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China 2049 マイケル・ピルズベリー著
覇権狙う中国100年戦略に迫る
偉大な戦略家・孫子を生んだ中国については、その戦略をめぐって相反するイメージがある。まず、他国よりはるかに長期的な展望に基づく国家戦略を持って行動するという評価だ。逆に、山積する問題にその場しのぎで対応し、短期的な考慮で戦略が左右されるという批判もある。いずれが本当の中国の姿なのだろうか。本書は前者の立場からその実像に迫っている。
本書の核心は、中国が最大のライバルである米国に勝利するため、「マラソン戦略」をとっているとする主張である。中国は共産党が政権を握った1949年まで外国の侵略に悩まされ、恥辱の歴史を味わった。その復讐(ふくしゅう)のために、建国100年にあたる2049年までに政治、経済、軍事の面で米国を超える超大国を目指しているという。
衝撃的なのは、天安門事件以来、中国ではタカ派が実権を握っており、彼らが米国を敵視する戦略を秘密裏に主導しているという指摘である。米国は技術移転や投資などを通じて中国の経済成長に大きく寄与してきた。その結果、中国はもはや社会主義国ではなく、民主化しつつあるという見方は米国内に根強い。だが、タカ派は米国の貢献を認めず、逆に国民の敵対心をあおる一方で、完全な市場経済化や民主化をせずに覇権をとる道を選んでいるという。
中国はその目的を実現するため、自らの野心を隠しながら腰を低くして米国を油断させる、孫子の時代さながらの戦略をとっていると本書は指摘する。そして、米国から技術や情報を盗みながら経済発展を続け、軍事力を増強して米中の実力が逆転するのを待っているという。現在、中国では米国の衰退によってその時期が早まったと信じられ、周辺諸国に対して強硬な姿勢をとり始めたと分析する。
それに対して、米国ではいまだにナイーブな中国観が支配し続けており、中国との競争状態にあるという認識すらないと警鐘を鳴らす。むしろ米国は中国の反発を招くような政策を自粛すらしていると批判する。それゆえ、米国が宥和(ゆうわ)的な対中認識を改め、中国との対立を恐れず、改革派を積極的に支援して民主化を促すべきだと提言する。
本書の主張を単なる極論として切り捨てるのはたやすい。だが、著者は中国の幅広い情報源のほか米国防総省や情報機関の勤務経験で得られた様々な機密情報により、その主張を裏打ちする。最近の中国の高圧的な姿勢の背景を分析する上でも本書が投じた一石の波紋は大きい。
原題=THE HUNDRED−YEAR MARATHON
(野中香方子訳、日経BP社・2000円)
▼著者は米ハドソン研究所中国戦略センター所長。国防総省顧問。
《評》防衛研究所主任研究官
塚本 勝也
[日経新聞10月25日朝刊P.21]
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