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米中を分け隔てるこれだけの価値観
http://www.asyura2.com/15/kokusai11/msg/488.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 10 月 01 日 03:16:40: Mo7ApAlflbQ6s
 


[FT]米中を分け隔てるこれだけの価値観
2015/9/30 6:30

 「米国の大統領と中国の国家主席は、お互いにどう話しかけたらよいのかよく分からずにいる。異なるオペレーティングシステム(OS)で動いているコンピューターのようだ」。これは筆者がかつて、数々の米中首脳会談を間近で見てきたある米政府高官から聞いた意見だ。

 そのため、先週行われた習近平国家主席とバラク・オバマ大統領の会談は建設的なものだったと双方が強調しているものの、筆者は疑いを抱いている。というのは、中国と米国は世界の見方が著しく異なっているからだ。筆者には、大きな相違点が5つ見て取れる。


■(1)循環的vs直線的

 中国の歴史は非常に長く、米国の歴史は非常に短い。習主席は「中国は古代から続く文明だ。5000年の歴史がある」という表現を好んで使う。一方の米国は、国ができてまだ250年にも満たない。

 この視座の違いは、世界に対する両国首脳の考え方に大きな影響を及ぼしている。大まかに言えば、中国人は物事を循環的に考える。中国の歴史は、いくつもの王朝の興隆と没落の繰り返しだからだ。何世紀も続くことがある良い時代の後には、やはり何世紀も続くことがある悪い時代がやって来るのだ。

 これとは対照的に米国は1776年の建国以来、基本的にずっと同じ方向、すまわち、国力の増強と個人の繁栄に向かって進んできている。その結果、米国の政治家たちは歴史を直線的にとらえ、進歩を当たり前の現象と考えることが多い。


■(2)普遍主義vs個別主義

 米国建国の信条は、「人は生まれながらにしてみな平等」で同じ不可侵の権利を有しているというものだ。このため米国人は、自由や民主主義といった、理想としてはどこにおいても適用されるべき普遍的な価値観の存在を直感的に信じている。対照的に中国人は個別主義者だ。中国にとって正しいことが世界全体にとって正しいとは限らず、その反対も同じだと信じている。この見方の違いが、外国での紛争への介入や人権保護に対して両国が対照的なアプローチを取ることの土台になっている。


■(3)イデオロギーvs民族性

 米国という国家は、独立宣言と合衆国憲法に記された思想を基盤につくられている。何百万もの人々が、米国に居住し、かつそうした思想を受け入れることによって米国人になった。中国は対照的に、中国人であるとはどういうことかという問いを米国よりもはるかに民族的な視点からとらえている。

 もし筆者が米国に移住すれば、割と速やかに「米国人」になれるだろうし、筆者の子供たちも間違いなく米国人になるだろう。しかし、筆者が中国に移住しても、それだけでは筆者も子供たちも中国人にはならないだろう。その結果、中国と米国は、国家であることや市民権、移民といった重要な問題について、いくらか異なる想定を抱く傾向がある。


■(4)個人vs共同体

 米国の指導者たちは個人の権利を強調し、中国の指導者たちは共同体の利益を強調する。米国の個人主義と中国の共同体主義の違いは、国家に対する態度ににじみ出ている。米国では、強力すぎる国家から個人を守る必要があるという考え方が憲法や政治家の言説に組み込まれている。片や中国では、過去に内戦や流血の惨事に至ったこともある「カオス」に対する最善の保証は強い国家だと論じられることの方が普通だ。

 米国にはこの中国の論法を、共産党の利己主義を反映しているにすぎないと思い込んでいる人が多い。しかし、これにははるか昔にまで及ぶルーツもある。米国人は、自分たちが個人の権利を強調する起源を18世紀の独立戦争に求めるかもしれないが、中国の指導者層は強い国家の必要性を強調するときに、紀元前476年に始まった「戦国時代」に無意識に言及するのだ。


■(5)権利vsヒエラルキー

 国家に対する態度の違いは、社会を束ねていくものについての大きな見解の相違にもつながっている。米国人は個人の権利と法を強調する。片や中国では、「法の支配」を強化する必要性が以前よりもかなり頻繁に語られるようになってはいるが、共産党はヒエラルキー(序列)や責務の感覚を重んじる儒教の伝統を、社会を円滑に機能させるのに欠かせないものとして奨励している。

 これもまた、国際関係に影響を及ぼしている。なぜならこの思想は、中国のような大国と比較的小さな近隣諸国との適切な関係とはどのようなものかという中国の見方に関係してくるからだ。

 中国の巨大な規模は常に、同国の世界観を形作ってきた。だが、ここに、ようやく一つ、米国との著しい類似点がある。どちらの国も、ちょっとした「ミドルキングダム(中央王国)」意識を抱いているのだ。

 ミドルキングダムの概念は中国の過去に根差している。ある歴史家はこれを「自分たちの国がすべての中心に位置していると考える中華民族の驚くべき信念」と表現する。この信念は、欧州と日本の帝国主義者が戦いで中国を倒した1840年代に始まった「屈辱の世紀」によって、多少、揺らいだ。だが、よみがえった中国はいま、時折、特に他のアジア諸国の扱い方において、いわゆる中華思想に戻っていると批判される。

 一方、米国は世界唯一の超大国としての役割に慣れた。米国の外交政策はまだ、米国は世界秩序を確保するうえで「欠くことのできない大国」だという信念に基づいている。米国の大統領は昔の中国の皇帝と同じように、外国人から高価な貢物を受け取ることに慣れている。

 中国と米国が非常によく似ている点が少なくとも一つあることを発見すると、心強くなる。ただ、問題は――どちらの国も自分たちを「ミドルキングダム」と見なしているかもしれないが、両者とも正しいことはあり得ないのだ。

By Gideon Rachman

(2015年9月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(翻訳協力 JBpress)

(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO92218150Z20C15A9000000/?n_cid=DSTPCS001


 

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コメント
 
1. 2015年10月01日 18:19:59 : OO6Zlan35k
「中国の尻馬」にしがみつく韓国「もう、中国がアジアの盟主だ」
2015年10月1日(木)鈴置 高史

(前回から読む)
 「中国がアジア金融の盟主になる」と主張する記事が韓国主要紙に載った。中国発の金融危機までが懸念されているというのに。
次の救世主は中国
前回は、韓国はなぜ、あれほど中国に突っ込んでしまうのか、との質問で終わりました。中国経済は大きく揺れています。
鈴置:それに関連、興味深い記事が中央日報に載りました。これを読んだ日本の金融専門家は一斉に「韓国はいったい何を考えているのだろう」と驚きました。
 「米国が利上げすれば、中国がアジアを掌握?」(9月15日、日本語版)です。この記事は無署名ですが、原文の韓国語版(9月13日、中央SUNDAY 第444号)を見ると、書いたのは中国経済金融研究所長の肩書を持つ、チョン・ビョンソという韓国人エコノミストです。
  「今、世界が直面する金融危機により、米国のドルによる支配は終焉する」と主張した記事で、結論部分を要約すると以下です。
• (前回、金融危機の発生した)1998年と2015年のアジアの状況は異なる。今後、米国の利上げによってアジアからドルが流出し金融危機が発生すれば、救世主は米国と国際通貨基金(IMF)ではなく、中国だ。
• 中国が、その3兆5000億ドルの外貨準備を使って貸し出し枠を作ればアジアを支配できる。これまでアジア諸国は代案がないため、しぶしぶ米国のドルを受け入れてきた。が今回、アジアは米国を捨てて中国に走る可能性がある。アジアの金融の盟主が代わるのだ。
張子の虎の中国経済
ユニークな見方ですね。
鈴置:世界の基軸通貨としてのドルに対し、不信感が高まっているのは事実です。2008年の世界同時不況の際も「ドルに代わる世界通貨が必要だ」との意見が出ました。
 でも、年内にも予想される米利上げを機に、直ちに中国が米国に代わってアジアの金融を支配する――というのは相当に大胆な意見です。
 「盟主になる」中国経済こそが大きく揺れています。7月以降、株価は暴落しましたし、人民元も売られています。そもそも、「アジアに貸し出す3兆5000億ドルの外貨準備」なるものに疑問符が付いているのです。
 日本経済新聞の滝田洋一編集委員は「中国3.6兆ドルの外準マネーは張子の虎か」(9月2日、日経電子版)で、中国の外貨準備に関し、以下のように指摘しています。
• 「外準のうち、運用先の見当がつかない分が、少なく見積もっても1兆ドル程度はある」と、ベテランの市場エコノミストはいう。
• 市場関係者が気をもむのは、ソブリン・ウエルス・ファンド(政府系ファンド)などに、外準マネーが流れていることだ。直近ではシルクロード基金(SRF)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)の元手ともなっている。
• 中国はアフリカや中南米で資源開発投資のアクセルを踏んできた。外貨準備がこうした開発投資に振り向けられているとしたら、どうだろう。開発・採掘コストの高いこれらの案件は、最近の国際商品相場の崩落で火を噴いているはずだ。投入した資金も、相当額が焦げ付いていると思われる。
• 中国の外貨準備や人民銀行の外貨資産も、水増しされた張り子の虎ということになる。中国の外貨準備の中身をめぐる疑惑が、新たな金融危機の火種になりはすまいか。
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『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』

