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オバマ大統領が一般教書演説「世界の安全は各国で分担」[NHK]
1月13日 17時36分
アメリカのオバマ大統領は、任期中最後となる一般教書演説を行い、安全保障面の優先課題として、過激派組織IS=イスラミックステートの壊滅を挙げる一方、アメリカが過度な負担を負わず、同盟国や友好国と分担して、世界の安全を確保したいという考えを強調しました。
来年1月に任期を終えるオバマ大統領は12日、アメリカ議会で、およそ1時間にわたって、内政・外交の施政方針を示す最後の一般教書演説を行い、雇用の改善や、医療保険制度改革の実現など、就任以来7年間の成果を強調しました。
そして、外交・安全保障の面でオバマ大統領は、イランの核開発問題の最終合意や、54年ぶりのキューバとの国交回復、さらに地球温暖化対策の国連の会議、COP21の合意などを挙げて、みずからの成果を強調し、ISの壊滅を優先課題に挙げました。
一方で、国際社会でのアメリカの指導力が失われたと指摘されていることに対して、「敵が強くなり、アメリカが弱くなっていると言われるが、アメリカ軍は歴史上、最強だ。重要な懸案について、世界の人が頼るのは、中国やロシアではなくアメリカだ」と反論しました。ただ、「世界の警察官をやめ、どのようにアメリカの安全を保ち、世界を導くかが問題だ」とも述べ、アメリカが過度な軍事的な負担を負うことには改めて否定的な姿勢を示しました。
イスラム過激派によるテロや、ロシア、中国の動向など、国際秩序の不安定化も指摘されるなか、オバマ大統領が最後となる一般教書演説でどのような姿勢を見せるのか注目されましたが、同盟国や友好国と負担を分担しながら、世界の安全を確保すべきだという考えを強調するものとなりました。
野党・共和党 全米向けに反対演説
オバマ大統領が一般教書演説を行ったあと、野党・共和党は全米に向けてテレビで反対演説を行いました。共和党が反対演説を行う人物に選んだのは、サウスカロライナ州のニッキー・ヘイリー知事で、ヘイリー知事がインドからの移民の家庭の出身で2人の子どもの母親でもあることから、共和党としては、大統領選挙を視野に、移民や女性の支持を得ようというねらいもあったとみられます。
ヘイリー知事は演説の中で、「オバマ大統領の高らかな主張には全く実績が伴っていない」と批判するとともに、「任期はもうすぐ終わり、アメリカが新しい方向に転換するチャンスが訪れる」と述べて、ことし11月に行われる大統領選挙で政権交代が実現することに期待を示しました。さらにヘイリー知事は、不法移民や目的がはっきりしない難民の入国を止め、テロや犯罪を防がなければならないと強調したほか、オバマ大統領が成果として強調する医療保険制度改革については、「悲惨な制度は撤廃し、コスト削減と医師の確保につながる改革を行わなければならない」と訴えました。
オバマ大統領の一般教書演説を巡っては、このほか、議会下院の外交委員会の委員長を務める共和党のロイス議員が声明を発表し、「オバマ大統領はこの7年間、同盟国よりも敵を助長し、国に危険をもたらした」としたうえで、核実験を行った北朝鮮への対策や、過激派組織IS=イスラミックステートを壊滅するための包括的な戦略が示されなかったと指摘し、「オバマ大統領は高まる脅威を次の政権に押しつけようとしているようだ」と批判しました。
クリントン氏は称賛 共和党候補は一斉に批判
オバマ大統領の一般教書演説のあと、アメリカ大統領選挙で与党・民主党の最有力候補とみられているクリントン前国務長官は、みずからのツイッターで、「オバマ大統領の指導力のおかげで、アメリカはさらによくなった。進展があった7年であり、後退させるのではなく、前進させる必要がある」と述べ、オバマ大統領の成果をたたえるとともに、大統領を目指す決意を示しました。
一方、野党・共和党では、支持率トップのトランプ氏が、ツイッターで、「とにかく退屈で、無気力で見るに堪えなかった」と述べたほか、支持率2位のクルーズ上院議員も、「オバマ大統領が達成した外交成果は、『アメリカに死を』と叫ぶ過激なイランに多額の資金を送ることになっただけだ」と批判ました。また、共和党のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事も、「過激派組織IS=イスラミックステートが台頭し、北朝鮮は核実験を行い、シリアは混乱に陥っている。オバマ大統領は、安全になったというが、別の世界に住んでいるに違いない」と、オバマ大統領のこれまでの外交政策を痛烈に皮肉るなど、共和党の各候補は一斉に演説を批判しました。
米メディアは
オバマ大統領の一般教書演説について、ウォール・ストリート・ジャーナルは過激派組織IS=イスラミックステートなどによるテロが世界各地で相次ぐ中、「大統領が提示した楽観的な見方は、多くのアメリカ人が感じている気分とは対照的だった」と指摘しました。
またニューヨーク・タイムズはオバマ大統領が一般教書演説で「私が大統領として後悔しているのは、党派間の悪意や疑念が改善するよりもむしろひどくなったことだ」と述べたことをあげて、「希望と変革をかかげ、政治そのものを変えると誓ったオバマ大統領だったが、最後の一般教書演説でその実現には遠く及ばなかったことを認めた」と論じています。さらに、ニューヨーク・タイムズは、オバマ大統領が演説のなかで「人種や宗教を理由に人を攻撃するような政治は拒否しなければならない」と述べたのは、ことしの大統領選挙に向けた野党・共和党の指名争いでトップを走るトランプ氏が「イスラム教徒の入国を禁止すべきだ」などと発言したことを、名指しすることは避けつつも批判したものだ、と指摘しました。
一方、ABCテレビは「オバマ大統領がこれほど政治的な脚光を浴びることはもうないかもしれないが、彼はその機会を使って国民の注目を自身の成果に向けさせ、遠い昔に消えてしまった情熱を取り戻そうとした」と分析しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160113/k10010369921000.html
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