http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/162.html
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中国の王毅外相は最近、新疆の過激派対策は世界規模の「テロとの戦い」の重要な一環だ、と表明した=ロイター
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「新疆ウイグルの暴動に「共産党幹部らが参加」、地元当局者:政権党で出世を目指すのは思想とは別で共産党の“同化”政策には不満」
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中国 対テロに乗じる民族政策
新疆の炭鉱殺害「容疑者を射殺」 パリ事件翌日ネットに
「56日におよぶ追跡のすえ、テロリストの射殺に成功した」。中国公安省がネットにこんな書き込みをしたのは11月14日、パリ同時テロの翌日だったという。詳細は明らかにされず、書き込みもやがて削除されたそうだ。それでも、中国情勢に関心を持つ向きには十分に意味のある情報だった。
記者会見する「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席(10月、東京・有楽町の日本外国特派員協会)
キーワードは「56日」だ。9月18日に新疆ウイグル自治区アクス地区の炭鉱で50人が殺害されたとされる事件の、容疑者たちを掃討したのだろう――。そう推測するのは自然だった。
炭鉱の事件について中国の当局やメディアは当時「公式発表」を一切していなかったが、米国の自由アジア放送(RFA)というメディアなどが早くに伝えていたからだ。
思わせぶりな公安省の書き込みについて、またもRFAが詳しく報じたのは、3日後のこと。4人の女性と3人の子どもを含む17人の容疑者が隠れていた洞窟を当局が爆破し、全員を殺害した凄惨な出来事だった、と。
米報道を後追い
これを受けて、というべきか。RFAの報道から3日後、新疆の共産党委員会の機関紙である「新疆日報」が9月18日の事件も含めた「公式発表」を掲載した。
それによると、炭鉱の事件での犠牲者は16人。2カ月近い追跡のすえ最終的に「テロリスト」たちを掃討したのは11月12日で、射殺した「テロリスト」は28人だった。ただ、女性や子どもが含まれていたかどうかには触れなかった。「テロリスト」たちは「海外の過激派組織の指揮」を受けていた、とも新疆日報は指摘した。
さらに3日後には、人民解放軍の機関紙である「解放軍報」が11月12日の掃討作戦を紹介した。火炎放射器を使って容疑者たちを洞窟からあぶり出し、刀を手にして向かってくるのをすべて射殺した、と。
一連の経緯からは、RFAの報道が迅速で、かなり正確でもあることがわかる。
たとえば、9月18日の炭鉱の事件について真っ先に報じた。あるいは、最後の「テロリスト」掃討作戦は洞窟が舞台だったと伝えた。いずれも後になって「公式発表」が認めている。すると当然、「公式発表」が触れない部分やRFAと食い違う部分には疑問が浮かぶ。
当局が射殺した「テロリスト」のなかに女性や子どもは含まれていたのか。洞窟を爆破したのか、それとも火炎放射器を用いたのか。9月18日の炭鉱の事件の背景は何なのか。本当に「海外の過激派組織の指揮」を受けていたのか。こうした疑問点の解明を国際的な人権団体などが訴えているのは、当然だろう。
共産党内に異論
実は共産党政権は足元で、新疆の民族政策や対テロ政策をめぐって党内の異論の封じ込めに追われている。たとえば11月はじめ、新疆日報の元編集長だった趙新尉氏を「民族政策などで異論を公言した」といった理由で党から除名した。「異論」の詳細は不明だが、高圧的な民族政策に対する不信が共産党の内側でも広がっている可能性がうかがえる。
同月下旬には、党の規律問題に関わる部門の機関紙が「テロを支持したりテロに加わっている幹部がいる」とまで指摘して、思想統制の強化を訴える論文を掲載した。深刻なのは「海外の過激派」よりも党内の動揺の方ではないか、という疑念さえ浮かぶ。
かりに「公式発表」が真実だとしても、「刀を手に」向かってきた容疑者たちをすべて射殺するという対処は適切だったのか、議論の余地があろう。足などを撃って動けなくするだけで十分だったのではないか、と。火炎放射器の使用も同様だ。
中国当局は「反テロ」の名の下に暴力をエスカレートさせている――。海外に亡命したウイグル人たちの集まりである世界ウイグル会議(WUC)がこんな懸念を表明しているのは、理解できる。
WUCは、共産党政権が「パリ同時テロ」に乗じて新疆のウイグル人への弾圧を強めている、とも非難している。実際、公安省が「テロリストの射殺に成功」と書き込んだのがパリ同時テロの翌日というタイミングだったのは、不気味だ。
王毅外相は最近、国際会議に出席するために外遊した先で、新疆の過激派対策は世界規模の「テロとの戦い」の重要な一環だ、と表明している。
「(米同時)テロは米国にとって悲劇だったが、中国の発展にはとても有益だった」。こんな言葉をこのコラムで紹介したのは、4年あまり前だ。語ったのは国際関係論の専門家として知られる金燦栄・中国人民大学教授だが、共産党政権の本音に近いだろう、と指摘した。パリ同時テロについても彼らは同じように受け止めているのではないか。そんな疑念を禁じ得ない。
(編集委員 飯野克彦)
[日経新聞12月13日朝刊P.15]
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