中国、北朝鮮の瀬戸際戦略で窮地に陥る 中国の習近平国家主席(中央)と妻の彭麗媛氏(右)は北京の天安門広場で韓国の朴槿恵大統領(左)を歓迎した(15年9月) PHOTO: EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY By ANDREW BROWNE 2016 年 1 月 7 日 18:33 JST 【上海】朝鮮半島は中国への玄関口となっている。かつてこの地域の皇帝たちが常に警戒する場所でもあった。現代の中国の国家主席もその警戒を怠ることはない。 北朝鮮が崩壊すれば、中朝国境まで一気に押し寄せるであろう米軍に、中国北東部の産業の中心地を貫いて首都北京へと続く道路を制覇されてしまいかねない。これは中国にとって悪夢のシナリオだ。 北朝鮮の核実験によって同国は再び外交上の注目点となっている(音声は英語) この戦略的現実は北朝鮮を支配する金一族を大胆にしている。水爆実験に成功したという北朝鮮政府の6日の主張が事実だとすると、北朝鮮が中国政府の最も深刻な不安にどのように付け込んでいるかを示す最新の衝撃的な事例と言えるだろう。「若き将軍」金正恩氏は自分の国が中国にとって絶対に必要な緩衝装置――中国人は「唇歯関係」と言う――であることを知っている。金氏は中国から罰を受けることなくほぼ何でもできてしまう。 北朝鮮政府が4回目だと主張する核実験をその独裁者は米国への挑戦と表現した。これは米国政府の注意を引き、危機を作り出し、外交上の譲歩を引き出すための長年にわたって築かれてきた無謀な行動パターンと一致する。 一方、金氏は窮乏した自分の国に食糧とエネルギーを提供し、その独裁政権を存続させてくれている中国とおなじみの心理戦も行っている。 断固たる権威主義者である中国の習近平国家主席は決してもてあそばれるような指導者ではない。近隣の平和だけではなく、中国の経済安全保障をも脅かす北朝鮮の行動に対して、習主席はその怒りを前任者たち以上に態度で示してきた。金第1書記が北京では受け入れ難い人物だとすると――中国政府が同氏をまだ招待していないという事実からそう推測できる――韓国の朴槿恵大統領はお気に入りの賓客となってきた。直近では昨年の対日戦勝70年記念軍事パレードで最前列に座るなど、朴大統領は中国を頻繁に訪問している。 象徴的な行動で政治が動くことの多い地域において、外交的な招待があるかないかには極めて重要な意味がある。 とはいえ、中国政府にとって大事なのは現実的な政治である。中国は東アジアの支配をめぐって米国と争う状態にあると考えている。最近、その争いは南シナ海で激化してきた。中国は数日前、米軍を追い返すという意図を象徴した複数の人工島の1つ、ファイアリークロス礁に造成した飛行場に初めて航空機を着陸させた。しかし、中国政府の観点からすると、朝鮮半島こそが本土に近く危険な闘争地域ということになる。北朝鮮の崩壊は米国にとっての勝利、中国にとっての敗北となるだろう。 さらに言えば、それは中国のライバルである日本を基礎とする米国の東アジア同盟体制の勝利にもなる。 北朝鮮の崩壊は中国の国内政治にも深刻な影響を与えるだろう。名目上の社会主義国が破たんするのを目の当たりにした中国国民は、次は自国の政権なのではと考えるはずだ。中国の指導部は米国のことを共産党支配の打倒を目論む国と捉えている。このことは、北朝鮮政府と同じ船に乗っているかのように中国の指導部も政権の脆さを感じていることを示唆する。 たとえそれが中国にとってエスカレートする挑発を容認することになるとしても、北朝鮮の金体制は維持されなければならないのである。 習主席にとってこうした容認にリスクがないわけではない。水爆実験を行ったという北朝鮮政府の発表は習主席への個人的な侮辱である。特に中国の世論が反北朝鮮に傾く中、おとがめなしでは弱みを露呈してしまう恐れがある。中国が超大国として米国と対等になり、尊敬と敬意をもって扱われるという習主席の理想をも台無しにしてしまうだろう。 それに加えて、中国が北朝鮮政府に厳格に対処しない場合、韓国では失望感が生まれ、習主席が進めてきた韓国との関係緊密化の誠意についても疑問が呈されることにもなる。 北朝鮮が水爆実験に成功したと発表した時間に核実験サイト周辺ではマグニチュード5.1の地震が観測された 今回、金氏は支援国である中国をついに本気で怒らせたのだろうか。中国の公式な反応は即座にそれを示唆するものではなかった。中国外務省の華春瑩副報道局長は中国として北朝鮮に「厳正な申し入れをする」と述べた。副報道局長は追加的な制裁措置の可能性については明言せず、朝鮮半島の非核化を達成するための話し合いが必要だといういつものセリフを繰り返した。