安倍首相の米議会演説阻止、日本の世界遺産登録は挙国反対……韓国の執拗な「終わりなき反日」が続く。これまで無関心だった日本人もさすがに首をひねる異様ぶりが際立つ。
事あるごとに日本叩きの共闘を迫られる米国も、もはや「韓国疲れ」。「対中包囲網」切り崩しを狙う中国も、日本の懐柔に動き、韓国は後回し。国内外で「独り相撲」を繰り広げ、韓国は土俵を転げ落ちた。
「二股外交」破綻の先の「中立化」そして「核武装」を見据える韓国が招く北東アジアの流動化。新たな勢力図と日本の取るべき進路を、見通す。
『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』に続く待望のシリーズ第6弾。8月17日発行。
7%成長は本当か
1兆ドルも怪しげな投資に使ったとすると「真水」――いざという時に使えるまともな外準は2.5兆ドルということですね。
鈴置:しかも8月末時点の外準は3兆5573億ドルと、8月の1カ月間で939億ドル――1000億ドル近くも減ったのです。韓国の外準の4分の1に相当する額です。ピークの2014年6月末の3兆9932億ドルと比べると、14カ月で4359億ドルも減っています。中国人が母国を見限り、人民元を売っているのです。
日本経済研究センターが「中国の本当の成長率は政府発表よりも相当に低い」と言っています。9月29日の日経新聞で読みました。
鈴置:中国政府は2015年第2四半期に年率で7.0%成長したと発表したけれど、鉄道貨物輸送量や銀行貸し出しの伸びから見て、実際は4.8%から6.5%の間に留まった――と日経センターは推計しました。
 また、2013年夏頃から中国の公式発表が日経センターの推計値を大きく上回るようになった、とも分析しています。世界のエコノミストの間でも「中国の粉飾」が常識化しています。今や、公式発表数値を信じる人はほとんどいないでしょう。
韓国は属国に戻るつもりですか
世界同時株安の震源地にもなったというのに、なぜそれほど中国経済を賛美する記事が韓国の新聞には載るのでしょうか。
鈴置:自分が買った商品の問題点から目をそらす消費者と似ています。判断の誤りを認めたくはないのでしょう。
 韓国人は「落ち目の米国、浮上する中国」と信じ、国の存続を中国に賭けました。「中国がまずいことになっている」などという情報は耳に入れたくないのです。
 例えば、8月に外準が1000億ドル近くも減ったニュース。発表翌日の9月8日に日経は2面で、フィナンシャル・タイムズ(FT)は3面で報じました。が、韓国のメディア――経済紙も含め、ほとんど報じませんでした。
 そして、その1週間後に日本の金融専門家らは中央日報の日本語版で「中国がアジアを支配する」との記事を読んで、腰を抜かすほど驚くことになったのです。
 その中には「日本の一部メディアは中国経済を悲観的に報じ過ぎる」と語る人もいます。そんな人でさえも韓国紙の中国絶賛には首を傾げたのです。ある金融専門家からは「韓国は中国の属国に戻るつもりか」と聞かれました。
目下の日本からドルは借りない
属国回帰ですか?
鈴置:この記事は最後のくだりで、アジアの国がドル不足に陥ったら今度は米国ではなく中国から借りる――と書いています。筆者がどう考えているかは分かりませんが、実際には「アジアの国」とは韓国だけを指すことになるでしょう。
 なぜなら、東南アジア諸国連合(ASEAN)や南アジアの国々は日本と通貨スワップを結んでいますから「中国を頼る」必要性は薄い。
 「『目下の日本』からはドルを借りない」で書いたように、韓国だけが「日本からは借りない」と大見えを切って、中国との人民元スワップに頼ることにしたのです(表「韓国の通貨スワップ」参照)。
韓国の通貨スワップ(2015年9月30日現在)
相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年
10月11日 2017年
10月10日
UAE 200億ディルハム/5.8兆ウォン(約54億ドル) 2013年
10月13日 2016年
10月12日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約47億ドル) 2013年
10月20日 2016年
10月19日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年
2月23日 2017年
2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年
3月6日 2017年
3月5日
CMI 384億ドル 2014年
7月17日
CMI(チェンマイ・イニシアティブ)はIMF融資とリンクしない場合は30%まで。
資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)
この記事は韓国という特殊ケースを「アジアの国」と拡大している点がまず、怪しいのですね。
鈴置:そのうえで、米国が金利を下げ、韓国が通貨危機に陥りそうになっても「日本はもちろん米国にも頭を下げないぞ。俺にはもう、もっと頼りになる新しい兄貴、中国があるからな」と筆者は肩をそびやかしたのです。
 だから日本のある専門家が「韓国は中国がこんな状況にあっても金融で中国一点張りを決めた――属国に戻ることを決めたのか?」と聞いてきたのです。
本当にそう考えているのでしょうか。
鈴置:書いているのは1人のエコノミストに過ぎず、韓国政府の意思とは言い切れません。しかし韓国には「中国に賭ける」空気が未だに濃いのです。
 米国の強い反対を押し切って、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は北京での抗日式典に参加しました。「中国ブロック」に鞍替えしたと世界から認定されるのも覚悟の上でしょう(「韓国は『帰らざる橋』を渡る」参照)。
人民元スワップは頼りになるか
「新しい兄貴」は頼りになるのでしょうか。
鈴置:いざという時に中国が貸してくれるのは人民元。韓国の外国に対する負債の相当部分はドル建てですから、返済するには人民元をドルに替える必要があります。切羽詰まった状況で、ドルへの転換が間に合うか、疑問視する人が多いのです。
 一部の専門家は「人民元が売られる中、中国が韓国へのスワップ発動を嫌がるのではないか」と見ています。なぜなら、韓国が中国から借りた人民元をドルに転じれば、巨額の人民元売りが発生するわけです。
 ただでさえ人民元売りに苦しみ、外準のドルを使って防戦している時です。韓国からのスワップ発動要請は中国にとって、はなはだ迷惑なのです。
 もちろん「約束通り中国は韓国に人民元を貸してやるだろう。減ったと言っても外準の『真水』は2.5兆ドルあるのだし、何よりも大国の面子がかかっているのだから」と言う人もいます。
 ただ、スワップを発動するにしろ、中国は何か条件を付けるかもしれません。例えば最近、韓国に要求し始めた「米韓合同軍事演習の中止」とか。これを実行させれば、米韓同盟に相当大きなヒビを入れられますからね。
人口オーナスは今年から
やはり、韓国の現実認識は甘いのですね。
鈴置:ええ、現実から相当にずれていると思います。もちろん、冒頭で紹介した金融面での「離米従中」を宣言した記事は極端な例です。中国株が下がった後は、韓国紙も「中国経済変調」と報じ始めました。
 ただ、記事のほとんどが短期的な失速と捉えています。構造的な問題であり、対策が困難な「少子高齢化」の症状が中国経済にも出始めた、といった視点の記事はほとんど見当たりません。
 日本総研の大泉啓一郎・上席主任研究員が作成した「日中韓の高齢化率の比率」(グラフ1)をご覧下さい。中国も急ピッチで高齢化が進んでいます。
グラフ1:日中韓の高齢化率の比較

注:65歳以上の高齢者が7%以上を「高齢化社会」、14%以上を「高齢社会」といい、高齢化の進み具合を示す目安になっている
出所:国連「World Population Prospects:The 2010 Revision」から大泉啓一郎氏作成
 グラフ2「日中韓の従属人口比率の推移」は中国が2015年から「人口オーナス」の時期に突入することを示しています。つまり少なくとも計算上は今年から、少子高齢化によるマイナス面が顕在化するのです。
グラフ2:日中韓の従属人口比率の推移(中位推計)

注:従属人口比率は0〜14歳と65歳以上の人口の比率
出所:国連「World Population Prospects:The 2010 Revision」から大泉啓一郎氏作成
 中国経済はこれから基礎体力が衰えていく可能性が高い。というのに国威発揚を狙って人民元のレートを高めに設定してしまい、景気が悪くなった。
 内需も伸びないので、巨額の建設投資によりアクセルを一気に踏んだ。しかし、すぐに限界に直面した。そこで株高を演出し、景気に点火しようとして失敗した。
 この危うい構造に気がついた国民は、手持ちの人民元をどんどんドルに替えている――というのが中国の現状でしょう。
 これが世界の普通の見方です。でも韓国紙は、こうした分析をほとんど書きません。「中国の懐に入ることで経済成長を実現する」という国家戦略が足元から崩れてしまうからです。
胸の筋肉だけ厚い中国
中国経済の長期停滞論は一切、言及されないのですか?
鈴置:ごくまれに語られます。朝鮮日報の宋煕永・主筆が「G2の中国、本当にNo.2なのか」(9月5日、朝鮮語版)を書きました。結論部分を訳します。
• 先月の人民元暴落を通じて、政府が為替を強引に調整しているとの事実が満天下に公開された。「やはり中国の(先進国への道のりは)遠い」との評価と同時に「胸の筋肉は厚いが頭は足りない」「自動車免許でジャンボジェットを操縦する国」との印象を植え付けた。一部の研究所からは「中国の溶解」(China Meltdown)との厳しい分析も出た。
• さらに深刻なのは内部の不満だ。階層間の二極化、都市・農村間の貧富の格差の中で、株価と不動産価格が暴落した。政府の対策が信認を受けたとは言い難く、国民の不満は膨れるしかない。成長率は低下している。企業も地方政府も債務の山に埋もれている。一人っ子政策の影響で、世界で最も急速に高齢化が進んでいる。
• この中、朴槿恵大統領が天安門から史上最大の人民軍パレードを見学した。米国との同盟を思い浮かべ眉をひそめる人もいる。しかしそれよりも、我々は中国経済の先行きをまず考えなければならない。株式会社大韓民国の貸借対照表では、多くの項目が中国の未来に従い変化するからである。
• 苦労が今後2−3年間で終わるか、10―20年間の長期の低迷に陥るかは、今後の中国次第だ。ただし、党主導の統制経済がもはや限界点に到達したことだけは明らかになった。中国が米国になるのにはまだ時間がかかる。
高齢化と金融危機
 しかし、宋煕永・主筆のように「20年もの長期停滞に陥る可能性」を指摘する人は韓国ではまれです。普通、こうした新しい視点には提灯が付いて、誰かが似たような記事で追い掛けるものです。
 でも、1カ月近く経っても宋煕永論文は孤立したままです。こうした見方はなかなか主流になりません。
 実は宋煕永・主筆は、少子高齢化による韓国の長期停滞を真っ先に指摘した人でもあります。4年半前の「不動産政策にあぐらをかく政治」(2011年3月26日、韓国語)で、激しく警鐘を鳴らしました。非常に興味深い記事なので要約します。
• ハーバード(Harvard)大のマンキュー(N.Gregory Mankiw)教授は、生産年齢人口(15〜64歳)の減少が住宅価格の下落に大きな影響を与えると予測した。ただその後に米国の住宅価格が上がったため、彼は嘲笑された。
• しかし2008年、ベビーブーム世代の引退とともに米国は金融危機を経験した。これにより長い目で見れば、人口構造の変化が住宅価格に及ぼす影響が少なくないことが知られるようになった。
• 韓国がその時期にさしかかっていることを認識すべきである。ベビーブーム世代の710万人の引退が本格化している。生産人口は今後4〜5年後に頂点を付けた後、下り坂に転じる。
• 青瓦台(大統領府)や与党のハンナラ党、建設業界は「不動産はいつかは上がる」との信仰に陥っている。日本のように20年間以上にわたって低迷し得るとの現実を信じない。
• 日本でも生産人口の減少が始まる1995年の4〜5年前から不動産価格が暴落した。政治家たちは、不動産活性化策で選挙に勝とうとの妄想を捨てるべきだ。
老化は直視したくない
4年半前に「韓国の今」を言い当てた記事ですね。
鈴置:でも、この不都合な警告に誰も耳を貸さなかった。最近になって、専門家の間でようやく少子高齢化問題が議論されるようになりました。しかし韓国政府が現実を直視しているとは言い難い。
 相変わらず景気対策というと住宅市場の活性化策頼みです。少子高齢化に対応した社会の仕組みを、本腰を入れて作ろうとするわけでもない。
なぜでしょうか。
鈴置:日本もそうでしたが、成長するのが当然だと長い間考えてきた人々が、衰退を想像するのは極めて難しい。50歳になって体力が衰えても、それを老化とは認めたくない心情と似ています。
日本に勝った!
でも韓国には日本とは異なって、隣に悪しき先行例があります。それを見れば……。
鈴置:私もそれが不思議で韓国人に聞いてみたのです。面白い答えが返って来ました。「韓国では『日本に追いついた、勝った』と皆が万歳をしている。そんな時に『日本みたいになるぞ』という話は聞きたくないのだ」そうです。
 中国の長期停滞への認識もそれに似ています。韓国人はいち早く「落ち目の米国、浮上する中国」と見切って「離米従中」した。「情勢判断が遅く、中国と関係を悪化させた」日本人に対しては「俺の後ろには中国がいるぞ。どうだ、怖いか」などとそっくり返っていた。
 それを今さら「中国の成長は限界に達したかも知れない」とは言い出しにくいのです。ここでも「日本に勝った!」と快哉を叫んでいたのですから。
ウェイト・アンド・シー
韓国人が日本に強烈なライバル心を持つのは分かります。でも、世界観までも「勝った、負けた」の対象にするというのは信じられません。
鈴置:19世紀に「西洋の衝撃」に直面した時、日本人はいち早く適応し、開国し西欧文明を導入してアジアで先頭に立った。しかるに我々は世界の変化を読み誤り、旧弊にしがみついて植民地に転落した――と韓国人は信じています。だから「今度は勝った」のです。
 前回、保守運動の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏が「ヒトラーと心中した日本」になぞらえて現在の韓国を憂えていることを紹介しました。
 1940年4月、ドイツはデンマークとノルウェーを急襲し占領しました。5月にはフランスも席巻しました。この快進撃を見て日本では「勝ち馬のドイツに乗ろう」との意見が大勢を占めるに至ったのです。
 同年9月には日独伊3国同盟を締結。しかしまだ、この時点では対米戦争を避け得る余地がありました。
 趙甲済氏も記事で引用した、大本営・陸軍参謀の瀬島龍三氏の『幾山河』によれば、無傷の連合艦隊を維持しながら、欧州での戦争の帰結を見守る「ウェイト・アンド・シー」を説く高級参謀もいました(文庫版では114ページ)。
大日本帝国の失敗
 しかし大日本帝国の陸海軍ともに「軍事情報の収集に重点を置き、政治、経済を含む総合的な国力の判断をおろそかにした」結果、対米戦争に踏み切ってしまった、と瀬島氏が回顧していることは前回に紹介した通りです。
 趙甲済氏は親米保守であり、勝った方に付こうと考える「米中二股派」ではありません。しかし「仮に二股をかけるにしろ、もう少し腰を据えて状況を見極めろ」と言いたいのでしょう。
 大日本帝国の「無傷の連合艦隊」は現在の韓国にとって「米韓同盟」に相当します。朴槿恵政権はそれを危険にさらしているのですから。
要は韓国も、冷静な判断をおろそかにして「中国が米国をしのぐ」と決めつけて動いた、ということですね。
鈴置:ええ。それに、ものごとには「勢い」というものがあって、「ウェイト・アンド・シー」でいかねば、と理屈では分かっていても、そんな地味な道を選ぶのは難しいのでしょう。
平和を願う中国共産党
韓国は今からでも米国側に引き返せませんか?
鈴置:難しいと思います。隣の超大国、中国はとても強い引力を持ちます。米中間で等距離を保つのも、国民1人1人がよほどの覚悟を持って中国に立ち向かう決意を固めて、初めて可能です。
 口先で「等距離」とか「二股」なんて言っている限り、中国にどんどん引き寄せられて行きます。
 9月3日の抗日式典に参加した潘基文(バン・キムン)国連事務総長が習近平主席と会いました。韓国の外相も務めた外交官僚出身で、2017年12月の次期大統領選挙への出馬が噂される人です。世論調査で「次期大統領にふさわしい人」を聞くと、1位に選ばれることもしばしばです。
 人民網の「習近平主席が潘基文国連事務総長と会談」(9月4日、日本語版)によると、潘基文氏は習近平主席に対し、以下のように語っています。
• 本日午前に行われた中国人民抗日戦争ならびに世界反ファシズム戦争勝利70周年記念大会は大変素晴らしかった。中国の人々は反ファシズム戦争の勝利に大きな犠牲を払い、重大な貢献をした。
• この行事によって、平和を守るという中国の人々の願いが存分に示された。中国は長年にわたって国際平和・開発事業に積極的に尽力してきた。
「平和を守るという中国の願い」ですか。なるほど、韓国が引き返せるとは、とても思えませんね。
鈴置:韓国は「中国の尻馬」にしがみつくしかなくなったのです。



