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ロシア陸上界の組織的なドーピングが世界を揺るがしている。世界反ドーピング機関(WADA)の第三者委員会が9日に公表した調査報告書は選手やコーチ、競技団体、検査機関などが証拠隠滅で共謀し、さらに政府の関与も示す驚きの内容だった。第三者委の出場停止勧告などを受け、国際陸連が13日に臨時理事会を開くなど関係組織は対応を協議するが、リオデジャネイロ五輪を来年に控えて問題は広がる可能性がある。
元強豪が証言
昨年12月にドイツ公共放送ARDがドキュメンタリー番組を報じた。「ドーピングの秘密 ロシアはいかにして勝者を作り出したのか」と題した番組では、元陸上選手の妻とロシア反ドーピング機関の元職員の夫が、ロシア国内で行われている不正を証言。さらに女子マラソンの元強豪リリア・ショブホワが陽性反応の記録を隠して2012年ロンドン五輪に出るため、「ロシア陸連幹部に45万ユーロを支払った」とインタビューで答えた。
放送を受け、WADAは今年1月に第三者委を設置、今回の報告書にまとめられた。調査のさなかの今年8月、陸上の世界選手権を前にARDと英国サンデー・タイムズ紙が、01〜12年の間に開催された五輪、世界選手権で146個のメダルにドーピングの疑いがあるとの検査結果があると報じた。
335ページに及ぶ報告書では、国ぐるみの不正の実態が暴かれている。モスクワにあるWADA公認検査機関のグレゴリー・ロドチェンコフ所長は陽性反応を示した選手に隠蔽の見返りで金銭を要求。第三者委の調査を妨害するため1417検体を故意に破棄した。また、モスクワには市政府が所管する「第2の検査機関」が存在。ここで陰性の検体を保管し、公認検査機関の陽性検体とすり替えたという。
選手に強制
ロシア反ドーピング機関は抜き打ち検査のスケジュールを選手に事前に教え、検査官は日常的に選手から収賄。コーチたちは「他の国でも似たようなことをしている。代表選手の務めだ」と選手に半ば強制していた。
この組織的ドーピングは、旧ソ連時代の「ステートアマ」の復古を思わせる。公認検査機関には、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後身に当たるロシア連邦保安局(FSB)の職員が出入りし、不正行為の圧力をかけていた。昨年のソチ冬季五輪期間中は、FSBの関係者が施設内で監視、その後も毎週のように訪れていたという。こうした状況から第三者委のディック・パウンド委員長は「(スポーツ相が)全く知らないということはあり得ない」と指摘する。
第三者委の勧告を受け、国際陸連は13日に臨時理事会を開催。17〜18日に米国で理事会を開くWADAは既に検査機関の認証は取り消し、ロドチェンコフ所長も辞任した。さらに国際オリンピック委員会(IOC)も12月8〜10日に理事会を予定する。第三者委は現状のままならロシアの陸上選手のリオ五輪出場を認めるべきでないと主張している。ロシア側が「確たる証拠がない」と強く反発するなか、IOCも国際陸連も難しい判断を迫られている。
パウンド氏は「問題は氷山の一角で、他の国や競技でもある」と指摘する。8月の報道についての報告書も年内にまとめるという。贈収賄に関する証拠はフランスに本部を置く国際刑事警察機構(ICPO)に提供した。国際陸連のラミン・ディアク前会長やその息子はロシア選手の違反を隠す見返りに賄賂を受け取った疑いがあり、フランス当局も捜査に乗り出すなど疑惑の全容は見えていない。
(山口大介)
2015年11月12日 日経新聞
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