では、何が起きたら中国は北朝鮮を見捨てざるを得なくなるのか。 北朝鮮人が越境して殺人や略奪を行っているという報道がいくつかあった後、中朝国境沿いの村や町では緊張が高まった。6日の核実験に伴う揺れでは中国の学生たちが校庭からの避難を余儀なくされた。しかし、その程度の騒動で済んだのは幸いだった。北朝鮮が制御不能に陥って、かつては満州と呼ばれていた地域、中国の重工業の中心地に大勢の絶望した難民が押し寄せた場合の大混乱は想像するに難くない。 仮に日本が自衛のための核兵器配備をほのめかしたり、米国が韓国でミサイル防衛を展開し始めたりしたら、中国は北朝鮮政府を見捨てようという気になるかもしれない。 習主席の忍耐が限界に達する可能性もある。金氏肝いりの女性音楽グループ「モランボン楽団」は1カ月前、北京での初コンサートを予定していたが、公演直前になって急きょ帰国してしまった。コンサートが中止になった理由は不明だが、そのタイミングからすると、中国政府の怒りを買った可能性がある。その直前に金氏が水素爆弾を保有していると発表していたからだ。 コンサートの中止はささいな出来事かもしれないが、隣国間の不和が個人的なものになりつつあるというメッセージだった可能性もある。今回の核実験を受けて、中国政府は北朝鮮に対してこれまで以上に厳しい制裁を科すことだろう。かといって、中国が北朝鮮を見捨てて、米国に勝利をプレゼントすることもなさそうだ。 関連記事 北核実験、米大統領選で外交論戦が急浮上 北朝鮮の水爆実験、危険な新段階に−威力に疑問も 中国、今年は改革の正念場に
【社説】北朝鮮「水爆」が示す新・核拡散時代 金日成広場での軍事パレード(2015年10月、平壌) PHOTO: AFP PHOTO/KCNA VIA KNS 2016 年 1 月 7 日 19:15 JST 世界の大半の政府は北朝鮮が6日に実施した核実験を非難するだろうが、さらなる現金と引き替えに独裁者・金正恩第1書記から軍縮の約束を引き出そうとする以上のことはしたくないだろう。これは危険な新たな核拡散時代に向けた大きな1歩と考える方が現実的だ。世界は自らの責任でその状況を無視している。 北朝鮮は、2013年に続き4回目となった今回の核実験は小型水素爆弾の実験で「完全に成功」だったとしている。これが事実なら技術が大きく進歩したことになる。水爆の威力は、北朝鮮が以前に実験した核爆弾の何千倍にもなり得る。ただ、北朝鮮はうそをつくことが多い。ホワイトハウスは6日、初期分析から水爆ではなかったことが示唆されるとした。 だが仮に高度な原爆だとしても、金第1書記は広島と長崎に落とされた原爆よりも強力な武器を得ることになる。北朝鮮のウランとプルトニウムの生産は2020年までに原爆50〜100発分に達する見通しだ。 北朝鮮の弾頭小型化とミサイル発射技術が進歩しているため、脅威はアジアのはるか先まで広がっている。北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のビル・ゴートニー司令官は昨年、北朝鮮には「ロケットに搭載した核兵器を(米)本土に到達させる能力」があると述べている。 北朝鮮が先月行った潜水艦発射ミサイル実験は成功したようだ。同国はイスラエル空軍が07年に破壊したシリアのプルトニウム濃縮工場の建設を支援したほか、イランとは長距離ミサイル開発や恐らく核技術でも協力している。 さらに視野を広げてみると、軍備管理という幻想に支えられた世界の核拡散防止体制が急速にほころびを見せている。対北朝鮮政策の失敗は、1994年に成立した米朝枠組み合意にさかのぼる。当時のクリントン大統領は、食料やエネルギー援助と引き替えに「北朝鮮が核開発を凍結し、その後廃棄する」ことになるため、「いい取引」だと自賛した。北朝鮮は現金を受け取り、原爆の開発を続けた。 ブッシュ政権は当初こそ強い姿勢で臨んだが2期目には逃げ腰になり、やはりカネで取引する路線を取った。