早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/092000015/ 


[32削除理由]:削除人:無関係の長文多数

2. 2015年10月02日 09:11:13 : jXbiWWJBCA

「再来一杯中国茶」
心も豊かになる中国人、金の亡者でいて欲しい日本人

低成長時代を迎えた中国に見た萌芽

2015年10月2日(金)中島 恵

 中国経済が深刻な局面に立たされている。世界的株安に結びつくなど中国が及ぼす影響は甚大なだけに、日本にとっても重大な問題だ。だが、そうした国際情勢とは別に、私はこれまで一貫して中国で暮らす人々に的を絞って取材を行ってきた。個人の生き方、生活環境などを見て歩くことで、大きなニュース報道だけではわからない、微妙に変化する中国社会の一端を日本に紹介したいと思ってきたからだ。そうすることで、等身大の中国(人)を身近に感じられ、中国という国をもっと具体的に理解しやすくなると思ってきた。

 今回、久しぶりに北京や上海などを訪問したので、その実感を報告したい。

 これまで一般的に中国は経済成長し、衣食足りて、人々の生活はよくなったといわれてきた。だが、私は成長が鈍化した今のほうが、「中国はもっとよくなっている」と感じる。これほどまでに深刻な経済悪化が叫ばれているというのに、この筆者は一体何を寝ぼけたことをいっているのか? と読者は思われるかもしれない。だが、これは最近現地を歩いてみた私の正直な感想だ。

 というのは、豊かになって余裕ができたから礼節を知ったというのであれば、経済成長が鈍化したとたん、市民生活は荒廃するはずだ。だが、私には、今の中国はそうなってはいないように感じる。人々のマナーは1年前よりも格段によくなり、他人に対してもどんどん優しい社会になっている。確かに経済は悪い。だが、成熟に向かう過程の踊り場にいる今、人々の生活は我々日本人のそれに徐々に近づいてきている。深淵では「中国の日本化」がどんどん進んでいると感じるのだ。

 なぜなら、目が回るような急成長時代、全員成長の時代は終わりを迎えて、優れたサービスやモノを提供できる者だけが生き残れる、真の競争社会へと中国が突入したのではないか、と感じる場面にいくつも出くわしているからだ。

上海のホテルで“すばらしいサービス”

 最も強く感じるのは街のレストランだ。数年前ならば、レストランは高級であればあるほど混雑し、会員制クラブなどにも人が殺到し、高額な料金を支払える人の予約で満席だった。たとえサービスや料理の質がよくなくても、豪華な内装や、もの珍しく派手な料理を食べることができるということに満足し、そんな自分たちに歓喜するほど浮ついていた。

 だが、今では内容と価格が見合わない高級料理店に足を運ぶ人は激減した。消費者の目が厳しくなり、善し悪しの価値判断ができるようになった(昔は有と無しかなかった)。特徴があっておいしい料理を提供する店や、サービスが行き届いた店にはクチコミで客が殺到し、自然と差別化が図られ、サービスや味が悪い店は淘汰されていくという構造が出来上がってきた。「そうなっていくのは当然の成り行きだろう?」と日本の読者は思われるかもしれないが、私はそれを数カ月単位で訪れる中国で、毎回ひしひしと肌で感じている。

 たとえば、私が訪れた北京・王府井に程近い北京ダックの専門店は常に入店待ちの人であふれかえっていたが、「なるほど」と思わせる工夫があった。店頭で順番待ちをしているとき、通常ならば、機械に人数を打ち込むと自動で順番が印字された紙がプリントされ、それを持って椅子に座って待つシステムになっている。少し離れていても、順番がきたら携帯電話やショートメッセージで呼び出してくれるサービスもある。その程度のサービスは都市部のレストランでは、どこでも普通にやっている。

 だが、この店では順番待ち番号と電話サービス以外に、お弁当箱に入ったおつまみセットとドリンクを無料で用意していた。4人以下だと予約ができず、待たなければならないが、おつまみセットはえびせんとミニトマト、果物、スナックという豪華な内容で、これだけでもかなり満腹になるほどのボリューム。待ち時間が3時間以上に及ぶこともあり、顧客に喜ばれるサービスだった。むろん、店の本来のウリである北京ダックは北京でも指折りのおいしさで、価格も有名老舗店に比べて3割以上も安い。その上、店員のサービスも行き届いていた。私と友人は午後6時に到着し、食事にありついたのは午後9時を回っていたが、総合的に見て、前評判を上回ってあまりあるほど大満足だった。なるほど、こういう店だからこれだけ繁盛するんだな、また行きたいな、と納得がいった。

 私が上海で宿泊していた3つ〜4つ星ホテルもサービスが非常によくてびっくりした。価格は日本円に換算して1泊8000〜9000円くらい。日本のビジネスホテルとしては安くはないが、このところの円安の影響で、中国の都市部ではこのくらいの価格のホテルでは、まともなサービスを受けるのは無理だろう、きっとボロボロだろうと思い、何の期待もしていなかった。ところが、従業員は英語を話し、少しでも間違いがあったり、顧客を待たせたりすることがあったら「不好意思(すみません)」と自然と頭を下げていた。限りなく3つ星に近い中国の4つ星ホテルのイメージからは、ちょっと信じられないほど“すばらしいサービス”だった。

 このホテルではこんなことがあった。取材の最終日、午前10時にチェックアウトし、スーツケースをフロントに預けた際も、スタッフは私の戻り時間を確認した上で、タクシーを用意しておきましょうか? と聞いてくれた。私は自分の耳を疑うほどびっくりした。安ホテルでそこまでしてくれるのか? 本当にちゃんとタクシーを呼んでくれるのか? と半信半疑だったが、予定時間に戻ってみると、スタッフは私の顔をはっきりと覚えていた上に、タクシーをきちんと待機させていたのだ。日本であればごく普通のまともなサービスが自然に行われたことに驚嘆するとともに、中堅か中堅以下のホテルでも、相当に競争が増してきていて、その結果、サービスを向上させなければ顧客を確保できないのだろう、ということを感じた。古いホテルだったが、内装面などはすぐに変更できなくても、ソフトを充実させることで、少なくとも私の目には魅力的なホテルに映った。

無尽蔵な需要が潰えた先で

 これらは、少なくとも私の実感でいえば、数年前、GDP成長率が7%を優に超えていた高度経済成長期には見られなかったことだ。需要はいくらでもあるからであり、サービスする側があぐらをかいていても顧客はどんどんやってきた。

 その場限りで顧客をだましても、別の顧客が無尽蔵にやってくるような時代だった。だが、そんな状態では真っ当な商売は伸びていかない。だからサービスは少しもよくならず、顧客はひたすら我慢を強いられた。

 しかし、経済が低成長時代に入り、社会全体が成熟化に向けてもがき苦しんでいる中で、徐々に正常な競争にシフトし、サービスや品質で劣るものは市場から淘汰されていくフェーズに突入した。少なくとも沿海部の人々は、海外を見聞したり、外国人と接したりする機会が増えて、よいものとそうでないものを見分けられるようになってきた。この影響も大きい。

 よいサービスを提供しなければ顧客を失う。その原動力がサービスを高めていく。このメカニズムが働くのは、顧客に対してだけに限らず、従業員に対しても同様だ。よい会社は支持され、よりよい人材が集まる。そうでない会社には集まらない。

 では「よい会社」とは一体どういう会社なのか。それを考え、社員に向けて自らのメッセージを発信する中小企業の老板(社長)がちらほらと出始めた。

 上海にある日系企業、ファイヤーフライクリエーションズシャンハイで制作した中小企業の社長のDVDを見せてもらったときのことだ。そこに録画されていた、社員数十人程度の企業を経営する30〜40代の若手社長が、起業した経緯、社員に伝えたい自分の気持ち、将来の夢、経営理念などを切々と訴える内容に驚いた。自分の会社をどうしていきたいか、自分の言葉で熱く夢を語る姿にジーンとした。

 同社の西塚正基総経理は「会社を立ち上げたときの思いを、顧客だけでなく社員や社員の家族に見てもらおうと思ってDVD制作を依頼してくださる社長が増えてきました。社員を育てていくこと=会社をよくすることにもつながる、と考えるようになってきたのでは…。DVDにすれば、面と向かっていうよりも自分の気持ちを伝えやすく、より多くの人にも見てもらえますので」という。

 西塚氏によれば、最近では日系企業が実施している朝礼をまねる企業も増えてきており、商品の品質やサービスの向上という以前に、よい人材を育てることに注力する動きが出てきているという。結局、報酬などの待遇だけで人材を釣っても報酬以外に魅力がなければ、やりがいを感じないし、すぐにジョブホッピングしてしまう。また、そのような状況では、企業側も人材をじっくりと人を育てることができない。よい人材がいなければ、その会社からよいサービスも生まれない。だから、条件だけでなく、会社が目指すところに共感できる人を育てることによって、長く働いてももらえるし、生きがいややりがいも感じてもらえる。その仕事をすることによって本人が成長できる、というふうに考える中国人が増えてきたのだ。

