2. 2015年12月16日 05:48:51
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マリーヌ・ルペンと気候変動とナショナリズムの敗北 世界中で繰り広げられる国家主義者と国際主義者の戦い 2015.12.16(水) Financial Times (2015年12月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)極右政党、全地域圏で勝利逃す フランス地方選 12月13日、フランス地方選第2回投票の結果発表を受け、演説する国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首〔AFPBB News〕 この週末、フランスでナショナリズム(国家主義)とインターナショナリズム(国際主義)の相対的な強さが試された。そして今回はインターナショナリストたちに軍配が上がった。パリでは、フランスのローラン・ファビウス外相が明るい緑色の小づちを振り下ろし、200カ国近い国々が気候変動対策で合意したと宣言することができた。 その翌日には、ナショナリストの反移民政党・国民戦線(FN)がフランスの地域圏議会選挙に臨み、いずれの地域でも第1党になれずに終わった。 FNのマリーヌ・ルペン党首は、政治はますますナショナリストとグローバリスト(世界主義者)との戦いになっていると語った。 次第に縮まる勝敗の差 この週末の会議と選挙は、グローバリストがまだ政治を何とか支配していることを示している。だが、勝敗の差は縮小している。2002年にジャンマリ・ルペン氏がFNの候補者として大統領選挙の決選投票に進んだときの得票率は17%だった。今回の地方選挙では同氏の娘と孫娘(フランスでは、極右政治は家族の仕事だ)が40%を優に超える票を得た。全国レベルでは、FNは現在、30%弱の票を手にしている。 気候変動にかかわる協定が採択されたことは、FNが罵るグローバリストにとって重要な成功だった。マリーヌ・ルペン氏が、世界において重要な国であることをやめたフランスという将来像を描き、国境の封鎖や国際条約からの脱退などを求めていたまさにそのときに、フランスは国際的な視野を持ち、グローバルな役割を完全に果たすことができる自信に満ちた国であることを立証してみせたからだ。 つい数週間前にテロ攻撃を受けたパリでこの会議が開かれたという事実も、フランスの打たれ強さを示す重要なシンボルになった。 気候変動に取り組む協定の採択が素晴らしい国際協力の1つに数えられることは間違いないが、これを発効させるには数々のハードルを乗り越えなければならない。この協定に批判的な多くの人々が指摘しているように、パリ協定の条文は、たとえ順守されたとしても、気候変動のペースを緩やかにするという目標にとって十分でない恐れがある。 協定が抱えるこうした弱点は問題だ。なぜなら、ナショナリストとインターナショナリストとの戦いは世界中で繰り広げられているからだ。気候変動は、ナショナリストにとっては特に苛立たしい問題だ。世界規模で行動を起こして対処するしかないことが明白だからだ。これは、多くのナショナリストが地球温暖化など起きていないととぼける理由の1つだ。 米国では、ドナルド・トランプ氏やテッド・クルーズ氏のような共和党のナショナリストたちが列を成して今回の協定をこき下ろしにかかるだろう。 トランプ氏は、富める国々が発展途上国に排出量を削減してもらうためにお金を払うという事実をまず非難し、恐らくは、自分の交渉力を使えば(国境に作る壁の費用をメキシコに払わせるのとまさに同じように)中国やインドにも資金を出させることができると大声でまくし立てることだろう。 バラク・オバマ大統領は、気候変動対策での合意は米国の指導力の勝利だとすぐに発言したが、これは上記のような批判を早めに封じるための試みだった。 「弱腰オバマ」論の真実 会議に先立って米国と中国が合意していたことがパリ協定の下地を作ることになったことは間違いない。それでもオバマ大統領のこの発言は、米国人以外の人々には自己中心的で不愉快だと思われてしまうだろう。しかし、オバマ氏の発言は米国内の文脈で解釈しなければならない。米国の現職大統領は自分の味方からも、国際交渉の舞台では弱腰だと批判されるのが常なのだ。 