われわれは同じ道をたどらなかった点でオバマ大統領を評価してきたが、オバマ政権は13年の北朝鮮核実験には反応せず、14 年のソニーに対するサイバー攻撃では軽い制裁にとどまった。今や北朝鮮の動きはエスカレートしている。 イラン核合意は拡散防止の勝利だと欧米は信じたがる。だがイランの近隣諸国はせいぜい時間稼ぎにしかならないとみており、核合意はイランがいずれ兵器を開発することを保証するものだと考えている。やがて中東諸国は自国の核抑止力を追求するだろう。 アジアでも問題は、北朝鮮の核開発を受けて日本と韓国が自らの抑止力を構築するかどうかだ。韓国の朴槿恵大統領は14年、北朝鮮の4回目の実験後は「この地域で核のドミノ現象を阻止するのは難しいだろう」と警鐘を鳴らしている。 今回の核実験で世界は北朝鮮に対する決意を新たにすべきだが、恐らくそうはならないだろう。中国は今回も非難こそしたが、これまで従属国家である北朝鮮の締め付けに乗り気だったことはない。 米国は経済制裁を復活させるべきだ。マカオの銀行バンコ・デルタ・アジアを対象とした05年の制裁では、他の金融機関も北朝鮮政府との取引停止に追い込まれ、武器や高級品の供給に打撃を与えた。紙幣偽造や麻薬取引といった行為にもかかわらず、米国は北朝鮮を「マネーロンダリング(資金洗浄)の主要懸念先」に指定してこなかった。議会で長らく停滞している北朝鮮制裁執行法案が通過すれば、この問題が修正されるはずだ。 米国と韓国は少なくとも地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を韓国に配備すべきだろう。中国は、米国製のこのシステムを使わないよう韓国に圧力を掛けてきた。日米の防衛システムと統合されるためだ。だがTHAADは入手し得る最強のシステムであるうえ、この地域が脅威にさらされる最大の要因は中国が北朝鮮の後ろ盾になっていることなのだ。 問題の真の解決策は、米国が北朝鮮の体制変更を政策の中心に据えることしかない。これは韓国の防衛力強化、北朝鮮の違法貿易や外国製品入手を阻止するための制裁強化、脱北を促す取り組みの拡大を意味する。 オバマ政権はこのいずれにもやる気をみせておらず、これから始める様子もない。オバマ氏は「核兵器のない世界」を目指すと約束して政権に就いておきながら、新たな核拡散時代の扉を開いて政権を去ることになる。 関連記事 北朝鮮「核弾頭小型化」、誰の見方を信じる? 【社説】ミサイル防衛、韓国が選ぶべき道 【社説】腰定まらぬ北朝鮮制裁 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-LZ741_201601_NS_20160107051757.png コラム:北朝鮮、新たな核実験は「転換点」となるか Andray Abrahamian [6日 ロイター] - すでにいつものパターンが表れている。北朝鮮がミサイルやロケット実験を行い、成功を大仰に宣言すると、すぐさま他国はその真偽を疑う。 北朝鮮は今回、水爆実験に成功したと発表したが、他国の専門家は同国の主張に懐疑的な見方をしている。メディアはテレビのニュースを心配そうに見る韓国人の写真を掲載し(彼らはそれほど心配していないのだが)、国連安全保障理事会のメンバーは会合を開き、数週間後には非難決議と追加制裁を採択する。 北朝鮮による4度目の核実験の影響はいかなるものか。 核実験を行うたびに国際社会の怒りは買うが、北朝鮮はエリートクラブでの地位を確たるものにしている。弾道ミサイルや核兵器の開発技術能力を有する国は非常に限られているからだ。 北朝鮮の国民、とりわけ平壌市民はこのことを当然誇りに思っている。2013年の核実験後には、多くの会社が早めに終業し、たくさんの食べ物と酒で成功を祝った。金正恩第1書記が8日に誕生日を迎えることもあり、今回も市内は祝賀ムードに包まれている。米国という超大国を追い払うには核の抑止力が必要だとする政府の考えを、国民の大半は受け入れている。 その一方で北朝鮮は、昨年いくつかの大きな試練や失敗に見舞われたものの、経済の発展に向け努力を続けている。そのことが、若き指導者が人心をつかみ、同国ブランドの中心的存在であるのに一役買っている。 