「中国人が金、金と言わなくなったら…怖いですね」

 以前、上海で働く私の日本人の友人が「中国人が金、金、金といわなくなり、夢や生きがいを求める日が来たら……怖いですよね。日本人の中には、もしかしたら、中国人にはいつまでも金の亡者でいて欲しいという潜在意識があるかもしれませんが、結局、人間の心は金だけでは満たされない。右肩上がりの経済成長はいつか止まる、コツコツ努力しなければ成長できない、ということが、彼らにも実感としてわかってきたのではないでしょうか」と話してくれたことがあったのだが、まさしくその通りのことが、今、中国で起き始めている。

 よい人材を確保して会社を育てていきたいという中小企業の社長が増えているように、よいサービスを知った人々はよい会社を支持し、そういう会社に就職したいと願うようにもなる。

 そして、お金だけではなく、やりがいや生きがいを求め始める彼らの中に、これまでのスキルや経験を生かして、自社ブランドを生み出すパワーや創造力が出てきたということだ。

 むろん、ハイアールやファーウェイなど中国を代表する大手企業は、ずいぶん前から自社ブランドを構築しているが、中小企業やコンテンツメーカーではそれだけの技術力や開発力が伴わなかった。中国が「パクリ天国」と揶揄される時代は長かったが、長いモノマネの時代を経て、ようやく自社ブランドを持とうという動きがある。とくにソフト産業でその流れが加速している。

海賊版をなくす唯一の本質的な方法

 今夏、中国で大ヒットした映画『西遊記之大聖帰来』は国産アニメの目玉として鳴りもの入りで公開され、大ヒットを飛ばした。孫悟空という中国人にとって最も身近なキャラクターが主人公だが、アニメ絵は従来のマンガチックなものとは異なり、スマートでイケメンという過去に例のないもの。公開からわずか3日で1億元(約20億円)を超える興行成績となり、大きな話題となった。

 国産アニメ育成のために外国アニメを締め出した、という当局への批判もあることはあるが、アニメファンのひとりである私の友人の男性は「今は自国のブランドを育成していく大事な段階。未熟な面もまだまだあるが、外国のマネではなく、自分たちの手だけで作り出したアニメが世の中でヒットすれば、大きな自信になるし、次の作品を生み出すやる気が湧いてくる」と喜ぶ。

 中国ではアニメやゲームを違法にダウンロードできるウェブサイトがあり、違法なものを無料でダウンロードすることに何の罪の意識も持たない人々はまだ多い。その闇は奥深くまであるが、この友人は「オリジナルの作品や商品を作り出すことによって、中国人の自信がつき、意識も大きく変わるはずだ」と話す。

 「だって、自分たちのブランドに海賊版が出たら、やっぱり悔しいでしょう? 苦労して作り出したものをパクる人がいたら腹立たしいでしょう? その気持ちが中国人にも身に染みてわかるようになる。コンテンツやブランドを一から作ることがどんなに大変で、それがいかにかけがえのないものなのかを中国人にわからせるには、自分たちも苦労してそれを持つことです。それ以外にない。だから、中国でオリジナルなブランドが育つことは日本や海外にとってもいいことだし、見果てぬ夢だった海賊版の撲滅にもつながる。中国社会をもっとよくしていくきっかけになるんです。ブランドを育てることは自分たちの誇りややりがいを育てることにつながっていると思います」(同)

 そういう男性自身、中国でアイドルビジネスを広げようと新規事業を立ち上げ、夢に向かって突き進んでいるところだ。もし、お金や成長だけで、「やりがい」や「いきがい」がなかったら、結局のところよいサービスの継続は難しい。そういう人や会社が増えていくことで、社会全体がよくなっていくし、今、中国はそこに向かってようやく一歩を踏み出し始めたところではないかと思う。

 深刻な経済悪化に世界が注目している今、このようなことを書いても説得力を持たないかもしれない。私自身、今回の中国取材では、「中国がこれだけよくなっている」という具体例を、いつものように数多く集めることができなかった。確かに5カ月前よりもよくなっているのだが、経済が急成長していない今、わずかな「よくなっている」現象を細かく挙げることは困難だったし、その小さな出来事をピックアップするだけでは意味がないと思った。

 政治経済の環境が日本とは大きく異なる中国が日本に及ぼす影響は計り知れない。しかし、私たちは彼らの生活をあまりにも知らない。今回は、取るに足らない私の経験談から見た視点を紹介したが、中国という巨大な国を見る上で、ひとつの意見だと思っていただけたら幸いだ。


『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』
 春節に温水洗浄便座や医薬品などを「爆買い」していった中国人。中国はGDPで世界第2位になったのに、なぜこれほどまでに日本製品を買い求め、日本製品が好きなのだろうか。
 物質面だけではない。中国人が感嘆するのは、日本の自然やおいしい水、日本人の日常生活の「質の高さ」にある。彼らは、この先どれだけ中国が経済成長しても「日本の暮らし」には決して追いつけない、と感じ、日本こそ「暮らしGDP世界一」の国だと思って一目置いている。「再来一杯中国茶」の中島恵さんが、当連載などを元に、政治経済の報道だけでは到底理解できない中国人の暮らしぶりや本音を、中国人の生の声を通して紹介している本です。


このコラムについて
再来一杯中国茶

マクロではなく超ミクロ。街中にいる普通の人々の目線による「一次情報」が基本。うわさ話ではなく、長時間じっくりと話を聞き、相互に信頼を得た人から得た、対決ではなく対話の材料を提供する企画。「中国の人と」「差し向かいで」「お茶を一緒に」「話し合う」気分を、味わってください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/238780/093000001/


3. 2015年10月02日 09:16:29 : jXbiWWJBCA

第4回 習近平vsオバマ会談は中国の圧勝だった

中国の大国への野望を明らかにした『China 2049』のピルズベリー氏に聞く

2015年10月2日(金)石黒 千賀子

 経済面でも、軍事面でも着実に力をつけ新たな大国として浮上する中国――。世界中の国々と企業は巨大市場を有する中国との関係強化に腐心しているが、その一方で、南沙諸島で大規模な埋め立て工事を続け、軍事施設まで建設する中国の姿勢に脅威と警戒感を感じずにはいられずにいる――。

『China 2049』
 米政府の対中政策に長年かかわってきたマイケル・ピルズベリー氏は、近著『China 2049』の中で、中国には「100年マラソン」と呼ばれる世界の覇権を再び握るための野望があり、硬軟交えた一連の行動もその長期戦略の一環と説明した。しかし、同時に「中国を過大評価してはいけない」とも指摘する。
 最終回となる今回は、このほど米国を初めて公式訪問した習近平国家主席とオバマ大統領との首脳会談をどう見るか、そしてその中国とどう向き合っていけばいいのかを聞いた。
 なお、今回も記事の末尾にピルズベリー氏へのインタビューを一部収録した動画を掲載しているので、併せてご覧下さい。
 第1回はこちら
 第2回はこちら
 第3回はこちら
(聞き手 石黒 千賀子)

マイケル・ピルズベリー(Michael Pillsbury)氏
1945年米カリフォルニア生まれ。米スタンフォード大学卒業(専攻は歴史学)後、米コロンビア大学にて博士課程を修了。1969〜70年国連本部勤務を経て、73〜77年ランド研究所社会科学部門アナリスト、78年ハーバード大学科学・国際問題センターのリサーチフェロー、81年国務省軍備管理軍縮庁のディレクター代行、84年国防総省政策企画局長補佐、86〜90年議会上院アフガン問題タスクフォース・コーディネーター、92〜93年国防総省総合評価局特別補佐官、98〜2000年国防総省特別公務員(米国国防科学委員会)、1997〜2000年米国防大学客員研究フェロー、2001〜2003年国防総省政策諮問グループメンバー、2003〜2004年米中経済・安全保障検討委員会シニア調査アドバイザー、2004年以降、現在も国防総省顧問を続けながら、ハドソン研究所中国戦略センター所長も務める。米外交問題評議会と米シンクタンクの国際戦略研究所(CSIS)のメンバーでもある。米ワシントン在住。
著書に『Chinese Views of Future Warfare』『China Debates the Future Security Environment』などがある。(写真:大高 和康、以下同)
先週の金曜日、9月25日にワシントンで習近平国家主席とオバマ大統領の首脳会談が行われました。どうご覧になりましたか。

ピルズベリー:中国にとっては成功、米国が得たものはゼロだった。中国は首脳会談前から指摘されていた南シナ海や東シナ海の問題、あるいはサイバー攻撃問題などについて、何かを確約するということをうまく逃れた。

 ビジネス面を見ても、米中2国間投資協定の締結には至らなかった。首脳会談で最終合意できるようこの数カ月、両国間で相当な努力がなされていた。だが、この投資協定は中国政府が中国国有企業を優遇することを禁じている。首脳会談でどんな話があったのかは明かされないので理由は分からないが、中国は投資協定においても譲歩しなかったということだ。


合意文書が一つもないという首脳会談

しかし、サイバー攻撃の問題については、今後、閣僚級の協議を新たに設置することで合意したと報道されています。

ピルズベリー:いつかね。

いや、年内にも初会合が開かれる、という報道を目にしました。

ピルズベリー:いつ開始するかといった具体的な時期は決まっていない。今回の首脳会談の特徴は、文書での合意は何もないということだ。首脳会談後、ワシントンで随分沢山の記者と話したが、メディアも今週になって、その事実に気づき始めた。

 通常、2つの大国の首脳が会談すれば、複数の事項について何らかの最終合意にこぎ着け、両者が合意文書に署名し、それが会談後に発表されるものだ。だから記者たちは週が明けた今週の月曜日、ホワイトハウスに連絡して、サイバー攻撃の問題を扱う閣僚級協議新設など一連の合意事項に関する合意文書のコピーを欲しいと要請したが、ホワイトハウスは「渡せるような文書になったものは何もない」と回答している。それは、ホワイトハウスのウェブサイトを見てみれば明白だ。そこにはオバマ大統領と習近平国家主席の共同記者会見での発言しか上がっていない。

合意文書が全くない?

ピルズベリー:そう、全くない。習近平氏はオバマ大統領と並んで共同記者会見を開くことさえ嫌がっていたと聞いている。だが、共同会見は中国側が譲歩して実現した。

 確かに、共同会見で彼らは「米中はサイバーセキュリティーについては協力していく」と語り、メディアの報道ではpromise(約束)とかpledge(誓約)という言葉が使われた。だが、それは飛躍というものだ。合意して署名に至った文書は一枚たりとも存在していない。

安全保障に関わるテーマはすべてはねつけた

 今回の首脳会談で何より顕著だったのは、中国側が次の5つの点について、徹底して自らの主張と立場を押し通した点だ。第1は、「両国はサイバー犯罪がこれ以上起きないように協力して戦うという重要な合意に達した」と習近平氏は会見でこそ述べたが、米国が昨年、米企業へのサイバー攻撃に関与したとして起訴した中国人民解放軍(PLA)の当局者5人の米国への引き渡しを拒否した。

 第2は、中国は過去に自国の人工衛星を撃ち落とすことに成功し、他国には脅威になっているが、宇宙における中国の衛星攻撃を禁じる話や中国が宇宙スペースで進めている軍事増強に関する議論について議論することも拒否した。

 第3に、米国が求めた軍事交流の拡大も、限られたものしか受け入れないとの姿勢を貫いた。

 第4に、台湾向けミサイル配備に関する議論も拒否した。中国は過去10年間で、台湾向けに1000発以上のミサイルを配備してきたが、直近でも毎年200発以上増強している。この話題についても議論を拒否した。

 第5に、冒頭でも話したが、南シナ海における埋め立て工事については、他国から一切の制約、制限は受けないと主張した。共同会見でも習主席は「南シナ海における島々は古来、中国の領土だった」と発言。これに対してオバマ大統領は、何のコメントも反応もしなかった。

