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アメリカの大富豪集団が「トランプ阻止」に動き始めた 白熱! 米大統領選2016
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47846
2016年02月11日(木) 古村治彦 現代ビジネス
9日のニューハンプシャー州での予備選で、トランプ氏、サンダース氏が勝利をおさめ、それぞれクルーズ、ヒラリー両氏に雪辱を果たした。白熱するアメリカ大統領選挙。その行方を左右する「コーク一族」の動向について、最新レポートをお届けする。
■「ビッグ5」が残った
2016年2月1日、アイオワ州の党員集会からアメリカ大統領選挙の民主、共和両党の候補者を選ぶ予備選挙が正式にスタートした。
アイオワでは、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官が、共和党はテッド・クルーズ連邦上院議員がそれぞれ勝利をおさめたが、民主党ではヒラリーの対抗馬バーニー・サンダース連邦上院議員が大善戦し、ほぼ引き分け。
一方の共和党は、これまでトップを走っていた実業家のドナルド・トランプが2位、マルコ・ルビオ連邦上院議員が3位。トランプ旋風が本番に入って少し勢いを失い、マルコ・ルビオが浮上する…という、民主・共和ともに白熱した展開を見せている。
『イスラエル・ロビー』(ミアシャイマーとの共著)でも有名なアメリカの政治学者であるハーヴァード大学教授のスティーヴン・ウォルトは自身のブログで、ヒラリー・クリントン、バーニー・サンダース、テッド・クルーズ、ドナルド・トランプ、マルコ・ルビオの5名を「ビッグ5」と形容している。これは、テッド・クルーズとマルコ・ルビオが、トランプを追い抜く可能性を秘めた有力候補に躍り出たことを示唆している。
私は2016年1月14日に「『コーク一族』米大統領選挙の命運を握る大富豪ファミリーの正体」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47359)という記事を本サイトに寄稿した。その中で、私が翻訳した『アメリカの真の支配者 コーク一族』の主人公で、米国屈指の資産家であるチャールズ・コーク、デイヴィッド・コークのコーク兄弟が、今回の大統領選挙において大きな影響力を発揮するだろうことを指摘した。
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大統領選挙が白熱するなか、その行方を左右する力をもつ彼らの最新動向について、ここで述べておきたい。
■コーク一族「トランプ嫌い」の理由
アメリカの大企業「コーク・インダストリーズ」の経営者であるコーク兄弟は、現在のところ特定の候補者に対する支援を表明していないが、2016年には約8億8900ドルの政治資金を投入することを既に明らかにしている。また、支援の「候補者」はすでにある程度絞られてはいる。
コーク兄弟を中心に、巨額の政治献金をしている富豪たちは定期的に会合を開いており、2015年1月に開催された会合にはテッド・クルーズ、マルコ・ルビオ、ランド・ポール連邦上院議員が呼ばれている。
このうち、ランド・ポールは、アイオワ州の党員集会での結果を受けて大統領選挙からの撤退を表明してしまった。その結果、クルーズとルビオが有力候補として躍り出たわけだが、この2人ならば、どちらであってもコーク兄弟としては支援を表明しやすい。支援の対象はこの2人に絞られていると言ってよい。
一方のドナルド・トランプは、共和党の各候補者がコーク兄弟の支援を受けようとしていることに対して痛烈な非難を行っている。2015年8月2日に、トランプは、SNSのツイッター上で、「コーク兄弟からお金を貰いにカリフォルニアまで出かける共和党の候補者たち全ての幸運を祈る。それにしても貴方たちは操り人形なのか」と皮肉ったのだ。
このトランプの「口撃」に対して、コーク・インダストリーズの総帥でもあるチャールズ・コークは、2016年1月8日付『フィナンシャル・タイムズ』紙に掲載されたインタヴュー記事で反撃している。トランプの「イスラム教のアメリカ入国禁止」発言を取り上げて、「自分の自由を守りたいならば、まず自分が好きではない人の自由を守らねばならない」と強く批判した。
コーク兄弟は、リバータリアニズムという政治思想を信奉している。リバータリアニズムとは、個人の自由と自由市場を尊重し、政府の介入と過度な税金に反対する思想だ。個人の自由の尊重の観点からすると、トランプ氏の「個人の行動は制限すべきだ」という主張とは真っ向から対立する。
チャールズ・コークは妊娠中絶や同性愛も個人の自由だとして認めているので、コーク兄弟を嫌っているリベラル派とこの点では意見が一致しているのは何とも皮肉なところだ。