核開発は父親の故金正日総書記の遺産だが、正恩氏は軍事力だけでなく、経済成長や人々の生活向上を掲げて権力の座に就いた。後者の目覚ましい成果と前者の遺産という相乗効果は、正恩氏のイメージアップに著しく貢献している。 国際的には、周辺国からいくつか反応がみられるだろう。 第一に、厳密には周辺国ではないが、米国では財務省が北朝鮮に対する制裁圧力を強めることが予想される。実際に米議会はこの1年で、人権問題に関連した3つの制裁法案に取り組んでいる。今回の実験でより厳しい法案が可決される可能性が高まるかもしれない。 また今年は大統領選があることから、候補者たちにとっては、これまでの政権を批判したり、信じられないような解決策を提示したりして、北朝鮮に対して強気な発言をするチャンスでもある。現在の傾向で言えば、共和党候補指名争いをリードするドナルド・トランプ氏が何かばかげた発言をして、他の候補者たちがそれに対して反応することが考えられる。 世界的に最も差し迫った危機とみられている過激派組織「イスラム国」とともに、北朝鮮は今回実験を行ったことで外交政策の主要課題であり続ける。これは同国自身も従来望んでいることだ。 第二に、中国は北朝鮮の核開発を快く思っていないが、同盟国として米国には同調しないとみられる。今後数週間、具体的な国連の制裁対象をめぐって米中で集中した協議が行われるだろう。安保理決議には両国とも直ちに賛成するだろうが、2013年の決議以上の手段に訴える可能性は低い。ロシアは中国に追随し、日本は米国に従うとみられる。 一方、韓国の政財界はこの1年、北朝鮮経済に再び関与することに強い関心を示してきた。2010年に韓国軍の哨戒艦沈没事件が発生後、韓国は北朝鮮に制裁を科し、そのような経済関係はほぼ不可能となっている。過去5年間で中国の影響力を高めすぎてしまったと、今さらながら心配し始めた感が否めない。 今回の核実験が行われるまでは、韓国主要企業によるコンソーシアムが政府の後押しを受けて、ロシアと北朝鮮を結ぶ鉄道と港湾の建設プロジェクトに投資する可能性があった。だが今となっては、朴政権内の保守派が北朝鮮の核実験で勢いづき、そのような計画は不可能だろう。北朝鮮で韓国とロシアが協力することに、米国も喜びはしないだろう。 結局のところ、細かいことは別として、今回の核実験で現状が変わることはほとんどないに等しい。正恩氏の自国での地位は盤石となり、中国は同盟国である北朝鮮に、韓国は自身の影響力の欠如に不満を抱き続けるだろう。米国の選択肢は限られているが、同国の対応は最も予測不可能だ。独自による制裁を少しだけ拡大するのか、それともかつてないほど広範囲なものとするのだろうか。 断固たる対応が北朝鮮への懲罰的な影響を高めることになるかは、また別の問題だ。従来のパターン通りなら、恐らくそうはなるまい。 *筆者は豪マッコーリー大学の名誉フェロー。 http://jp.reuters.com/article/column-north-korea-nuclear-test-idJPKBN0UL0R920160107?sp=true アングル:北朝鮮の水爆実験、日韓ミサイル防衛強化論が再燃も [香港 6日 ロイター] - 北朝鮮による水爆実験実施の発表で、日本や韓国のミサイル防衛強化論が再び高まる可能性がある。これに対して中国からの反発も予想される。 専門家によると中国政府は、米国と日本がミサイル防衛能力向上を検討したり、米国が韓国に対してこれまで受け入れを拒否されている弾道ミサイル迎撃用の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をより強く求めるような動きがないかどうか事態を注視している。 これらの取り組みが出てくれば、中国と米国およびその同盟国の軍事的な緊張が高まってもおかしくない。既に南シナ海ではこうした緊張関係が最も浮き彫りになっており、米国は中国が重要な貿易ルートである同地域を軍事基地化する事態を懸念する一方、中国がこれを否定している。 香港の嶺南大学の核安全保障専門家、Zhang Baohui氏は「中国は日本ないし韓国がミサイル防衛能力を高める動きには非常に神経を尖らせている。北朝鮮の今回の発表が表向きの理由だとしても、中国当局は自らの核抑止力に制約を加える試みと受け取るだろう」と話す。 