あるボスニア難民の米国での成功例 2016年1月7日(木)The Economist 「米国は移民に関して常に葛藤してきた」。米ミズーリ州のNPO法人(特定非営利活動法人) セントルイス国際インスティチュートのアンナ・クロスリン代表はこう語る。この団体は難民を資金面で支援するとともに、彼らが到着した後の世話をしている。
1840年代、アイルランド人がセントルイスに押し寄せると、それより前にこの地に定住していたドイツ人たちが新参者を嫌い、暴動を起こした。その後、当時西部への玄関口と考えられていたセントルイスにイタリア人たちが初めてやって来た時にも、同じことが起こった。20世紀末にヒスパニック及びアジア系移民が流入した時も、お馴染みの緊張が生じた。 ボスニアからの移民への恐れと怒り 1990年代に、旧ユーゴスラビアの内戦を逃れた数千人ものボスニア難民がセントルイスに移り住んだ時も、事情は変わらなかった。セントルイスの町と、かつて移民としてこの町にやって来た人々は、イスラム教徒であるこの難民たちを恐れ、怒りを抱く者すらいた。 ボスニア難民の誰かが裏庭に燻製小屋を建てて、子羊を丸ごと串焼きにしているのを見た近所の住民は国際インスティチュートにこう通報してきた――ボスニア人が近所の犬をバーベキューにしている。 こうした恐れと疑惑は2、3年続いた。その間にボスニア難民たちは、時に驚くべきスピードで生活を再建した。例えば、イブラヒム・バジゾビッチ氏。1994年、35歳の時に、妻と3人の子供を連れてセントルイスにやってきた。彼はセントルイスに到着してから6週間もしないうちに印刷工場で初心者レベルの仕事を見つけ、瞬く間に倉庫管理者に出世した。1999年には大学院に入学し、博士号を取得。現在、彼は3つの会社を所有し、ウェブスター大学で授業も行っている。 バジゾビッチ氏の息子はエンジニアになり、娘の1人はシカゴの有名法律事務所で弁護士をしている。もう1人の娘はハーバード大学のロースクールで勉強中だ。同氏は「自分たちは大きな犠牲を払ってきた」と認める。彼がセントルイスにやって来た時に一番大変だったのは、英語を話せなかったことだったという。 ボスニア人難民は犯罪率も失業率も低い 勤勉なボスニア人のお陰で、セントルイス南部のベボミル地区周辺は、廃墟となったビルが点在する犯罪多発地域からきちんとした地区に変身した。今では、母音の少ない名前(例えば、スタリー・グラード、グルビッチといった)の小さな商店やレストランが集まっている。 現在セントルイスには、5万人以上のボスニア難民とその子供たちが住んでいる。彼らは2つのモスクを建設し、商工会議所を設立した。ボスニア人コミュニティーは、犯罪率も失業率も一般に比べて低く、暮らし向きが良い。セントルイス大学のジャック・ストラウス教授の研究によると、この地域の移民(ボスニア人が多くを占める)の平均年収は8万3000ドル(約1000万円)で、米国生まれの人々より25%多いことが分かった。 彼らは起業する傾向が強い。熟練労働者は非熟練労働者の3倍おり、上級学位を持っている可能性もずっと高い。概して、政府が支給するフードスタンプ(食料配給券)や現金援助を受ける割合も米国生まれの人々より低い。 ストラウス氏は、セントルイスがもっと多くの移民を呼び込んでいれば、ほかの大都市に比べてずっとうまくいっていたことだろうと結論付けている(総人口に占める移民の割合は4.5%、シカゴでは21%だ)。 中西部の多くの都市と同様、セントルイスも製造業の衰退と、その結果として起こった住民の郊外への流出に悩んでいた。1950年の国勢調査では、85万6796人の住民登録があり、セントルイスは全米最大の都市の1つだった。それが2010年までに、住民の数はわずか31万9294人に減ってしまった。 シリア難民受け入れにも積極的 セントルイスのフランシス・スレイ市長は、パリとカリフォルニアでテロ攻撃を受けて起きた反対をものともせず、シリア難民歓迎の呼びかけを撤回しなかった。その理由の1つがボスニア難民の姿である。セントルイスのボスニア人コミュニティーの指導者らは、もっと多くのシリア人をセントルイスに迎えたいと考えている。しかし、今年これまでにセントルイスに移住したシリア人は29人にとどまる。 12月のある天気の良い日、食堂ボスナ・ゴールドの昼時は客もほとんどおらず、ゆったりとした時間が流れていた。従業員も、たった1人いた食事客も、全く英語を話さなかった。2人ともバーの奥のテレビに映るボスニアのメロドラマに夢中だった。