 実は、首脳会談前に私は、かねてつきあいのある中国の軍部の将校から、中国がこうした反応をするであろうということを聞いていた。情報源は国防大学などで教えている将校クラスの学者たちだ。人民解放軍には、あまり知られていないがGeneral Political Department(総合政策部)と呼ばれるチームがある。タカ派の彼らは通常、どちらかというハト派の外交部の方針と衝突するものの、政策決定に強い影響力があり、今回の習近平氏の訪米を巡る中国側の方針を決める上でも重要な役割を果たしたと考えられる。

 彼らが出した方針とは、安全保障に関わるテーマは徹底してはねつける、というものだったという。

「新興国は時の覇権国を刺激してはいけない」という方針を今回も徹底

外交面においても人民解放軍のGeneral Political Departmentが力を持っているということですか。

ピルズベリー:今回、習近平氏や中国代表団とオバマ大統領が一緒に撮影した記念写真には、将校は一人も写っていない。しかし、彼らこそが今回の訪米における外交方針を決めるのに重要な役割を果たしている。

 軍部は習近平氏に、私が著書『China 2049』でも書いた「100年マラソン戦略」に基づいた助言をし、習近平氏はその通り行動した。この連載の第2回でも触れたが、100年マラソンで最も重要なのは、「新興国は時の覇権国を刺激してはいけない」ということだ。だから中国は、衝突することが確実な安全保障に関する問題の議論はことごとく避け、とにかく「危険な国の指導者だ」との印象を与えないよう腐心したわけだ。

 習近平氏は最初に訪問したシアトルでのスピーチで、米国式の心温まる言葉を並べ、「私は、若かった頃には、アレキサンダー・ハミルトン*1の『ザ・フェデラリスト』*2やトーマス・ペインの『コモン・センス』を読みました」などと語った。こんな話を聞けば米国人は、少なからず習近平氏に好感を抱くだろう。

*1 政治家であり、憲法思想家であり、アメリカ合衆国の建国の父の1人とされる。

*2 アメリカ合衆国憲法の批准を推進するために書かれた85編からなる論文で、「比類のなき憲法の解説で、米国人によって書かれた政治学の古典」とされ、ハミルトンはこの論文の3分の2を書いたとされる

中国や習近平氏にとって今回の訪米は、大成功だった…

ピルズベリー:中国では大成功と受け止められているようだ。北京に送られた今回の習近平氏訪米に関する報道をいくつか見たが、どれも彼を強い指導者であると書いていた。中国では今回の訪米で、米国から大きな圧力をかけられ、様々な譲歩を迫られるのではないかとの懸念もあったようだ。それだけに、習近平氏が一歩も譲歩しなかったことが高く評価されている。ホワイトハウスで米国の指導者と一歩も引かず対等にわたりあった強い指導者である、と。

すると、習近平氏は反腐敗運動を追求しすぎて政敵が増え、権力基盤が盤石ではないのではないかといった見方が一部で浮上していますが、そんなことはない?

ピルズベリー:中国における彼の人気は高い。今回の訪米成功で、その人気と、指導者としての評価はさらに高まっているように思う。私は彼の権力基盤は盤石だと見ている。

中国の成長率を見るときは西側諸国とまず比較すべき

しかし、中国は6月以降、株の暴落に見舞われています。8月の元の切り下げ以降はさらなる株価暴落に直面し、政府による必死のてこ入れ策も効果が出ない。経済の減速も深刻です。一部に、この経済のつまずきで、中国は弱体化が進むのではないかとの見方も浮上しています。

ピルズベリー:経済成長率が7%に鈍化した、あるいは7%の達成も危ういといって多くの人が騒ぐが、昨年の米国のGDP(国内総生産)は2.4%、日本に至っては1%にも満たない。世界第2位の経済大国である中国の成長率が仮に6%にとどまっても日本の6倍のスピードで成長している。

 中国自身も、かつての2ケタ成長から、1ケタの持続的な成長を目指す「新状態(ニューノーマル)」の時代を迎えたと言っている。彼らは間違いから学習することを知っており、政策運営でも着実に力をつけてきている。先進国は何かというと中国の問題を深刻に捉えようとしたがるが、まず自分たちの国の成長率と比べてどうなのか、という点にもっと目を向けるべきだ。

 私は、西側諸国の関心が中国経済ばかりに集中し、中国が軍事支出を拡大し続けていることへの注意がそれで削がれてしまうことの方が問題だと思う。

中国を過大評価することが最も危険

今回の習近平の訪米でも、米国企業はIT(情報技術)系を中心に、中国に熱い秋波を送っていました。経済的な存在感のみならず、軍事的にも脅威を増す中国と、日本はどのように向き合っていけばいいのでしょうか。

ピルズベリー:詳しくは本を読んでほしいが、日本を含め私たちがなすべきことをここでは3つ紹介したい。

 まず最もやってはいけないのは、中国を「過大評価する」こと。米国防次官補で、国際政治学者として知られるハーバード大学のジョセフ・ナイ氏も「我々の最大の危険は、中国を過大評価し、中国に自ら過大評価させ、うぬぼれさせることだ」と指摘している。

 私はさらにナポレオン・ボナパルトの有名な言葉を忘れてはいけないと考えている。「敵が間違いを犯している時は、邪魔するな」だ。長い目で見れば、中国が傲慢で攻撃的な態度で近隣諸国を挑発し、同様のスタンスの国々と連携していることは国際社会に多くの敵をつくることになり、私から言わせれば、結果的に米国を手助けしていることになる。尖閣諸島の領海侵犯を何度も犯せば、それだけ日本を怒らせることになる。それは決して中国のためにはならないからだ。

安倍政権はもっと中国語で生の情報を読み込べきだ

 第2は、日本も私のように「中国語の生の資料を読んでいる」という人材を早急にもっと増やすべきだ。特に安倍晋三首相の補佐官たちに強調したいのは、中国で書かれた中国語の生の資料をもっと入手し、それらを読み込むべきだ、ということ。生の資料とは、本連載の第2回で触れた中国でベストセラーになった『中国の夢』や『戦略学(2013年版)』や『Study of US Strategies』といった中国政府の内部資料のことだ。


左:中国の軍事科学院が出した「戦略学」
右:米国の軍事戦略を分析している
  『中国の夢』は英訳されているが、全体の一部にすぎず、原書を中国語で読まないと真意はつかめない。『Study of US Strategies』はそのタイトルが示す通り、内容は中国による米国の軍事戦略の分析で、幸いなことに英語で書かれている。中国は同様に日本の軍事戦略も研究し、日本版もつくっているので、日本政府は読むべきだろう。

まず彼らの考えていることを知ることが大事だということですね。

ピルズベリー:その通りだ。

 第3のポイントは、中国国内の改革派を支援していくことだ。ただし、タカ派かハト派を見分けることは極めて難しいことを覚悟しなければならない。

 天安門事件後、中国共産党の改革派の指導者だった趙紫陽が終生の自宅軟禁に置かれた。その20年後、コロンビア大学の政治学者アンドリュー・ネイサン氏が、秘密裏に趙氏の回想録を入手し、出版した。その回想録には、当時私たちが知らなかった圧倒的な不利な状況の中で、彼がいかに強硬派に立ち向かい、真の改革を実現しようと苦闘したかが書かれている。

 当時、私を含め当時の政権の多くの中国関係者は、趙紫陽の軟禁は改革の一時的な後退にすぎないと楽観的に見過ぎていた。今も強く悔やまれる出来事だ。同じ過ちを繰り返してはならない。

最後に中国共産党による一党独裁は今後も続くとみていらっしゃるか、その点をお聞かせください。

ピルズベリー:よく聞かれる質問だ。私は以前も話したが、中国共産党には間違いを犯したら「学ぶ」力がある。だから私は、中国共産党には持続性があると思うし、今後も一党独裁が続くとみている。


このコラムについて
キーパーソンに聞く

日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/100100063/ 


4. 2015年10月07日 06:33:20 : jXbiWWJBCA
中国脅威論が台頭する米国、有名大学には空前の寄付金またも同じ間違いを繰り返した米中首脳会談
2015.10.7(水) 渡部 悦和
ローマ法王、米国に到着 オバマ大統領一家ら出迎え
米首都ワシントン郊外のアンドリューズ空軍基地で、到着したフランシスコ法王を出迎えるバラク・オバマ大統領(2015年9月22日撮影)〔AFPBB News〕
 中国の習近平国家主席が米国を公式訪問したが、中国側にとってはローマ法王の訪米と重なる最悪のタイミングであったし、対立が顕著であった米中首脳会談を経て極めて気まずい訪問となったと思う。

 中国側は、習主席の訪米のタイミングがローマ法王の米国訪問と重なることにかねて懸念を示していたが、その懸念通りになってしまった。

 米国のマスメディア特にCNNなどのテレビ局は終日ローマ法王のワシントンDC、ニューヨーク訪問を報道し、習主席の米国訪問はほとんど報道されなかった。米国民にとってローマ法王の存在感に比し習主席の存在感はなきに等しい状況なのである。

 首脳会談全体の評価については厳しい論評が米国においても日本においても多いと思う。外交的に合意を演出して見せたが、合意事項の今後の実行に関しては疑問が残るという評価であろう。

 バラク・オバマ政権は中国の国家ぐるみのサイバー作戦に対して事前に経済制裁をちらつかせるなど従来に比し厳しく対応する姿勢を見せた。

 8月末にスーザン・ライス国家安全保障担当大統領補佐官を中国に派遣し、米国企業に対しサイバー戦により情報を窃取した中国企業25社を経済制裁の対象であることを通告したという情報もある*1。

 しかし、結果的には制裁は表明されなかった。また、南シナ海における中国の人工島建設についても米中の主張が対立したまま実質的な成果がなかった。オバマ大統領は、米国の国益を毀損する中国の不当な言動に対して断固たる姿勢を示すことができないという過去何回も犯してきた同じ間違いを繰り返してしまった。

 オバマ政権は、政権誕生以来6年以上にわたり「中国の平和的台頭を期待する」と言ってきた。しかし、中国の現実は、東シナ海や南シナ海における不法な活動、米国などに仕かける不法なサイバー戦などで明らかな様に決して平和的な台頭ではなく強圧的な台頭であった。

 オバマ大統領は、首脳会談の前に、「米中の対立が不可避であるとは思わない」と発言したが、「米中の対立は不可避である」と私は思う。

 米国で生活していると、米国内には中国をいかに認識し対処するかに関し多様な意見があることを実感する。米国内の対中認識に関しては3つのグループに分けると理解しやすい。

 第1のグループは、中国の横暴な現実に直面しても主張を変えず、「中国との対話を重視し、中国を国際社会のルールを守り世界の諸問題の解決に貢献する国家に導くべきだ」という意見である。

 第2のグループは、かつては中国との対話を重視したが、中国の現実に接して自分たちの対中国認識が間違っていたと反省し、中国に対して厳しく対応すべきであると主張を変えた人たちである。

 第3のグループは、昔から一貫して中国の覇権主義的な本質を理解し「中国の台頭は強圧的になる」と主張してきた人々である。

*1=9月29日付朝日新聞記事

 ここボストンではハーバード大学を中心として第1グループに該当する教授たちが多い。一方、ワシントンDCのシンクタンクの研究者の中には第2のグループに該当する人達が相当数いる。国防省の職員や軍人には第3グループに該当する人たちが多い。

 最近の全般的な傾向としては、中国に対してより厳しい姿勢で対応すべきだと主張する人たちが多くなってきたと思う。

 オバマ大統領は、中国に対して寛容な指導者であり、第1グループに該当する。そのため、国内外の多くの人々から「中国の本質を理解しない、中国に対して弱い大統領である」と批判されてきたのである。

 今回の米中首脳会談を観察すると、さすがのオバマ大統領も習近平主席が率いる中国の横暴ぶりを少しは認識したのではないか。もしそうであるとすれば、その認識の変化が今回の米中首脳会談の最大の成果であろう。