「弱腰オバマ」論が特に説得力に満ちているように聞こえるのは、指導力の強さを落とした爆弾の数で測る場合だ。実際のところ、今回の気候変動に関する協定は、オバマ政権による外交の画期的な躍進の1年の締めくくりになっている。 今年はこの気候変動についての合意に加え、イランの核開発プログラムについても外交で話をまとめ、環太平洋経済連携協定(TPP)という大型の通商協定を結び、キューバとの国交も回復させた。この4つはすべて、何年も実現してこなかったものだ。 歴史的合意 「パリ協定」採択してCOP21閉幕 12月12日、仏パリ郊外のルブルジェで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で「パリ協定」が採択されたことを受けて、起立して拍手する各国代表や関係者ら〔AFPBB News〕 これらの取り決めに至るまでの計り知れない忍耐、譲歩の精神、細部への目配り、そして退屈さの容認は、米国の右派に見受けられる暴力的な、あるいは安易な解決策を好む傾向とはまさに対称的だ。 トランプ氏は、イスラム教徒を全員米国から追い出すと公約しているし、クルーズ氏も、中東に爆弾を大量に落として砂漠の砂が燃えて光を放つようにしてやると話している。 国内のナショナリストを倒す必要があったのは、米国人とフランス人だけではなかった。 インドと中国の政府は、西側諸国によって課された自国の経済成長に対する制約を受け入れているとの非難を受けやすい。 だが、折しも北京が息の詰まるようなスモッグに覆われ、インドが依存する氷河が後退するにつれて、中国人とインド人は、気候変動に取り組む共通の国際的利益が、気候変動は西側が生んだ問題であり、西側が単独で取り組まねばならないと主張したくなる願望に勝たなければならないことを理解した。 勝利はまだ当然視できない 気候変動に関する合意とFNの敗北は、グローバリストにとって良い週末を意味した。だが、ナショナリストに対するインターナショナリストの勝利を当然視することはできない。それどころか、ナショナリスト勢力はまだ、欧州、ロシア、米国、東アジアで力を増している。ナショナリストの物語の糧となる作用――経済の停滞、テロリズム、移民に対する恐怖心――は消え去らない。 しかし、究極的には、ナショナリズムはルペン氏やトランプ氏のような政治家が提起する本当の問題に対して、説得力のある答えを出すことができない。気候変動協定が認めたように、どれほど不満があろうとも、世界中の国家は共通の利益のために協力せざるを得ないのだ。 By Gideon Rachman http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45557 トランプ氏を猛追する対中批判の急先鋒、ルビオ候補オバマ政権の対中政策を批判し「尖閣は日本領」と主張 2015.12.16(水) 古森 義久 2015年2月26日、ワシントンD.C.で講演するマルコ・ルビオ氏(Photo by Gage Skidmore、Wikimedia Commons) 米国大統領選で共和党の指名争いがヒートアップするにつれ、若手候補のマルコ・ルビオ上院議員の存在感が高まっている。とくに彼の中国に対する政策提案が注目されるようになった。
中国が領有権を主張する日本の尖閣諸島について、ルビオ候補は「日本の領土だ」と明言している。日本にとっては目を離せない候補だといえよう。 共和党の指名争いでは、暴言を続けながらも人気が衰えないドナルド・トランプ候補がなお支持率の首位に留まっている。その後を、元神経外科医のベン・カールソン候補、ルビオ候補、上院議員のテッド・クルーズ候補ら他の13人が追っている状況である。 この選挙戦で共和党側候補の全員が強く主張するのは、オバマ政権の対中政策の弱さだ。とくに中国の米国官民へのサイバー攻撃や、南シナ海での領有権の一方的な拡張に対するオバマ政権の対応が非難の的となっている。いずれも、オバマ大統領のあまりに弱い対応が中国を増長させ、事態を悪化させてきたという指摘である。 こうした非難はオバマ政権の国務長官だったヒラリー・クリントン氏にも向けられる。これから本格化する選挙戦キャンペーンの論戦では、米国の対中政策のあり方が主要争点になるとみてよいだろう。 