この店は夜の方が忙しい。男たちがやって来て、ボスニア料理のトライプ(牛の胃)やサルマ(ロールキャベツ)、チェヴァプ(ソーセージ)などを食べて、煙草を吸い、スポーツについて語っている(ボスニア移民がセントルイスのサッカーのレベルを上げた)。 ただし、高齢世代はホームシックを感じている。セントルイスで築き上げた素晴らしい人生を大事に思う一方で、残してきた母国のことを忘れられずにいる、と弁護士のネディム・ラミク氏は言う。 だが、移民が成功を収めたセントルイスにおいても、シリア難民の受け入れ拒否を望む人々を後押しする証拠が幾つか挙がっている。今年初め、6人のボスニア系移民がイラク及びシリアのテロリストに資金や生活必需品を送ったとして告発された。そのうちの3人がセントルイス在住だった。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/010400050/?ST=print Special | 2016年 01月 8日 12:44 JST 視点:「強いアジア」に向けた日本の責務=エラリアン氏 アリアンツ 首席経済アドバイザー [東京 8日] - 日本は国内では構造改革の断行、対外的には中国との連携でアジアを強化し、その「強いアジア」をてこに世界経済ガバナンスで存在感を示すことが求められているとアリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏は指摘する。
同氏の見解は以下の通り。 <経済改革プログラムの完遂> 日本経済のために時間稼ぎをした安倍首相は、2016年を構造改革推進に費やすべきだ。必要な政策アクションはすでに政府によって十分に特定され、国民に伝達されている。日本経済がその比較的大きな潜在力を発揮することを阻んできた既得権益の打破を含めて、今こそ勇気ある履行のときだ。 <絶え間ない「地域変容」に順応し、形成を担う> (アジア地域における)中国の影響力はますます強まっている。それは日本にとって居心地の悪いものかもしれないが、現実だ。そして、近いうちに消えてしまうものではない。 日本は2016年に、中国との緊密な連携に向けて、もっと努力すべきだ。アジアの強化を目指した地域の変容を形づくるために、そして他地域からの有害なスピルオーバー(波及)に対する強靭性を高めるために、さらに地域の繁栄と世界の成長のエンジンとしての役割を取り戻すために、そうした努力が必要だ。 <多国間経済ガバナンス改革への貢献> アジアが強さを増すことで、多国間の経済ガバナンスに関する必要とされながら遅れている改革について、日本はより積極的に発言できるようになるだろう。国際通貨基金(IMF)と世界銀行の発言権や代表権の一部を時代に即したものに変えていくという点において、特にそうだ。 欧州は時代遅れの歴史的権限をなげうつことが必要なだけでなく、世界的責任という意味で義務であることをきちんと理解していない。(日本の多国間経済ガバナンス改革への積極的貢献は)米国や新興諸国が欧州の抵抗を乗り越えるうえで助けになるだろう。 *モハメド・エラリアン氏は、独保険大手アリアンツの首席経済アドバイザーで、同社の国際執行委員会メンバー。オバマ米大統領が開発政策に関する助言機関として2012年に設置した世界開発協議会(GDC)の議長。米資産運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の元最高経営責任者(CEO)兼共同最高投資責任者(CIO)。2014年より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの特集「2016年の視点」に掲載されたものです。 http://jp.reuters.com/article/view-mohamed-el-erian-idJPKBN0UL0L120160108 2016年1月8日 陳言 [在北京ジャーナリスト] インターネットが牽引する中国「新経済」の姿とは ?2016年の中国経済を展望する場合、かなり悲観的に見ている人が多い。経済成長率は果たして7%を維持できるかどうか。年明けの株価暴落を見て、非常に厳しい一年になると予感する人は、決して少なくないだろう。 ?20世紀末のアメリカITバブルを記憶している人は、その崩壊過程が目の前で鮮明に浮かんでいるかもしれない。中国はどうだろうか。