http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/173.html
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「ケリー国務長官、プーチン大統領に対し「米国はロシアの協力に感謝している」と発言:今月二度目の訪露:クリミア問題も解決か」
http://www.asyura2.com/15/warb16/msg/637.html
で、今月末がぎりぎりの返済期限である30億ドルのウクライナ対露債務とクリミア半島ロシア再編入の交換が成立した可能性が高いと書いた。
その見方について少し補足をする。
世界で広く「ウクライナ危機」の発端と認識されているのは、昨14年2月に起きたキエフでの“デモ隊への銃撃”(反ヤヌコビッチ派の仕業説が有力)で死者が出た事件であるが、ヤヌコビッチ大統領に対する抗議運動が盛んになったきっかけは、デモ隊への銃撃事件から3ヶ月ほど遡る13年11月に、ヤヌコビッチ大統領が、9月にウクライナ最高会議とEU議会が批准していた「EU・ウクライナ連合協定」への署名を拒否したことである。
(EUは、ロシアに配慮し、連合協定のFTA条項の暫定的適用を2015年末まで延期する考えを示していた)
「ウクライナ危機」に関する持説は、当時既にデフォルトの危機にあったウクライナ(2000年にデフォルト実績)に対する欧米の金融家・銀行の債権回収を継続させたい欧米主要諸国とロシア人比率が高くロシア黒海艦隊の基地になっているセバストポリを含むクリミア半島を再編入したいロシアの“取引”を進めるため引き起こされたというものである。
EU諸国は“ギリシャ銀行危機”以来銀行不良債権問題に苦しんでおり、ギリシャ問題でさえスッキリ解決できていないなかでのウクライナのデフォルトは「金融危機」の再燃につながる。
EUは、ギリシャと同じように、ウクライナに新規の融資を行いそのおカネでEU諸国銀行への債務返済を実施させることで、“国家機関がカネを出し銀行がそのカネを手に入れる”政策を実行している。
ギリシャでさえ、北部を中心としたEU加盟国やEU市民が“救済”(内実はギリシャ救済ではなく銀行救済)に反発している現状を考えると、EU加盟国でもないウクライナに対し何もないまま巨額の融資を行うことは困難である。
実際にも、内戦的状況になる前は20億ユーロレベルの融資であったものが、内戦後一気に120億ユーロレベルまで引き上げられた。
そのような救済策に対し、EU諸国やEU市民は、極悪非道のロシアにより危機的状況に追い詰められたウクライナを救済するのは当然だと考えるようになった。
「ウクライナ危機」が勃発しなければ、EUはウクライナに100億ユーロ(約1兆3千億円)を超えるような融資はできないため、ウクライナはデフォルトに陥り、EUは大きな銀行危機に見舞われていたはずである。
一方のロシアも、クリミア半島を再編入したい強い欲求があった。
クリミア半島はソ連時代にフルシチョフ首相(当時)がロシアからウクライナに編入したという経緯がある。
ソ連解体後、ロシアは、黒海艦隊の基地となっているセバストポリに関するウクライナからの租借年限を何度か延長し、航空機や車両など基地への軍事的アクセスもウクライナとの事前協議を行わなければならない状況にあった。
また、黒海で大型艦船を補修できる設備はセバストポリだけという実状のうえに、空母建造能力を有するニコライエフ市黒海造船所(中国に譲渡された空母「遼寧」もそこで建造)も存在する重要軍事地域である。
さらに、ウクライナがEU(NATO加盟国が多数加盟)に接近するなか、クリミア半島をウクライナ領にとどめておくことができないという“安全保障”上の問題もある。
このように、欧米主要諸国とロシアのあいだで、ウクライナをめぐり“共有する利益”が存在するようになった。
それらを「ウクライナ危機」で一気に解決していこうという動き(策謀)が、遅くとも13年の段階からあったと推測する。(ロシアが高級公務員に対し国外に保有する資産の申告や外国銀行口座保有を禁止する法令を施行した12年から動いていた可能性もある)
※参照投稿
「デフォルトを嫌う金融家のため、危機を頼りにする軍需産業のため、「東西」の合作で分断と対立を煽られたウクライナ」
http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/467.html
「ウクライナ危機で問われるNATOの意味:存在意義が自覚される契機になることでNATOを救ったロシアのクリミア併合」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/445.html
「対露「口先制裁」の実例:ロシアは高級公務員の外国銀行口座保有を禁止:なのに金融資産凍結が制裁のコアという喜劇」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/302.html
「欧米の対ロシア制裁に抜け穴−最大手行は対象外:見せかけのインチキ制裁で米欧とも様々の工夫」
http://www.asyura2.com/14/warb13/msg/581.html
今回問題になっているウクライナの対露債務30億ドルは、14年12月、「ウクライナ危機」が勃発する2ヶ月前、ヤヌコビッチ前大統領が「EU・ウクライナ連合協定」への署名を拒否した1ヶ月後に、ロシアが行った融資(ユーロ建てウクライナ国債の購入)である。
このため、外見的には「EU・ウクライナ連合協定」への署名を拒否した“ご褒美”になるが、ロシア政府は15年年末を返済期限として150億ドルを融資する方針を示したのに、残り120億ドルの融資は実施しなかった偽りの“ご褒美”ということになる。
(ロシアは、ウクライナへの金融支援条件として、ウクライナの対GDP債務比率が60%を超えた場合、ロシア政府が償還を要求できるという条項を付与したが、ウクライナの債務残高が60%を超えても償還を要求しなかった)
このような経緯から、14年末にロシア政府が行ったウクライナへの融資が、初めから、クリミア半島を奪還しロシアに再編入する代償と位置づけられていた可能性がある。
といっても、それはヤヌコビッチ政権とのあいだの話でしかなく、先々週ウクライナを訪問したバイデン副大統領が、ポロシェンコ政権に因果を含めたと推測している。そして、その結果をケリー国務長官が先週モスクワに持って行ったと思われる。
IMFは、ロシアが保有する額面30億ドル相当のウクライナ国債を正式な債務と認めている。
そのため、ウクライナ対露債務30億ドルの返済を拒絶するとデフォルトと認定されることになるが、そうなると、ウクライナはIMFからの新規融資を受けられなくなる。
IMFがウクライナの実質デフォルトをどう評価するかで、「ウクライナ危機」の内実や結末が見えてくるように思える。
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ウクライナ ロシアへの債務支払わず 12月31日デフォルトへ[スプートニク日本語]
2015年12月22日 16:17(アップデート 2015年12月22日 16:18)
ウクライナは、ロシアに対し負った30億ドルの債務償却を行わず、デフォルト(債務不履行)容認をよしとした。ロシア財務省が伝えた。
ウクライナの負った対外債務は12月20日に償却されなければならなかったが、ロシア側への然るべき支払いは、21日月曜日になってもなされなかった。ロシア財務省は「形式的に言えば、もしウクライナが、今年12月31日にその期限が切れる所謂『特恵期間中』に然るべき支払いをしなければ、デフォルトになるだろう」と指摘している。
IMF理事会は、ロシアに属する額面30億ドルの債券が、正式なクレジットである事を認めているが、ウクライナは、債権のそうした法的地位から生ずるいかなる提案も行わず、自分達の義務に従った支払いもしていない。
なお、もしウクライナが債務の全額支払いを行わなければ、ロシア側は,しかるべき法的メカニズムを利用して、資金の回収に努める考えだ。
http://jp.sputniknews.com/business/20151222/1356743.html
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