1. 2015年12月04日 01:00:15
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観光産業へのテロ攻撃、貧困国に最大の打撃 先進国が素早く回復する一方、エジプトなどには長期的なダメージ 2015.12.4(金) Financial Times (2015年12月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)ロシア、エジプトに航空機44機派遣 ロシア人観光客帰国へ エジプトのリゾート地シャルムエルシェイクに観光客が戻ってくるのはいつになるか〔AFPBB News〕 チュニジアの博物館とビーチでの殺害事件。シャルムエルシェイクからの帰路にあったロシア機の撃墜。そして先月は、多くの国からパリを訪れ、コンサートやサッカーの試合に行ったり、バーやレストランで飲み食いしたりしていた人々に対する破滅的な攻撃。 観光客の殺害、楽しく過ごす地元住民の殺害に関して、今年はひどい1年だった。こうした攻撃は今に始まったことではない。 1997年のルクソールでの殺害や2002年のバリのナイトクラブ爆破テロ、ホテル、鉄道駅、ユダヤ教施設を狙った2008年のムンバイ同時多発テロなど、過去にも残忍な襲撃事件はあった。 残された家族やけがを負った人にとって、その記憶は永遠に消えない。だが、休暇を楽しむ人たちは忘れ、観光客の数は往々にして再び上向く。 それにどれほど時間がかかるかは、地元の当局がどれほど事態を掌握しているか、新たな攻撃が起きる可能性がどれほどあるか、そして全般的な不安定性がどれほど大きいかという訪問者の認識に左右される。 テロ後の対照的な動き 2005年のロンドン地下鉄爆破テロの後、英国を訪れる外国人の数はほとんど変わらず、2006年には増加した。2004年のマドリード列車爆破テロは、観光客の流入に影響を与えなかった。 対照的に、当初ためらった後、ロシアはシャルムエルシェイク行きの航空便の運航を停止した。ブリティッシュ・エアウェイズやイージージェットなどの航空会社は1月までシャルムエルシェイク発着便の運航を停止している。つまり、このエジプトのリゾート地は欧州のホリデーシーズンの間中、苦しみ続けるということだ。 2010年に始まったアラブの民衆蜂起以来、観光産業が落ち込んでいるエジプトにとって、これは深刻な打撃だ。シャルムエルシェイクはこれまで珍しい例外だった。ウェブサイト「チュニジア・ライブ」は先週、チュニジアの観光産業もまだ危機にあるという当局者らの言葉を引用した。 さまざまな攻撃の間には違いがある。 ロンドンとマドリードの爆破テロ(そして11月のパリのテロ攻撃)は一般集団を狙ったものだった。 シャルムエルシェイクとチュニジアの襲撃は明らかに観光客を標的にしていた。 しかし、攻撃後の対照的な経験は次のような疑問を投げかける。テロリストによる殺害の後、豊かな国の観光産業は比較的貧しい国よりも容易に持ち直すのだろうか。 先進国の例外は米国の「9.11」テロ 観光業とテロの関係を研究したボーンマス大学のイェガネ・モラカバティ助教授は、データはそれを裏付けているようだと話す。1つ、例外があるという。2001年に起きた米国の「9.11」テロ攻撃だ。 米国土安全保障省の報告書によると、9.11のテロ後、米国を訪れる外国人の減少は「即刻かつ急勾配」だった。外国人観光客の到着数が9.11以前の水準近くに戻ったのは、2007年になってからだ。米国の観光産業に打撃を与えた要因はほかにもあると報告書は指摘する。2001年と2002年に世界経済が下降局面に入り、空の旅が減少した。また、米国はより厳格なビザ(査証)政策も導入し、それが訪問者を遠ざけた可能性もある。 モラカバティ氏は、9.11のテロ攻撃の劇的な性質が、豊かな国の観光業があまり影響されないという傾向において米国が例外になった一因かもしれないと言う。 それでも、米国は外国人訪問者の減少を埋め合わせる方法を見つけた。これが豊かな国と比較的貧しい国とのもう1つの違いを表している。豊かな国の方が国内観光客が多いのだ。外国人訪問者が来るのをやめたら、地元の人が代わりを務める。米国の報告書によれば、ハワイの観光産業は米国人訪問者が刺激となって2003年までに全面回復を遂げた。 モラカバティ氏はさらに、貧しい国はテロの後、経済があまり多角化されていないために苦しむと付け加える。解雇されたホテルやバーの従業員がよそで仕事を見つけるのは容易ではない。観光業の落ち込みは農業などの関連産業に大きな悪影響を与える。ホテルやレストランが食料を買うのをやめるからだ。 何にも増して、比較的貧しい国はより危険だと見られることに苦しめられる。連想で苦しめられることもある。 先月、モロッコのあるホテル経営者は本紙(フィナンシャル・タイムズ)に、チュニジアのビーチでの襲撃以降、客室を埋めるのに苦労していると語った。両国が国境を接していないにもかかわらず、だ。貧しい国はテロ攻撃が起きた後、観光産業へのダメージを和らげるために何ができるのだろうか。 とりわけ脆弱な観光産業 警備を強化し、長い間、似たようなことが起きないよう祈ることはできるだろう。だが、市民の騒乱の歴史がある国々――あるいは、騒乱の地域に存在する国々――は、より豊かで安定した国よりも、旅行者の信頼を取り戻すために大きな戦いを強いられる。 こうした国の観光産業はとりわけ脆弱だ。観光業は開放性と快楽も象徴している。だからこそ、テロリストが標的にするのだ。 By Michael Skapinker
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