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欧州の「命運」はこの1年の動向で決まる 英国のEU残留の成否が栄枯盛衰を占うカギ
http://toyokeizai.net/articles/-/100348
2016年01月16日 カール・ビルト :スウェーデン元首相 東洋経済
原文はこちらhttp://toyokeizai.net/articles/-/100301
新しい年を迎えようとする欧州連合(EU)は、累積する政治課題という破滅的な状況に直面している。これまでの戦略は一連の苦難を混乱させたに過ぎず、もはや十分でないかもしれないのだ。
無論、EUに危機管理経験がないわけではない。たとえばユーロ危機は連合を破壊すると広く考えられたが、数年間にわたる厳しい首脳会談を経て、多かれ少なかれ問題への対処がなされた。ギリシャの状態は良くないままだが、EUとユーロ圏への加盟は維持された。そしてEUの経済政策強調の仕組みはより強化された。
■「戦火の環」
しかし、今日の問題はEUがこれまで直面した中で最も厳しい。EUのリーダーたちがかつて夢見た「友情の環」どころか、欧州の近隣地域は、一連のイスラム過激派によるテロリズムとロシアのウクライナ東部侵略を主因に「戦火の環」と化した。
中東、特にシリアの紛争に端を発する難民危機の深刻化が、こうした課題のひとつである。確かに、現在EU圏内へ入ろうと試みている人々は祖国を追われた人々のほんの一部で、今年到着すると予想される難民100万人はEU人口の0.2%にすぎない。だが、これほどの大人数がたった数カ国にかくも短期間で到着したために、EUの処理能力は限界に達し、シェンゲン域内でのいくつかの国境で検問が再開された。
2016年にEU各国は、国境管理のための主要な施策と移民受け入れ負担の公平化に向けて合意することで、喫緊の課題にめどをつけられるだろう。しかし、難民を欧州社会へ融合させ、外国人排斥的な政党の興隆に対抗するという長期的な課題への対処は、いっそう困難になるだろう。
難民危機とその余波を抜きにしても、EUの直面する課題は手強いものだ。環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)とデジタル単一市場の進展はいずれも、EUのグローバルな競争力にとって重要であり、計画されている資本市場同盟の創設もまた同様である。こうした動きに留まらず、より楽観的であった2003年に作成された「グローバル外交・安全保障戦略」の新たなバージョンが、6月に発表される予定だ。
この困難な課題を遂行するためにEUは、各国が同時かつ効果的にさまざまな局面で協力し合って最善を尽くさねばならない。英国がEU離脱をちらつかせている現在、そうした姿勢はこの上なく困難になるだろう。キャメロン英首相が欧州首脳と2月までに合意に達する可能性は高まっているように見えるが、同首相が2017年実施を公約したその後の国民投票で英国の有権者が合意を支持する可能性はおそらく、良くて五分五分であろう。
もちろん、国民投票とは本質的に予測不能なものだ。12月3日にデンマークで、司法内務分野でのEUとの連携拡大に関する国民投票が行われた。反対を予想したものはほとんどいなかった。そして、53%の反対票という激しい拒絶を予測したものはさらに少なかったであろう。
明らかに、難民の急増が結果に影響を及ぼした。同様に、これから英国の国民投票までに起こる新たな危機的状況はどんなものであれ、投票に近い時期であればあるほど、結果に影響しうる。
■英国民投票の結果が10年後を左右
英国民投票の結果がEU残留反対となれば、欧州の基本秩序に対し最悪の事態が予想される。地政学的なEUの影響力は大きく損なわれ、他の加盟国内での反EU勢力の攻勢が強まるだろう。半世紀以上にわたって拡大してきたEUは、突然縮小し始めるだろう。
ひとつ確かなのは、今後1、2年の間にEUの姿が大きく変わるだろうということだ。英国の脱退に刺激され、崩壊の可能性に気もそぞろで、直面する他のあらゆる問題に揺れ動くばらばらの連合となるかもしれない。あるいは、英国が離脱せず、難民、国境、亡命といった問題に着実に対処し、TTIPとデジタル単一市場の確立に向かう強い連合になるかもしれない。
こうした意味で、来たる年が欧州にとって良いものとなるか否かが、今後10年を占う上で非常に重要だと言えよう。欧州と、米国を始めとする関係各国にとって。
(週刊東洋経済1月16日号)
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