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シナ海 応酬激しく 米、航行で「領海」骨抜きに 中国、人工島軍事化進める
http://www.asyura2.com/15/kokusai11/msg/700.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 11 月 09 日 03:19:21: Mo7ApAlflbQ6s
 


「中国、人工島軍事化進める」と書かれても、中国に南沙諸島で軍事化を進めるよう誘導しているのは、軍艦を派遣している米国とも言える。

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[ニュース解剖]南シナ海 応酬激しく
米、航行で「領海」骨抜きに 中国、人工島軍事化進める


 世界貿易の大動脈でもある南シナ海が波立っている。人工島をつくり、軍事拠点にしようとする中国に対抗するため、米国がその12カイリ(約22キロ)内に軍艦船を展開し始めたからだ。中東からアジアに運ばれる原油の多くがこの海を通ってくる。日本にとってもひとごとではない。

 「これ以上、南シナ海を埋め立てたり、軍事化したりしてはならない。ワシントンを訪れた際、習近平中国国家主席も軍事化しないと表明したはずだ」。今週、アジアを訪問しているカーター米国防長官は記者会見で中国の出方を強くけん制した。

複数の選択肢

 中国は9本の破線で囲って領有権を主張する「九段線」の中で南シナ海の岩礁7カ所を埋め立て、人工島をつくり出してきた。米戦略国際問題研究所(CSIS)などによると、これらの多くに5〜6階建てのビルやヘリコプターの離着陸台を設け、レーダーや対空砲を置く動きもある。3千メートル級の滑走路も2カ所以上で建設している。

 中国はこれらを「領土」とみなし、周辺の12カイリは国際法上、認められる領海であるという立場をとる。だが、満潮時に沈む岩礁を埋め立てても、国際法上、領海をもつ領土にならず、中国の主張には無理がある。米国はこのことを行動で示すため、先月27日、イージス駆逐艦「ラッセン」を中国の了解なしに人工島の12カイリ内に派遣した。

 米政府は派遣を続けると公言している。カーター長官はアジア太平洋を管轄するハリス太平洋軍司令官に「複数の選択肢」を用意するよう命じた。

 「前回はイージス艦1隻が短時間、12カイリ内に進入しただけだった。まずは最低限の圧力にとどめ、中国側の出方をうかがうためだ。中国が軍事化をやめなければ、派遣の規模はしだいに大きくなるだろう」

 内情に通じた米国防総省のブレーンはこう明かす。中国が歩み寄らない場合には、(1)派遣する艦船を2隻以上にふやす(2)人工島の12カイリ内にとどまる時間を長くする(3)派遣するたびに米政府が公式の声明を出し、外交圧力も強める――などの選択肢が議論されているという。

 先月27日には「ラッセン」と一緒に対潜哨戒機P8も送ったが、12カイリ内の上空には入らなかった。中国の出方しだいでは、その空域に米軍機を飛ばす案も検討されるという。

 米国は何を達成するまでこの作戦を続けるのか。世界的に著名な米戦略家、エドワード・ルトワック氏は語る。

 「米国はまず人工島の12カイリ内を何度も自由に航行し、中国の主張を骨抜きにするつもりだ。中国が人工島に爆撃機や戦闘機などを配備しないと確約し、漁業や災害支援などのための施設にするのを見届けるまで、作戦をやめないだろう」

 もっとも、米政権内も一枚岩とはいえない。

 複数の外交筋によると、オバマ大統領の腹心であるライス大統領補佐官(国家安全保障担当)らは、この問題で中国と全面対立することになお慎重だという。オバマ政権の任期が1年あまりとなるなか、最終盤での成果をめざす温暖化対策や中東問題を巡り中国から協力を得られなくなったら困るからだ。

 中国側も軍事衝突は何としても避けたいのが本音だ。「万が一、武力衝突が起きれば、中国経済は崩壊しかねない。米軍艦船の派遣には当然、厳しく抗議はするが、しばらくは様子をみる。負ける戦いはできない」。中国の安全保障関係者からこんな声が漏れてくる。習主席としても当面の目標は、現状の既成事実化にあるようだ。

あうんの抑制

 意図しない衝突を防ぐため、米中は昨年、米国防総省と中国国防省を結び、ビデオ会議装置付きのホットラインを設けることにした。今回、さっそくこの装置が活躍した。

 「ラッセン」が人工島を航行した2日後。米中海軍の制服組トップが約1時間にわたり、ビデオ会議を開いたのだ。

 中国側は人工島をめぐる立場は譲らなかったものの、多国間ルールに従い、互いに危険な挑発を避けることに同意した。ハリス司令官の今週の訪中など、予定されていた軍事交流を中断しないことも申し合わせた。

