5. 2015年9月16日 11:22:36
: OO6Zlan35k
EUは崩壊に向かっているのか ユーロ危機に難民危機と英国の離脱リスクが追い討ち 2015.9.16(水) Financial Times (2015年9月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)欧州連合(EU)の基本的な功績が脅威にさらされている (c) Can Stock Photo 欧州連合(EU)は前進するために危機を必要としている――ブリュッセルにはそんな、聞くとほっとするような決まり文句がある。しかし、今日の欧州が直面しているさまざまな問題の盛り合わせ――難民、ユーロ、そして英国のEU離脱の危険――は、EUを強化するどころか押しつぶしてしまう可能性の方がはるかに高いように見える。 EUの基本的な功績と教義のいくつかが、ここ数十年間で初めて脅威にさらされている。 具体的には、単一通貨ユーロ、域内の国境開放、域内の労働力の自由移動、そしていったん加盟したら永久に加盟国であり続けるという認識がそれにあたる。 EUはこうした困難に立ち向かうどころか、その圧力を受けてきしんでいる。加盟28カ国は激しく言い争っており、共通の問題への効果的な対策を練ることなどできそうにない。 言い争いの背景にある不穏な状況 加えて、こうした言い争いはある不穏な状況を背景に起きている。第1に、EUの大部分は高失業と持続不可能な財政を伴う不況に近い状態に陥っている。第2に、内部崩壊しつつある中東の諸問題が数十万人もの難民という形で欧州に押し寄せてきている。そして第3に、政界では非主流派の政治家が台頭している。つい最近も、英国労働党の党首に欧州懐疑派の極左候補が選ばれたばかりだ。 危機感が強まる一方でEUが対応できずにいるため、加盟国は今後ますます単独で行動したいと思うようになるだろう。英国の場合は、いっそ離脱しようかと考えるようにもなるだろう。 難民危機はすでに、EU域内の国境開放を巡る重要な考え方を脅かしている。ここ数日間の動きを見ても、ドイツはオーストリアとの国境で出入国管理を始めており、そのオーストリアはハンガリーとの国境で出入国管理を始めている。そして、そのハンガリーは、EU加盟国でないセルビアとの国境を守る有刺鉄線付きフェンスの完成に懸命に取り組んでいる。 難民危機で脅かされる単一市場 フランスとイタリアの国境も管理が強化されており、フランスの港町カレーでは、海の向こうのイングランドに渡ることを熱望する人々が難民キャンプで悲惨な日々を送っている。 もしEUが何らかの施策を講じて移民危機を制御すれば、上記の対応は一時的なもので終わるかもしれない。 しかし、難民として欧州を目指す人々の圧力が強いまま推移すれば、一時的な対応が恒久的な管理に強化される恐れもある。 EU域内の国境開放に対する疑念は、福祉制度や労働市場へのアクセスを巡るもっと大きな問題へとたやすく変わってしまうだろう。 ハンガリー、主要越境地点を閉鎖 EU閣僚、難民分担で合意ならず ハンガリー南部ロスケ付近で、セルビア国境をフェンスで閉鎖する軍兵士ら〔AFPBB News〕 域内の国境を自由に往来できる単一市場でドイツが外国人保護のルールを一方的に変えたことの影響がEU加盟国すべての移民政策に及んでいることを、EU諸国は理解しつつあるからだ。 移民はいずれかのEU加盟国の市民権を得れば、ほかの加盟国に移り住んだり、そこで働いたり福祉手当を受給したりする権利を手に入れられる。 だが、もし人と労働力の自由な移動が問題視されるようになれば、EUの中心的な功績である単一市場も問題視されることになる。 消えたわけではないユーロ危機 難民問題は目下のところ、ユーロの問題を影の薄いものにしている。しかし、ユーロの問題が消えてなくなったわけではない。それどころか、ギリシャがこの夏に屈して新たな財政緊縮パッケージを受け入れたことにより、ユーロ圏はますます「罠」のような様相を呈することとなった。 ユーロ圏での暮らしを全く面白く思っていないギリシャでさえ、金融・経済危機を誘発することを恐れて離脱には踏み切れずにいる。ドイツやオランダといった債権国側も同様に面白く思っていない。南欧諸国を支援する恒久的な財政移転制度に引きずり込まれることを恐れているからだ。 その一方で、銀行同盟を前進させてユーロがよりよく機能するようにしようという取り組みは、ブリュッセルで暗礁に乗り上げている。こうした状況は長続きしそうになく、ユーロ分裂のリスクは必ず再来することになろう。 英国のEU加盟継続に影 難民危機とユーロ危機は、英国が2016年か2017年に実施する国民投票でEU残留を決めるか否かにも影響を及ぼす。 世論調査では最近まで、親EU派にとって前途有望に見える結果が出ていた。 しかし難民危機は、EU離脱派が提示している最も強力な論点――英国がEUに加盟したままでいることは、移民を制御できないことを意味する――に直接関係する。 もっと大っぴらに言うなら、失敗しているように見える組織に英国人がとどまる可能性は大きくない。もし国民投票で離脱を求める票の方が多くなれば、EU域内では危機感が強まるだろうし、離脱に向かう国がほかに出てくる可能性も高まるだろう。 EUについては、完全に崩壊してしまう可能性よりも部分的な解体と影響力の低下に至る可能性の方がまだ高いように思われる。 EUに残るべきか去るべきか、2017年までに英国で国民投票へ 英国は2017年までに、EU加盟継続の是非を問う国民投票を実施する〔AFPBB News〕 しかし、欧州連合と呼ばれる組織が存続し、建物を維持したり給与を払い続けたりしても、その存在感は次第に軽くなってしまう恐れがある。 EUがそのように惨めな運命を避けるには、自らの重要性と有効性を見せつけるのが一番良いだろう。つまり、難民危機のような問題に対処するには一丸となって行動し、協力し合うしかないことをEU市民に示すのだ。 国際連盟を思い出させる今日のEU 問題は、移民を巡る一連の出来事で明らかにされているように、EUの意志決定プロセスが複雑で動きも鈍いせいで、危機が生じても素早くかつ統一の取れた対応をすることが極めて難しくなっているということだ。 筆者の世代の人間にとって、欧州プロジェクトの着実な前進は過去40年間の重要な政治テーマの1つだ。 これがすべて逆戻りするなどというのは想像し難いことであり、不安を覚えることでもある。 しかし、欧州の動乱の歴史には、栄華を極めたものの没落していった帝国や君主、同盟の事例がたくさん転がっている。 筆者は、今日のEUを見ているとかつての国際連盟を思い出すことが時折ある。気高い理想を掲げ、国際協力と法の支配の確立に取り組んだものの、自分では対処しきれなかった国際的な出来事によって最終的には退けられてしまった、あの国際連盟だ。 By Gideon Rachman http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44794
[12削除理由]:管理人:無関係の長文多数 |