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[風見鶏]米、2つの対中政策
首都ワシントンに駐在する各国の大使に会わないことで有名なスーザン・ライス米大統領補佐官(51)がホワイトハウスの自室で定期的に懇談する人物がいる。ニクソン政権時代に大統領補佐官として米中の国交正常化に道筋をつけたヘンリー・キッシンジャー氏(92)だ。
ライス氏と同じ国家安全保障を担当していたキッシンジャー氏はその後、国務長官を兼務し、フォード政権でも外交全般を掌握した。ライス氏は、ヒラリー・クリントン氏(68)が国務長官から外れた2期目のオバマ政権の外交を仕切る。そのライス氏が対中政策の薫陶を受けているのがキッシンジャー氏なのだ。
ライス氏もそれを隠していない。9月下旬の米中首脳会談直前の講演では「米中の歴史から話を始めたい」と断ったうえで1971年のキッシンジャー氏の極秘訪中に時間を割いた。補佐官就任後の3回の中国訪問に触れ「いまや中国を訪れることが秘密でも何でもなくなった」と米中関係の進展をたたえた。
ライス氏の外交について「冷戦下のパワーポリティクスに考え方が近い」という評価がある。冷戦下は、旧ソ連とどう対峙するかが米外交を組み立てる際の起点だった。今であれば、中国との間合いが、米外交のそれに当たる。
冷戦下の旧ソ連には封じ込め政策を取ることができた。経済を中心に相互依存が深まる現在の米中関係でそれは難しい。ライス氏が主導権を握った2期目のオバマ政権が中国との協調に傾いたのは、キッシンジャー氏との関係と併せ自然な流れだった。
その対中協調路線は東シナ海上空の防空識別圏の設定や南シナ海の岩礁埋め立てという中国の増長を招いた。政権内外の批判にさらされたオバマ米大統領は先月下旬、「航行の自由」のために中国の人工島12カイリ(約22キロ)以内に米駆逐艦を出さざるを得なくなった。
米国の対中政策のもうひとつの潮流は、1期目のオバマ政権でクリントン氏を支えたカート・キャンベル前国務次官補(58)らだ。キャンベル氏に連なるのはリチャード・アーミテージ元国務副長官(70)やマイケル・グリーン元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長(54)。
キャンベル氏らに共通するのは目の前の脅威に対処しようという姿勢だ。「いかなる一方的な行為にも反対する」。クリントン氏が長官退任間近に打ち出した沖縄県尖閣諸島付近で挑発を繰り返す中国に対する米国の統一見解は、キャンベル氏らがつくった。
ある外交官はライス氏を「理念派」、キャンベル氏らを「実務派」と整理する。ライス氏が、中国が唱える米中で世界を動かす「新しい形の大国関係」に理解を示し、同盟国や友好国に関する発言が少ないのも、そうした分析と重なる。
次期米大統領が対中政策を「理念派」と「実務派」のどちらに軸足を置くかは、日本にも影響する。民主党の本命候補、クリントン氏が大統領になれば、「実務派」台頭の可能性がある。混戦の共和党は、有力候補がまだみえないが、安倍晋三首相(61)と会談したことがあるマルコ・ルビオ上院議員(44)は「尖閣は日本の領土」と明言する。
ワシントンの中国専門家から、こんな話を聞いた。「中国共産党関係者がブッシュ家のお膝元、米テキサス州に頻繁に出向き、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(62)の周辺に近づこうとしている」。来年11月の米大統領選まで残り1年を切った。大統領選に向けて水面下の中国の動きも慌ただしくなっている。
(ワシントン=吉野直也)
[日経新聞11月29日朝刊P.2]
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