 ケンカはするが、本気の殴り合いは避ける。いまのところ、こんな「あうんの抑制」が働いている。ただ、それがいつまで続くのかは予断を許さない。

 中国共産党や軍の一部には習指導部の対応に不満がくすぶる。米艦航行の対抗措置として「グアム島の12カイリ以内を中国艦船が航行すべきだ」との意見や、「北京の米国大使館に大規模な抗議デモをかける手もある」との声も出る。強硬論が暴発する不安は消えない。

(編集委員 秋田浩之、中沢克二)
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軍事・経済 中国の遠謀 制空権視野に開発・インドネシア懐柔 野心隠さず

 1988年3月、岩礁に立つベトナム兵は下半身が水に浸りつつもベトナム国旗を守っていた。そこに中国海軍が艦船から機関砲を打ち込み、ベトナム兵はばたばたと倒れた。ベトナム側によると犠牲者は64人。この一帯こそ中国が埋め立てを進めるスプラトリー諸島(中国名・南沙諸島)ジョンソン南礁だ。

 南シナ海を巡り中国は74年、南ベトナムと交戦し、パラセル諸島(西沙諸島)を制圧。スプラトリー諸島では88年にベトナムとぶつかり、95年になるとミスチーフ礁の占拠でフィリピンとの争いも激化した。

 攻勢は米軍のプレゼンスが低下した間隙を突いている。南ベトナムを支えた米軍は73年にベトナムから撤退し、92年にはフィリピンからも撤収した。中国は相手が退けば必ず前に出る。

 中国は78年に「改革・開放」へ踏み切った後、「韜光養晦(とうこうようかい)」と呼ばれる対外姿勢をとった。野心や軍事能力は隠し、力を蓄えて経済建設を優先する考え方だった。だが、その時でさえ南シナ海では着々と地歩を固めてきた。

 今回の中国による驚くべき速度の埋め立ても、オバマ政権が実力行使に出るには時間を要し、武力行使にも二の足を踏む、と見ての措置だ。米艦船が「自由航行」に踏み切った時、埋め立てはほぼ終わっていた。

 世界で取引される原油、液化天然ガスの3分の1から半分がこの海域を通る。日本の中東からの輸入原油の大半が通過し、韓国も輸出品の30%、輸入エネルギーの90%が同海域を通る。「航行の自由」は死活問題だ。

 中国にとって人工島の建設は軍事戦略上の意味が大きい。巨大滑走路はいつでも軍事転用できる。焦点は南シナ海への防空識別圏の設定だ。2013年、中国は東シナ海に防空識別圏を設けた。尖閣諸島の日本領海内への侵入を既成事実化した後の行動だった。

 米国も、中国には人工島の不沈空母化で、制空権を手に入れるもくろみがあると警戒する。中国軍の主力戦闘機「スホイ30」や爆撃機「H6」は行動半径が2千キロ以下にとどまる。中国沿岸の基地からでは、南シナ海全域をカバーしきれない。

 しかしファイアリークロス礁などに建設中の3千メートル級の滑走路が使えるなら、中国機は「給油なしで南シナ海全域を飛び回れる」(日本の軍事専門家)。南シナ海での米国の制空権は崩れる。中国は最終的に米艦船を閉め出し、中国の原子力潜水艦が自由に動ける聖域として内海化したい。

 中国は射程8千キロ程度の弾道ミサイルを搭載する原潜を、南シナ海を臨む海南省の基地に配備しているとされる。このミサイルは南シナ海からでは米本土に届かない。だが原潜が太平洋を自由に行き来できれば、米本土が射程に入り、核戦力のバランスも変化しかねない。中国は9月3日の軍事パレードで米空母キラーとされる弾道ミサイル「東風21D」、グアム島に届く「東風26」も初公開した。

 中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)を経済面から懐柔する布石も打った。中国から欧州、アフリカまでつなぐ「新シルクロード経済圏構想」の海上ルートは南シナ海を通る。

 標的はまずインドネシアだ。同国はスプラトリー諸島の領有権を主張しておらず、くみしやすい。先に高速鉄道の建設で破格の条件を示し、日本を出し抜いた。これは中国主導で年内に創設されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも関わる。

 軍事、経済両面で中国は中長期的に米国と対抗しようとうごめく。これこそが習主席が掲げる「中華復興の夢」の実現だ。日米やASEAN諸国は、爪を隠す「韜光養晦」を捨てた中国に対処する課題を共有する。