2015年の中国インターネット関連の事情を見て16年の中国経済を展望する場合、その経済に対する役割がはっきりしなかったものが明確になり、そこに中国の変化が見て取れる年になると思われる。 中国経済を見る新しいポイント 労働と資本そして効率アップ ?2015年12月16日から18日まで浙江省烏鎮・枕水ホテルで第2回世界インターネット大会が開かれた。日本ではあまり大きく取り上げられなかったが、中国では年末の結構大きなイベントとしてマスコミは報道した。 ?このネット会議には多くの国々の政治的な要人と国際機関の責任者、ネット企業の大物たちが一堂に会して議論した。GSMアソシエーションのジョン・ホフマン最高経営責任者(CEO)は、ネットを「人類の未来の発展」と高く評価し、世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ会長は、それを「第4次産業革命」とまで讃え、「国家の利益」(チリ下院運輸通信委員会のグイド・シラルディ委員長)、「世界の人々の生活レベルの向上」(パキスタンのシャウカト・アジーズ元首相)など言葉が、紹介しきれないほど飛び交った。 ?ネットという「歴史上でも非常に独特の物」(第2回世界インターネット大会における米国電気電子学会のハワード・ミッシェル会長の言葉)は現在、政治面の力と産業面の力の共同推進のもと、新しい経済の鋳型を形成している。 ?日本と中国の間で行き来している筆者にとって、インターネット関連の変化は、日本より中国のほうが明らかに激しいと感じる。ラジオ、テレビの普及によって情報が地方都市、農村まで届くようになったが、インターネットと結合した物流は、今度は教育などのソフトと商品などのハードを地方都市、農村にまで届くようにした。まだ小さな店ほどの形にもなっていない農村の売店は、タブレッドかスマホを使って全中国から商品を購入し、さらに免税品をも、越境Eコマースで手に入れている。 ?経済を見る場合、「消費と投資、輸出入」という3要素が重要だと教科書から学び、今もわれわれが経済の長期的な発展を予測する場合、その3要素に注目しているが、それよりも「労働」と「資本」そして「効率アップ」という新しい要素で経済を見たほうがよほど正しい結果を得られる。 ?目下、中国経済の下押し圧力で最大のものは、製造業の下降だ。世界の工場として、経済に占める製造業の規模が最大の国家として、中国は二重の圧力に直面している。それは先進国の再工業化によって、ハイエンドの製造業が中国から日米欧に向かっていることと、人件費の上昇によってローエンドの製造業が東南アジアや南米、アフリカに移転することである。 ?その唯一の対応策こそ、製造業とネットの結合なのである。それによって、スマートマニュファクチャリングと製造業のサービス化を発展させる。つまり、インターネットが「労働」と「資本」の新しい結びつきを生み出し、効率をアップさせる。 ネット経済の比率は7%以上へ 医療、観光、教育などでの影響 医師の検索・予約ができる百度医生(バイドゥ医師)アプリ ?中国インターネット情報センター(CNNIC)の最新の統計によると、中国のGDPに占めるネット経済の比率は、2014年に7%に達した。国民経済の支柱産業とされる基準はGDPの8%以上だ。2015年にネット産業がこの基準を超えるであろうことは言うまでもないが、2014年のレベルにとどまったとしても、もはやネットが中国経済の支柱産業だという見方は妥当であろう。
?世界のネット企業10強のうちの四つの椅子をすでにBAT(バイドゥ、アリババ、テンセントの3巨頭の略称)と「京東商城(JD.com)」が占めている。ネット企業の他業種への拡散と協力の例を、BATの事業から見ることができる。 ?まず、医療と教育を見てみよう。バイドゥのビッグデータの検索では医療と教育に関連した検索が最も多い。これに基づいて「バイドゥ医師」(病院の予約などができるネット上のプラットホーム)は目下、全国287都市、計2624カ所の病院をカバーしている。このうち一級公立病院は500カ所、医師数は15万人を超えており、計180万人近くにサービスを提供している。 ?教育分野では、最近バイドゥは教育事業部を設立し、教育機関に教育サービスの解決プランや核心的ユーザー育成システム、核心的ユーザー普及システムなどのサービスを提供している。一方、テンセントは前後して教育事業者の「跨考(異なる専門に跨る受験)教育」や教育アプリの「優答」に投資した。 ?交通や不動産・ホテル、観光を見てみよう。