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米、2つの対中政策
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投稿者 あっしら 日時 2015 年 12 月 07 日 00:33:16: Mo7ApAlflbQ6s
 


[風見鶏]米、2つの対中政策

 首都ワシントンに駐在する各国の大使に会わないことで有名なスーザン・ライス米大統領補佐官(51)がホワイトハウスの自室で定期的に懇談する人物がいる。ニクソン政権時代に大統領補佐官として米中の国交正常化に道筋をつけたヘンリー・キッシンジャー氏(92)だ。

 ライス氏と同じ国家安全保障を担当していたキッシンジャー氏はその後、国務長官を兼務し、フォード政権でも外交全般を掌握した。ライス氏は、ヒラリー・クリントン氏(68)が国務長官から外れた2期目のオバマ政権の外交を仕切る。そのライス氏が対中政策の薫陶を受けているのがキッシンジャー氏なのだ。

 ライス氏もそれを隠していない。9月下旬の米中首脳会談直前の講演では「米中の歴史から話を始めたい」と断ったうえで1971年のキッシンジャー氏の極秘訪中に時間を割いた。補佐官就任後の3回の中国訪問に触れ「いまや中国を訪れることが秘密でも何でもなくなった」と米中関係の進展をたたえた。

 ライス氏の外交について「冷戦下のパワーポリティクスに考え方が近い」という評価がある。冷戦下は、旧ソ連とどう対峙するかが米外交を組み立てる際の起点だった。今であれば、中国との間合いが、米外交のそれに当たる。

 冷戦下の旧ソ連には封じ込め政策を取ることができた。経済を中心に相互依存が深まる現在の米中関係でそれは難しい。ライス氏が主導権を握った2期目のオバマ政権が中国との協調に傾いたのは、キッシンジャー氏との関係と併せ自然な流れだった。

 その対中協調路線は東シナ海上空の防空識別圏の設定や南シナ海の岩礁埋め立てという中国の増長を招いた。政権内外の批判にさらされたオバマ米大統領は先月下旬、「航行の自由」のために中国の人工島12カイリ(約22キロ)以内に米駆逐艦を出さざるを得なくなった。

 米国の対中政策のもうひとつの潮流は、1期目のオバマ政権でクリントン氏を支えたカート・キャンベル前国務次官補(58)らだ。キャンベル氏に連なるのはリチャード・アーミテージ元国務副長官(70)やマイケル・グリーン元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長(54)。

 キャンベル氏らに共通するのは目の前の脅威に対処しようという姿勢だ。「いかなる一方的な行為にも反対する」。クリントン氏が長官退任間近に打ち出した沖縄県尖閣諸島付近で挑発を繰り返す中国に対する米国の統一見解は、キャンベル氏らがつくった。

 ある外交官はライス氏を「理念派」、キャンベル氏らを「実務派」と整理する。ライス氏が、中国が唱える米中で世界を動かす「新しい形の大国関係」に理解を示し、同盟国や友好国に関する発言が少ないのも、そうした分析と重なる。

 次期米大統領が対中政策を「理念派」と「実務派」のどちらに軸足を置くかは、日本にも影響する。民主党の本命候補、クリントン氏が大統領になれば、「実務派」台頭の可能性がある。混戦の共和党は、有力候補がまだみえないが、安倍晋三首相(61)と会談したことがあるマルコ・ルビオ上院議員(44)は「尖閣は日本の領土」と明言する。

 ワシントンの中国専門家から、こんな話を聞いた。「中国共産党関係者がブッシュ家のお膝元、米テキサス州に頻繁に出向き、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(62)の周辺に近づこうとしている」。来年11月の米大統領選まで残り1年を切った。大統領選に向けて水面下の中国の動きも慌ただしくなっている。

(ワシントン=吉野直也)

[日経新聞11月29日朝刊P.2]

 

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コメント
 
1. 2015年12月08日 08:33:21 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[50]
2015年12月8日 上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
中国の覇権主義に対して日本が取るべき「積極関与戦略」

