1. 2015年11月25日 04:46:58
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女に殺される金正恩、北朝鮮崩壊は時間の問題に 拡大する闇市が、秀吉の朝鮮出兵後に匹敵する大変化もたらす 2015.11.25(水) 高濱 賛 北朝鮮、朝鮮労働党70周年パレード 金第1書記が演説 北朝鮮・平壌で朝鮮労働党創建70周年の記念式典に出席した北朝鮮の金正恩第1書記(中央)と、中国共産党の劉雲山・政治局常務委員(右)。韓国の聯合ニュースTVの映像より2015年10月10日撮影)〔AFPBB News〕 恐怖政治でしか体制固めできない金正恩 北朝鮮の若い金正恩が金正日から政権を引き継いだ当時、米国にはある種の期待があった。これまでの膠着したアナクロ的な独裁体制から脱皮し、門戸開放政策に転じるのではないのか、といった淡い期待があった。 だがあれから今年12月で丸4年。その期待は完全に裏切られた。 国内では粛清に次ぐ粛清。恐怖政治でしか体制固めができない状況が続いている。外交と言えば、核開発、ミサイル開発で何とか米国にその存在を認めてもらおうとする「瀬戸際外交」を堅持する以外にない。 ピョンヤンから漏れ伝わってくる情報では金正恩は2013年には事実上のナンバーツーだった義理の叔父、張成沢ら側近たちを処刑、2014年には軍の最高幹部、玄永哲・人民武力部長(国防相)を公開処刑している。 これまでに処刑、粛清された幹部の数は70余人に上るとされている。 金王朝の崩壊か、北朝鮮国家の消滅か North Korea Confidential: Private Markets, Fashion Trends, Prison Camps, Dissenters and Defectors By Daniel Tudor and James Pearson, Tuttle 米情報機関筋からは金正恩暗殺やクーデターの可能性すら指摘されている。 米有力シンクタンクである「ランド研究所」が2013年、米情報機関などから入手した情報に基づき分析した報告書「Preparing for the Possibility of a North Korea Collapse(北朝鮮崩壊の可能性に備えて)」によれば、崩壊するシナリオは2つあるという。 1つは「金王朝が崩壊しても北朝鮮という国家は存続する場合」。 そしてもう1つは「北朝鮮という国家自体の崩壊で朝鮮民主主義人民共和国が消滅する場合」だ。 同報告書はそれぞれのケースで、米韓がどう対処すべきか、米国への影響、中国の出方など事細かに分析している。 支配階級と棲み分け、逞しく生きている庶民 国家崩壊の可能性をはらみながら、このアジア最貧国の1つとされる朝鮮民主主義人民共和国に今何が起こっているのか。そこに住むエリートたちとは全く別世界に棲み分けて住んでいる一般庶民たちはどんな生活をしているのだろうか。 本書は、北朝鮮を長年にわたり取材してきたベテラン・ジャーナリスト、元英エコノミスト誌記者ダニエル・チューダーとロイター通信ソウル特派員だったジェームス・ピアソンの共著である。 2人ともチャンスを見ては何度か北朝鮮を訪れ、垣間見てきた。金正恩を直接知っている北朝鮮の政府高官をはじめ、知り合った韓国の情報機関要員、政府関係者、ビジネスマン、さらには脱北者たちから証言をこまめに集めた。 それらを西側情報機関筋などから得た情報と突き合わせたうえでジャーナリスティックに分析している。面白いのはその視点だ。 通常、北朝鮮ものが焦点を当てるのは金正恩とその取り巻きや党・軍部の最高幹部たちの動向だ。その多くが憶測や噂に基づいて作り上げた仮説に根拠を置いている。 ところが著者2人が取り上げたのは北朝鮮の一般庶民の暮らし向きだ。それをいわば定点観測してきた。 そしてそこには、恐怖政治に怯えながらもどっこい生きている庶民の「素顔」が見えてきた。その生きざまの中に「変化」があることを2人は見逃していない。 1990年代の飢餓が社会主義統制経済体制を突き崩す その「変化」とは何か――。 