http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/236.html
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(How China's rise is affecting Europe's view of Japan: DW English)
http://www.dw.com/en/how-chinas-rise-is-affecting-europes-view-of-japan/a-18903570
2者間関係
中国の台頭が欧州の日本観にどのように影響しているか
欧州外交問題評議会が新たに実施した調査から、日欧間には堅実な関係が存在するにも係わらず、日欧間の国際協力に目覚ましい進歩がないと多くの欧州の人々が見ているという結果が示された−この逆説の一部は中国の台頭に関係していると、専門家たちは語る。
日本と欧州はどちらも、単に共通の価値と利益を持つだけでなく、国連・世界貿易機関・G7・G20といった国際的な集まりの場で緊密に協力している民主主義社会である。また、両者は戦略的パートナーシップ協定と自由貿易協定の交渉を加速しつつある。この2協定により両者の関係が新しい段階に引き上げられることが約束される。
さらに欧州連合と日本は、財政政策・気候変動・再生可能エネルギー・農業改革・人口動態上の変化など数々の経済分野で共通の利益を有し、互いに学ぶことや、少なくとも、見解や経験のやりとりを切望していると、東京に拠点を置くドイツ日本研究所の日本経済専門家フランツ・ヴァルデンベルガー教授はDWに語った。
欧州各地での日本のイメージについて欧州外交問題評議会(ECFR)と日本国外務省が先日実施した調査によれば、両者の長年続く堅実な関係にも係わらず、欧州と日本には目覚ましい国際的協力が欠如しているという認識が欧州の政府高官・研究者・メディア・シンクタンクの間に存在している。
「日本はいまなお国際政治で能力以下の働きしかしていないという認識が存在する」と、オーストリア・フランス・ドイツ・イタリア・ポーランド・ポルトガル・スペイン・スウェーデン・イギリスで実施された調査の結果に言及した評論の中で、同評議会アジア中国プログラムのマチュー・デュシャテル次長は述べた。
「日本はいまなお国際政治で能力以下の働きしかしていないという認識が存在する」と、ECFRのマチュー・デュシャテル氏は述べた
信頼性と予測可能性
調査結果によれば、日本−世界第3の経済大国−は信頼できるパートナーという認識が強く浸透している−これが欧州各国の政府による日本のイメージを明確に示す特徴だ。「日本は予測可能性が高いとの評判と、現状維持を望む国々の1つとして国際秩序の安定要因となっているという認識があることから、このような信頼が得られている」と、デュシャテル氏は述べた。
このアジア専門家は、否定的なメディア報道が時折あるにも係わらず、日本で進行中の軍事政策の改革が正常化への過程の1つとして欧州で広く理解されているのは、このような強い相互信頼の基礎があるからだと述べている。さらに、これは日本の軍事的関係がイギリス・フランスに拡大しつつある現在進行中の動きの基礎にもなっているかも知れない。
「欧州人たちの傾向として、国家の安全保障に係わる安倍晋三・日本首相の新たな姿勢を、アジアにおける軍事力バランスの変更への合理的な適応と考えている。はっきり言うと、現在進行中の改革を右翼による隠然とした再軍備化と描写する中国の外交努力が目につくが、これは欧州では成功していない」と、デュシャテル氏は付け加えた。
日本文化は魅力的だが
また、日本文化が欧州で目覚ましい訴求力を得ていることがこの調査では強調されている。クリスティン・スラク氏が指摘するように、日本文化のシンボルは欧州の至る所にあり、これらは圧倒的な人気がある。
「寿司チェーンはいまや都市で普通に見られる光景で、アニメやコスプレは若者たちのサブカルチャー・シーンのよく知られた一部分となっている。経済の停滞は25年近くに達したが、日本の特色についてそれ以上の非難は目立たなくなっており、日本人旅行客のステレオタイプへの否定的見方さえも中国人旅行者へのものに置き換えられている」とプリンストン高等研究所の日本専門家であるスラク氏はDWに語った。
コスプレ・寿司・アニメなどの日本文化のシンボルは、欧州でも圧倒的な人気がある
それでも、文化的なシンボルや欧州が日本に戦略上の信頼を置いていることにも係わらず、ECFR調査からも日本のソフトパワーが欧州において不十分であるという結果が出ている。「日本の文化力が欧州諸国の外交政策における優先度に生かされておらず、この文化力を背景に欧日関係が特に適切に進展しているいるわけでもなく、また、これが日本の外交能力の上で特定の問題について欧州から支援を得るためにある程度の影響を及ぼしているわけでもない」とデュシャテル氏は語る。
『中国はあらゆるメディアの注目を受けている』
この逆説の背後にある主要な要因は中国の台頭であると、ECFRの専門家たちは論じている。欧州各国の政府に「中国中心のアジア観」があるために、日本が外交政策議論の外に押し出される傾向がある。「1点を挙げれば中国はあらゆるメディアの注目を受けている。中国外交官は自国に否定的な記事が欧州で出されるとクレームを付けることで悪名が知れ亘っているが、これはある意味で形を変えた祝福だ。」と、デュシャテル氏は語る。
しかし、これは日本の姿が中国ほど見えていないことを意味していると、彼は付け加える−欧州メディア各社で東京に常勤記者を維持している機関はほんの一握りだが、主要メディアは全て北京に常勤記者を置き、時に北東アジアや東アジア全体さえをもこの担当範囲としている。
