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インドネシアOPEC復帰のわけ
「石油マフィア」国内一掃狙う
インドネシアが石油輸出国機構(OPEC)への復帰を決めた。石油の輸出より輸入が多い「純輸入国」なのは2009年の脱退時と同じだが、「輸出国カルテル」に舞い戻って安定調達のパートナーを開拓する。ガソリン輸入の利権で潤う内なる「石油マフィア」を一掃する狙いもある。
製油所で国旗を振って要人を歓迎する従業員(11月、ジャワ島中部チラチャップ)=ロイター
販売先を確保
「サウジアラビアとは製油所増強で、イランとは液化石油ガス(LPG)の長期購入で、カタールとは発電事業で組む」。スディルマン・エネルギー・鉱物資源相は7日、産油国との連携メニューを記者団にズラリと並べてみせた。
OPECは4日の総会でインドネシアの復帰を承認した。同国は1962年加盟の古株。2億5千万人の人口を抱え、原油の安定調達と製油能力の向上が課題だ。
90年代は日量150万バレル超の原油を生産したが、現在は90万バレル以下。アジア通貨危機後、油田開発の投資が停滞していたためだ。
OPECの産油国にとって、インドネシアの復帰は販売先を確保できるという意味が大きい。最近は増産を続けるロシアや米国のシェールガスなどと販売での競合が増えており、新たな販路は限られている。こうしたなか、需要の増加が見込めるインドネシアをOPECというカルテルに囲い込みたいとの思いがあるようだ。
日本エネルギー経済研究所の小山堅首席研究員は「(欧米の制裁や戦争が収束に向かい)イランやイラクが国際石油市場に本格復帰することも着目すべき点だ」と話す。インドネシアは各国をてんびんにかけ、有利な調達条件を引き出す狙いだ。
早くも主要国との提携は具体化している。サウジとは11月、ジャワ島中部の製油所増強の協業で合意した。サウジが原油を供給しインドネシアでの精製・販売の連携も視野に入れる。
「外圧」に期待
一方、インドネシアは石油産業の透明化を後押しする「外圧」としての役割もOPECに対し期待している。国会議員で石油・ガス専門家のクルトゥブ氏は「石油マフィアを駆逐し、ジョコ政権の石油改革を加速できる」と指摘する。
「石油マフィア」は、石油輸入で利権を握り蓄財している人物や組織を指す。この言葉を14年に使い始めたジョコ大統領は、プルタミナのシンガポール子会社でインドネシアへのガソリン輸出を独占してきたペトラルをやり玉に挙げた。
インドネシアはレギュラーガソリン輸入をシンガポールに依存し、14年は消費量の7割近かった。石油・ガスのシンガポールからの輸入額は、同年までの10年間で4倍以上に増えた。
輸入業はペトラルの既得権として聖域化された。90年代末から石油精製能力が横ばいなのも、製油所の増強を阻んで利権を守るためだったとの見方もある。
ジョコ大統領は5月、ペトラルの営業を停止させた。プルタミナのドゥイ社長は11月、「ペトラル経由の輸入にプルタミナと政府外の第三者が関与し、不正に高額な調達条件をのまされていた」との調査結果を発表した。
OPECに加盟したインドネシアは、今後産油国と原油の調達で直接取引することになる。国内製油所の能力増強にも取り組めば、石油マフィアの利権を破壊することも可能になるとみられる。
実は、産油国の集まりであるOPECへの復帰と軌を一にして、インドネシアは11月18日に国際エネルギー機関(IEA)の準加盟国(アソシエート・カントリー)にも加わった。IEAの主な加盟国は石油の消費国である先進国だ。再生可能エネルギーなどの協力を仰いで、石油やガスの国内消費を抑える思惑がある。
OPECとIEAは原油価格を巡る生産調整などで対立したこともある。立場が異なる2つの団体に同じ時期に参加したわけだが、純輸入国のインドネシアがOPECに加わった理由が産油国との連携と、それに伴う石油利権の破壊だとすれば説明がつく。
製油所投資をさらに呼び込むにはタックスホリデー(法人税の一時免除)をはじめ優遇措置の整備なども課題になる。「石油マフィア」との対決もこれからが本番だ。原油価格の低迷と供給先の確保に困る産油国を利用して、安定調達と設備増強、さらには国内改革という「果実」を得ようとするジョコ大統領の手腕が問われる。
(ジャカルタ=渡辺禎央)
[日経新聞12月20日朝刊P.15]
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