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国際社会からの退場思い留まった英国 同盟国の信頼回復なるか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151227-00010000-wedge-int
Wedge 12月27日(日)9時0分配信
フィナンシャル・タイムズ紙が、11月23日に公表されたキャメロン首相の2回目の「戦略防衛・安全保障レヴュー(SDSR)」について社説を書き、概ねこれを評価しています。
■伝統的保守党の立場に回帰
すなわち、今回の「レヴュー」は国防費の実質8%の削減を打ち出した2010年の「レヴュー」とは大きく異なり、ジハード主義者のテロや予測不能のロシアなど多数の脅威に当面して、キャメロンは伝統的な保守党の立場に回帰した。パリのテロ事件から間もない時期にあって、キャメロンのこれまでよりも力強いアプローチは世間のムードとも一致するものである。
軍を無視するかのような5年の後、是正が必要とされていた。賢明にもキャメロンは国家の脅威に対する通常型の防衛とテロに対抗する手段のいずれかを選ぶことは許されず、両方が必要と結論付けた。今後10年間の120億ポンドの予算増にはロシアの潜水艦の脅威に対抗するための9機の海上哨戒機が含まれると同時に、ISISなどへの対処のためにテロ対策費の30%増が盛り込まれている。
「レヴュー」は、思慮を欠き拙速であった5年前の予算削減の結果生じたギャップを幾らか埋めるものである。例えば、新しい2隻の空母に搭載するF-35 戦闘機の調達の加速化によって空母による攻撃能力を回復する。陸軍の海外遠征部隊は2025年までに3万から5万に増強される。
これらはいずれも歓迎されるべきことであるが、国防能力の急激な向上を意味しない。「レヴュー」は「針路を保て」という類の文書である。2010年においても5年間の緊縮の後には国防予算の増加は見込まれていたという意味で殆ど変化はない。政府は国防費をNATO基準であるGDPの2%を維持するとしているが、これは大方計算の手法によっており新たな支出によるわけではない。また、軍の空洞化という心配を解消するものでもない。例えば、新たな空母の運用のため450の新たな水兵の徴用が認められているが、必要な4000からは程遠い。陸軍の攻撃部隊の野心的な増強も全体の兵力が8万2500に据え置かれることを考えると不可解である。
「レヴュー」の重要なテストはそれが英国の同盟国の信頼を回復するか否かにある。「レヴュー」は英国は世界の舞台から退場しつつあり、フランスの方が信頼に足るパートナーであるという米国のパーセプションを逆転する端緒となろう。しかし、多くは英国がシリアでのISISに対する軍事行動に参加することについて、キャメロンが説得的な議論を行い、議会の支持を取り付けられるか否かにかかっている。キャメロンが多様な脅威に対応出来る手段を維持すべきだと主張したことは正しいが、引き籠りと怠慢の5年間による損害を逆転させるには時間を要する、と指摘しています。
出典:‘A partial fix for Britain’s hollowed-out military’(Financial Times, November 23, 2015)
■世界の舞台からの退場は思い留まるも…
社説は、「レヴュー」が伝統的な保守党の国防政策に立ち戻ったことを歓迎しています。同時に5年間の怠慢が害をなしたと慨嘆していますが、このことに対するキャメロンの弁明と思われるものが「レヴュー」の序言に書かれており、5年間の財政と経済再建の努力の結果、国防に更なる投資をすることが可能になった、としています。
もう一つ、キャメロンが「レヴュー」の背景として挙げているのは、言うまでもなく、ISISの台頭、中東の不安定化、ウクライナの危機、サイバー攻撃、パンデミック(中国には全く言及がない!)によって世界は5年前よりも危険で不確実になったということです。ともかく、空母の2隻体制の維持、トライデント潜水艦4隻の更新、海外遠征部隊の増強など、英国がどうやら世界の舞台から完全に降りることは取り敢えず思い止まったらしいことは歓迎すべきことです。
「米国が今やフランスの方が頼りになる」と思っているかどうかは分かりませんが、社説が言うように、重要なことは米国がパートナーとして英国に信頼を寄せ得るかどうかです。シリアにおけるISISに対する空爆作戦に参加しない決定をするようなことがあれば、米英関係の先行きは相当暗いものにならざるを得ないところでしたが、議会が空爆への参加を承認したことで、何とか踏みとどまった感があります。
岡崎研究所
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