アウトウニオン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%82%A6%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%B3

●今でこそ欧州最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲン・アウディグループであるが、1920年代のベルサイユ条約による過酷な賠償金の取立てで経済は苦しく、倒産寸前のベンツをダイムラーが吸収合併したり、ホルヒ、ワンダラー、アウディ、DKWが合併してアウトウニオン(自動車連合)が成立した。何しろ、当時のドイツはGMがオペルを支配下に入れ、フォードも生産を拡大するなど、アメリカ資本の進出が凄かった。
(註　フォルクスワーゲンは、まだ発足していません。)

1933年にヒトラーが政権を担うと、ドイツ民族が優秀であると主張して、自動車の分野でも「優秀性」を発揮するため、強力な支援を行なった。グランプリ・レース(現在のF1)にメルセデスとアウトウニオンのレーシングカーが、他国を圧する活躍を見せるのである。

Auto Union Typ C - Der legendäre Silberpfeil
https://www.youtube.com/watch?v=eAEE5ScmjAQ
●1936年に登場したアウトウニオンのレーシングカー。520馬力を発生する。ドライバーは、ルマン24時間レースで大活躍した、モータースポーツ界のレジェンド、ジャッキー・イクス氏です。

Grand Prix´s 1937
https://www.youtube.com/watch?v=RT0momrozUg
●1937年になると、フランスのブガッティやイタリアのアルファ・ロメオは勝てなくなります。メルセデスのカラッチオラに対し、アウトウニオンは若きローゼマイヤー。二人の戦いになったのです。

戦後、アウトウニオンは「風前の灯」状態でした。救済すべく、ダイムラー傘下に入り、それからフォルクスワーゲン傘下に移ります。
(註　この頃、西ドイツでは民族資本大手の、ボルクヴァルトグループ倒産と言う、大事件があった。アメリカ系資本のオペル、フォードの攻勢が凄まじかった。)

●アウディはVWグループの高級車部門を担うこととなったが、そのためには名声を獲得する必要があった。それが高速四輪駆動方式のアウディ・クワトロによるラリー界での大活躍であるが、生産車ではディーゼルエンジンへの進出であった。アウディ100(二代目)で、ディーゼルエンジンを初採用したのである。

アウディ・100
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BB100

●現在のアウディA6の前のモデルである。ターボディーゼルも追加されたが、フォルクスワーゲンはアウディを、メルセデスのライバルになるよう、力を注いだ。この頃まで、直列5気筒エンジンで排気量は2.2リッターであったが、これではメルセデスのライバルとして認めてもらえないと悟ったフォルクスワーゲンは、大排気量化に踏み切った。これがアウディV8である。

アウディ・V8
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BBV8

戦後のアウディの歴史は、「メルセデスに追いつけ、追い越せ」であった。そのために、メルセデス得意のディーゼル乗用車に力を入れ、それを決定的にするために、ルマン24時間レースに、ディーゼルエンジンで出場したのである。

アウディ・R10 TDI
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BBR10_TDI

Audi R10 TDI SOUND in Action - Accelerations, Fly Bys & Downshifts
https://www.youtube.com/watch?v=zWZZ5arRDZw

(一部、転載します。)

アウディ・R10 TDIとは、ドイツの自動車メーカーアウディがル・マン24時間レースへの参戦を目的に、R8の後継として開発した、耐久レース専用のプロトタイプレーシングカーである。

TDI (Turbocharged Direct Injection) とはフォルクスワーゲングループの直噴式ターボディーゼルエンジンの技術名称である。

(転載終了)

●フォルクスワーゲングループが、ディーゼル乗用車を売るために、あえてディーゼルエンジンのレーシングカーを開発したのである。そして、実際にルマン24時間レースで連続優勝したのだ。これにより、アウディのディーゼルエンジンは、メルセデスを上回るとの評価を得たのである。

★ディーゼルがこけたことで、フォルクスワーゲンのみならず、高級車部門のアウディも甚大な被害を被ったのである。ディーゼルなのに700馬力も出る。ディーゼルと言えば、低速のイメージがあったのだが、ルマンで勝った日から、「高性能」になったのだ。これは、低速のイメージが定着していた四輪駆動の常識を覆した、アウディ・クワトロ以来の快挙であった。

その快挙も、排気ガス規制をインチキして合格していたから達成できたのだと判明した。これの衝撃は大きい。まるでナチスドイツ軍が、スターリングラードの攻防戦に破れて、敗退しはじめたかのようだ。それくらい、歴史的な転換点であったのである。