1. 2015年10月23日 18:41:46
: OO6Zlan35k
ますますドツボにはまるメルケル首相 〜難民問題は、「善意」や「人道主義」だけでは解決しない! 2015年10月23日(金) 川口マーン惠美中東・シリア情勢は混迷を極め…… ベルリンを訪れたイスラエル・ネタニヤフ首相との会見で 〔PHOTO〕gettyimages 難民政策がらみで女性政治家が刺傷 10月17日、ケルン市長選の有力候補者であった女性政治家、ヘンリエッテ・レーカー氏が首をナイフで刺され、重傷を負った。翌日が投票日だったので、朝9時、最後のお願いで街角に立っていたところを賊に襲われたのだ。 犯人はすぐに捕まったが、動機を聞かれ、レーカー氏の難民政策が気に食わなかったと言っているらしい。彼女は無所属だが、現在の政権でも移民問題担当で、リベラルな移民政策を展開していた。 翌日の選挙では、極右の暴力に屈するものかと市民が一致団結したらしく、レーカー氏は絶対多数を獲得し、市長に選ばれた。しかし、現在、脳低温療法のため、人工的にひき起こされた昏睡状態で集中治療室に横たわっている。 メルケル氏が、9月初旬、ハンガリーに溜まってしまったシリア難民を例外的に引き受けると宣言して以来、9月5日から10月15日までの6週間で、40万9000人もの難民がドイツへやってきた。 さすがにこのままでは収拾がつかないとして、早急に数の上限を定めて、秩序だった受け入れを実施すべきだという声は与党内でも高いのだが、メルケル氏は、「政治難民の受け入れに上限はない」として断固譲らない。 しかし、そのおかげで、受け入れを義務付けられている州政府、また、その下で実際に受け入れに当たっている自治体が、ものすごく困っている。 その混乱ぶりはこのコラムでもしばしば書いているので繰り返さないが、ドイツは今、解決法のない困難に遭遇していると言っても過言ではないだろう。 クロアチア経由でスロヴェニアに向かおうとする難民たち 〔PHOTO〕gettyimages 難民の行軍は悲惨そのもの 10月21日、市町村の長、215人が連名で、難民の流入をストップして欲しいという嘆願書をメルケル首相宛てに出した。
ドイツの与党内では2週間ほど前から、オーストリアとドイツの国境のところに難民ゾーンのようなものを作るという案が出ている。そこで難民を登録し、審査を行い、ドイツに入れる人と、入れない人を速やかに分けようという計画だ。 ただ、ドイツとオーストリアの国境は長く、しかも何の障壁もないので、そんな関門を作っても、右からも左からもドイツには入れる。そうでなくても現在、国内の治安維持に四苦八苦している連邦警察局の長官は、難民ゾーンを作るなら、まずドイツとオーストリアの国境に壁を作らなければダメだと発言し、ひんしゅくを買った。 しかし、彼の言っていることは事実だ。それ以外に難民ゾーンなど機能する道理がない。 これまで難民の通り道となっていたハンガリーは、セルビア、およびクロアチアとの国境を完全に閉めた。もう難民はハンガリーを通り抜けることはできない。そこで彼らは、セルビア→クロアチア→スロヴェニア→オーストリアというルートを取り始めた。 ただ、このルートは悪路の上、ユーゴ内乱の時の地雷も完全には撤去されていない。しかも、現在、気温が下がり、冷たい雨が降り続いており、道は極度にぬかるんでいる。難民の行軍は1ヵ月前とは比べ物にならないほど困難な状態になっている。 しかも、スロヴェニアは、自国を通過しようとする難民のあまりの数の多さに驚いて、軍隊を出してクロアチアからの難民の流入を防ごうとしている。しかし、同じく困っているクロアチアは、構わずどんどん送り込む。 二進も三進もいかなくなって、泥濘の中で立ち往生している人たちの姿は、すでに悲惨を通り越している。 21日のニュース映像では、どうにかして先に進もうと、暗闇の中、川に首まで浸かって渡河している人々の様子が映し出された。水温は8度だそうだ。濡れた衣服は乾かない。これから寒さは本格的になるから、どうにかしないと、赤ん坊、年寄り、子供の順に死者が出ても不思議ではない。 空爆が続くシリアの首都ダマスカス 〔PHOTO〕gettyimages シリア情勢の鎮静化は一筋縄ではいかない この悲惨な状況に終止符を打つ方法はただ一つ、元を断つしかないという当たり前のことが、今、ようやく真剣に取り沙汰され始めた。