アリババは投資ラウンドのシリーズDの相乗りサービス「Lyft」に2億5000万ドルを主導的立場で投資し、タクシーの配車関連には数千万ドルを投資した。 ?実際、医療や教育、交通、不動産・ホテル、観光などいくつかの業種に限らず、消費者に関連するあらゆる業種のうち、BATが足を踏み入れていない場所を探すのは、もはや非常に難しくなっている。 ?ネット企業の花形たちはいまや科学技術発展のフロンティアに足を踏み入れ始め、未来を定義づける技術の進歩を促している。グーグルとアップルは自動運転車に巨額を投じ、バイドゥも「バイドゥ自動車大脳」を核心的技術とする自動運転車の研究開発を発表した。 ?バイドゥの時間測定によると、烏鎮のインターネット大会で習近平国家主席は、バイドゥの展示ホールに10分46秒間立ち止まり、少し前に走行テストを成功させた自動運転車を観察した。そして「技術の自主的な研究開発レベルはどうか」「スピードはどれだけ出せるのか」「コストはどうか」「いつ大規模な商用化を実現できるのか」などと続けざまに質問した。 もはやビッグデータの時代 すでに中国文化の一部に ?「ネットが新経済により大きな役割を発揮することに、ネットリーダーたちは気付いている」と雑誌『中国情報化』の執行社長、電子工業出版社研究院主席アナリストの熊偉氏は見る。 ?中国最大のポータルサイトである「新浪」の曹国偉董事長は2015年3月、「『インターネット+(プラス)』は新経済の形態を代表している」と述べた。彼はまた、ネットが伝統的な業界を変える「4段階論」を打ち出している。 ?第1段階はネット広告などのマーケティング利用で、第2段階はチャンネルのネット化、つまりEコマースだ。第3段階はシャオミー(小米)のスマートフォンのような製品のネット化。第4段階は全面的なネット化で、金融、教育、旅行、健康、物流などを含めたネット・プラス伝統的業種だと言う。 ?このコラムではEコマースについて取り上げたことがあるが、ビッグデータを生かす例としては、こんな事例がある。 「北京朝陽大悦城がバイドゥのビッグデータ技術を使い、消費者グループを細分化し、タイミングよく優待情報(携帯電話のショートメール)を出して共同購入活動を実施した。9月19日の開業記念日1日だけで売上額は2600万元に達し、ビッグデータの貢献率は10%を超えた」とバイドゥの王副総裁はいう。「ビッグデータはいま商業に『新エネルギー』を付与している」と、王副総裁は付け加える。 ?インターネットを突破口にし、技術の進歩率を高めて経済成長を保ち、インターネットを「法」として新経済を形作ることは、政府と企業界のコンセンサスになっている。 ?コンセンサスを社会に広げるための政府による表現には「新型国家」「ハイエンドなサービス業(スマート化、専門化、高効率化したサービス業)」「大衆の創業と万民のイノベーション」といったものがある。「BATはすでに中国の主要なエネルギー付与グループになった」と、産業界は表現している。 ?「エネルギーの付与」はBATが新経済を形成し、社会的価値をもたらす具体的な行動だ。電子政務やスマートシティ、スマートマニュファクチャリングなど、その例は非常に多い。都市サービスはテンセントとアリババの戦場である。深?や佛山、武漢、上海などの住民はすでに「ウィーチャット(微信)」を使った病院予約や交通情報の問い合わせ、外国ビザの予約に慣れている。 ?BATの放つ影響から見れば、インターネットがつくった新経済はすでに根を下ろしているといえる。まさにインターネット研究の専門家・姜奇平氏の分析のように、中国という長い歴史持つ存在は多元化・トポロジー化したピアツーピア(P2P)、ハイパーリンクのインターネットと同形で、相性がよい。もし彼の分析に間違いがなければ、インターネットがつくる中国の新経済は、必ず文化面においてより大きな支えを獲得し、未来はいっそう多くの栄養分をくみ取って、大きく成長するだろう。 ?2016年の中国経済を見る場合、インターネット発展の勢いはますます強まっていくに違いない。政府が経済政策の面ではどんどん支援しているだけでなく、マイクロソフト、グーグル、アップル、シスコ、日立などの海外企業も、いままで以上に中国政府のインターネット政策に協力的になっている。インターネット・プラスは中国の経済発展にエネルギーを与えており、その成長はしばらく継続するだろう。 http://diamond.jp/articles/-/84313
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