共和党主流派の支持では筆頭候補のルビオ議員 共和党の候補たちはこれまで以下のようにオバマ政権の対中政策を批判してきた。 「オバマ大統領は中国政府主導のサイバー攻撃と窃盗を許し、なんの対抗措置も取らないため、米国の繁栄や国家安全保障が脅かされている」(トランプ候補) 「オバマ大統領は中国の脅威に対して適切な処置を取らないから、米国はいまや新しい米軍最高司令官が必要なのだ」(クルーズ候補) ただし、これらは大ざっぱな政権批判にとどまっている。一方、ルビオ候補は、政権を批判しつつ体系的かつ具体的な対中政策を提示する。その点がワシントンの中国や外交の専門家たちから注目されている。 ルビオ候補はキューバ移民を両親に持つ44歳の若手政治家である。本来の職業は弁護士だが、連邦議会の上院では外交委員会の東アジア太平洋小委員会の筆頭議員となり、外交政策に取り組んできた。とくに日本や中国との関係に関心を示し、独自の政策を頻繁に提言してきた。 また、豊富な政策の知識があることに加えて親しみやすいオーラがあることからも、共和党の星として早くから人気を集めた。 現時点の世論調査では、ルビオ候補は支持率でトランプ氏に水をあけられてはいるが、共和党の全候補のなかで、2〜3位から5位までの間に一貫してつけている。共和党主流派の支持では筆頭候補だといってよい。 民主党のヒラリー・クリントン陣営でもルビオ候補を最大の脅威とみているという。もしもクリントン氏が民主党の指名を得て本番選挙にのぞんだ場合、若さや雄弁さ、オーラなど、ルビオ氏が最も手ごわい強敵になるとみていると伝えられる。 ルビオ候補が唱える対中政策とは ルビオ候補は今年8月ごろから、新聞への寄稿や選挙演説で対中政策について明確に主張を語るようになった。11月下旬のワシントンの大手シンクタンク「AEI」での外交演説でも中国を取り上げ、オバマ大統領の政策は「中国にひたすら友好を示し、対話を求めるという融和姿勢だが、そのことがかえって中国を攻撃的で無法にさせた」と批判した。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙への寄稿では「私は大統領として中国にこう対処する」という題の論文を発表した。ルビオ候補は同論文やその他の寄稿、演説などで、次の諸点を主張する。 ・オバマ政権は、中国の違法な領海拡張や不当な経済活動、国内の人権弾圧を無視して、ひたすら対話を求め、中国政府の責任を促す。しかし、効果がまったくないままである。 ・対中政策の原則は、第1に「米国の強さ」を保持するめに、米国が「太平洋パワー」に留まるよう努めるべきである。第2には、米国経済を中国の果敢な攻勢から守ることだ。第3には、米国の自由と人権の保護の立場から中国の人権弾圧を厳しく非難していくことである。 ・中国の軍事力を抑止するために、オバマ政権の実施する国防予算の「自動差し押さえ」を止め、アジア防衛を強める一方、日本など同盟国との安保協力を深めるべきである。 ・中国の習近平政権は独裁統治であり、米国主導のリベラルな国際秩序への脅威となっている。南シナ海や東シナ海での脅威に対しては、必要ならばためらわずに軍事力による抑止に努める。 ルビオ候補の政見は賛同を得られるのか 以上を総括すれば、中国側の違法で不当な行動には軍事力の行使を躊躇せず、断固、反撃する政策だといえよう。 ルビオ候補はそのうえ、尖閣諸島についても「施政権だけでなく主権も確実に日本側に帰属する」との発言を続けてきた。その明確な主張は、中国政府当局者から非難を浴びたほどだった。 同候補はさらに日本の民主主義や国際貢献を賞賛し、平和安保関連法の成立も安全保障寄与の国際的な拡大としてだけでなく、日米同盟の強化に貢献するとして歓迎してきた。 大統領選での共和党候補の指名争いは、まだまだ激しく続く。ルビオ候補が指名を得るという確実な展望もまだない。とはいえ、大統領選の政策論争で中国問題が大きなテーマとなることは必至である。その論争で、ルビオ候補の政見がどのように評価され賛同を得ていくのか、日本側としては注視していかざるを得ない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45532
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