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「大倉集古館」（東京都港区）に収蔵されている平壌栗里寺址石塔＝２０１１年撮影、慧門氏提供

　明治・大正期の実業家大倉喜八郎氏が朝鮮半島から日本に持ち帰り、大倉文化財団が運営する美術館「大倉集古館」（東京都港区）が所有する「平壌栗里寺址石塔」について、北朝鮮の「朝鮮仏教徒連盟」が返還を求める民事調停を東京簡裁に申し立てたが、不成立に終わったことが１９日、分かった。連盟側弁護士によると、北朝鮮が日本の裁判所に文化財返還を申し立てたのは初めて。
　申し立ては、海外に流出した文化財の返還運動に携わる韓国の僧侶・慧門氏（４２）に連盟が委任して行った。
　連盟側は７月に開かれた１回目の調停で、１９１０年の日韓併合後、大倉氏が朝鮮総督府から石塔を譲り受け、日本に持ち帰ったと主張。これが、外国の占領に伴う強制的な文化財輸出や所有権移転を不法とした、国連教育科学文化機関（ユネスコ）の文化財不法輸出入禁止条約違反に当たるとして、「不当な占有と言わざるを得ない」と返還を求めた。
　一方財団側は、石塔は「略奪」したものではなく、４５年以降に設立された連盟は返還先として適切ではないと反論。今月１７日の２回目の調停で「積極的には応じない」ことを再度伝え、調停は不成立となった。連盟側は幹部の訪日を申請したが、ビザ（査証）が発給されず、実現しなかったという。
　朝鮮半島から日本に持ち込まれた文化財には旧日本軍が持ち帰り、靖国神社が保管していた「北関大捷碑」や「朝鮮王朝儀軌（ぎき）」などの古文書がある。いずれも政府当局間で協議が行われ、北関大捷碑は２００５年に韓国に移送された後、０６年に北朝鮮へと渡り、古文書は１１年に韓国側に引き渡された。
　調停のため来日した慧門氏は時事通信の取材に「不成立は一つの関門で、終わりではない」と述べ、弁護士と相談し、引き続き返還を求めていく考えを表明。ともに来日した韓国の「仏教文化財復帰運動」常任代表で僧侶の影潭氏（６２）は「日本、韓国、北朝鮮の仏教界が連携して返還に取り組めば、北東アジアの平和に寄与する」と訴えた。
　大倉集古館関係者は調停不成立について、「特にコメントはない」と話している。（2015/09/19-15:22）

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