リバータリアニズムの立場からすれば、アメリカ軍の海外派兵は政府が人々から税金を搾り取って行う無駄な行為であり、「外国のことはその国が何とかすべきだし、そのためにアメリカの若者たちが遠い外国で死ぬことはない」との考えだ。
コーク兄弟の兄・チャールズはヴェトナム戦争当時も反共の立場にありながらも、リバータリアニズムの立場から、アメリカ軍のヴェトナム派兵には徹底して反対したことがあった。また、チャールズは、地上軍を派遣しても、テロリストたちがその地域の人々の間に逃げ込んでしまえば根絶することなどとてもできないという「正論」も述べている。
■トランプよりはマシ
対イスラム国という点でいえば、テッド・クルーズも「IS(イスラミック・ステイト)に対してじゅうたん爆撃せよ」と訴えており、マルコ・ルビオも、アラブ諸国の軍隊を主体にしつつ米地上部隊を派遣すべきだと主張している。3者とも、コーク兄弟の意向と違う主張である。
それでも、コーク兄弟の選択肢としては「トランプと、クルーズ、ルビオのどちらがよりましな選択か」となると、それは断然クルーズ、ルビオということになるのだ。
実は、コーク兄弟が構築している大口寄付者ネットワークに参加している大富豪で共和党を支持している人々は、ドナルド・トランプの躍進に危機感を覚えており、それを阻止しようという動きに出ている。
彼らは、貧困層の不満を背景にしたトランプの過激な主張への嫌悪感、共和党がトランプのためにかき回されて分裂してしまう危険性、トランプでは本選挙で勝利できないことへの不安などから、トランプ旋風の鎮静化を願っているのだ。
2016年1月30日、31日の週末、コーク兄弟の主催の会合がカリフォルニア州の高級リゾートで開かれた。ここにコーク兄弟のネットワークに参加している約500名の共和党支持者が全米から集結した。
このネットワークの会費は1人当たり年間10万ドル(約1200万円)。つまり、参加者は全員富豪である。ここでチャールズ・コークは、2015年には自分たちのネットワークが4億ドル(約480億円)を政治に投じたと発表し、2016年は選挙の年であるので、その額は8億8900万ドル(約1070億円)になるだろうとも述べた。
この会合で参加者たちは大統領選に限らずさまざまな議題について話し合ったようだが、メインとなったのはドナルド・トランプの躍進についてだったと報道されている。
彼らは、「トランプの勢いが自然と落ちていくことを待つが、トランプ旋風が続く場合には、勢いを止めるために動き出さねばならないということで合意した」と言われている(すでに彼らの一部はテッド・クルーズに対して積極的に政治献金を行っている)。
■ヒラリーをも打ち負かす可能性
2016年2月9日に行われたニューハンプシャー州の予備選挙では、事前の予想通りに、共和党はドナルド・トランプ、民主党はバーニー・サンダースがそれぞれ勝利した。サンダースはニューハンプシャー州の隣のヴァーモント州選出の連邦上院議員であり、準地元と言える場所であったが、事前予想よりも大差をつけてヒラリー・クリントンに勝利した。
今回、トランプの勝利の陰に隠れがちだが、オハイオ州知事のジョン・ケーシックが2位、と元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュが4位、とそれぞれ躍進したことにも注目すべきだ。
クルーズは3位、ルビオは5位。ケーシックとブッシュの伸びは、ニューハンプシャー州全体が元々リベラルであること、トランプの過激な主張とクルーズやルビオの対外強硬姿勢を嫌う穏健な共和党員が多くいることを示しているといえよう。
アイオワ州の党員集会とニューハンプシャー州の予備選挙の結果、トランプ、クルーズ、ルビオ、ケーシック、ブッシュの5人が共和党の主要な候補者としてそれぞれ存在感を見せた。これからは彼ら5人での混戦状態がしばらく続くだろう。
トランプ旋風はこれからも続くだろうが、コーク一族らアメリカの富豪たちは「トランプ阻止」のため本格的に動き出すはずだ。
予備選挙が3月に入り、クルーズ、ルビオ、ブッシュの地盤であるフロリダ州やテキサス州をはじめとする南部へと進んでいくと、彼らの巻き返しの可能性も高くなる。
そして、クルーズとルビオの一騎打ちということにでもなれば、コーク兄弟にしてみれば願ったりかなったりというところだろう。この2人のうち、勝利したほうが本格的にコーク兄弟の支援を受ければ、民主党の最有力候補ヒラリー・クリントンを破る可能性もあるのだ。コーク一族がこれからどう動くのか。アメリカ大統領選は目が離せない。
“現代版ロックフェラー家”。2016年大統領選挙のカギを握る、アメリカで最も嫌われている一族の謎に迫る
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