http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/317.html
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※ 関連参照投稿
「プーチン大統領「今後も最新兵器使用」:プーチン氏、サウジのサルマン国防相(副皇太子)と会談、IS撲滅を共通の目標に」
http://www.asyura2.com/15/warb16/msg/173.html
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[エコノミスト]サウジ副皇太子が描く青写真
長年、サウジアラビアは生気がないように見られてきた。莫大な石油の富と米国の力を後ろ盾に、国内を平穏に保つと同時に、近隣諸国ににらみを利かせてきた結果だ。だが、今や石油価格は急落し、米国が中東での指導的立場から身を引こうとしている。こうしたなか、サウジの権力は新世代――特にサルマン国王のお気に入りの息子のムハンマド副皇太子(30)――に移った。砂漠の王国は、変革の嵐によって目覚めようとしているかのようだ。
国営石油会社の株式公開検討
サウジアラビアは1月2日、47人の処刑を執行した。大半はアルカイダと関係のあるテロリストだったが、サウジ王家に批判的だった著名なシーア派聖職者も含まれていた。これに対する抗議として、イランの首都テヘランにあるサウジ大使館が放火されると、サウジはイランとの外交関係や通商関係を断絶し、航空便も停止した。
サウジは、これとは別の強硬策も見せる。ムハンマド副皇太子が、これまで閉ざされてきたサウジの経済と政府を開放する青写真を策定したのだ。ここには、国営石油会社サウジアラムコの株式公開の可能性も含まれているという。それは、サウジ王家の存亡を左右し、アラブ世界の未来を変えることにもなる。
2014年に1バレル110ドルだった原油価格が、今や35ドル弱まで急落している。歳入の90%を石油に依存する政府にとって、原油安は時限爆弾のようなものだ。財政赤字は昨年、国内総生産(GDP)比15%にも膨れ上がった。
1990年代に原油価格が下落した時、サウジは多額の借り入れを行った。2000年代は、好調だった中国経済によって救われた。しかし、今回の原油安については、サウジの支配層を含め、原油価格が3ケタに戻ると考えている人などいない。それどころか、支配層は自国経済の変革の必要性を知っている。ムハンマド副皇太子は1月初旬に本誌(エコノミスト)の取材に応じ、サウジの抜本的な再設計ともいえる改革の青写真を描いてみせた。
最初に取り組むのは、財政再建だ。たとえ原油安が続いたとしても、今後5年間で財政赤字を解消するのが目標だ。そぐべきぜい肉はたくさんある。しかし、これは危険の多い作業でもある。税金をとらず、オイルマネーによって教育や医療の無償提供に加え、電力、水道、住宅の料金などを手厚く賄ってきた国のシステムを解体することを意味するからだ。
15年は、最後の数カ月間の支出を削減したことで、財政赤字がGDP比の20%超に跳ね上がるのを食い止めた。16年の予算には、ガソリン、電力、水道料金の大幅な値上げが含まれている(ただ、多額の補助金が出る状況に変わりはない)。ムハンマド副皇太子は5%の付加価値税、糖分の多い飲料やたばこに対する悪行税、空閑地に対する課税などの新税の導入も確約している。
税金や補助金の改革は初めの一歩にすぎない。サウジ国民の約7割は30歳未満で、労働者の3分の2は政府が雇用している。30年までに労働人口が2倍に増えると予想されている。今の国家が統制する経済の仕組みを一新し、産業の多角化や民間企業の振興により、マーケット主導の効率性を導入しないかぎり、この国の繁栄はない。
航空や通信含め民営化を模索
政府は必要最低限の分野を除き、医療・教育から国有企業に至るまで、民営化や民間による公共サービスの提供の可能性を模索している。民間が提供する医療制度の創設計画もある。航空会社や通信会社、電力会社など20以上の政府機関や国有企業について、完全に、もしくは部分的に民営化できないかを検討している。
ただ、こうした青写真は実現するのだろうか。言うのは簡単だが、障害もある。サウジは以前も改革を約束し、結局はできなかった。この国の資本市場は脆弱で、官僚の能力はそれ以上に乏しい。若者や石油以外の産業、観光インフラなどに対する投資は必要だが、投資家がサウジの将来を信じられない限り、投資というものは実現しない。その信頼を築くのは難しい。
理由の一つは、ギリシャ並みの緊縮財政が困難で国民に不人気だからだ。国として国民に手厚い公共サービスを提供してきたのは、政治的な権利を与えていないことの埋め合わせでもある。支出削減を国民が受け入れるには、ある種のガス抜きが必要だが、こうした対策に政府は消極的だ。最近、女性が(ほぼ無力な)地方議会に出馬や投票することが許されたが、それはすでに亡くなった前国王のアイデアだ。
サウジは宗教的な専制主義を和らげる気はなさそうだ。ムハンマド副皇太子は、女性の運転禁止といった問題について保守的な聖職者らと戦う意志はほとんどない。
地政学も問題を複雑にしている。イランが拡大主義を強めるにつれて、サウジはスンニ派の擁護者として介入した。自国やバーレーンなどスンニ派が支配する国のシーア派不満分子のほか、イエメンのシーア派武装組織「フーシ」、シリアのアサド大統領など、イランの支援を受けているシーア派勢力と対峙してきた。
周辺国刺激は経済繁栄損なう
サウジは、地域の安定のためにはテロリストにメッセージを送る必要があると主張する(それゆえの処刑というわけだ)。サウジに言わせれば、イランはペルシャ帝国の再構築に躍起になっており、それに抵抗し、自国の利益を守らねばならないのだという。だが、この議論は誤っている。サウジは宗派対立している片方のリーダーになってしまうリスクがある。
イエメンでの戦争は泥沼と化している。サウジからのエジプトや他のスンニ派同盟国に対する支援は枯渇気味だ。サウジの国防と安全保障に対する支出は、政府支出の25%以上を占めており、今後、縮小していく国家予算のより大きなシェアを占めるようになる。地域の緊張関係は、民間投資を妨げることにもつながる。混乱に陥った地域の経済に、いったい誰が巨額な金をつぎ込むのか。
政府は、国内外での大胆な行為が「強いサウジ」の象徴だと考えているようだ。しかし、強硬な外交姿勢は国民には受けがいいかもしれないが、それによって周辺国を刺激したり、国内の社会改革を阻害することにつながったりすれば、経済的な繁栄はない。ムハンマド副皇太子が、国を破壊するのではなく、再構築したいというのであれば、そのことをよく理解する必要がある。
(1月9日号)
英エコノミスト誌の記事を翻訳し、火曜付で掲載します。電子版▼ビジネスリーダー→グローバル→The Economist
[日経新聞1月12日朝刊P.4]
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