[日経新聞11月5日朝刊P.9]


 

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コメント
 
1. 2015年11月10日 02:54:45 : KzvqvqZdMU
あすこはアメリカよりもむしろ日本衣かかわりの深いトコだ。
なのに、他人事ようにしてるアホな日本人。

国防意識が、まったくゼロに消失した日本人。
平和だの不戦だの反戦だの、偽善ばかりゆって 現実が見えなくなっとる

真っ先に軍艦を派遣せよ

[32削除理由]:削除人:アラシ

3. 2015年11月11日 07:14:26 : jXbiWWJBCA
アメリカを怒らせ、自滅への道を歩み始めた中国
南シナ海問題は満州国建国と同じ構図
2015.11.11(水) 川島 博之
ASEAN拡大国防相会議、中国の反対受け共同宣言見送り
マレーシア・スバンで開かれた東南アジア諸国連合の拡大国防相会議に出席した中国の常万全国防相(右、2015年11月4日撮影)。(c)AFP/MANAN VATSYAYANA〔AFPBB News〕
 中国が領有を宣言している島の領海に米国の駆逐艦が入った。このことについては既に多くのことが報道されているが、ここでは少し焦点を引いて、より長い時間スケールから考えてみたい。

90年前の日本を彷彿とさせる中国

 100年後の歴史の教科書は、中国が南シナ海の島を埋め立てたことは大失敗であったと書くことになるだろう。それは、戦前に日本が満州国を作ったようなものである。

 19世紀までは力のある国が海外の島などを勝手に自国の領土に組み入れても誰も文句を言わなかった。だが、20世紀に入ると国際世論なるものが醸成されて、力を持って勝手に領土を広げることはできなくなった。

 満州事変は1931年。日本はそれが原因で国際連盟を脱退しなければならなくなった。その後に起きた国際的な孤立とあの戦争については、今ここに書く必要はないだろう。

「赤い舌」などと称される九段線。中国が南シナ海での領有権を主張するために引いている破線(緑色)。(画像はwikipediaより)
 中国による南シナ海の領有宣言は満州国の建国によく似ている。誰がどう見ても「赤い舌」と呼ばれる水域は中国の領海には見えない。中国は明の時代に鄭和が領土宣言したなどと言っているが、そのよう歴史物語を持ち出すこと自体が国際的な常識とはかけ離れている。

 本稿の目的は中国を非難することではない。南シナ海の領有宣言が中国の未来に及ぼす影響を冷静に分析しようとするものである。

 領有宣言の背景には、過去20年間の中国の奇跡の成長がある。中国は大国になった。そして、軍事強国にもなった。その中国はアヘン戦争以来、屈辱の100年を経験している。強国になれば、過去の屈辱をはらしたいと思うのは歴史の常だろう。

 日本はペリーによって無理やり開国させられた。その屈辱をはらすために「坂の上の雲」を目指して駆け登った。そして第1次世界大戦の戦勝国になって大国の仲間入りを果たすと、高揚感を押さえることができずに対外膨張策に打って出た。現在の中国は90年ほど前の日本によく似ている。

9億人の農民は置き去りのまま

 そんな中国には今も多くの農民がいる。現在でも農村に6億人もの人が住んでいる。都市に住む人は7億人。その中の3億人は農村からの出稼ぎであり、戸籍も農民のまま。「農民工」と呼ばれて低賃金労働に甘んじている。奇跡の成長の恩恵を受けたのは、都市に住み都市戸籍を持っていた4億人だけである。

 今、中国政府が真っ先に行わなければならないことは、成長から取り残された9億人のもなる農民戸籍を有する人を豊かにすることだ。農民が豊かになれば中国はもっと強い国になれる。

 行うべきは国営企業の改革と規制の撤廃である。その目的は、既得権益層である都市戸籍を持つ人々からお金を奪い取って、農民戸籍の人々に再配分すること。もちろん、中国共産党も頭ではこのことは理解している。

 だが、どの国でも既得権益層の利害に切り込むことは難しい。掛け声だけに終わることが多い(これについては『中国が民主主義導入を嫌う本当の理由』をご参照いただきたい)。

「国威発揚」の代償は大きい

 中国は改革よりも対外膨張政策に力を注ぎ始めた。その目的は国威発揚。それによって、成長から取り残された人々の不満をそらしたいと考えている。

 だが、対外膨張政策は高くつく。南シナ海を領有したところで、そこから得られる利益はたかが知れている。海底油田があるとされるが、原油価格が低迷している現在、そんな海底を掘っても採算ベースには乗らない。