 国際通貨基金(IMF)は、中国の人民元を「特別引き出し権(SDR)」の構成通貨に採用することを正式に決めた。2009年3月のG20サミット開催前に、中国人民銀行の周小川総裁が「米ドルに代わり主権国家の枠を超えた存在であるSDRを準備通貨にすべきである」と主張するなど、中国はSDRに対して特別な思い入れを持ってきた。「人民元の国際化」を推進してきた中国にとって、人民元がSDRの構成通貨の一角となることは悲願であったといえる。
 一方、当時日本は、G20で麻生太郎首相が「ドル覇権体制の永続」を主張したが、「SDR準備通貨化」の中国以外や、影響力拡大を目指すその他新興国、世界共通通貨を作る構想を示唆した英国、多極的な基軸通貨体制を視野に入れた仏露などの間で孤立した(前連載第11回)。「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の設立時に続いて、保守的な枠組みに拘った日本は、国際社会で急激に影響力を強める中国に対応できていないように見える(第103回)。
シーパワーの対中国戦略:
中国沿岸部(リムランド)を取り込むこと
 今回は、急拡大する中国に、日本がどう対応すべきかを論じたい。日本政府は、AIIBで中国と距離を置いたことに加えて、10月に交渉がまとまったTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についても、安倍晋三首相が「自由、民主主義、人権、法の支配という普遍的な価値観を基礎とする(TPPという)構想の進展を歓迎したい」と発言した。TPPを、非民主的な中国を排除し、中国の経済面、政治面、安保面での拡大を抑える「防波堤」だと考えているようだ。

