃事件で非常事態が宣言されて以降、3,242世帯以上が家宅捜査を受け、400世帯以上が移動制限命令を課された。アムネスティが聞き取りをした60人のほとんどが、家宅捜査の事前説明を受けず、強引な捜査を受けた人もいた。
裁判所に提出された捜査資料には、特定の個人が社会秩序の脅威になることを立証する事実はほとんど確認できなかった。
非常事態時の捜査は、対象者の人権を踏みにじるものとなった。失業した人もいる。ほぼ全員が、捜査を受けた後、ストレスと不安に襲われた。
ある男性は12月4日、イスラム過激派であることを示す明確な証拠がないにもかかわらず、家宅捜査を受けた。警察は令状もなく、自宅のパソコンデータをコピーし、夜間外出禁止、警察署への1日3度の出頭、居住地域外への移動禁止などの命令などを言い渡した。そのため、男性は、配達員の仕事を失い、裁判絡みの費用で蓄えも底をつきつつある。
聞き取りした人びとは、家宅捜査を受けたことが原因で、恐怖心を感じ、ストレスや体調不良に見舞われた。
また、彼らのほとんどが、非常事態の対応の仕方は差別的であり、犯罪行為の証拠があるからではなく、イスラム教徒だというだけで家宅捜査をしていると証言した。いくつかのモスクや祈りの場所は、当局により強制的に閉鎖された。
市民の人権が多大な犠牲を強いられているにもかかわらず、当局は目に見える成果をほとんど出しておらず、過度の対応に疑問が投げかけられている。報道によると、1月の家宅捜査3,242件の中で、テロ関連の犯罪捜査に結びついたのは、わずか21件だけだった。
テロの脅威というざっくりとした主張で非常事態対応の権限強化を要求するのは、あまりに安易すぎる。政府は、まだ非常事態であることに理解を求める必要があり、議員は、非常事態の対応内容と対象をしっかり精査する必要がある。また、非常対応が妥当であるとしても、その乱用と過度で差別的な適用を防止するため、適切な予防措置を設けなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2016年2月4日
http://www.amnesty.or.jp/news/2016/0208_5846.html
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