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分裂するヨーロッパ…EU、英国離脱で一気に解体か
http://biz-journal.jp/2016/02/post_13728.html
2016.02.10 文=渡邉哲也/経済評論家 Business Journal
今、ヨーロッパが揺れている。
EU(欧州連合)や共通通貨・ユーロの導入でひとつになろうとしてきたヨーロッパだが、2010年からのギリシャ・ショックに続き、昨年には難民問題も発生したことで、もはやバラバラになりつつあるのだ。
ヨーロッパが統合に向けて動いてきたのは、超大国・アメリカに対抗するためである。約3億2000万の人口を持つ巨大マーケットであり、世界的な金融支配を行うアメリカに対抗するには、もはや一国だけの力では不可能だ。
そこで、ヨーロッパ全体がひとつになることによって、約5億人ともいわれる一大マーケットをつくり上げ、強大な経済体としてアメリカに対抗する。そうした文脈で生まれたのが、EUであり、ユーロであったといえる。
また、かつて西側諸国の敵であった旧ソビエト連邦が崩壊したことも、ヨーロッパがひとつにまとまる大きな要因となった。旧ソ連がなくなったことで、ヨーロッパ諸国はアメリカの軍事力の傘の下に入らなくても済むようになったからだ。
しかし、その統合体制も、14年3月にロシアが半ば強引にクリミア半島を編入したことによって、大きく変化することになった。また、同時にヨーロッパ自体の大きな欠陥が露見したことで、今ヨーロッパは分裂に向けて動きつつあるのが現状だ。
その欠陥の典型が、ギリシャ問題だ。同じユーロ導入国であっても、国の状況はさまざまで、ドイツ・フランスとギリシャのように、国家間に大きな経済格差のあるケースも少なくない。もともと、文化的にも民族的にも別々の国だったわけで、当然といえば当然である。
それら別々の存在を統合しようとする時、必要になるのは「絶対的な力」か「絶妙な力のバランス」である。しかし、近年のギリシャ問題によって、ヨーロッパの力のバランスは崩れ始めたことが露見した。
08年に発生したリーマン・ショックによって、ヨーロッパの金融市場は大きなダメージを受けた。そのため、ヨーロッパの金融資本はリスクの高い新興国から安全な国、つまりドイツやフランスなどの大国に逆流することになった。
そのあおりを食うかたちで、ヨーロッパの経済弱者の国が破綻危機に瀕し、それらの国々を指す「PIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)」という総称まで生まれた。
ずっと借りられると思っていたお金を「すぐに返せ」と言われて、すぐに返せる人はいない。しかし、現実にはリーマン・ショックによって「ずっとお金を借り続けることができる」という幻想が崩壊してしまった。そのため、経済危機が連鎖したというのが、10年頃にヨーロッパを襲った、いわゆるソブリン危機の背景なのである。
■ギリシャ救済をめぐって対立するヨーロッパ
そして、なかでも最も重症だったギリシャが、デフォルト(債務不履行)の危機に陥ったわけだ。ギリシャはもともと産業基盤が弱く、経済は公務員主体の社会主義的なシステムである。仕事がないので公務員が多く、公務員でなければ仕事がない……。完全に歪んだ構造体だったわけだ。
なぜ、そんな歪んだシステムが成立していたのだろうか。それは、04年のアテネオリンピック開催と、それに伴う「ギリシャはこれから発展するだろう」という期待、さらに先進国の貸付があったからだ。それらによって、成り立っていたかに見えたギリシャ経済だったが、09年の政権交代によって財政赤字の隠蔽が明らかになり、一気に坂を転がり落ちていったことは周知の通りだ。
このギリシャ救済をめぐっても、ヨーロッパは割れた。先進国側と新興国側で対応が大きく違ったのだ。
当然ながら、貸し手の国と借り手の国の立場は違い、それぞれの主張も違ってくる。貸し手の一番手であるドイツは「お金を借りた側が悪い」「すぐにお金を返せ」と叫び、放漫財政を続けるギリシャに対して緊縮財政政策を求めた。
しかし、ギリシャは「貸した側が悪い」「そんなことを言われても、急には返せない」の一点張りだ。当然、その間で話し合いなどまとまるわけがない。その結果、ギリシャの債務危機は深刻化し、先進国、特にドイツと他国の対立は決定的になりつつある。
また、その対立によって、EUおよびユーロの存在意義も疑問視されつつある。物事はうまくいっている時はいいが、ひとたびケチがつけば不満が噴出するのが常である。みんなにとってメリットがあれば、EUやユーロの存在および拡大路線は歓迎されるが、デメリットのほうが目立ってきた時には、それを否定する動きも出始めるというわけだ。
その結果、イギリスではEU離脱の是非を問う国民投票が行われることが決まっており、早ければ今年6月にも実施される。仮にこの投票でEU離脱が肯定されれば、EUという壮大な社会実験は失敗に終わった、という見方が大勢を占めることになりかねない。また、そのほかの国においても、「このままEUにとどまるべきか」「ユーロを使い続けていていいのか」といった議論が生まれ始めていることは事実である。
そんな中、昨年にはシリアから大量の難民が流入するという新たな問題が発生した。その影響については、次回に見ていきたい。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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