 しかし、オバマ大統領の残り任期は1年3か月ばかりであり、対中認識の変更は遅きに失した。オバマ氏の次の大統領に期待するしかないと思う人は米国のみならず、アジア太平洋地域の同盟国や友好国にも多いのではなかろうか。

 本稿においては、米中首脳会談についてサイバー戦と人工島問題に絞って評価するとともに、問題となっている米国の対中認識について代表的な意見を紹介し、「米中の対立は不可避である」ことを結論とする。

1 米中首脳会談の主要な合意事項と疑問

 今回の首脳会談における主要な合意事項に関しては、米中投資協定交渉の加速や気候変動に関し途上国向け金融支援の表明などの合意があるが、米国で最も注目されたサイバー・セキュリティ分野での合意や南シナ海における人工島建設問題での合意に関しては様々な問題点があるので以下で説明する。

(1)サイバー・セキュリティ分野での合意と疑問

 今回の首脳会談における最大の対立点の1つがサイバー・セキュリティであることをオバマ政権は様々なチャンネルを通じて中国側に伝達してきた。米国企業に対するサイバー犯罪を繰り返す中国企業に対する経済制裁をちらつかせてもいた。

 そしてこの分野における合意事項も発表されたが、いずれの合意事項もオバマ大統領が発言したように「今回の合意は一歩前進だが、我々の仕事は終わっていない」のである。

 結論的に言えば、中国はこの合意を守らないであろう。中国経済の発展や軍事力の増強はサイバー戦などで窃取した情報や技術に負うところが大きかったからである。中国経済の変調が明らかになった今、米国をはじめとする外国企業などからの技術情報の窃取なくして中国経済の発展は容易でないからである。

 ホワイトハウスの発表文の「サイバー・セキュリティ」の合意内容は以下の通りであるが、合意内容を子細に点検すると抜け穴が多いことに気づく。

●サイバー犯罪などに関し、「それぞれの国内法および関係する国際的な責務に従って協力する」と記述されている。下線部が問題で中国は中国の国内法に基づき協力することになるが、この記述は実質的に「中国は自国に不利益になるような協力はしない」ということを意味する。

●米中両国政府は、サイバー作戦による知的財産(貿易上の秘密やその他のビジネス上の秘密を含む)の窃取の実行や支援をしないことに合意した。しかし、この合意は守られないであろうという意見が多い。

 中国の過去のサイバー作戦は国家ぐるみで実施してきたが、習主席が発言したように、「13億の国民をコントロールするのは難しい」とサイバーによる窃取を個人の責任にし、「中国政府は関与していない」と言い逃れることができる。

●「2015年7月の国連情報と通信分野における政府専門グループの報告書を歓迎する」と記述されているが、これは中国の従来からの主張であるサイバー作戦に関しては国連における合意を追求すべきであるという主張に符合し、その本音は国連の合意や決議は有名無実化することが容易である点にある。

●サイバー犯罪などと戦う「ハイレベルな統合対話メカニズム(high-level joint dialogue mechanism)」を設置することに合意し年間2回協議するとしている。しかし、現在存在する実務者レベルのサイバー戦に関する対話枠組みに中国は極めて消極的な対応しかしてこなかった。

 残り1年3か月余りしかないオバマ政権と中国側が真剣に協議するとは思えない、ハイレベルなメカニズムは中国側の時間稼ぎの手段となろう。

 以上を総括すると、米中対話により合意されたとする内容はいずれも問題を抱えていて、将来に期待の持てる合意ではない。米中が決定的な対立に陥ることを避けた妥協の産物であり、またもやオバマ政権はサイバー戦分野において断固たる決定打を放つことができなかった。

 一連のオバマ政権の対応を観察していると、交渉相手に見くびられても仕方のない脆弱さを感じるのである。

(2)南シナ海における人工島建設問題

 米中の軍用機の偶発衝突事故を回避するための行動規範で合意したとあるが、過去にもこのような行動規範で合意しているが、中国軍機による危険な接近飛行がしばしば報告されている。合意した行動規範を末端のパイロットまで徹底できるか否かが重要である。

 習主席は、人工島建設の問題で人工島を軍事化しない(No Militarization)と初めて公に明らかにした。しかし、彼の発言が実際の人工島の活動に効力を発揮するか否かは疑問である。

 彼の発言は、彼の部下たちがジョン・ケリー国務長官らに言ってきたことと同じだからである。中国は従来から、「海洋の安全、気象のモニター、それに従事する者の生活環境の向上のための設備だ」と主張している。

 しかし、IHSジェーン・ディフェンス・ウィークリーによるとファイアー・クロス・リーフ(Fiery Cross Reef)の人工島の2マイルの滑走路は完成し、ヘリパッドも設置されている。航空機によるパトロールの可能性を指摘している。

 No Militarizationの定義を明確にすべきである。人工島で戦闘機を使わないことか、ミサイルを配備しないことか、港を軍港化しないことなのか、防空識別区を設定しないのかなどの質問に答える必要がある。

 この人工島問題に関連して、有力なシンクタンクであるCNAS(Center for a New American Security)の研究員であるパトリック・クローニン(Patrick Cronin)*2氏の米国下院外交委員会アジア小委員会における証言「南シナ海における米国の安全保障上の役割」は参考になる。

 彼は中国を極めて冷静かつ緻密に分析する研究者であり、その証言で「アジアにおける海洋の緊張は増大するし、継続するであろう。中国はスローモーション覇権(長い時間をかけて獲得する覇権:slow-motion hegemony*3)を南シナ海全域で達成するだろう」と主張している。彼の証言の要約を紹介しておく。

「南シナ海における米国の安全保障上の役割」(要旨)

●数年前から、南シナ海における熾烈な競争の時代に入った。

●アジアにおける海洋の緊張は増大するし、継続するであろう。しかし、その緊張関係は軍事紛争には至らない状態で推移すると思われる。

●米中間で大きな交渉の成果や戦略的な和解が求められるが、米国は、次期政権に至るまで、「戦争と平和の間の不確かな中間の道(the messy middle ground between war and peace)」を航海するであろう。

●南シナ海における競争の主要な要因は、「21世紀における主要なグローバル・パワーの地位を確保する」という中国の目標と、その目標達成の過程で、近隣国や隣接海域においてその影響力を拡大しようとする中国の能力と願望である。

●南シナ海は単なる岩、岩礁、資源の問題だけではなく、世界経済と強く結びついている。すべての海洋パワーは南シナ海に依存している。

●ルールと秩序がアジアと南シナ海における米国の国益の中心(the heart of America’s interest)。

●中国は戦略的地位を高めるため、サラミ・スライス戦術を採用し、エスカレーションを避けながら、現状を徐々に変更している。

●南シナ海における島の建設は、国際法に基づき南シナ海を統治することなく、現状を変更する試みであり、同地域での優位性を確保し、近隣諸国を威圧することを意図している。これは中国の三戦に合致している。

●中国は軍事費の伸びについて現在のペースを維持するであろう。弾道ミサイルや巡航ミサイルへの投資は、米国の精密攻撃の優位性を侵食している。

●中国は、東シナ海、南シナ海および台湾周辺の海・空・宇宙・サイバーのドメインを支配するために費用対効果のある施設を建設している。

*2=クローニンは氏、CNASのアジア太平洋安全保障プログラムのシニア・アドバイザー兼シニア・ディレクターである。

*3=slow-motion hegemonyとは、パトリック・クローニン氏が使用する単語で、中国がサラミ・スライス戦術を使いながら、徐々に獲得していく覇権のこと。

2 学者、シンクタンク、マスメディアの中国に対する認識の違い

 ハーバード大学の中国を専門とする教授の対中国認識は概して中国に寛容である。学問的に突き詰めて研究すると、「中国と対話し、国際社会のルールに従うように導くことが重要である」という結論になった人もいるであろう。

 しかし、他の様々な要因も考えられ、中国や香港からの多額の寄付金が影響しているという指摘もある。

 ちなみに、ハーバード大学は全米一の寄付金を受けているが、2014年9月にはハーバード大学史上最大の3億5000万ドルが香港の大富豪兄弟から寄付され、公衆衛生大学院の名称が「ハーバード大学THチャン・スクール」となった。

 また、中国の不動産会社からは中国人留学生の奨学金として1500万ドルが寄付されている。これらの寄付は大学にとっては貴重であり、中国批判の論調を抑制する効果はあると思う。

(1)プリンストン大学トーマス・クリステンセン(Thomas J. Christensen)*4教授の主張

 中国研究で有名なトーマス・クリステンセン教授の最新刊“The China Challenge”の出版を受け、同名のタイトルの講演を受講した。

 クリステンセン教授の対中国政策の特徴は、中国に対する一般的な「関与(engagement)とヘッジ(hedgeing)」戦略の「関与」を重視する立場であり、中国との対話、中国を世界的な諸問題の解決に責任を果たすことを期待する立場である。

 そのため、関与が失敗した時のヘッジの手段である軍事ではなく、関与の手段である外交を重視する立場である。クリステンセン教授の経歴が外交官であったことが彼の主張の大きな要因となっていると思う。

 クリステンセン教授は、中国と米国の軍事対立の可能性は低いと評価している。また、予想し得る将来にわたって中国の軍事力は米国軍事力に追いつけないと評価している。

 中国が今にも世界を支配する段階であるという一部の北京ウォッチャーの見方を否定する。また、国防省や安全保障のシンクタンクが考えている、最悪のシナリオとしての米軍による中国本土への攻撃に対しても批判的である。

 中国国内で起こっていることに対しては批判的だが、とにかく「中国の話をよく聞くことが大切である」と主張し、交渉しようという意見である。

 外交について、「成功する外交は、問題に対処 (manage) したり、即座に解決するということではなく、中国の大国としての台頭を受け入れ、奨励し、他国に対する不法な行為を差し控えるようにさせることが重要である。成功は、一方で強さとタフさが必要であるが、他方で中国に耳を傾け、安心させることが必要である」と主張している。

 中国側が主張する「米国の対中政策は、基本的に中国をダウンさせることであり、中国を分裂させたり、西欧化するための封じ込めや中国包囲の政策である」というプロパガンダは中国国内の批判を国外に向けさせるためのものである。

 米国の対中政策について、「米国の対中政策は、冷戦下のソ連や1950〜60年代の中国に対する封じ込めではない」と説明した。

 しかし、教授は「中国は発展途上国(developing country)であるから仕方がない」という表現を数回使用したが、私には違和感があった。

 中国が発展途上国であることの説明に「1人当たりGDP(国内総生産)がエクアドルと同じであり、誰もエクアドルにグローバルな統治に大きく貢献しろとは言えない」と発言したが、この説明は中国がしばしば使用する表現であり、私には納得がいかなかった。

 中国は経済的にも軍事的にも世界第2位の大国であり、アジアにおける覇権国である、と認識するほうが自然であろう。

 私が教授に、『シカゴ大学教授のミアシャイマー*5がその著書「大国政治の悲劇」の中で、中国の平和的台頭はないと言っているがどうか』と質問したが、「ミアシャイマーは間違っている。彼の考えは危険である」と極めて率直に答えた。ミアシャイマーの主張が気に入っている私としては同意できない回答であった。

*4=クリステンセン教授は、プリンストン大学の「戦争と平和の国際政治」の教授である。2006年から2008年まで国務次官補代理(東アジア太平洋担当)として中国・台湾・モンゴルを担当した。

*5=John J. Mearsheimer。シカゴ大学教授でネオリアリズムの代表的論客である。

(2)マイケル・ピルズベリー(Michael Philsbury)*6氏の「百年マラソン」

 中国は米国にとって代わる世界覇権を目指していると断定するマイケル・ピルズベリー氏の“The Hundred-Year Marathon”を紹介する。

 ピルズベリー氏は「私は数十年にわたり、中国に技術的・軍事的支援を与えるよう、米中の政権を駆り立てる派手な役回りを演じる時があった」と赤裸々に自らの失敗を告白している。