同氏は、中国政府は北朝鮮との関係正常化を望んでいるため、水爆実験発表に抑制的な反応しか示さないとの見方を示した。 シンガポールのラジャラトナム国際問題研究所の安全保障アナリスト、リチャード・ビットジンガー氏は、北朝鮮の動きは日本がより大きな脅威とみなす中国に向けた防衛力を強化するための「隠れ蓑となる口実」を与えたと指摘した。 <THAADの威力> 中国はとりわけ、進んだ技術を備えたTHAADを重大視している。米軍当局者はこれまで、韓国はTHAADを自前のより旧式なミサイル防衛システムと統合する必要があると言い続けてきた。 北朝鮮は核弾頭を小型化して長距離ミサイルに搭載できるようになっているとの観測もあり、米国にとって西海岸まで届く恐れがあって最も脅威となるこの長距離ミサイルをTHAADなら撃ち落とすことができる。 一方で韓国は、最大の貿易相手国である中国に気兼ねして、米軍とは独立したミサイル防衛システムの運用を続け、THAAD導入の公式協議開催も避けてきた。 THAADには、2000キロメートル遠方までの弾道ミサイルを追跡するレーダーがあり、中国本土の奥深くまでもが対象になる。 日本は将来型のTHAADとともに、イージス艦の弾道ミサイル防衛システムの陸上版の導入を視野に入れつつある。 防衛業界関係者によると、日本がTHAADの導入まで検討しているのは北朝鮮よりも長期的な中国からの脅威が原因だという。 (Greg Torode記者) http://jp.reuters.com/article/northkorea-nuclear-arms-idJPKBN0UL0CS20160107 米緊縮財政の幕引き−金融政策は景気支援担えるか 2016年度予算の可決で5年に及ぶ緊縮財政は幕引きとなり、同年は政府が2010年以来初めて経済成長に寄与する見通しだ。写真は歳出法案をチェックする共和党のマイケル・バージェス下院議員(テキサス州選出) PHOTO: J. SCOTT APPLEWHITE/ASSOCIATED PRESS By GREG IP 2016 年 1 月 7 日 15:45 JST 米議会は昨年12月、2016年度(15年10月?16年9月)予算を可決し、5年に及ぶ緊縮財政は幕引きとなった。同予算には歳出上限の見直しやさまざまな時限減税の延長が盛り込まれたため、2016年は税制や連邦・州・地方政府の支出・課税が2010年以来初めて経済成長に寄与する見通しだ。 しかし、緊縮財政の終了は祝杯を挙げるような話ではない。むしろ、カウンターシクリカルな(景気循環の影響を抑える)緩衝材としての財政の役割が、政府規模をめぐるイデオロギーの相違の犠牲になったことが浮き彫りとなったにすぎない。 不況時に景気をてこ入れし、好況時に歳出を抑えるというのが財政の理想的な姿のはずだ。だがこうした法則は2011年に消滅した。共和党議員とオバマ大統領は同年、歳出と税制の長期的改革で合意できず、数年度分の予算に歳出上限を設けたのだ。これが「フィスカルドラッグ(財政的歯止め)」の大きな引き金となった。ゴールドマン・サックスのアナリスト、アレック・フィリップス氏は、これが2011年から13年まで毎年の経済成長率を平均1.2ポイント押し下げたとみる。 当時、連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利はすでにゼロ近辺にあり、利下げでの埋め合わせは不可能だったため、景気への打撃はなおさら大きかった。 2016年は2011年とちょうど反対のことが起きることになる。歳出上限が見直され、いくつもの時限減税が恒久化されることで、財政政策は景気下支え効果が期待できるものとなった。だが遅すぎた感は否めない。失業率は足元で5%と正常な水準に戻っており、FRBは突然のインフレ台頭を回避するためすでに利上げを開始した。議会が昨年の予算審議で財政赤字削減を選択していれば、FRBは現在の計画よりもさらに遅いペースで利上げを進めることで景気への影響を中和できたかもしれない。 確かに、財政政策と金融政策は常に相反する目的を追求しているわけではない。リセッション(景気後退)時には、失業保険、メディケイド(低所得者向け医療保険)、フードスタンプ(低所得者向けの食料品配給券)に対する歳出が自然と増加する一方、法人税や個人所得税からの歳入は減少する。