 しかし、この連載では地政学をベースに、日本は中国経済に対して積極的に関与する戦略を持つべきだと主張してきた。地政学的に考えると、日本、米国、英国など海洋国家(シーパワー)の戦略は、ユーラシア大陸中央部(ハートランド)に位置する大陸国家(ランドパワー)の拡大を抑止するために、ハートランドの周縁に位置する「リムランド」を取り込むことである(前連載第64回)。
出典:ニコラス・スパイクマン『平和の地政学』(芙蓉書房出版刊)
 経済成長著しい中国沿岸部は、「リムランド」の一部と見なすことができる。これをシーパワーが取り込むとは、「積極的に中国の経済発展に関与することで、中国を欧米ルールに従う市場経済圏として発展させること」であり、「中国が資源ナショナリズムに走らせず、海洋権益に手を出すことのデメリットを認識させる」ということになる。
中国に恩を売った
英国の「積極関与戦略」
 シーパワーの「リムランドへの積極関与戦略」を実践してきたのが英国である。言うまでもなく、2015年4月に英国がAIIBに参加表明することで、フランス、ドイツ、イタリア、そして韓国、オーストラリアという米国の同盟国が相次いで参加表明し、トルコ、ブラジル、エジプトなど投資を受ける側となる国々が雪崩を打ったように参加する流れを生み出した。英国は「中国に透明度の高い投資をさせるためには、AIIBに入らず外から批判するのではダメで、創設時から加盟し、内側から監督し、経営を改善していく必要がある」と、AIIB加盟の正当性を主張した(英紙FT記事“'Accommodating' Beijing may be no bad thing”)。
 その後、9月にはジョージ・オズボーン英財務相が訪中し、逆に10月には習近平中国国家主席が訪英した。二国間で、ロンドン・シティでの人民元建て債券の発行、英国の銀行に対する中国での新たな事業認可など、数々の合意がなされた。特に、10月21日、習主席とディビッド・キャメロン英首相の会談で、英国南部のサマセットにあるヒンクリー・ポイント原子力発電所に、中国製の原子炉を導入することで合意したことは、世界に衝撃を与えた。
 英中の急接近は、厳しく批判されている。英国は「中国マネー」を得るために、中国の悪名高い人権問題や西側諸国や企業に対するサイバー攻撃、知的所有権侵害に対する批判を弱めているように見える。「英国は中国に屈した」という見方があるのは事実だ。
 だが一方で、英国はしたたかで強いとの指摘もある。AIIBは、英国という国の「信用」によって、多くの参加国を得ることができたからだ(英紙FT記事“Aso remarks show Japan dilemma over China-led bank”)。「英国は、中国に恩を売った」というのだ(英紙FT記事“How David Cameron lost, and then won, China”)。
英国経済の「オープンさ」と
成り上がり新興国と対峙してきた「高い経験値」
 英国は中国の言いなりなのかどうかは、今後を見守っていくしかない。しかし、この連載では、2つのことが指摘できる。まず、英国では外資による国内企業の買収をポジティブに捉えていることだ(第43回)。これは、日本では一般的に、外資による企業買収を「敗北」と捉えがちなのと対照的である。
 例えば、以前紹介した英経済紙「The Economist」の「新興国企業と英国:新しい特別な関係」という記事では、『新興国は、自国の政治的リスクを避けるために英国市場に積極的に投資する。インドのタタ財閥は、コーラス(旧ブリティッシュ・スティール)、ジャガー・ランドローバーなどを総額150億ポンド(約1兆8000億円)で買収した。新興国からの投資で、英国市場の規模は急拡大している。これは、外国に比べて規制が少なく、企業買収が簡単なオープンな市場だからだ。また、新興国にとって、英国のブランド力と高度なノウハウ・知識の蓄積も大きな魅力的だ。その結果、新興国に買収されても、英国企業の本社・工場は国内に留まっている。英国と旧植民地である新興国との「新しい関係」は、「オープンな英国」の勝利を示すものだ』と論じられた。この記事では、外資の導入を「勝利」とまで言い切っていたのである。
 実際、キャメロン政権は、法人税率のEU最低水準への引き下げによる海外企業の誘致や投資の積極的な呼び込みを中心とする経済政策の成功により、2015年5月の総選挙で勝利している(第106回)。オズボーン財務相は、中国資本の呼び込みを経済成長につなげることに、相当な自信を持っていると考えるべきだろう。
 また、英国の「成り上がり新興国」と対峙してきた経験値の高さも無視できないものだ。エネルギーを巡って「外資導入による生産拡大」と「外資追放・国有化による停滞」を何度も繰り返すロシア・ソ連と、100年以上に渡って対峙してきた経験(前連載第10回、前連載第59回)、中東でのイランからのBPの追放など、石油産業の国有化とOPEC(石油輸出国機構)の台頭、南米・アフリカでの「資源ナショナリズム」と対峙した経験、そして、第二次世界大戦後に「成り上がり新興国」であった米国への国際金融の覇権移譲の経験である。英国はさまざまな「成り上がり新興国」に対して、したたかに振る舞い、国際社会での確固たる地位を維持してきた(第103回)。
 この「経験値」の高さは、英国の「中国に透明度の高い投資をさせるためには、AIIBに入らず外から批判するのではダメで、創設時から加盟し、内側から監督し、経営を改善していく必要がある」という主張に、一定の説得力を与えているのは間違いない。
「積極的関与戦略」の重要性を示す、
人民元のSDR構成通貨入りのプロセス
 中国経済への積極的関与戦略の重要性は、人民元のSDR構成通貨入りのプロセスが証明している。中国人民銀行は、中国国債市場を諸外国の中央銀行に開放し、人民元の対ドルレートの決定方式を変更して市場の役割を高めるなど、さまざまな対策を打ってきた。特に10月には、IMFからの指摘に基づき、これまで基準金利の1.5倍としてきた預金金利の規制を撤廃する思い切った措置を講じた。
 また、習主席が断行する「反腐敗運動」は金融界にも及んでいる。11月に入り、ヘッジファンド業界の著名人をインサイダー取引と株価操作の疑いで取り調べるとともに、証券監督管理委員会のナンバー2も「重大な規律違反の容疑がある」として中央規律検査委員会で調査している。更には、中国人民銀行にまで汚職調査のメスが入り、同幹部3人を厳重警告処分にした。この事例は、経済・金融制度の不備を理由に中国を排除するのではなく、むしろ積極的に国際ルールに引き込むことで、中国に制度改革を促すことができることを示している。
シーパワー・日本の「積極関与戦略」:
「海上」を守り、「陸上」に関与する
 さて、シーパワー・日本が中国に対して「積極関与戦略」を取るならば、どうすべきであろうか。この連載では、「シルクロード経済圏(一帯一路)構想」への、積極的関与を提唱した。
中国政府が推進する「一帯一路」構想 出典:浙江省寧波市商務委員会
「一帯一路」とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」の意味)の2つの地域で、鉄道やパイプライン、通信網などのインフラ整を援助することで、中東や中央アジアからの資源輸入の輸送ルートを整備することを目的としている(WSJ日本版記事「シルクロード経済圏構想でアジアの地政学的中心目指す中国」)。
 しかし、「21世紀海上シルクロード」(「一路」)については、米軍が南シナ海に進軍し、中国が自国の領土と主張しているスプラトリー(南沙)諸島のミスチーフ(美済)岩礁とスービ(渚碧)岩礁の12海里(約22q)内を航行させる「航行の自由作戦」を展開中だ。米国や日本のようなシーパワーにとって、ランドパワー(中国)を海上に進出させることは致命的であり、米国の行動には戦略的合理性がある(第67回)。従って、「一路」については、日本は中国に協力できない。
 一方、「シルクロード経済ベルト」(「一帯」)については、積極的な関与が可能だ。ユーラシア内陸部に、英国などの多国籍資源企業は既に多数入ってビジネスをしている。日本も積極的に入っていくべきだ。資源開発、インフラ整備に日本企業が貢献できることは少なくない。例えば、安倍首相は10月末に、中央アジア5ヵ国・モンゴル歴訪し、「日本は中央アジアの自立的な発展を官民で連携して支えていく。民間企業の意欲はすでに高まっている。日本政府も公的協力、民間投資の後押し、インフラ整備、人づくりを支援する。今後、3兆円を超えるビジネスチャンスを生み出す」と発表した。
 これは、日本にとってのビジネスチャンスであると同時に、中国の「シルクロード構想」推進を支援することにもなる。だが、日本は躊躇なく進めていくべきだ。以前論じたように、ユーラシア内陸部の開発が進めば、中国のエネルギー資源確保の安定につながる。そうなれば、中国の海洋権益への拡張主義が収まっていくことになる。尖閣諸島や南シナ海を巡る中国の挑発的行動も鎮まっていく。軍事的な緊張を和らげ、領土問題の間接的な解決策にもなりえる(第103回)。
 そして、それ以上に重要なことがある。それは、日本や英米などがユーラシア内陸部で中国、ロシア、モンゴル、中央アジア諸国などに積極的に関与してビジネスを展開することで、ユーラシア内陸部に市場経済に基づいたビジネスのルールを確立し、民主主義を広げていくことである。ビジネスマンや労働者に市場ルールや民主主義の理解が広がっていくことは、中国に内側からの経済制度、社会制度の変革と、民主化を迫ることになると確信する。