 そして、「中国政府は最初から中国主導の世界秩序を構築する隠された計画を持っていた。米国の対中戦略が米国の歴史の中で最も組織的かつ重大で危険な失敗であった」と結論づけている。

  そして、ピルズベリー氏は、中国の極秘文書を根拠に、「共産党指導部に影響力をもつ強硬派が、中国建国100周年の2049年までに、米国に代わって世界の支配者になることを目指している」と暴露する。

 習主席周辺の強硬派は、「2049年目標」を隠そうともせず、公然と「100年マラソン」と呼んでいるという。

 彼が指摘する中国に関する間違った仮定は以下の5点だという。そしてこれらの仮定がすべて間違っていたというのである。

1.関与(engagement)は完全な協力をもたらす。
2.中国は民主化の過程にある。
3.中国は壊れやすい花である。
4.中国は米国のようになりたいと思っているし、現実に米国のような国である。
5.中国のタカ派は弱い。

 つまり、中国に対する関与戦略は中国側の協力をもたらさなかったし、中国は民主化しようなどと思っていないし、中国は壊れやすい花ではなく周囲を圧倒する強い存在だし、中国は決して米国のような民主主義国にはなろうとしていないし、中国のタカ派は強い影響力を持っているのである。

 そして、中国の戦略には9つの原則があるとしているが、代表的なものに「勝利を獲得するためには何十年もまたはそれ以上の間、忍耐強くあれ」、「敵のアイデアや技術を戦略的目的のために盗め」、「覇権国は、圧倒的な地位を確保するために極端な向こう見ずですらある行動をとることを認めよ」などがある。

 クリステンセン教授とピルズベリー氏の意見の違いは大きい。私は、ピルズベリー氏の意見を支持するが、クリステンセン教授のような関与に重点を置く教授はハーバードやMITに多い。

 エズラ・ボーゲル教授の考えもクリステンセン教授の考えに極めて近い。それに反し、ワシントンDCのシンクタンクの外交問題評議会(CFR:Council Foreign Relations)やCNASなどは中国に厳しい見方をしている。これが民主主義国米国の多様な意見の一例である。

*6=ニクソン大統領からオバマ大統領まで長年中国の専門家として国防省、ハーバード大学、ランド研究所などに勤務。現在、ハドソン研究所の中国戦略センター長。

(3)CFRの論文「米国の対中大戦略を修正する」(“Revising U.S. Grand Strategy Toward China”)

 CFRのロバート・ブラックウェル(Robert D. Blackwill)氏とアシュレィ・ティリス (Ashley J. Tellis)氏がその論文“Revising U.S. Grand Strategy Toward China”で、中国に対して従来の関与を主体とした寛容な対処ではなく、より強力な対処をすべきであると主張している。その要旨は以下の通り。

●中国のグランドストラテジーは、アジアにおける最大のパワーである米国にとって代わることである。

●中国に対しては、支持や協力を強調するよりもより圧力や競争に重きを置くべきである。ヘッジよりもより積極的な対処が必要である。

●従来の米国の中国に対する寛容な政策は、米国の死活的に重要な国益を擁護するものではなかった。

●米中の競争が新たな通常(new normal)となる。

●中国の米国に対する批判は以下の5点であり、突き詰めると「中国がアジアにおける主導的なパワー(leading power)として米国の立場にとって代わる」ことを主張している。

1.米国のアジアにおける同盟システムは冷戦の産物であり、解体すべきである。
2.米国のアジアにおける同盟国と友好国は米国との連帯を緩めるべきである。そうしないならば必然的に中国のネガティブな対応を招くことになる。
3.米国のアジアにおける現在のプレゼンスとパワーは中国封じ込めの試みであり、非難されるべきであり、抵抗すべきである。
4.米国のアジアにおける戦力投射能力は危険であり、削減されるべきである。
5.米国の経済モデルは、基本的に搾取的であり、アジアには適用できない。

(4)ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のオバマ政権批判

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、9月25日付の社説「中国の新世界秩序(Beijing’s New World Order)、中国の侵略には米国のより力強い対応が必要である」においてオバマ政権を批判しているが、正論である。

 社説の主要部分を以下に紹介する。

 WSJは、ケ小平が1979年に中国共産党のトップとして初めて米国を訪問して以来、米国の主要貿易パートナーとして、また責任ある世界の大国として台頭する中国を積極的に支持してきた。

 しかし、今や中国が米国との関係や世界秩序の規範を再定義しようとしているのを無視するわけにはいかない。習主席の下、中国政府は自国を米国のパートナーではなく、戦略的ライバルと見なしている。

 中国の外交政策は次第に攻撃的かつ無法になっている。これはオバマ政権にさえ明白になった現実だ。米国はこうした態度に抵抗する意志を示す必要がある。

 中国の無法ぶりは海上とサイバー空間で最も顕著だ。中国によるサイバー戦による窃取は史上最大の窃盗と言えるだろう。中国は必要性が明白な改革を一段と進める方針を示しているが、これまで経済的略奪者になることがあまりにも多かった。

 米国は数十年にわたり、中国政府のナショナリスト的な強硬手段に対して静かな反応しか示さず、一方で中国を世界経済に組み入れようと試みてきた。

 米国の目的は、冷戦後の秩序の中で責任ある「ステークホルダー(利害関係者)」になるよう中国を懐柔することだった。だが中国は米国の自制を「利用できる弱み」だと見てきたことが次第に明らかになっている。

 地域の覇権国家、ひいては世界の支配的パワーになりたがっているライバルに対し、米国はそれにふさわしい、より力強い対応をする必要がある。特に国家安全保障の分野で、略奪的な行為を断固として押し返すことが必要だ。

 ホワイトハウスが取り得る対応の1つは、米海軍の艦船を南シナ海にある人工島の12カイリ(約22キロメートル)内に入り込ませることである(そこは公海上である)。米国が渋れば、中国は自国が主張する領有権が黙認されたとみなす。

 米国はまた、データを盗んだ中国企業に制裁を課すべきだ。次の大統領は米国の経済成長を復活させて防衛を建て直すことに注力し、太平洋の軍備を見直すべきである。

 無法な行動に対して明確な線を引き、中国が計算を間違える可能性を減らすことだ。中国の指導者が侵略行為の代償に気づくのが早ければ早いほど、彼らが後退する可能性は高くなる。米国の政策立案者にとっての課題は、危機や衝突に見舞われる前に自らの考えを早く改めることだ。

3 結論としてのジョン・ミアシャイマー教授の「大国政治の悲劇」

 オバマ政権は、6年以上にわたり「関与」を重視して中国に対処してきたが、堪忍袋の緒が切れる時期が来たのではないか。少なくとも次期米国大統領が誰になったとしてもオバマ大統領よりは強い態度で中国に対処するであろう。

 オバマ大統領が米中首脳会談前に発言した「米中の対立が不可避であるとは思わない」という発言は、ミアシャイマー教授の「大国政治の悲劇」を意識した発言だったかもしれない。

 ミアシャイマー教授は、「大国政治の悲劇」の中で「中国の台頭は平和的なものにはならないし、新興覇権国の中国は必然的に覇権国である米国と対立する」と主張している。

 そして、「米国は世界唯一の地域覇権国として、ライバル大国の出現を絶対に許しておらず、米国は中国封じ込めのために多大の努力をするだろうし、中国のアジア支配を不可能にするためには何でもするであろう」とまで書いている。

 確かに、オバマ大統領以前の大統領は、ライバル大国の出現を許して来なかった。その点でオバマ大統領は、歴代の米国の大統領とはずいぶん違う柔らかい大統領である。彼には「ライバル大国の出現を絶対に許さない」という姿勢は見られないし、「中国の封じ込めはできないし、適切ではない」と言っている。

 ミアシャイマー教授の主張とは反対の外交政策をとってきたのである。しかし、その対中関与政策は破綻している。だからより強い対中政策を求める声が高まっているのである。

 繰り返しになるが、次期大統領が誰になるにしろ対中政策はより厳しいものになるであろう。そして、その政策はミアシャイマー教授が主張するようにライバルである中国の強大化を許さないものになるのではないかと思うのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44933


[32削除理由]:削除人:要点がまとまっていない長文

5. 2015年10月09日 11:02:34 : OO6Zlan35k
アメリカ「休んだら負け」
病気になっても休まない!猛烈に働く米国人の本音〜自分の席は安泰ではない、だから「休んだら負け」

2015.10.9(金) 老田 章彦
アメリカ人の猛烈な働きぶりは日本人顔負け。マンハッタンの夜景(写真はイメージ)
「有給休暇なし、病気・介護休暇なし、産前・産後休暇なし。休むのは自由だが、その分の給料は払いません」──。このような会社があったとして、読者は就職を検討されるだろうか。

 日本では制度上、有給休暇のない職場はあり得ない。労働基準法39条により、勤続半年で10日、勤続6年半で20日の法定年次休暇の付与が義務付けられているからだ。

 ヨーロッパにはフランス(30日)、イギリス(28日)をはじめ有給休暇の充実した国が多い。だがアメリカには有給休暇についての連邦法の規定がない。そのため「有給ゼロ」の会社が少なくない。そういう職場では前述のように、欠勤して旅行に行くことは認められても、休んだ分の給料はカットされる。

「過半数が有給休暇ゼロ」という階層

 有給休暇を保証してくれない国はOECDのなかではアメリカだけである。だが、米政府が労働者を見捨てているととらえるのは早計だ。労働時間や最低賃金といった基本的な条件は公正労働基準法により定められている一方で、「福利厚生の内容は国が定めるべきものではなく、労働者と雇い主の間で取り決められるべきもの」という考え方が背景にあるのだ。

 こうしてアメリカの民間企業の福利厚生は「市場の手」に委ねられてきた。しかし、自動車メーカーのように組合が力を持ってきた業種はさておき、サービス業や建築などの業種では労働者の立場が弱く、ことに小規模の企業では有給休暇がなかったり、あっても僅かな日数であることは珍しくない。

 経済政策研究センター(CEPR)の調査によれば、アメリカの低賃金労働者(全労働者の時給の中央値の3分の2に満たない人)のうち、何らかの有給休暇を得ている人は49%に過ぎず、過半数が有給休暇ゼロで働いているという。

病気のときぐらい安心して休める社会を

 休日をめぐるアメリカの労働者の苦悩は根深い。アメリカでは有給の病気休暇がない会社も珍しくない。そういう会社では、病欠は賃金カットを意味する。低賃金でぎりぎりの暮らしをしている人ほど賃金カットを恐れ、病気になっても我慢して出勤し続けるケースが多い。無理を重ねたせいで病状が悪化し、亡くなってしまう人のことがたびたびニュースになる。

 こうした労働慣行に一石を投じたのがオバマ大統領である。9月7日、連邦政府の契約業者の従業員に最大で年間7日の有給病気休暇を認める大統領令に署名した。この措置は2017年から始まり、約30万人が対象となる。政府が影響力を発揮できるところから流れを作り出そうという試みだ。

 オバマ大統領はさらにその先を目指そうとしている。「民間企業の労働者の40%に当たる4400万人が有給の病気休暇を得られていない」として、従業員15人を超える企業では7日間の病気休暇が付与される法律を成立させるよう議会に要請した。

「オバマケア」に続く民主党政権の真骨頂ともいうべき姿勢だが、道のりは決して平坦ではない。福利厚生の充実は、企業にとってはコストの負担につながるから、景気がよくならなければ受け入れは難しい。アメリカでは年内の利上げを観測する声が強まっているとはいえ、アメリカ経済の実体は薄氷を踏むような足取りだ。オバマ案の行方は、景気の動向次第である。