議会予算局(CBO)の推計によると、2009年にはこうした「自動安定化装置」の影響で財政赤字が約3000億ドル増えた。 これは、2009年の国内総生産(GDP)を標準的な水準と比較した場合に推定される不足分の3分の1に満たない。歴史的には、好況時であれ不況時であれ「自動安定化装置」の景気への影響は問題にならなかった。ある程度影響が及んでも、残りはFRBが何とかしてくれたからだ。 ところが2008年末にFRBは政策金利を1%へ、さらにはゼロ?0.25%まで引き下げ、景気への下押し圧力を完全に相殺できなくなった。政治家らは大規模な「財政出動」で対応し、景気対策は以来、より広範な政策目標とされてきた。 ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)は2001年から03年まで、景気低迷からの脱却を大義名分に減税政策を加速させた。オバマ大統領の景気対策はグリーンエネルギーや高速鉄道への投資を盛り込み、貧困労働者向け減税の延長や連邦ペル給付奨学金(低所得の大学学部生を支援するもので、返済の必要はない)の増額など、いくつかの措置については恒久化を目指している。共和党議員の多くはオバマ大統領の景気対策を、連邦政府の権限を逸脱したものとみており、これは彼らが2011年に緊縮財政を支持した理由の一つでもある。 自動安定化装置を強化すれば、裁量的な財政出動はおそらく不要になり、このような対立は回避できるかもしれない。FRBの政策はカウンターシクリカルな効果を失いつつあるため、そうした対策がいっそう急務となる可能性は高い。 歳出法案に署名するオバマ大統領(2015年12月) ENLARGE 歳出法案に署名するオバマ大統領(2015年12月) PHOTO: JIM LO SCALZO/EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY FRB当局者らは、経済をフル稼働させつつインフレは抑える「均衡」金利がわずか3.25〜3.5%で、リセッション前の4%超から低下したとみる。生産性と投資の落ち込み、リスク回避の拡大、さらに高齢化が借り入れ需要を抑えていることがその理由だ。 サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁とFRBのエコノミスト、トーマス・ローバック氏の研究によると、均衡金利は2%、インフレ調整後でゼロまで低下した可能性がある。これは、再びリセッションに陥った場合、FRBには2%しか利下げ余地がないという意味だ(2007年は5.25%あった)。 ウィリアムズ総裁はインタビューで、「均衡金利が低すぎるため、金融政策が不況時にカウンターシクリカルな安定化政策としての機能を完全に果たすことが難しくなるのではないかと懸念している」と語った。すなわち、財政政策がより大きな役割を担う必要があるということだ、と続けた。 ただ、問題はその方法だ。財政出動支持派はインフラ支出の拡大を好むのが常だが、具体的な計画の策定や政治が足を引っ張り、迅速に実行に移すことは難しい。ハーバード大学ケネディスクールのダグ・エルメンドーフ学部長は、メディケイドの連邦政府負担率を可変的なものにするよう提案している。現状では州政府は財政均衡のためメディケイド予算の削減を迫られているが、この案が実現すれば、そうした圧力が和らぐことになる。ウィリアムズ総裁は、リセッション期に給与税を自動的に減額する措置を提案している。 不況期にこうした刺激策を発動することと同じくらい重要なのは、回復期にそれを停止することだ。すなわち、給与税を引き上げると同時に、メディケアの連邦政府負担率を引き下げる必要がある。ウィリアムズ総裁が指摘するように、肝心なのは「社会における政府の役割とは関係がない自動操縦」政策を整備しておくことだ。この役割については是が非でも議論すべきだが、景気循環を操る方法としての議論は避けなければならない。 関連記事 米下院、予算法案を可決 米需要低迷、財政出動など必要=SF連銀総裁
[32初期非表示理由]:担当:要点がまとまっていない長文
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