シリアの内戦は、イラクやリビアと同じく、作られた紛争だ。アラブの春と呼ばれた民主化運動は、2011年より西側に煽られて、次々と既存の政権を壊していったが、その後、西側の思う民主主義が根付いた国はない。 エジプトは、一時、イランのようなイスラム原理の国になりかけたが、現在は軍政だ。リビアはすでに国の体をなさず、混沌の中で漂っている。チュニジアだけがどうにかこうにか革命後の体制を保っているが、ここでもイスラムのテロは次第に激しさを増している。 シリアの場合も、独裁者アサド打倒が西側の合言葉だった。そこでアサド政権と戦う勢力へのテコ入れが始まったが、その結果、西側が応援したのはISであり、イスラム過激派であり、あるいはクルド族だった。 アメリカとEUはクルド族に武器を援助し、サウジアラビアやイスラエルはISを始めとするイスラム過激派を陰ながら応援した。 アサド大統領は最初から、自分の敵はテロリストであると主張していたが、欧米は聞く耳を持たなかった。そして結局、収拾がつかなくなった。シリアは、このまま行くと、リビアとイラクとアフガニスタンを足して3で割ったような状態になるという。 もちろん、アサド大統領の味方もいる。たとえばイラン。IS、およびサウジアラビアの台頭だけは絶対に防ぎたいイランは、同じシーア派としてアサド大統領を応援する。自分たちの影響下にあるレバノンのシーア派ゲリラなどを、援軍として送り込んでいるのもイランらしい。 ロシアももちろんアサド政権の最大の後援者で、ロシア軍はすでにシリアで、ISおよびアサド反対派への空爆を始めた。しかしアメリカは、未だにアサド政権打倒を諦めず、何千基もの対戦車ミサイルが、サウジを通じてアサド反対派の手に渡っているという。このままでは、シリアの内戦はロシアとアメリカの代理戦争になってしまう恐れがある。 そして、腰の定まらないEUに回ってきたツケが、難民だ。シリアが混乱に陥入れば陥るほど、難民は増える。ゆえにEUもこの期に及んで、シリア問題の解決にはプーチン大統領との連携が必要だということをようやく認めるようになった。 シリア情勢の鎮静化のためには、この際、アサド政権の延命さえ容認するのだそうだ。今までアサド打倒を旗印にやってきたことを思えばかなりの迷走である。 トルコを訪れエルドアン大統領と会談するメルケル首相 〔PHOTO〕gettyimages シリアをめぐる外交作戦が花盛り そんなわけで今、和平外交がにわかに活発になってきた。
ドイツの外相、シュタインマイヤー氏は大急ぎで、10月17日にテヘラン、19日にはリヤドに飛んだ。この敵対する二国に対話をさせ、シリア内戦を収めようという心算だったが、このミッションは失敗。イランとサウジの溝は深い。 また19日、メルケル首相はトルコに飛んで、これ以上、難民をトルコから出国させないよう、トルコ政府に頼み込んでいる。 シリアと国境を接するトルコは、すでに200万人もの難民を保護している。ドイツ政府はこれまでトルコを反民主主義だと非難していたが、現在、EUに陸路で来る難民は、ほとんどがトルコ経由だ。ドイツへの難民の流れを止めるためには、トルコに協力してもらうしかない。早い話が、経済援助の強化だ。 実はトルコは、今まで何度もEUに経済援助の増額を依頼して知らん顔をされていた。だから今回は、相当の援助と、さらにやんわりと他の要求も突き付けてくるに違いない。 難民問題で窮地に陥ってしまったメルケル首相の立場は弱い。トルコは11月1日に総選挙を控えているため、メルケル首相の朝貢外交(?)はエルドアン大統領の選挙応援に等しいと、野党が非難している。 他にもシリアをめぐる外交作戦は花盛りで、21日にはアサド大統領がモスクワを電撃訪問。同日、イスラエルのネタニヤフ首相もベルリンでメルケル首相と会談。 イスラエルはイランとは犬猿の仲。サウジアラビアも仮想敵国。イランとサウジは、前述のように、いつ戦争が始まってもおかしくはない。だから中東問題は難しい。 そうする間にも、毎日、難民はドイツに到着する。ボランティアで一生懸命、難民を助けている人たちがいる一方、難民排斥を叫ぶ極右の声も高くなってきた。一時は勢いが衰えていたPEGIDA(西洋のイスラム化に反対する愛国主義欧州人)運動も息を吹き返した。そして、難民の宿舎に火がつけられる事件が相次ぎ、難民を受け入れようとする自治体の町長などに、脅迫状が届く---。 難民問題は、善意や人道主義だけでは解決しない。 そして、国は、善意と平和主義だけ唱えていても守れない。 安全な日本で憲法9条を金科玉条に、武器を捨てれば平和が訪れると叫んでいる人たちは、「戦争反対」のプラカードを持って、スロヴェニアの泥濘の中で苦しむ難民の中に立ってみれば良い。 著者: 川口マーン惠美 『ドイツの脱原発がよくわかる本』 (草思社、税込み1,512円) まさに悪戦苦闘。それでも脱原発へと進むドイツ。しかし、日本には、それを真似てはいけない理由がある。在独30年の著者が、日本人に知ってもらいたい真実を伝える、最新レポート。
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