 また、日本などを封じこめようとして船舶の航行を本気で邪魔すれば、それは大戦争の原因になりかねない。つまり、領有したところでなんのメリットもない。それは日本が作った満州国によく似ている。

 その一方で、領有宣言によって東南アジアやオーストラリアの不信を買い、挙句の果てアメリカまで怒らせてしまった。その反動でイギリスを抱き込もうと多額の投資を行ったが、冷静に考えればあの老大国に成長産業など生まれるはずもない。投資の大半はムダになるだろう。習近平がバッキンガム宮殿で飲んだワインは途方もなく高いものに付くはずだ。

 また、周辺国を味方に付けるべくAIIB(アジアインフラ投資銀行)を作って資金をばら撒こうとしているが、いくらお金を撒いたところで「赤い舌」の領有を言い続ければ、周辺国の信頼を勝ち得ることはできない。

中国経済の低迷は目に見えている

 中国はGDP世界第2位の大国になったと言っても、1人当たりのGDPは8000ドルであり、中進国に過ぎない。大国面してパワーゲームを繰り広げるのはまだまだ早い。

 習近平は対外膨張政策に打って出ることにしたが、それは、歴史の法廷において大失敗との判決が下されると思う。泉下のケ小平も、まだまだ「養光韜晦」(能ある鷹は爪を隠す)を続けるべきだと思っているはずだ。習近平はあの世でケ小平に叱られることになるだろう。

 奇跡の成長を成し遂げることができた要因の1つに、米国が中国の製品をたくさん買ってくれたことがある。これまで米国は日本を牽制する意味もあって、中国に甘かった。それが中国の奇跡の成長を可能にした。だが、強硬路線は経済成長に欠かせない米国の支持を台無しにしてしまった。

 米国を怒らせては輸出の拡大など望むべくもない。次の20年、中国の成長率は大幅に鈍化しよう。そして成長が鈍化すれば、中国指導部内の権力闘争が激化する。天安門事件以来、中国の内政が安定していたのは経済が順調に発展していたからに他ならない。成長が鈍化し、もしマイナス成長に陥るようなことがあれば、共産党内部で深刻な路線対立が起きる。そして、その対立は経済成長を一層減速させることになろう。

 22世紀の教科書は、日本が満州国を打ち立てたことによって自滅の道を歩んだように、南シナ海の領有を宣言することによって中国は長期低迷に陥ったと書くに違いない。

 中国は曲がり角を迎えた。そして、それを決定的にしたのはこの9月に行われた習近平訪米である。未来の教科書は、ミュンヘン会談や松岡洋右による国連脱退宣言のように、それを歴史のターニングポイントとして大きく扱うことになるだろう。


【筆者からのお知らせ】

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45196

問題だらけの荒海にこぎ出す中国
中国政府の力が及ばない香港と台湾の世論
2015.11.11(水) Financial Times
(2015年11月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

中台首脳が歴史的会談、習主席「中台は一つの家族」
11月7日、シンガポールで首脳会談を行うに当たって握手を交わす中国の習近平国家主席(右)と台湾の馬英九総統〔AFPBB News〕
 「何物も我々を引き離すことはできない。我々は1つの家族だ」。台湾総統と握手を交わす最初の中国国家主席になった後、習近平氏はこう語った。

 習近平氏と馬英九氏との会談が歴史的なものだったことは間違いない。

 ただ、習近平氏から「家族」という言葉を聞いた時、筆者はハリウッド映画に出てくるマフィアのドンがやるようなこの言葉の使い方を思い出した。つまり、魅力と威嚇を混ぜ合わせた使い方である。

 実際、中国政府はまだ、台湾は反乱を起こしている省だと見なしており、もし独立を宣言するようなことがあれば、家族の一員を攻撃する権利があるとしている。

習近平主席の不安

 両義性はこれだけで終わらない。数十年に及ぶ排斥に終止符を打った習近平氏の決断は、見方によっては、自信に満ちた指導者ならではの行動だった。だが、この大胆な行動は恐らく、自信と同じくらい不安を反映したものでもある。なぜなら、近隣諸国を見渡せば、そこには数多くのトラブルが渦巻いていることが分かるからだ。

 台湾の政治は中国に逆らう方向に動いている。また中国政府は、南シナ海での領有権主張を巡って米国から強い圧力を受けている。トラブルは陸の上にもある。例えば、米国とその他11カ国は先日、環太平洋経済連携協定(TPP)という中国を排除した通商協定で合意し、アジア太平洋地域で中国が誇る中心的な地位に挑むことになった。

