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「中国、人工島軍事化進める」と書かれても、中国に南沙諸島で軍事化を進めるよう誘導しているのは、軍艦を派遣している米国とも言える。
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[ニュース解剖]南シナ海 応酬激しく
米、航行で「領海」骨抜きに 中国、人工島軍事化進める
世界貿易の大動脈でもある南シナ海が波立っている。人工島をつくり、軍事拠点にしようとする中国に対抗するため、米国がその12カイリ(約22キロ)内に軍艦船を展開し始めたからだ。中東からアジアに運ばれる原油の多くがこの海を通ってくる。日本にとってもひとごとではない。
「これ以上、南シナ海を埋め立てたり、軍事化したりしてはならない。ワシントンを訪れた際、習近平中国国家主席も軍事化しないと表明したはずだ」。今週、アジアを訪問しているカーター米国防長官は記者会見で中国の出方を強くけん制した。
複数の選択肢
中国は9本の破線で囲って領有権を主張する「九段線」の中で南シナ海の岩礁7カ所を埋め立て、人工島をつくり出してきた。米戦略国際問題研究所(CSIS)などによると、これらの多くに5〜6階建てのビルやヘリコプターの離着陸台を設け、レーダーや対空砲を置く動きもある。3千メートル級の滑走路も2カ所以上で建設している。
中国はこれらを「領土」とみなし、周辺の12カイリは国際法上、認められる領海であるという立場をとる。だが、満潮時に沈む岩礁を埋め立てても、国際法上、領海をもつ領土にならず、中国の主張には無理がある。米国はこのことを行動で示すため、先月27日、イージス駆逐艦「ラッセン」を中国の了解なしに人工島の12カイリ内に派遣した。
米政府は派遣を続けると公言している。カーター長官はアジア太平洋を管轄するハリス太平洋軍司令官に「複数の選択肢」を用意するよう命じた。
「前回はイージス艦1隻が短時間、12カイリ内に進入しただけだった。まずは最低限の圧力にとどめ、中国側の出方をうかがうためだ。中国が軍事化をやめなければ、派遣の規模はしだいに大きくなるだろう」
内情に通じた米国防総省のブレーンはこう明かす。中国が歩み寄らない場合には、(1)派遣する艦船を2隻以上にふやす(2)人工島の12カイリ内にとどまる時間を長くする(3)派遣するたびに米政府が公式の声明を出し、外交圧力も強める――などの選択肢が議論されているという。
先月27日には「ラッセン」と一緒に対潜哨戒機P8も送ったが、12カイリ内の上空には入らなかった。中国の出方しだいでは、その空域に米軍機を飛ばす案も検討されるという。
米国は何を達成するまでこの作戦を続けるのか。世界的に著名な米戦略家、エドワード・ルトワック氏は語る。
「米国はまず人工島の12カイリ内を何度も自由に航行し、中国の主張を骨抜きにするつもりだ。中国が人工島に爆撃機や戦闘機などを配備しないと確約し、漁業や災害支援などのための施設にするのを見届けるまで、作戦をやめないだろう」
もっとも、米政権内も一枚岩とはいえない。
複数の外交筋によると、オバマ大統領の腹心であるライス大統領補佐官(国家安全保障担当)らは、この問題で中国と全面対立することになお慎重だという。オバマ政権の任期が1年あまりとなるなか、最終盤での成果をめざす温暖化対策や中東問題を巡り中国から協力を得られなくなったら困るからだ。
中国側も軍事衝突は何としても避けたいのが本音だ。「万が一、武力衝突が起きれば、中国経済は崩壊しかねない。米軍艦船の派遣には当然、厳しく抗議はするが、しばらくは様子をみる。負ける戦いはできない」。中国の安全保障関係者からこんな声が漏れてくる。習主席としても当面の目標は、現状の既成事実化にあるようだ。
あうんの抑制
意図しない衝突を防ぐため、米中は昨年、米国防総省と中国国防省を結び、ビデオ会議装置付きのホットラインを設けることにした。今回、さっそくこの装置が活躍した。
「ラッセン」が人工島を航行した2日後。米中海軍の制服組トップが約1時間にわたり、ビデオ会議を開いたのだ。
中国側は人工島をめぐる立場は譲らなかったものの、多国間ルールに従い、互いに危険な挑発を避けることに同意した。ハリス司令官の今週の訪中など、予定されていた軍事交流を中断しないことも申し合わせた。