http://diamond.jp/articles/-/82839


2. 2015年12月08日 11:56:17 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[56]
英財務相が米議会を批判、IMF改革への反対姿勢は「悲劇」

[ニューヨーク 7日 ロイター] - オズボーン英財務相は7日、国際通貨基金(IMF)での中国の役割拡大に反対する米議会の姿勢について「悲劇」だと批判した。

ニューヨークで行われた米シンクタンクの外交問題評議会のイベントで「中国を多国間の世界に取り込むことは英国および米国の多大な利益になる」との考えを示した。

米議会はこれまでのところ、2010年に合意した中国など新興国の影響力拡大に向けたIMF改革を批准していない。米政府は同改革を支持しているが、議会の支持も必要になる。

オズボーン財務相は「米政権を含むIMFのすべてのメンバーによる合意が、米議会という1つの立法機関によって妨げられているのは悲劇だ」と述べた。

また、差し迫る米利上げについて、実施された際には新興国市場で混乱が生じる可能性があると指摘した。

「米国や英国の緩和的な金融政策からの脱却は新興国市場に幾分大きな課題をもたらすだろう。(政策転換について)十分に伝達されていても、実施された際に対応が容易になるとは限らない」と語った。
http://jp.reuters.com/article/osborne-us-imf-uk-idJPKBN0TQ2SR20151207


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