 一方、2014年に香港で勃発した民主派による抗議行動は本土に対する苦々しい思いを後に残し、中国政府の「一つの中国」政策に対する反発が香港と台湾で同時に発生する可能性が出てきた。

 おまけに、こうしたことはすべて、中国の国内景気が減速し、株式市場が乱高下し、かつ中国のエリート層が習近平氏の反腐敗運動にかなり動揺する中で生じている。

 こうした問題があることを考えれば、習近平氏にとって最も避けたいのは新たな台湾危機の到来だ。

 習近平氏が馬英九氏との会談に踏み切ったのは台湾総統選挙を2カ月後に控えた時期のことであり、その選挙では、独立志向で中国政府に嫌われている野党・民進党を率いる蔡英文氏が勝利する公算が大きい。

 先日交わされた習近平氏と馬英九氏の握手は、習氏が馬氏の与党・国民党を応援する試みのようにも見える。だが、世論調査では民進党が国民党をかなりリードしており、この作戦は失敗に終わりそうだ。

 もし民進党が政権を獲得し、かつ中国政府をあまりにもあからさまに拒めば、習近平氏はもっとドスを利かせた言葉遣いをしなければと思うかもしれない。もしそれを実行に移せば、すでに南シナ海で小さな危機が発生している時に、米国との安全保障上の緊張が高まっていくだろう。

 前回の台湾海峡危機(1995〜96年)では、中国が台湾を軍事的に威嚇したことを受けて、米国が空母1隻をこの地域に派遣した。中国政府はその後、かなり狡猾な戦術を使うようになっており、経済や人の往来の面で急速に強まるつながりを利用して「反乱省」を少しずつ自国の勢力下に引き戻そうとしている。台湾で独立賛成派の総統が選ばれれば、こうした戦術は失敗だったことが示唆される。

 過去20年間で台湾海峡の軍事バランスは変化しており、恐らくは中国側が優位に立っている。しかし、豪胆な国家主席でなければ、この見方が正しいかどうか試したりはしないだろう。

最強のカードは経済力だが・・・

 このように影響力を強めようとする中国が手にしている最強のカードは、やはり経済力である。東南アジアでは、中国との貿易の規模が米国とのそれを大幅に上回る国がほとんどだ。しかし、それゆえにTPPは中国にとって脅威になる可能性がある。

 中国人アナリストの中にはTPPを「経済版NATO」とまで呼ぶ向きもある。中国を孤立させることを大っぴらに目指す同盟関係だと見なしているからだ。米国は、いずれは中国が参加する可能性もあると話している。また、シンガポールやニュージーランドなどTPP参加国の多くが中国の参加を真剣に望んでいることも明らかだ。これらの国は、中国外しがもたらす経済・政治的な影響を好んでいない。

 しかし、TPPの2大参加国である米国と日本は懐疑的だ。TPPの中には労働法制や環境法制、さらにはサイバースペースに関する約束など、中国が参加しにくくなるように作られた可能性のある条項もいくつか見受けられる。

 折しもコストの上昇が中国の競争力を削いでいる時だけに、TPPに参加しない時期が長くなれば、生産拠点としての中国の魅力は今よりも弱まるかもしれない。

 南シナ海やTPPなどの問題は、たとえそれが中国政府にとって困難なものであっても、少なくともその大半が政府の政策に関するものだ。

 それに比べると香港や台湾の問題はもっと予測がつきにくく、それゆえに危険度も高い。なぜなら、中国政府がコントロールできない「世論」がからんでくるからだ。

香港と台湾の世論の力

 香港でも台湾でも、若い世代は中国政府の勅令に敬意を持って対応したがらなくなってきている。中国の一部になった香港では2014年、自由選挙の実施を求める「雨傘」運動が起きた。台湾でも昨年、中国との新しい貿易協定に抗議した学生たちが立ち上がる「ヒマワリ」運動が起こっている。

デモに疲弊する香港、民主派は新たな手法模索
今年2月、香港で昨年の拠点強制排除後初めて行われた民主派のデモ〔AFPBB News〕
 これらは習近平氏にとって非常に難しい問題だ。しかし、実は中国政府が自ら作り出した問題でもある。「反乱省」「一国二制度」といった賞味期限切れの常套句を乱暴に振りかざすことで、中国政府は自らを窮地に追い込んでしまったのだ。

 台湾総統との会談は、柔軟性を示す強力なシンボルになっている。しかし、もし目の前の荒海を本当に穏やかにしたいのであれば、習近平氏は台湾と香港に対する中国政府のアプローチをその本質から変える必要がある。

By Gideon Rachman

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45231




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