ケンカはするが、本気の殴り合いは避ける。いまのところ、こんな「あうんの抑制」が働いている。ただ、それがいつまで続くのかは予断を許さない。
中国共産党や軍の一部には習指導部の対応に不満がくすぶる。米艦航行の対抗措置として「グアム島の12カイリ以内を中国艦船が航行すべきだ」との意見や、「北京の米国大使館に大規模な抗議デモをかける手もある」との声も出る。強硬論が暴発する不安は消えない。
(編集委員 秋田浩之、中沢克二)
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軍事・経済 中国の遠謀 制空権視野に開発・インドネシア懐柔 野心隠さず
1988年3月、岩礁に立つベトナム兵は下半身が水に浸りつつもベトナム国旗を守っていた。そこに中国海軍が艦船から機関砲を打ち込み、ベトナム兵はばたばたと倒れた。ベトナム側によると犠牲者は64人。この一帯こそ中国が埋め立てを進めるスプラトリー諸島(中国名・南沙諸島)ジョンソン南礁だ。
南シナ海を巡り中国は74年、南ベトナムと交戦し、パラセル諸島(西沙諸島)を制圧。スプラトリー諸島では88年にベトナムとぶつかり、95年になるとミスチーフ礁の占拠でフィリピンとの争いも激化した。
攻勢は米軍のプレゼンスが低下した間隙を突いている。南ベトナムを支えた米軍は73年にベトナムから撤退し、92年にはフィリピンからも撤収した。中国は相手が退けば必ず前に出る。
中国は78年に「改革・開放」へ踏み切った後、「韜光養晦(とうこうようかい)」と呼ばれる対外姿勢をとった。野心や軍事能力は隠し、力を蓄えて経済建設を優先する考え方だった。だが、その時でさえ南シナ海では着々と地歩を固めてきた。
今回の中国による驚くべき速度の埋め立ても、オバマ政権が実力行使に出るには時間を要し、武力行使にも二の足を踏む、と見ての措置だ。米艦船が「自由航行」に踏み切った時、埋め立てはほぼ終わっていた。
世界で取引される原油、液化天然ガスの3分の1から半分がこの海域を通る。日本の中東からの輸入原油の大半が通過し、韓国も輸出品の30%、輸入エネルギーの90%が同海域を通る。「航行の自由」は死活問題だ。
中国にとって人工島の建設は軍事戦略上の意味が大きい。巨大滑走路はいつでも軍事転用できる。焦点は南シナ海への防空識別圏の設定だ。2013年、中国は東シナ海に防空識別圏を設けた。尖閣諸島の日本領海内への侵入を既成事実化した後の行動だった。
米国も、中国には人工島の不沈空母化で、制空権を手に入れるもくろみがあると警戒する。中国軍の主力戦闘機「スホイ30」や爆撃機「H6」は行動半径が2千キロ以下にとどまる。中国沿岸の基地からでは、南シナ海全域をカバーしきれない。
しかしファイアリークロス礁などに建設中の3千メートル級の滑走路が使えるなら、中国機は「給油なしで南シナ海全域を飛び回れる」(日本の軍事専門家)。南シナ海での米国の制空権は崩れる。中国は最終的に米艦船を閉め出し、中国の原子力潜水艦が自由に動ける聖域として内海化したい。
中国は射程8千キロ程度の弾道ミサイルを搭載する原潜を、南シナ海を臨む海南省の基地に配備しているとされる。このミサイルは南シナ海からでは米本土に届かない。だが原潜が太平洋を自由に行き来できれば、米本土が射程に入り、核戦力のバランスも変化しかねない。中国は9月3日の軍事パレードで米空母キラーとされる弾道ミサイル「東風21D」、グアム島に届く「東風26」も初公開した。
中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)を経済面から懐柔する布石も打った。中国から欧州、アフリカまでつなぐ「新シルクロード経済圏構想」の海上ルートは南シナ海を通る。
標的はまずインドネシアだ。同国はスプラトリー諸島の領有権を主張しておらず、くみしやすい。先に高速鉄道の建設で破格の条件を示し、日本を出し抜いた。これは中国主導で年内に創設されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも関わる。
軍事、経済両面で中国は中長期的に米国と対抗しようとうごめく。これこそが習主席が掲げる「中華復興の夢」の実現だ。日米やASEAN諸国は、爪を隠す「韜光養晦」を捨てた中国に対処する課題を共有する。
[日経新聞11月5日朝刊P.9]
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