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2015年11月25日 (水) 午前0:00〜
時論公論 「フランスはどこに向かうのか」
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/232438.html
広瀬 公巳 解説委員
同時テロから10日。
フランスは地中海に展開した空母を使ってイスラム過激派組織への空爆を強化。アメリカなどと包囲網を作る動きも活発化させています。
一方、国内では、厳重な警戒体制の中で非常事態宣言が三か月間に延長されています。これを戦争状態と呼ぶオランド大統領。
花の都パリはなぜ不安に怯える街に変わってしまったのでしょうか。それを今夜は、あらためて、「移民の社会統合の失敗」そして「テロ対策の限界」という二つの観点から見直し、フランス社会の向かう先を考えます。
まず、移民についてです。
戦後、フランスは労働力の不足を補うため大量の移民を受け入れてきました。その多くはアルジェリアなど北アフリカからの移民でした。海をわたってやってきた移民の子どもや孫はフランス国籍をもつフランス人となってゆきました。
しかし、貧困や、教育の機会、そして就職の差別が続くことになります。植民地時代の抑圧の歴史と、独立戦争の中での苦い記憶も加わり不満が鬱積していきました。フランスの一部には生まれた場所や、イスラム教徒であることがわかる苗字を持っていることだけで差別されるという歪んだ社会の現実があるのです。
ほかの若者と同じように、人生を楽しみたいと思っていても仲間に入れてもらえない阻害感。そうしたものを背景に過激派の思想に染まる者が増えていきました。 ISはインターネットなどを使ってその若者の不満を吸収していったのです。
今回の事件の全容はまだわかっていませんが、死亡した犯人7人のうち少なくとも4人はフランス人でした。
スタジアム近くで自爆したのはまだ20歳だった男。コンサートホールに立てこもって銃を乱射したのはパリ郊外出身のフランス人とされています。さらにレストランなどでもフランス国籍の男が銃を乱射し自爆したとされています。
つまり実行犯はフランス人だったのです。
フランス人がフランス人を怖れなければならない。これが今のフランスが抱える社会の問題です。それをなくすためには時間をかけても社会統合の施策を進めていかなければなりません。
一方、短期的な緊急の課題として考えなければならなのは、「テロ対策の限界」という問題です。
コルシカなどの地方分離主義や、アルジェリアの武装集団などの様々なテロを経験してきたフランスがテロ対策の中で重視してきたのは諜報活動です。
移民への差別に対する不満が爆発し全土に暴動が拡大した2005年。ロンドンでは同時多発テロがありました。
翌年、フランスは公共の場での監視カメラの使用を可能にするテロ対策法を作ります。2014年の強化法で当局はインターネットでテロとの関連が疑われる情報を見られるようになりました。さらにフランスはテロに関係のない人たちの情報も網にかける法律を通します。 通信の秘密が冒されるとする反対意見を押し切っての措置でした。
諜報活動を強化した結果、要注意人物のリストアップが進み事件を未然に防いだケースもありました。しかし、結局、今回のテロは防ぐことはできませんでした。
それは今回のテロはこれまでのテロと性質が異なるものだったからです。
まず、自爆テロはフランスではありませんでした。中東やアジアの紛争地で行われているものと思われていたテロは、 先進国の大都市でも実行可能なものだったのです。その対象は無差別でした。
さらに、恐怖心をあおるという意味でも、特徴的なテロでした。スタジアムでは大勢の観客が見守る中、爆音がテレビで中継されました。 文字どおり劇場型のテロだったのです。
これまでになかったテロ。
それを可能にしているのが、命を落とすことも辞さず、地元の事情にも詳しい多数のテロ予備軍です。当局がリストアップしていた要注意人物の数は1万。フランスは社会の中に多数の危険因子をかかえこんでしまっているのです。
そして新たなテロは、攻撃の対象も無数にあり、諜報活動によるテロ対策には限界があります。
このような状況の中でフランスはどう治安を守ろうとしているのでしょうか。
オランド大統領が提案しているのは憲法の改正です。
こちらはフランスの憲法16条です。この中にテロという言葉はありません。そこでテロを想定した緊急事態への対策の見直しを進め必要な権限を国に持たせようとしています。すでに法律のレベルでは、非常事態令が3カ月間に延長されています。
非常事態令は▽疑わしい人物の家宅捜索▽報道などの規制▽集会や夜間の外出を禁止することを可能にするものです。
これに加えて、▽過激思想の拠点と判断できればイスラム教の礼拝施設を閉鎖し▽危険とみなした外国人を国外追放できるようにすることも論議されています。
こうした動きをフランスの国民はどのように受け止めているのでしょうか。
こちらはフランスの新聞が行った世論調査です。テロの前後での国民の意識の変化を比較しています。
空爆については国民の多くが「支持する」としています。移民の受け入れについて「反対だ」と答えた人が増えています。ただその変化は微妙で、国民の中の様々な判断や悩みや揺れも感じとれます。
一方、テロ対策については、危険人物からの国籍の剥奪、危険人物の自宅拘禁などにほとんどの人が賛成しています。国民の多くは強いテロ対策を望んでいます。テロ対策で自由が制限されることにも多くがやむを得ないという姿勢です。
野党勢力からもこうした方向に大きな反対はなく社会党のオランド大統領の方針が極右の政党支持者に支持されているという状況です。自由と寛容の国フランスの人々の心情はテロへの恐怖と愛国心の高まりの中で大きく揺り動かされているように見えます。
(まとめ)
今年1月にイスラム教の預言者の風刺画を掲載した新聞社が襲撃されたテロのあと、フランスの国民は「テロに屈せず、表現の自由を守る」として、強い連帯を生みました。フランスの伝統的価値観の中に危機に対処するすべを見出したのです。
しかし、今回は「テロに屈せず、何を守るのか」フランスの向かう先が見えません。むしろ軍事作戦を支持する世論を背景にフランスは力によるテロとの戦いに入り込んでいくようにも見えます。 出口のない攻撃は、アフガニスタンやイラクでのアメリカの失敗を繰り返すことにならないのか。そして多様な文化を許容し自由を尊重してきた価値観を守っていけるのか。フランスは今、大きな岐路にたっているように思えます。
- 仏首相「欧の難民受け入れ これ以上無理」/nhk 仁王像 2015/11/26 20:00:35
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