日本専門家のスラク氏も同じ意見だ。「簡単なことだ。欧州の立場からすると、アジアは余りにも遠いのでその内部の違いは見過ごされる。この世界の重要な部分のことやアジア内部のダイナミズムへのメディアの注目は極めて限定されたものになる。」
ECFRによれば、日本は自分自身の横顔を持たない国に思われており、異論の出る問題を避けようとする国と欧州に見られている。そのため、日本はいまなお米国の強力なパートナーだが、例えば、ドイツ人の調査回答者たちには重要な国際的プレーヤーと認識されていない。
『レーダーの外に押し出される』
オーストリア人たちも同様の見方をしている。例えば、日本経済について描かれる心象はまちまちで、一部のオーストリア人回答者は、日本は低成長と中国を筆頭とするアジア他市場の台頭のために強力な経済プレーヤーとしてのイメージのかなりを失い、中国の強力な存在は日本をオーストリアのメディアと一般国民のレーダーの外に「押しやった」と語る。
テンプル大学日本校の日本専門家ジェームズ・D・J・ブラウン氏もこれと同じ見方をしており、日本経済の状態が主要な問題だと主張する。年率5%以上の快調な経済成長を得られれば、日本は問題なく欧州の政策決定者たちを惹き付け、彼らの注目を維持するだろうと指摘する。
「しかし、実際には日本経済は景気後退でふらついており、人口減少と高齢化も急速に進んでいる。この傾向が続く限り、日本は欧州の政治・経済のリーダーたちの意識の中で目立った位置を勝ち取ることに苦労することだろう」とブラウン氏は語る。日本はEUにとって7番目に大きな貿易パートナーで、去年の両者間の貿易総額は1180億ドル(1080億ユーロ)だった。
結果として、欧日関係は重要性を減らしており、かつて東京に向けられていた注目は今や北京に向けられていると、このアナリストは付け加えた。
実際、欧州の多くの政府が中国の機嫌をとることに新たな熱意を使っていることについて、日本国内はショックを受けている。これについて、中国主導の国際金融機関・アジアインフラ投資銀行(AIIB)が今年正式に発足した事例が最も目についた。
「米国と日本の制止にも係わらず、欧州諸国は創設国としてこの銀行に参加したいとの熱意を抑えなかった」とブラウン氏は指摘した。この件が示唆することは、実際にはソフトパワーはそれほど重要でないということだ。「欧州の中では日本は中国よりもずっと好意的に見られているが、中国は単により規模が大きくよりダイナミックな経済を土台にしてずっと大きな影響力を行使している」と彼は述べた。
日本を無視する「中国中心のアジア観」のために欧州で中国が台頭していると、専門家たちは論じる
中国が主導する
僅か20年前、中国とEUの貿易は殆どゼロだった。しかし近年、商業の関係は急速に緊密化し、中国は現在では欧州連合最大の輸入製品の供給源であり、EUにとって最も急速に成長する輸出市場でもある。中国は今やEUにとって米国に次ぐ第2の貿易パートナーであり、EUは中国にとって最大の貿易パートナーだ。両者間の貿易総額は去年5080億ドル(464ユーロ)だった。
この点で最も顕著なのはイギリスで、同国の中国政策は近年ドラマチックに変化しているようだ。アナリストのブラウン氏は、デーヴィッド・キャメロン首相が2012年にダライ・ラマ氏と公式に会見したが、中国政府がこれに怒るだろうことを彼は知らなかった。
「対照的にその3年後、イギリスは欧州諸国で最も親中国的な立場をとり、ジョージ・オズボーン財務相は中国の人権の歴史に対する批判を抑制してでも、同国との経済関係を密接にするために積極的な発言を行っている」と、ブラウン氏は語った。
ECFRは、日本のソフトパワーは世界政治への影響力拡大に必ずしも結びついていないという、イギリスの調査回答者の考えを紹介している。「この理由は不明確だが、世界政治で主導的な役割を果たしたがらない日本の伝統に根ざしているかも知れず、このため、ソフトパワーそれ自体とは直接的な関係は余りないかも知れない」と、このシンクタンクは述べた。
中国の存在が『至る所に』
さらに、イギリスの調査回答者たちは自国における中国の存在が「信じられない程至る所にある」と語り、欧州各地の人々は中国が世界で最も豊かな経済大国になると既に信じている。
同様の見方がポルトガルで表明されている。同国でECFRの面接調査を受けた高官たちは、日本はかつてほど重要な国でなくなっており、ポルトガルにとって現在もっと刺激的なアジア太平洋の国がある−その名はインドと中国だ−と、一致して語っていると報告されている。
日本は大学生の欧州留学を奨励することによりイメージを向上できるかも知れないと、専門家たちは考えている
避けられない展開か?
それでは、日本はイメージ向上のために何ができるか?日本がとることのできる小さいが重要なステップの1つは、もっと多くの日本の若者が欧州の大学に留学するよう奨励することだろうと、専門家たちは主張する。
「一般的に、日本の教育は構造的に高度化が進んでいるために、学士過程の学問を学ぶ期間に海外で時間を過ごす日本人学生は余りにも少ない。これが変化してもっと多くの日本の若者が欧州諸国で時間を過ごすようになれば、彼らが言語スキルを磨いて帰国し日本の国際化を支えることが可能かも知れない」と、ブラウン氏は語る。
それでも、こうしたステップの支えがあってもなお、日本の慢性的な経済・人口問題の好転に向けて何らかの根本的な対策が取られない限り、長期的には「日本が欧州諸国にとって重要でなくなっていくことは避けられない。」
発表 2015年12月9日
記者 Gabriel Domínguez
関連テーマ 欧州、欧州連合(EU)、アジア、中華人民共和国
キーワード 日本、欧州、EU、中国、イギリス、米国、2国間関係、国際的イメージ、アジア
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