1. 2015年10月21日 22:18:53
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焦点:「ブレグジット」めぐる対EU交渉で英国に必要な戦術[ブリュッセル 20日 ロイター] - キャメロン英首相は11月初め、欧州連合(EU)に対して加盟条件の変更を要請する。それは英国のEU残留の是非を問う国民投票に向けた交渉の幕開けとなる。 首相はEU、そして国民および与党内EU懐疑派を相手に2つのポーカーゲームを同時進行するという高等戦術を迫られそうだ。 一方のゲームで繰り出すカードが、他方のゲームに逐一影響を与えることになる。首相が国民向けアピールを狙ってEUへの要求を増やせば増やすほど、EUの同意を得られる確率は下がる。EUへの要求を控えれば、国内で物笑いの種となるリスクが高まる。 首相から内々に要求の説明を受けたというEUのベテラン政治家は「キャメロン首相がEUに多大な要求を突き付け、その半分の成果を抱えて帰国すれば、彼はPRの点で大きな失態を犯すという問題がある」と指摘。「われわれがロンドン市民全員を『これこそ新生欧州だ』とうならせるような条件を提示できるとは思えない。つまりキャメロン氏がこの(多くを要求する)アプローチに固執するなら、彼は国民投票で負ける(離脱票が上回る)だろう」と語った。 今回の「ゲーム」は相手が2つ存在する上、EUと英国の政治文化の違い、騒ぎ立てる英メディアという要素も加わり、非常に複雑なものとなりそうだ。 キャメロン首相が5月の総選挙で再選を果たして以降の半年間、EUへの要求について沈黙を守ってきた背景には、公に駆け引きが過熱するのを避けたいとの意向があった。 EU加盟諸国はこの姿勢に不満を募らせ始めていたが、キャメロン首相は先週のEU首脳会議で、11月初めに全面的な要求リストを書面で提出すると表明した。 <脅し> 多くの英国民は42年にわたるEU加盟によって経済が制約を受け、自由が侵害されたと確信しているが、世論調査によると「残留」派と「離脱」派のどちらが勝つかは予断を許さない。キャメロン首相は、EU改革を勝ち取ることができれば国民投票で残留を訴えるが、EUが失望を誘う対応を示せば自身も離脱を選ぶ可能性があると表明している。 多くのEU関係者は、これを脅しだと考えている。EU高官や他のEU加盟国代表の間では、英首相が国民投票を行うのは与党保守党内のEU懐疑派の裏をかくための戦術だというのが共通認識となっている。「ブレクジット(Brexit、英国のEU離脱)」は不要な混乱を招くだけだとの思いは、キャメロン首相も同じだと考えているのだ。 しかし本当にそうだろうか。要求が受け入れられなければEU離脱を排除しないという姿勢を全員に納得させることは、首相の戦略において決定的に重要だ。 あるEU高官は「国民投票で勝利を収めるには、キャメロン首相が交渉結果について予断を持っていないと見なされている必要がある」と語る。 首相にとって追い風なのは、EU側に英国を離脱させたくないとの考えが強いことだ。EU第2の経済大国で、世界的影響力を持つ核保有国を失えば、EUの発言力は大打撃を食らう。 その上、英国の行政上の手腕や自由貿易推進の気風は、ドイツとフランスに拮抗する勢力として多くの加盟国に評価されている。EUがギリシャのユーロ圏離脱を阻止するために多大な努力を払ったことに照らしても、英国の立場は強いはずだと英高官らは信じている。英国民が離脱を選べば、EUは離脱交渉に何年もの時間を奪われるだろう。 キャメロン首相が掲げる規制緩和や国民議会の権限強化といった大まかな要求はEUの支持を得ており、ロンドンの金融業界をユーロ圏の規制の適用除外とする要求でさえ同意を得られそうだ。あるEU高官は「2時間もあれば合意できるかもしれない」と太鼓判を押す。 しかしEU加盟国からの移民抑制といった一部の要求は反発を買うもので、EU高官らによると妥協に漕ぎつけるには多大な法律上の工夫を要するという。 <難民問題> 来春か来秋にも実施されそうな国民投票を控え、キャメロン首相は急いでEUから妥協を引き出す必要がある。EUは現在、ギリシャ、ウクライナ、難民と次々と問題に見舞われ、英国から関心が逸れている。 難民問題の影響で離脱派がやや勢いを増しているとの世論調査結果は、EU指導者らの関心を英国に向けさせる効果があるかもしれない。しかし同時に、EU側が首相の要求を軽視することを後押しする恐れもある。 交渉に近いある関係筋は「キャメロン首相が『イエス』を勝ち取れないのなら交渉しても無駄だ、と考えてEU側が交渉を投げ出すリスクがある」と言う。 EU欧州委員会とEU閣僚理事会の幹部らは、英国を残留させるために最後まで闘い抜くと強調する。 しかし一方で、せっかく苦労して微妙な妥協を重ねても、英国の「勝者総取り」文化によって努力が水の泡になりかねないとの懸念も抱く。キャメロン首相が有権者に対し、敵を打ち負かしたと誇示したがっているのではないか、と心配しているのだ。 あるEU高官は「デービッド・キャメロン氏は闘いを必要としている。欧州の人々がそのことを理解しているかどうか分からないが、彼は一つ大きな戦果を必要としているのだ」と語る。 首相は以前、EU本部での交渉で派手に反旗を掲げ、国内メディアの大見出しを飾った経緯があるため、EU各国首脳らの我慢は限界に近付いている。EUの交渉に詳しい別の筋は「彼は英国内でキャンペーンを行うだけでは勝てない。われわれはコンセンサス政治に戻る必要がある」と話した。 英高官らは、首相が熱心にEU諸国を訪問している点を指摘し、EUとの過去の対決から学んだ証拠だと言う。首相の姿勢は27もの国々との間で合意を結ぶことの複雑さも浮き彫りにしている。中にはEUから独自の譲歩を引き出そうと動き、事態を混乱させる国も出てくるのではないかと英国は心配している。 ブリュッセルでは「慎重」と「忍耐」が合言葉になりそうだ。 あるEU高官は「われわれはデービッド・キャメロン氏を痛めつけるような闘いを必要としていない」と語る。この高官は、首相が国民投票で残留を勝ち取れるように助けるのが狙いだと主張し、「欧州の将来がかかっている」と話した。 (Alastair Macdonald記者) http://jp.reuters.com/article/2015/10/21/uk-eu-tactics-idJPKCN0SF16620151021?sp=true
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