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大統領選挙の共和党の候補者指名を争うドナルド・トランプ氏〔AFPBB News〕
ドナルド・トランプ大統領が誕生したら何が起きるか 厳しい環境を背景に、米大衆を惹きつける人気は衰えない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45439
2015.12.7 高濱 賛 JBpress
■表紙に「怒りに満ちた顔」を使ったワケ
本書は、米共和党大統領候補指名レースのトップを突っ走る不動産王、ドナルド・トランプの最新作である。
表紙には、眉間にしわを寄せて怒りに満ちた表情でこちらをにらみつけているトランプ。できるだけ多くの人に読んでもらいたいなら、笑顔の一つも振りまいてもよさそうなものを・・・。
筆者は序文でこの写真を選んだ理由についてこう記している。
「むろん、にっこりほほ笑む、幸せいっぱいの写真も私にはある。家族はそれを表紙に使ったらとも言ってくれた。だが、私はあえてこの写真を使った。なぜか」
「私はこの本で『不具になってしまったアメリカ』について話したいからだ。タフなタイトルだ。だがそれこそが我々の愛する国家が直面している現実なのだ。そのことに私は激しい憤りを感じている」
不動産で巨万の富を手にしたトランプは、知る人ぞ知る著者。すでに15冊の本をものしている。なかでも1987年に上梓した「The Art of the Deal」(取引のアート)はビジネス書の古典になっている。
■トランプは何を言っても批判されないのはなぜか
Crippled America Great Again(不具になったアメリカをもう一度偉大な国家にする方法) By Donald Trump Threshold Editions
キャンペーンを通じて、政治的社会的にはタブー視されている人種的偏見や他候補への中傷を平然と言ってのけてきたトランプ。
リベラル派知識層からはその知性のなさをあざ笑われている一方で、中西部、南部を中心とした白人低所得層からは圧倒的な支持を得ている。彼らの本音を代弁しているからだ。
米国内の知識層では定着しているPC(Political Correctness=人種別、性別などの差別廃止の立場からの政治的潔癖主義)から見ると、トランプの発言は完全に逸脱している。
にもかかわらず、ニューヨーク・タイムズをはじめとする主要メディアはこれを厳しく批判していないように見える。トランプの言動には持て余し気味なのだ。
なぜトランプの暴言を批判しないのか――。何人かの米国人に聞いてみた。
皆、異口同音に「トランプはどうせ共和党大統領候補には指名されないエンターティナ―だからだ」と答える。
が、理由はほかにもありそうだ。
その名を知らぬ者なしの億万長者。自らテレビ出演し、ベストセラーを何冊も出す著名な作家。歯に衣を着せぬ毒舌家としての「免罪符」がある。
しかもトランプの本音ベースの発言には、不法移民問題にしろ、米市場に洪水のように押し寄せる中国製品への反発にしろ、オバマケア(医療保険制度改正)に対する「ノー」にしろ、一部の白人の側からすれば、一理も二理もあるからだ。
■標的は大統領、議会、裁判所、そして東部メディア
本書はトランプがこれまで言い放ってきた彼の政治哲学を理路整然と書き連ねたという意味では大統領選指名に向けた「マニフェスト」と言える。
「今アメリカが置かれている状況はジョイフル(喜ばしい)ではない。我々はもう一度偉大なアメリカを作り出すために汗を流さねばならない時に直面しているのだ。だから私は今立ち上がったのだ」
「政治家たちはキャンペーンで大きなことを言っているが、彼らがこれまで何をしてきたというのだ。口先ばかりで何もできなかった。国のまつりごとを任されたにもかかわらず、何もできなかったではないか」
「ロビイストも特定の利益のためにしか動こうとしなかった。識者と称する弁護士や裁判官は憲法から外れた判断を繰り返し、大統領はその無能さを露呈している」
まさに今トランプを押し上げているポピュリズム(大衆迎合主義)を見事に代弁している。
その矛先はホワイトハウス、米議会、そしていわゆる東部エスタブリッシュメントの中核を担うリベラル派メディアやハリウッドにまで向けられている。
■使命感に満ち満ちた自己過信と自己宣伝
本書を読み解いてみて気づくのは、トランプの自信にあふれる自己過信と自己宣伝だ。
「俺は偉大な起業家だ」「俺は会社をいくつも立ち上げ、収入を稼いできた」「俺は金持ちだ、ただの金持ちじゃないぞ、本当の金持ちだ」「俺の顔がどのくらい多くの雑誌の表紙を飾ったか知っているか」「俺はすごい大学(ペンシルバニア大学)で勉強したんだぞ」・・・。
そして小学生でも分かるシンプルな表現。
「国家というものには2つの種類がある。1つは法治国家、もう1つは法律を持たない国家。そのどちらかしかない」「子供たちは国の将来そのものだ」「だから教育は何よりも重要のだ」
外交についてもシンプルな表現に終始している。
「テロリスト集団ISを粉砕するための俺のプランはこうだ。徹底的に叩いて叩く。ありとあらゆる手段を使って叩くのだ。いったい何が起こったか分からないくらいの速さで行動を起こすのだ」
「ロシアのプーチンは、オバマがまごまごしているうちにシリアでアサド政権と結託し、あれよあれよという間に、中東地域での真のリーダーになってしまった。我々には真のリーダーというものはない」
「アメリカは中東で何十兆ドルを浪費したにもかかわらず、同盟国であるイスラエルを孤立化させてしまった」
「しかもロシアの盟友であるイランと価値のない、危険この上もない核合意をしてしまった。この地域での偉大な調和と世界平和を実現するためだとオバマは言っているが、結果は逆方向に向かいつつある」
「いかにしたらこの不具になったアメリカを立て直せるか。今こそコモンセンスがあり、ビジネス的に鋭い洞察力と眼識とがあるものが指導者としてアメリカを引っ張っていく以外にない。その人物は及ばずながら俺以外にはいない」
■1890年代のポピュリスト運動を彷彿させるトランプ現象
俺が俺が、の政治の世界だが、これほどまでに自らを自賛し、国をリードするのは俺しかいないと言い切る政治家志望者はちょっと見つかりそうにない。
それがまた、教育程度が低く、落ち目の産業で働くブルーカラーや農民の心をわしづかみにしているのだ。まさに大金持ちがポピュリズム(大衆迎合主義)の波に乗って指名レースのトップを走っている。
実は米国には以前にもこうしたポピュリズム運動はあった。1890年代、農民や労組を主体とした運動だ。
1875年の大恐慌以後の経済不安の中で、西部や南部のプアホワイトが不満をぶちまけて結成した「ポピュリスト・パーティ」(人民党)だ。1892年の大統領選挙には独自候補を立てて戦ったが惨敗している。
今回はそうした動きが共和党内部から出ている。しかも政治経験者たちを抑えて独走しているのだ。
大衆迎合という意味では黒人の元外科医ベン・カーソンもそうだ。民主党で言えば、左翼のバーニー・サンダーズ上院議員もリベラル派大衆迎合主義と言える。
トランプが既成の政治家たちに失望した大衆をどこまで引きつけておけるのか。いつ失速するのか。トランプは共和党指名に敗れた場合、第3の党候補として戦い続けるのか・・・。
民主、共和両党の大統領候補者選びは年をまたぎ、来年2月初めから始まる予備選に向けてますます熱を帯びてきた。
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