休暇があっても休まない人びと

 有給休暇を取る権利が法律によって保証されていないとはいえ、中・高所得層の人びとは、それなりの日数の休暇を付与されていることが多い。だが、実際にそれを利用して休んでいるかどうかは別問題だ。

 休暇の取得を推進するNPO「プロジェクト・タイムオフ」の調べでは、アメリカの民間労働者は1980〜90年代には平均して年に21日の休暇をとっていたが、2000年頃から急激に減りだし、2013年には16日にまで落ち込んだ。

 アメリカ人は日本人よりよく休んでいるという印象を抱かれるかもしれない。だがアメリカでは公的な祝日に休むためには有給休暇を使わなければならない企業が多い。前述「16日」の内訳は、祝日を休むために使った有給休暇が6日、平日を休むために使った有給休暇が10日だ。

 日米の統計の取り方には違いが大きく、両者を単純に比較することはできないが、日本には法定祝日が15日ある(アメリカは10日)だけでなく、年末年始やお盆に休業する企業が一般的なことから、筆者の印象ではアメリカのほうが休みが少ない。

「休んだら負け」と思い込むアメリカ人

 そうであればこそアメリカ人にとって休日は貴重なものだと思うのだが、彼らはなぜここ十数年の間、休みを減らし続けてきたのか。職場にかじりつくようにして働く人びとの背景に、この国ならではの事情が見え隠れしている。

 近年の休暇取得率の低下は、2008年のリーマン・ショックを含む経済停滞のなかで起きている。会社の業績にせよ、本人の成績にせよ、パフォーマンスが低下すれば簡単にクビを切られる国だから、多くのアメリカ人は必死になって自分の椅子を守ろうとしているのだろう。

 全米旅行産業協会が、休暇の取得に消極的になる理由について1303人のサラリーマン(役員クラスをふくむ)に尋ねたところ、33%が「休んでいては昇進に影響するから」と答えた。

 このほか、
「職務と会社への貢献姿勢を存分に示したいから」(28%)
「自分の仕事が他の社員でも代替可能と思われたくないから」(22%)
といった回答から、彼らの追い詰められた気分を感じることができる。

 ただ、こうした逆境を勘定に入れずとも、アメリカ人は昔から働き者だ。裸一貫から身を起こした開拓者の国とあって、ひたむきな労働が賞賛される気風は今も健在。

 特にホワイトカラーには飛び抜けて勤勉な人が多い。朝は6時にオフィスに出勤し、帰宅は誰よりも遅いという人が筆者の身の周りにもいる。あくなき昇進栄達への努力ととらえることもできるが、彼らと話をしていると「ワークエシックス(労働倫理)」という言葉が出てくることが多い。その生真面目さが日本人と重なるところは多い。

 前出のアンケートでは、回答者の35%が「不在中の自分に代わって仕事をこなせる人は誰もいない」と答えた。1つには自分の能力への強い自信、もう1つは「休暇の取得は責任の放棄」という意識も反映されているのではないだろうか。

アメリカ人を休ませる方法

 勤勉は美徳だが、休みなき労働はさまざまなトラブルを招きやすい。睡眠の質と集中力の低下、ストレスや心臓病リスクの増大、幸福感の喪失、ひいては家族関係の崩壊につながりやすいことなどが指摘されている。

 働きすぎると人間の能力はどれほど低下するのか。有給休暇を多く残す人の昇給幅やボーナス額は、休暇をすべて消化した人と比べて6.5%劣るという研究結果もある。

 社員の損失は企業の損失。休暇不足の弊害を重く見たシンクタンクのランド・コーポレーション(社員約1800人)は、大胆な制度を導入している。有給休暇を1日取得した社員には月額収入の3%が支払われる。さらに有給休暇(20日)のすべてを消化した場合には、ボーナスとして年収の5%を支給するという。すべて休めば年収が10%アップする勘定だ。

 だが会社に来ないからといって本当に仕事を休めるわけではない。ある世論調査によれば、休暇中に同僚や上司からメールや携帯電話を介して連絡が来るため「休暇中も仕事をしている」と答えた労働者は、2011年には46%、2012年には52%、2013年には61%と増加している。このような休暇が心身のリラックスにつながらず効果が薄いことは言うまでもない。

 コロラド州デンバーにある携帯電話アプリの制作会社Full Contactの社員は、まとまった休暇を取るとき補助金として7500ドルを支給される。ただし、絶対に守らなければならない条件がある。休暇中に仕事の電話やメールを一切してはいけないというのだ。社としては、大金を与えたうえ「本当に仕事をさせない」ことでむしろ生産効率が高まるという計算あっての制度だろう。

 休めといっても休まない猛烈サラリーマン。一方には、病気でも休めない低賃金労働者。あぶら汗がしたたり落ちるようなアメリカ人の労働条件が和らぐまでには、景気回復や社会制度の改革といった、いくつかの変化を辛抱強く待つしかなさそうだ。

https://www.ustravel.org/news/press-releases/study-fear-being-replaced-and-poor-communication-prevent-american-workers-taking
Study: Fear of Being Replaced and Poor Communication Prevent American Workers From Taking Time Off

“Work Martyr Complex” Emerges at Expense of Americans’ Health and Well-Being

August 19, 2014

WASHINGTON, D.C. - Fear of being replaced and work piling up coupled with a lack of employer support and communication is keeping Americans from using the time off they have earned, according to the new study, “Overwhelmed America: Why Don’t We Use Our Paid Time Off?” conducted by GfK Public Affairs and Corporate Communications (GfK) for the U.S. Travel Association’s Travel Effect initiative. Despite a universal acceptance of the importance of paid time off (PTO), 40% of American workers will leave vacation days on the table, sacrificing their health and well-being and adopting a “work martyr complex” to demonstrate their value.

The “Work Martyr Complex”
“Americans suffer from a work martyr complex. In part, it’s because ‘busyness’ is something we wear as a badge of honor. But it’s also because we’re emerging from a tough economy and many feel less secure in their jobs,” said Roger Dow, president and CEO of the U.S. Travel Association. “Unfortunately, workers do not seem to realize that forfeiting their vacation time comes at the expense of their overall health, well-being and relationships.”

Americans construct many of their own biggest barriers to using time off. Workers cite returning to a mountain of work (40%) and the feeling that nobody else can do their work (35%) as the top reasons they leave PTO unused. The effects of a tough economy still linger, with one-third (33%) of respondents saying they cannot afford to use their PTO, and a fifth (22%) of workers expressing concern that they do not want to be seen as replaceable.

Failure to Communicate
This “work martyr complex” is reinforced by company culture, chiefly poor communication around time off. Even though senior business leaders overwhelmingly recognize the importance of using time off (95%), two-thirds (67%) of American employees say their company says nothing, sends mixed messages about or discourages using their PTO. Further, one-third (33%) of senior business leaders state they never (19%) or rarely (14%) talk with employees about the benefits of taking time off.

The survey suggests that management may be unintentionally sending employees mixed messages when they take their time off. Nearly half (46%) keep responding to emails, while roughly three-in-ten (29%) return calls from work during their PTO, sending the signal that it is not acceptable to be away from the job. Additionally, senior business leaders are dramatically more likely to do work while taking time off: just 37% of senior business leaders reported unplugging entirely from work, compared to 74% of employees.

“Use it or Lose it” Motivates Time Off
“While the survey revealed a number of barriers to taking time off, it may have also uncovered the silver bullet,” said Vice President of Research at GfK Chris Moessner. “‘Use it or Lose it’ policies are tremendously effective at getting employees to use the time off they have earned.”

According to the study, company policy may most strongly influence employees’ decisions to use time off. Five of six workers (84%) with a “Use it or Lose it” policy plan to use all their PTO in 2014, while less than half (48%) of workers who can roll over, bank or be paid out for their unused PTO plan to use all of it. But only one quarter (26%) of workers report that their employers have a “Use it or Lose it” policy.

“Companies and employees need to recognize the value of getting away from the office. It’s time to start a conversation and reclaim the benefits we work so hard to earn,” concluded Dow.

Report Methodology
GfK Public Affairs and Corporate Communications conducted an online survey using the GfK KnowledgePanel® from June 20-30, 2014 with 1,303 American workers working at least 35 hours per week, including 235 managers, defined as those with managerial responsibilities for direct reports and involvement in the decision-making at their companies. GfK’s KnowledgePanel® is the only large-scale online panel based on a representative random sample of the U.S. population. The data were weighted and scaled to ensure that the sample’s composition reflects that of the actual population of American adults working 35 hours a week or more. The margin of error for workers overall is +/-2.71% and for managers is +/-6.39%.

About Travel Effect
Travel Effect is the U.S. Travel Association’s research-driven initiative to prove the personal, business, social and economic benefits that taking earned time off can deliver. For more information about survey findings, visit TravelEffect.com.

About GfK Public Affairs and Corporate Communications
GfK is the trusted source of relevant market and consumer information that enables its clients to make smarter decisions. More than 13,000 market research experts combine their passion with GfK’s 80 years of data science experience. This allows GfK to deliver vital global insights matched with local market intelligence from more than 100 countries. By using innovative technologies and data sciences, GfK turns big data into smart data, enabling its clients to improve their competitive edge and enrich consumers’ experiences and choices. For more information, please visit GfK.com or follow GfK on Twitter: twitter.com/GfK_en.

Contact:
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The U.S. Travel Association is the national, non-profit organization representing all components of the travel industry that generates $2.1 trillion in economic output and supports 14.9 million jobs. U.S. Travel's mission is to increase travel to and within the United States. For more information, please visit USTravel.org.


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http://www.nbcnews.com/business/when-vacation-not-vacation-61-time-6C10719810
When is vacation not vacation? 61% of the time Comment
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Summer means vacation for the vast majority of Americans. But more and more often, those days off aren't really downtime.

Image: Working at the beach
The job market may be improving, but many people may still feel edgy about completely uncoupling themselves from the office. Purestock / Getty Images stock
Some 61 percent of Americans plan to work during vacation this year, according to a new survey by Harris Interactive. That's up from the 52 percent found in a similar survey in 2012 and 46 the year before that.

That's a lot of downtime converted to working hours. A recent survey of affluent investors by John Hancock found that 80 percent plan to take a summer vacation.

(Read more: Most Americans plan to travel for summer vacation)

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So are these working vacationers happy warriors? Not exactly. A third of the survey respondents who plan to work are not pleased about it – and 4 percent intend to deal with their frustration by throwing something. (Six percent plan to use their vacation to update their resume.)

One problem is that people aren't just working while they're on vacation: they're working on weekends, too. The latest American Time Use Survey from the Bureau of Labor Statistics found that a third of the highest paid workers – those earning $1,291 a week or more – worked on an average Saturday, Sunday or holiday, for an average of 3.6 hours.

(Read more: No paid vacation? You must be an American)

The job market may be improving, but many people may still feel edgy about completely uncoupling themselves from the office.

(Read more: Job growth posts large gain)

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People are also staying plugged in because they are afraid of being overwhelmed when they return to work, according to Ellen Galinsky, president of the Families and Work Institute. "It's less the big bad people making us do it. It's more ourselves and worrying what will happen when we don't," she said.

And the Harris Interactive survey suggests things aren't likely to change anytime soon. The propensity to work during vacation is greatest for Generation Y: 73 percent of respondents aged 18 to 34 said they expect to work during their time off this year.

While staying plugged in may ease your first day back, it's not really a good thing, Galinsky said. People need downtime and a change of scene to really recharge.

"Why do you get your best ideas in the shower, or when you are walking the dog?" Galinsky asked. Stepping back from work "gives you a chance to pull together things that as we're rushing through we don't necessarily see together."

People become more productive, she said, "having a time where you don't feel like you're on a treadmill all the time – or at least you're on a treadmill of your own choosing at a spa."

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