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(真相深層)VWの排ガス不正、例のない悪質さ
大聖泰弘・早大教授に聞く
2015/9/30 2:02
独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス試験不正の背景には、ガソリン車に比べて排ガス浄化が技術的に難しいディーゼル車特有の事情があったとされる。VWが手の込んだ不正に及んだ事情や動機について、エンジン技術や排ガス規制の動向に詳しい大聖泰弘・早稲田大学理工学術院教授に分析してもらった。
――ディーゼル車とガソリン車の違いは。
「エンジンの構造や方式の違いから来る長短がある。ディーゼルエンジンは空気を高い比率で圧縮して燃焼を行うため熱効率が良く、燃費性能がガソリンエンジンより2〜3割高い。半面、窒素酸化物(NOx)やPM(粒子状物質)という大気汚染物質が発生しやすい」
――ディーゼル車ではどのような排ガス対策がとられていますか。
「エンジンの本体部分と排ガスの後処理部分の2つに分けられる。エンジンでは燃料を電子制御で高圧噴射する装置と、排ガスの一部をエンジンに戻す再循環装置(EGR)が使われている。前者によって燃料が燃えやすくなりPMが減る。後者は燃焼温度を下げる効果がありNOxの発生が減らせる」
「後処理部分ではNOxを還元する触媒装置と、PMを取り除くフィルターを付ける」
「NOxとPMを同時に減らすのがとても難しく悩ましい。エンジンの燃焼効率を上げれば空気中の窒素との反応でNOxが増え、燃焼効率を落とせばPMが増える。また燃費との関係では、燃焼効率が高いと燃費が良くなる半面、NOx排出が増える」
――今回はそのNOxの排出を低く見せるための不正でした。
「路上走行の時は基準値の40倍近くのNOxが排出されていた点を考えると、エンジン部のEGRと、後処理部分の触媒による浄化を止めていたと推定される。排ガス試験はクルマを試験台に載せて実施するが、このときは路上運転と違ってハンドル操作がない。この違いを搭載したソフトウエアで検知して、試験の時だけ浄化システムを働かせるようにしていたようだ」
「試験走行モードを外れた状態で、排ガス浄化システムが効かないようにする行為はディフィート(無効化)と呼ばれる。エンジンの保護目的など正当な理由がない限り認められていない。今回のケースは、排ガス試験の時だけ浄化システムを働かせ、それ以外の時は無効化するというもの。これほど巧妙で悪質な話は聞いたことがない」
――VWは規制をクリアする技術を備えていた。それでも不正をしたのはなぜでしょうか。
「(問題の発端となった)米国はディーゼルの排ガス基準がガソリン車と同レベルで、欧州などと比べて厳しい。ディーゼル車メーカーにとっては対策技術の余裕度が小さくなる。浄化装置をフルに使ってしまうと、耐久性に不安が生じる。エンジン部のEGRを使うと燃費が悪化し、これを使い続けるとエンジンが汚れやすくなりやはり耐久性を損なう。これらを避けたいという意識が働いたと想像する」
――不正は会社ぐるみだったといえますか。
「VWの技術陣の多くがわかっていたはず。VWだけでなく部品メーカーも事情を知っていたという情報もある。内部告発などの形で倫理意識に基づく行動がなかったのは残念だ」
だいしょう・やすひろ 1976年早大大学院理工学研究科博士課程を修了。85年から同理工学部教授。エンジンの燃焼技術や排気浄化技術に精通。革新的なエンジン技術開発を産学で進める国のプロジェクトの研究代表者も務める。
■リコール、訴訟、ツケは大きく
今回の経緯で不可解なのは、VWが排ガス試験をクリアするレベルの排ガス浄化システムを備えていながら、発覚のリスクがある不正に手を染めたこと。大聖教授は「浄化装置をフルに使った場合の耐久性に不安があったのではないか」とみる。
長距離走行が多い米国では浄化システムの使用条件はより過酷になる。問題の「ゴルフ」など小型車では、対策技術のコストも大型車並みにはかけられないという事情もあったようだ。VWが今後リコールを進める際、単に不正ソフトを外す対応だけですむのかどうかはわからない。集団訴訟に発展する可能性も考えられる。同社が払うツケは大きなものになりそうだ。
(編集委員 吉川和輝)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG29H28_Z20C15A9EA1000/?dg=1
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