2人の著者は、「変化」は、1990年代半ば、史上最悪の干ばつと経済的な困難により350万人もの飢死者を出した「苦難の行軍」時代以降、起こった、と指摘している。 「苦難の行軍」とは大量の飢死者を出した緊急事態を北朝鮮人民が一丸となって乗り切ろうとして金正日が掲げたスローガンだ。 この事態に庶民たちはどう行動したのか。食うために違法であろうとなかろうと、庶民たちはヤミ市場に頼らざるを得なくなった。朝鮮労働党も庶民の動向について見て見ないふりをしなければならなくなっていた。戦争直後の日本を彷彿させる。 そうした中で北朝鮮の女たちは存在感を発揮する。 「北朝鮮の成人男女は、朝鮮労働党が設置した作業単位で働き、わずかばかりの収入を得る。だが既婚女性は例外だ。彼女たちはヤミ市場で半ば自由に働ける。その結果、夫よりも多額の収入を得ることができるようになる。一家の稼ぎ頭になれるのだ」 「それが(男尊女卑で家長制度を重んずる儒教的な)伝統的な夫婦関係に変化をもたらし始めた。これまで口答え一つできなかった妻が夫に口答えするようになった。夫婦間の会話自体が変わり始めた。夫に対しては敬語を使ってきた妻はあたかも夫と自分とか対等であるかのような言葉使いになってきた」 商人たちが商売や婚姻を通じて支配階級に参入 「女たちのチャレンジはそうした夫婦関係に対してだけでなく、『ソングブン』と言われてきた社会階層制度(朝鮮労働党に対する忠誠グループ、中間グループ、敵性グループ)そのものに対するチャレンジとなって表れてきた」 「女たちは、ソングブンの枠組み、つまり朝鮮労働党党員資格や党幹部とのコネなどではなく、家庭や職場で直面するかもしれないリスクを取ることで自分たちの地位を向上させてきているのだ」 ここで言うリスクとはヤミ市での商業活動が違法行為であることからいつ逮捕され、刑務所送りされるかもしれないというリスクを指している。 北朝鮮の社会階級構造に「変化」をもたらしているのは女たちだけではない。 1990年代以降、既成の統制経済体制の枠外に出現してきた資本主義の申し子のような起業家たちの台頭である。 彼らは「ソングブン」の中で上流階級にいるわけではなかった。だが商売を通じて朝鮮労働党に属する支配階級エリートとコネを作り、また娘息子を支配階級の娘息子と結婚させることで上流階級に潜り込み始めたのだ。 2人の著者は、こうした動きを16世紀の「壬辰倭乱」(豊臣秀吉の朝鮮出兵)以後に朝鮮で起こった事態を重ね合わせる。 「『壬辰倭乱』以後、没落した身分階級最上位の貴族階級、両班(ヤンバン)が裕福になった商人階級の娘婿との婚姻を通じて生き延びようとした時期と類似している」 「北朝鮮体制ももはや資本主義の風を避けることはできない。支配層は自らの利益に見合う方向でその風を最大限に使おうとしている。まさに綱渡りの曲芸のようなものだ。一歩間違えば谷底に真っ逆さまに落下する。際どい冒険だ」 増え続ける脱北者だが、脱北する理由にも「変化」 北朝鮮の人口は2500万人、そのうち脱北者は2万5000人に達している。 著者によれば、1990年代半ば以降、中国や韓国に逃れた脱北者たちのほとんどは、貧困と飢えから逃れるためだと証言していた。政治的理由から罰されるのを恐れての脱北したというものは少数だった。 ところが現在、北朝鮮から逃れてきた脱北者の中には「このまま北朝鮮に生きていても自分自身を向上させることができないから」と答える者が増えているという。この変化をどう見るべきか。 社会主義的統制経済体制に風穴を開けて、資本主義的商業活動の「うまみ」を知った商人たちは、国外の資本主義社会で自らの力を試そうと考えたとしても不思議ではない。 「北朝鮮の一部の庶民たちには『a sense of agency』(結果への期待感)が生まれている」 やや西側ジャーナリスト2人による独断的でユニークな「北朝鮮ナウ」。危なっかしい金王朝による一党独裁政権下で密かに起こっている「変化」に驚きの連続だ。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45276 |